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タカ派保守の“一人天下”を許す自民党本流が何とも情けない 令和でも止まらない 日本の劣化
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/257292
2019/06/30 日刊ゲンダイ 岸田政調会長(C)日刊ゲンダイ 参議院選挙で一挙に注目の選挙区に浮上したのが広島(定数2)だ。自民党は、現職で、参議院の重鎮のひとりといわれる岸田派の溝手顕正がいるにもかかわらず、2人目として安倍総理の側近である河井克行の妻・河井案里を擁立したからである。2議席独占狙いとはいうものの、菅官房長官らが河井を全面支援していることからも、官邸が「溝手が落ちても河井を」と考えていることは間違いない。これで、岸田派の現職・吉川赳に細野豪志をぶつけられる可能性が高い衆院の静岡5区に続いて、また岸田文雄自民党政調会長のメンツが潰されたことになる。にもかかわらず、岸田は表立って文句もつけられない始末。 本来なら、岸田は「保守本流」のプリンスであり、リーダーのはず。その岸田がこの体たらくでは、「保守傍流」になめられ、やりたい放題されても当然だろう。「ポスト安倍の最有力候補」などとおだてられて「その気」になっていると、土壇場でポイ捨てされる可能性大だ。 そもそも、岸田は自民党内で吉田茂を源流とし、大平正芳の系譜を継ぐ「保守本流」の宏池会の会長だ。一方の安倍総理は祖父・岸信介をルーツとする「保守傍流」の細田派に属している。総理の座を降りれば派閥を引き継ぐはずである。保守本流は別の言い方をすると「穏健保守」であり、傍流は「タカ派保守」といってもいい。“平和主義者”の岸田だけに、今は安倍総理に従うばかりだが、もしも本流としての自覚が残っていれば、毅然とした対応をとることが期待されているはず。でないと、自民党のメインストリームが途絶えてしまうかもしれない。それはすなわち、自民党政治の劣化を意味する。 もともと自民党には、解釈改憲でいいと考え、健全財政を重視し、合意と漸進を重視する旧田中派や大平派など穏健な保守本流と、改憲志向で力の政治を旨とする旧岸派↓福田派などタカ派路線の保守傍流の2大潮流があり、この両者がぶつかり合う中で、結果としてバランスの取れた政権運営が行われてきた。だが、今や安倍総理を中心とするタカ派保守の「一人天下」となってしまった。おかげで改憲路線は言うまでもないが、教育勅語を礼賛し、歪んだ愛国心を鼓舞するようなネトウヨまがいの連中が、肩で風を切って歩いているのが今の自民党だ。 本来なら保守本流の流れをくむ岸田あたりが、この流れに勇気を奮って逆らい抵抗すべきなのだが、どうやら彼にはそんな勇気はさらさらないらしい。保守本流が消えた自民党は今後、「傍流政党」として、どこに向かっていくのか。 伊藤惇夫 政治アナリスト 1948年、神奈川県生まれ。学習院大学卒業後、自民党本部事務局に勤務後、新進党、太陽党、民政党、民主党の事務局長などを歴任。「新党請負人」と呼ばれる。執筆、テレビ・コメンテーターなど幅広い分野で活躍中。
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