http://www.asyura2.com/19/senkyo262/msg/841.html
Tweet |
安倍首相の評価が真っ二つに分かれる「これだけの理由」 自民党のあり方を疑問視していた時期も
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65698
2019.07.08 中島 岳志 東京工業大学教授 現代ビジネス
いま権力の中心にある「自民党」とはどのような政党なのか? 安倍首相とはどんな人物なのか? これからの日本の選択を考える際の重要な指標となる、政治学者・中島岳志氏の最新作『自民党 価値とリスクのマトリクス』(スタンド・ブックス)。安倍首相を分析した章を特別公開!(初出:『論座』「中島岳志の『自民党を読む』」朝日新聞社)
安倍晋三という政治家の「地金」
史上最長の首相在位期間が射程に入ってきた安倍晋三総理大臣。
肯定的な評価と否定的な評価に真っぷたつに分かれる人物ですが、どのようなヴィジョンや政策、特徴を持った政治家なのか、私たちははっきりとつかみ切れていないのではないでしょうか。
現役総理の著書をじっくり読むことで検証してみたいと思います。
安倍さんが著者として出している書籍は、共著を含めると基本的に以下の7冊です。
1『「保守革命」宣言― アンチ・リベラルへの選択』栗本慎一郎、衛藤晟一との共著 1996年10月、現代書林 2『この国を守る決意』岡崎久彦との共著 2004年1月、扶桑社 3『安倍晋三対論集 日本を語る』2006年4月、PHP研究所 4『美しい国へ』2006年7月、文春新書 5『新しい国へ― 美しい国へ 完全版』2013年1月、文春新書 6『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』百田尚樹との共著 2013年12月、ワック 7『日本の決意』2014年4月、新潮社 |
このうち実質的な単著は『美しい国へ』の一冊です。『新しい国へ』はその増補版。『「保守革命」宣言』は共著。『この国を守る決意』、『日本を語る』、『日本よ、世界の真ん中で咲 き誇れ』は対談本。『日本の決意』は総理大臣としてのスピーチ集なので、必ずしも本人が書いた原稿ではないでしょう。
石破茂さんや野田聖子さんに比べて、安倍さんは著書の少ない政治家であり、その著書も第一次安倍内閣以前に出版されたものが大半です。かつ、主著である『美しい国』も、過去の本などからのコピペに近い部分が散見されます。
そのため、ここでは比較的若い時期に、率直な意見を述べている『「保守革命」宣言』、『この国を守る決意』を中心に見ていくことで、安倍晋三という政治家の「地金(じがね)」の部分を明らかにしたいと思います。
議員生活は歴史認識問題からスタート
安倍さんが初当選したのは1993年の衆議院選挙です。この時、自民党は大転換期を迎えていました。
戦後最大の贈収賄事件であるリクルート事件などがあり、宮澤喜一内閣は政治改革の激流に飲み込まれていました。しかし、宮澤首相は小選挙区の導入などに消極的な態度を示したため、内閣不信任案が提出されます。
これに同調したのが、竹下派から分裂した小沢一郎さんや羽田孜さんらのグループ(改革フォーラム)でした。6月18日に衆議院が解散され、総選挙の結果、8月9日に野党勢力が結集する細川護熙内閣が成立することになります。
その5日前には、慰安婦問題について謝罪と反省を述べた「河野談話」が出されています。これが宮沢内閣の実質的な最後の仕事になりました。
安倍さんはいきなり野党の政治家としてキャリアをスタートさせます。そして、このことが安倍晋三という政治家を考える際、重要な意味を持ちます。
安倍さんは、この当時、自民党のあり方に疑問を持ったそうです。本当に自民党は保守政党なのか。保守としての役割を果たせているのか。そもそも保守とはなんなのか(『「保守革命」宣言』)。この思いが、野党政治家として〈保守政党として自民党の再生〉というテーマに向かっていくことになりました。
さて、非自民政権として発足した細川内閣ですが、組閣からまもなくの記者会見で、細川首相が「大東亜戦争」について「私自身は侵略戦争であった、間違った戦争であったと認識している」と述べました。
これに野党・自民党の一部は反発します。8月23日に党内に「歴史・検討委員会」が設置され、次のような「趣旨」を掲げました。
細川首相の「侵略戦争」発言や、連立政権の「戦争責任の謝罪表明」の意図等に見る如く、戦争に対する反省の名のもとに、一方的な、自虐的な史観の横行は看過できない。われわれは、公正な史実に基づく日本人自身の歴史観の確立が緊急の課題と確信する。(歴史・検討委員会編『大東亜戦争の総括』1995年、展転社) |
彼らは、日本の歴史認識について「占領政策と左翼偏向の歴史教育」によって不当に歪められていると主張します。こんなことでは子どもたちが自国の歴史に誇りを持つことができない。
戦後の教育は「間違っていると言わなければならない」。「一方的に日本を断罪し、自虐的な歴史認識を押しつけるに至っては、犯罪的行為と言っても過言ではない」。そんな思いが血気盛んに語られました(前掲書)。
新人議員の安倍さんは、この委員会に参加し、やがて右派的な歴史認識を鼓舞する若手議員として頭角を現します。
「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」事務局長に
1997年には中川昭一さんが代表を務める「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が発足し、安倍さんは事務局長に就任しました。
この会の記録が書籍となって残されていますが、そこでは歴史教科書問題や慰安婦問題などをめぐって、官僚やリベラル派の政治家、左派的知識人に対する激しい批判が繰り返されています。
安倍さんの発言(登壇者への質問)を読んでいくと、その大半は慰安婦問題を歴史教科書に掲載することへの批判にあてられています。安倍さんの歴史教育についての思いは、次の言葉に集約されています。
私は、小中学校の歴史教育のあるべき姿は、自身が生まれた郷土と国家に、その文化と歴史に、共感と健全な自負を持てるということだと思います。日本の前途を託す若者への歴史教育は、作られた、ねじ曲げられた逸聞を教える教育であってはならないという信念から、今後の活動に尽力してゆきたいと決意致します。(日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会編『歴史教科書への疑問―若手国会議員による歴史教科書問題の総括』1997年、展転社) |
小学校・中学校では、自国に対する誇りを醸成する教育をしなければならない。まずは、健全な愛国心を養う教育をしなければならない。左翼によって曲解され、捻じ曲げられた歴史観を教えてはならない。そう強く訴えます。
安倍さんは例えとして、子ども向けの偉人の伝記を取り上げます。小学生を対象に書か
れた偉人伝には、その人物の立派な側面ばかりが綴られています。しかし、実際の人物は様々なネガティブな側面を持っています。酒に溺れたり、家庭の外に愛人をつくったり。この負の部分をどのように伝えるべきか。
安倍さんは「私もこういう素晴らしい人間になりたいなと思わせる気持ちを育成するということが大切」なので、まずは立派な部分だけを教えればよいと言います。負の部分を教えると「極めてひねくれた子供が出来上がっていく」のでよくない。人間は複雑な側面を持っているということがよくわかってきた段階で、負の側面を教えればよいので、歴史教育については小学校・中学校・高校と大学のような場所では「それなりに教える内容とか態度が違って(中略)いいんじゃないか」と続けます(前掲書)。
だから、慰安婦問題は歴史教科書で教える必要はない。自国への誇りを持たせるための教育段階では、教科書に掲載する必要などない。
社会問題になっているから掲載するというのであれば「『援助交際』を載せるつもりがあ るのかどうか」(前掲書)。性暴力の問題を教えるべきというのであれば、痴漢行為を行って捕まった「ある新聞のある論説主幹」の性暴力はどうなるのか。こちらのほうが性暴力の本質なのではないのか(前掲書)。そう主張します。
さらに元慰安婦の証言には「明らかに噓をついている人たちがかなり多くいる」と言及し、長年沈黙を続けてきたことへの疑問を述べたうえで、次のように発言しています。
もしそれが儒教的な中で五十年間黙っていざるを得なかったという、本当にそういう社会なのかどうかと。実態は韓国にはキーセン・ハウスがあって、そういうことを たくさんの人たちが日常どんどんやっているわけですね。ですから、それはとんでもない行為ではなくて、かなり生活の中に溶け込んでいるのではないかとすら私は思っているんです(略)。(前掲書) |
そして、慰安婦問題を追及する左派知識人への反発を述べます。
アンチ左翼、アンチ・リベラル
安倍さんの最大の特徴は、「左翼」や「リベラル」に対する敵意を明確に示すところです。
最初の著作である『「保守革命」宣言』では、日本の「リベラル」はヨーロッパ型ではなく、アメリカ型であるとしたうえで、それは「社会主義」に極めて近いかたちの「福祉主義」であり、進歩主義と親和的であると言います。
また、村山富市内閣の「人にやさしい政治」はこの「リベラル」に当たると述べたうえで、自分の「保守」は「曖昧な「リベラル」的ムードに、明確に「否」と意思表示していく立場」であると規定します(『「保守革命」宣言』)。『「保守革命」宣言』のサブタイトルは、「アンチ・リベラルへの選択」です。
安倍さんは政治家になりたての頃、保守思想家・西部邁さんの保守の定義に「一番共鳴」したようですが(前掲書)、そもそもは保守への思想的関心よりも、アンチ左翼という思いが先行していたと率直に述べています。
私が保守主義に傾いていったというのは、スタートは「保守主義」そのものに魅か れるというよりも、むしろ「進歩派」「革新」と呼ばれた人達のうさん臭さに反発したということでしかなかったわけです。(前掲書) |
安倍さんの左翼批判は加速していきます。首相就任を2年後に控えた2004年の対談本『この国を守る決意』では、露骨な左翼批判が繰り返されます。
安倍さんによると、左派の人たちは「全く論理的でない主張をする勢力」であり、「戦後の空気」のなかにあると言います(『この国を守る決意』)。
そうした人々は、例えば自国のことでありながら、日本が安全保障体制を確立しようとするとそれを阻止しようとしたり、また日本の歴史観を貶めたり、誇りを持たせないようにする行動に出ます。一方で、日本と敵対している国に対しての強いシンパシーを送ったり、そうした国の人々に日本政府に訴訟を起こすようにたきつけたり、いろいろなところでそういう運動が展開されています。(前掲書) |
安倍さんは、自民党議員の一部も「戦後の空気」に感染していると指摘し、いら立ちをあらわにします。拉致問題をめぐっては「情」よりも、核問題に対処する「知」を優先すべきだという議論が党内から出てきたのに対し、「これはおかしいと思って、私はあらゆるテレビや講演を通じて、また国会の答弁などで徹底的に論破しました」と語っています(前掲書)。
ここで「論破」という言葉を使っているのが、安倍晋三という政治家の特徴をよく表していると言えるでしょう。相手の見解に耳を傾けながら丁寧に合意形成を進めるのではなく、自らの正しさに基づいて「論破」することに価値を見出しているというのがわかります。しかも、その相手は同じ自民党のメンバーです。
安倍さんは次のようにも言います。
戦後の外交安全保障の議論を現在検証すると、いわゆる良心的、進歩的、リベラルという言葉で粉飾した左翼の論者が、いかにいいかげんで間違っていたかがわかります。議論としては勝負あったということなのですが、いまだに政界やマスコミでスタイルを変えながら影響力を維持しています。(前掲書) |
このような一方的な勝利宣言をしたものの、不満はおさまりません。自分たちは正しく、 左翼が間違えていることが明確にもかかわらず、自分たちのほうが少数派で、「ちょっと変わった人たち」とされてきたことに納得がいかないと言います(前掲書)。
安倍さんが、アンチ左翼の標的とするのが、朝日新聞と日教組(日本教職員組合)です。 彼は初当選時から、マスコミに対する強い不信感を示しています。
『「保守革命」宣言』では1993年選挙において「日本新党や当時の新生党にマスコミは明らかな風を送りましたよね」と言及し、「自民党は倒すべき相手」とみなされていると指摘します(『「保守革命」宣言』)。
小選挙区比例代表並立制では50%の得票が必要になるため、マスコミを通じて多くの人に知ってもらう必要があり、「マスコミの権力というのはますます大きくなって いく」と警戒しています(前掲書)。
安倍さんは、繰り返し朝日新聞を目の敵にし、強い言葉で攻撃していきます。例えば、日本人の対アメリカ認識について、「国民を誤解するようにしむけている勢力」が存在していると指摘し、朝日新聞をやり玉に挙げています(『この国を守る決意』)。
また、日本人の教育が歪められているのは日教組の責任が大きいとして、警戒心を喚起します。村山内閣以降、自民党のなかにも日教組と交流する議員が出てきたものの、融和ムードは禁物で、「日教組に対する甘い見方を排したほうがいいと思います」と述べます。日教組は文部省とも接近することで「隠れ蓑」を手に入れ、「地方では過激な運動を展開しているというのが現実」と言います(前掲書)。
(つづく)
安倍首相の評価が真っ二つに分かれる「これだけの理由」 @gendai_biz https://t.co/bwe5QRkmLt
— スナバ (@sunaba) 2019年7月8日
「(安倍総理は)そもそもは保守への思想的関心よりも、アンチ左翼という思いが先行していたと率直に述べています。」
根本がそれなら選挙で嬉々として主張するのが民主の悪口なのも当然か。
"自分たちは正しく、 左翼が間違えていることが明確にもかかわらず、自分たちのほうが少数派で、「ちょっと変わった人たち」とされてきたことに納得がいかないと言います"
— yen (@golden_wheat) 2019年7月8日
安倍首相の評価が真っ二つに分かれる「これだけの理由」 https://t.co/6QVITRylKy
保守政治界のサラブレッドなのに全くそう見えない、まるでルサンチマンまみれのネット上の一言保守のような発言を堂々と晒す所に人気の秘訣があるのかもしれない / “安倍首相の評価が真っ二つに分かれる「これだけの理由」(中島 岳志) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)” https://t.co/04rHIOT8w5
— cub_tsuke (@cub_tsuke) 2019年7月8日
続き待たれる。安倍政権への評価は置いといて、彼のあの執念というか怨念というかの源泉が気になっていたので。そして、彼のゴールは何なのか。>安倍首相の評価が真っ二つに分かれる「これだけの理由」 @gendai_biz https://t.co/W3IkGHzJ4f #現代ビジネス
— 小鯛の笹漬け (@sabadsuke) 2019年7月8日
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK262掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK262掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。