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今こそ「拒否する自由」について考えようじゃないか 井筒和幸の「怒怒哀楽」劇場
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/256660
2019/06/22 06:00 日刊ゲンダイ 久しぶりに血が騒いで、心がワクワクしている。香港で若者を中心に200万人規模の街頭デモが連日続いているからだ。50年前の10・21国際反戦デーの時の大阪の御堂筋での学生暴動デモが脳裏に蘇ってきた。当時、こっちはまだ高校2年のガキだったけど、夜、その大騒乱に一歩でも近寄って列に加わりたくて、友人とドキドキしながら近鉄線に乗って出かけていったことがあった。 もちろん、親にも誰にも内緒。学校にバレたら、すぐに退学処分を食らうからだった。退学させられたら自分の将来もなくなりそうで、それが余計にドキドキした。「沖縄の基地から北べトナムの空に、今日も米軍のB52爆撃機編隊を送り出す戦争犯罪に加担してるのはどこの国なんだ! 日本だろうが! 断固阻止!」と、当時の大学生や高校生らは気勢を上げ、デモ行進した。ゲバ棒を掲げて、火炎ビンまで忍ばせて……。 我らも梅田の街頭に行くなり、黒ヘルメットの大学生の兄ちゃんから「おまえらも持て!」とゲバ棒を突き出されて、たじろいだのを覚えている。持った瞬間から、凶器準備集合罪で機動隊に追われるからだ。ここで検挙されたら今までの適当に楽しかった青春は終わってしまうのか、その後はどんな世界が待っているのか、不安と希望のふちに立たされたようだった。 今の香港の200万人デモの中には、昔の我らと似た青春に戸惑いながらも、意を決して参加している高校生もいるかもしれないが、香港は日本のような当たり前の「自由」が薄れてきている。これが一番、彼らに切実なことのようだ。97年にイギリスから返還されて、2つの政治経済制度の中でやってきた中国の中の香港は「自由」こそ約束された“最後の砦(とりで)”だったはずだ。それがここにきて、本土レッド中国からの政治的締め付けが強まっている。香港行政府が改正したがっている「逃亡犯条例」は改正どころか“改悪”だ。本土の中国共産党が望んで命じてきたに違いないが、中国共産党をちょっとでも批判するような民主活動家がいたら“何かでっち上げて身柄を中国に引き渡せる”、そんな条例改悪を誰が許すもんかと、若者たちが立ち上がったのだ。自分も香港の高校生なら、警察の催涙弾などクソ食らえと集まっただろう。中国当局がどう考えているか恐ろしい。天安門事件が再び起きないことを祈るが、香港の若者よ、頑張って抵抗してやれ。 昔、御堂筋デモに火がつき、自衛隊の戦車まで出動し、難波の高島屋の屋上を占拠した“若者の反乱ゲリラ部隊が交戦しているイラスト”を描いて、ロサンゼルスの知人に送ったら、そこのアート新聞にコラム付きの縮小画で載せられてビックリしたが、今こそ「拒否する自由」について考えようじゃないか。秋田県の「イージス・アショア」配備もずさんな話だ。秋田の学生諸君は立ち上がる問題意識はないのか……。 井筒和幸 映画監督 1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。 |
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