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新聞は肝心の争点を書いていない 傲慢政権の暴走許すのか
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/257783
2019/07/06 日刊ゲンダイ 文字起こし 安倍首相(C)日刊ゲンダイ 「年金・増税・憲法 焦点に」――。4日からスタートした参院選の争点について大新聞テレビは、年金と消費税が争点だと一斉に報じている。たしかに、年金も消費税も大きな争点なのは間違いない。 しかし、最大の争点は、このまま安倍政権をつづけさせても本当にいいのかどうかだ。 この参院選の意義について、法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。 「本来、国政選挙は、時の政権が行った政策を評価するものです。前回選挙からの実績について有権者がイエス、ノーの審判を下す。それが正しいあり方です。しかし、もはや安倍政権は、一つ一つの政策についてウンヌンするレベルを超えていると思う。この6年間で、政治の土台そのものが歪み、崩れてしまったからです。安倍首相は、国会でも平気で嘘をつき、野党の質問に正面から答えようとせず、自分の言いたいことだけを質問と関係なく延々と話している。『丁寧に説明したい』と口にしながら、モリカケ問題についていまだに説明せず、『沖縄に寄り添いたい』と語りながら、選挙で4回も民意が表明されたのに無視し、辺野古の海を埋め立てている。安倍政権の6年間によって、民主政治が成り立たなくなってしまった。こうなると、問うべきは、政策の是非ではなく、安倍首相の政治姿勢であり、人として信用できるかどうか、だと思います」 安倍首相は参院選の討論会でも、自分が不利になると「質問の仕方がおかしい」と主催者の質問の出し方にイチャモンをつけているのだからムチャクチャだ。 トランプ大統領と変わらない。 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)が言う。 「政策について評価を下そうとしても、もはや政府の統計は信用できなくなっています。公文書を改ざんし、経済データも捏造している。それも1つや2つじゃない。GDPや実質賃金の統計さえ、安倍政権に有利になるように計算方法を変えてしまった。これでは、政策を評価しようとしても、正しいのかどうか、国民は判断できないでしょう。外交にしても、北方領土の返還交渉が行き詰まったことは明らかなのに認めようとせず、参院選の公約に『ロシアとは領土問題を解決し、日ロ平和条約の締結を目指します』と掲げている。安倍政権の場合、政策をマジメに評価する意味が薄れています」
この6年間、自分たちの生活がよくなったのかどうかふり返れば、安倍政権を信任すべきかどうか、ハッキリしているはずである。 参院選の第一声で安倍は、「あの時代に逆戻りするわけにはいかない」と、相変わらず10年前に誕生した民主党政権の悪口を口にしていた。二言目には「民主党は……」と口にするのは、国民が安倍政権の“実績”を冷静に判断しないよう、目をそらそうとしているからだろう。 「暮らしの安心」がどんどん壊されていったのが、アベノミクスの6年間である。実質賃金は0・7%も下落し、年収200万円以下のワーキングプアは100万人以上増えている。2日に発表された「国民生活基礎調査」によると、2017年度の1世帯当たりの平均所得は、前年比8万円も減り、全体の57%が「生活が苦しい」と答えている。 安倍は「景気回復を実感できていない方がいることも承知している」などと、“好景気”だけど“実感していない人もいるようだ”と、言葉巧みに、アベノミクスは成功していると国民をだまそうとしているが、57%が「生活が苦しい」と回答しているのに、好景気のはずがない。 「この6年間、経済全体のパイはほとんど増えていません。経済成長は1%程度です。民主党政権の時よりも低い。なのに、大企業が空前の好決算を更新し、内部留保が450兆円近くに膨れ上がっているのは、個人を犠牲にし、大企業と富裕層が富を独占しているからです。なにしろ、労働分配率は66.2%と43年ぶりの低水準です。最近は誰も口にしなくなりましたが、トリクルダウンなど最初から起きるはずがなかった。安倍首相だって分かっていたはずです」(経済評論家・斎藤満氏) 年金もどんどん削られている。この6年間で、23万940円から、22万1504円へと9436円もカットされている。それでも有権者は、あの男に総理をつづけさせるつもりなのか。 自衛隊も血を流すことに(C)共同通信社
これ以上、安倍政権がつづいたら、国民生活は大変なことになる。 なにしろ、この政権は庶民のことなど眼中にもないからだ。自民党の二階幹事長は「選挙を一生懸命にやってくれるところに予算をつける」と公言しているのだから、信じられない。 自民党の支持者以外は、優遇されないということである。 有権者は、この参院選で安倍政治にストップをかけないとダメだ。 さもないと、経済は破綻し、年金はカットされ、格差が拡大していくだけである。韓国に対して輸出規制をしたことをキッカケに、いずれ輸出が減少していく恐れもある。 ヤバイのは、もし参院選で自民党が勝利したら、“軍拡”が加速する可能性が高いことだ。来日したトランプが「日米安保条約は不平等だ。米軍は日本を守るが、自衛隊はアメリカを守らない」と不満を漏らしたが、安倍もまったく同じ考えを持っているからだ。 著書で「軍事同盟というのは“血の同盟”です。日本がもし外敵から攻撃を受ければ、アメリカの若者が血を流します。しかし今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊は、少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはないわけです」「双務性を高めるということは、具体的には集団的自衛権の行使だと思います」と、主張している。自衛隊を米軍のために血を流す集団に変えようとするのは間違いない。 前出の五十嵐仁氏がこう言う。 「7月21日の参院選は、有権者にとって絶好の機会です。参院選は、衆院選と違って政権選択の選挙ではありませんが、過去、日本の政治を何度も大きく変えています。07年の参院選は、自民党が大敗し、第1次安倍政権は退陣に追い込まれている。あの時の苦い教訓があるのか、安倍政権は、今度の参院選の“勝敗ライン”をかなり低くし、多少負けても責任を問われないよう、辞めなくてすむよう、予防線を張っていますが、どんなに予防線を張っても、大敗したら政権はもたないでしょう。勝敗のカギは投票率です。自民党が国政選挙で勝利を重ねているのは投票率が低いからです。組織票で勝利している。選挙情勢を見ると、接戦となっている選挙区がいくつもある。投票率が10%アップしたら、1000万票が動くことになる。そのほとんどは、野党に流れるでしょう。1000万票が野党に上乗せされたら、自民大敗、野党勝利の雪崩現象が起きるはずです」 安倍政権は、国民に“自己責任”を押しつけている。もし、参院選で自民党を勝利させ、安倍政権を延命させたら、それこそ国民の自己責任である。
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