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2019年6月22日
山本太郎参議院議員が1人で「れいわ新選組」なる組織を立ち上げ、全国で街頭演説をおこなっていることが注目を集めている。16日に広島パルコ前でおこなった街頭演説では、政策を訴えるとともに、寄付が多く寄せられ参議院選に10人擁立する見通しを明らかにした。演説の概要を紹介する(グラフや表は街頭演説で山本氏が提示したもの)。
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広島PARCO前での街頭演説(16日)
山本太郎
国会議員とは皆さんの代表だ。皆さんの声を聞いてそれを国会につなげ、形にしていく努力をするという仕事でありながら、国会議員をほとんど見かけたことがない。選挙の時には土下座までするが選挙が終わればどこに行ったか分からない幻の生物。まるで都市伝説みたいな話になっている。なのでこの場で皆さんのストレートな意見をぶつけていただきたい。ただし、すべての答えを持ち合わせているはずもない。その場合はご存知の方がいらっしゃったら知恵を授けていただきたい。そのようなやりとりのなかから先先政治的にとりくむ課題が見えてくることもあると思う。
まずは山本が何をしているのかということについてお伝えしたい。
参議院議員・山本太郎は小沢一郎さんとしばらく活動してきたが、今1人になった。国会議員は700人以上いる。そのなかでたった1人で旗揚げしても物事がなかなか前に進まないのは当然だ。「1人でなにができるのか」と聞かれる場合もある。おっしゃる通り。なので皆さんにこの勢力を大きくしていただきたい。その力を持っているのはみなさん一人一人だ。
一人一人が意志を持ったとしたらコントロールする側としてはやっかいな話だ。逆にいえば皆が自分に自信がなく、「私は関係ない」と距離を置かれる方がコントロールしやすい。一人一人の自信を奪うことによって、よりコントロールしやすい国につくりあげられてしまったと思っている。あなたには力がある。全員同じ船に乗っているわけだから、少なくとも生まれた状況や育った環境によってその先の道が大きく変わってしまうような状況ではなく、国がしっかり底上げしながら、せめてスタートラインは同じように立てるようにする。本当に自分が困ったときには手を差し伸べてくれる国や社会であってほしい。それを実現するためには政治を変えるしかない。その力を持っているのはみなさんだ。
れいわ新選組がどのような決意を持って永田町で皆さんと一緒に進んでいくのか。
日本を守るとはあなたを守ることから始まる。あなたを守るとは、あなたが明日の生活を心配せず人間の尊厳を失わず胸を張って人生を歩めるよう全力を尽くす政治の上に成り立つ。あなたに降りかかる不条理に対して全力でそのさい前に立つ。何度でもやり直せる社会を構築するために。
20年間に及ぶデフレ、デフレで困窮する人人、ロスジェネを含む人人の生活を根底から底上げする。中卒、高卒、非正規、無職、障害、難病を抱えていても将来に不安を抱えることなく暮らせる社会をつくる。
私たちがお仕えするのはこの国に生きる全ての人人。それが私たちれいわ新選組の使命である。このような使命感を持って皆さんとともに歩んでいけたら、そしてこの国の数数の問題を一つ一つ解決し、前に進んでいけたらと思っている。
■8つの緊急政策とは
れいわ新選組は8つの緊急政策をあげている。
@「消費税は廃止」。
消費税は強制的な物価の引き上げだ。経済活動が活発になって物価が上がっていくならば、賃金の上昇も起こっていくはずだ。賃金は上がっていないので、実質賃金が下がった状態だ。生活が苦しくなるのは当たり前だ。
A「全国一律最低賃金1500円 政府が保障」。
政府は最低賃金を1000円にしてみせるという。しかし1000円で働いたとしてもワーキングプアのままだ。人間の尊厳を守れる生活を担保するために1500円は必要だ。これで計算するとだいたい月24万円ぐらいだ。あなたにはその価値もないと自分の中で決め付けていないか。今や大企業は過去最高益だ。あのバブルよりももうかっているのに、どんどん税金は安くなっている。とるべきところからいただければ政府が保障することも可能だ。
B「奨学金徳政令」。
奨学金に苦しんでいる方が非常に多い。現在奨学金を借りている方、返済されている方方全部含めると555万人だ。先進国でありながら、国がやっているサラ金を利用しなければ大学に行けない、高等教育を受けられないのはおかしい。「国がおこなっている武富士です」と国会で紹介したら議事録から削除するよう要請された。奨学金555万人をチャラにするには約9兆円必要だ。日本銀行が1年間にETF株を買うのに費やす費用は6兆円だ。あくまでも日銀の政策だが、555万人の生活を楽にすると考えたときに、9兆円は高い買い物とは思わない。少子化が問題だというならば真っ先にとりくむべき課題だ。
C「公務員を増やす」。
国会の勢力のなかには公務員叩きが大好きな政党も存在している。でも考えてみてほしい。高い給料をもらいながらやっている公務員は一握りだ。それ以外の公務員は今どんどん非常勤・非正規との置き換えが進んでいる。全国で見ても5人に1人は非常勤・非正規だ。同じような仕事をしているのに同じ待遇が受けられず、安定しない。世界の先進国の1万人当りの公務員数を見ると日本は圧倒的に少ない。イギリスの3分の1。アメリカの2分の1程度だ。
そして不安定な働き方が世代横断的に非常に広がっている。不安定な働き方で半年後、1年後の自分をイメージできるだろうか。非正規という働き方を広げて喜ぶのは雇う方だ。働く方は将来もイメージできない。安定雇用も経済政策の一環だ。公務員は安定雇用にも寄与するような仕事だ。そこを拡大していく必要がある。
D「一次産業戸別所得補償」。
安全保障問題が声高に叫ばれている。北朝鮮がどうしたとか中国がどうしたとか。もちろんそういった脅威的な部分には対処が必要だと思うが、まず最初に守らなければならないのは食の安全保障ではないか。食料自給率は4割に届かないぐらいだ。ほとんど輸入に頼るという形をとっていれば、この国は食べ物でコントロールしやすくなる。アメリカの食料戦略によって日本の食料自給率はかなり低くなってきている。100%を目指すように一次産業に就く人人に対して手厚くしていくべきだ。
E「トンデモ法の一括見直し・廃止」。
ここ数年間にとんでもない法律がたくさんつくられた。特定秘密保護法や国家戦略特区、TPP、種子法の廃止、水道民営化に寄与するようなPFI。皆さんの税金からつくられたインフラなどを破格の値段で民営に任せるような、公的な財産で民間にうまい思いをさせていくようなやり方は改めなければならない。国が切り売りされるようなことも進んでいる。こういった法律を見直し、廃止の道を探っていかなければならない。
F「辺野古新基地建設の中止」。
沖縄の民意は何度も示されている。それだけではなく沖縄県のみにそれだけの荷重をかけていいのか。日本全体の問題であるにもかかわらず、その多くを沖縄が抱えているところに新しい基地は必要か。アメリカの海兵隊、その中枢にいた人人からも辺野古の新基地建設には疑問符が投げかけられている。
G「原発即時禁止 被曝させない」。
南海トラフや首都圏直下地震がもうすぐではないかといわれている。被害総額が試算されたり、報道でも流れているのに原発は大丈夫なのかという話だ。大丈夫だとの根拠は新規制基準だというが、本当に大災害がやってきた後でなければ安全性について答え合わせはできない。国民の生命・財産を守ることが政治の仕事であるといいながら、それほどの大博打に皆さんを巻き込むなどあり得ない。
エネルギーの主力は火力だ。火力の中でも環境負荷が少なく、燃料の調達も中東などに依存せず、非常に広い範囲から調達ができる天然ガス。ここに対してより環境負荷が少なくなるような研究に投資していき、原発の廃炉も成長産業として国が投資していくことも考えていかなければならない。
■街頭での質疑応答
質問
今の日本の選挙のシステムはかなり不備がある。一つの会社が選挙管理とか投票用紙の計測とかすべてを担っている問題もあるが、「この選挙区ではこれだけの投票結果が出ました」とテレビでいえばすべて決まってしまう。しかも8時になったらもう当選者が決まっている。不正選挙についてどう思うか。
山本
ネット上でいわれているが、ある程度ファクト(事実)を固めたうえで聞かないことには信頼を失う部分がある。選挙関連機器の購入に関しては1社ではなく、選択する自由はそれぞれの自治体にあるそうだ。話自体がちょっと違う。本当に不正選挙をやろうと思ったらその自治体の職員など選挙にかかわる者すべてが加担しなければならず、かなりハードルが高いと思う。不正選挙ができないぐらいに、不正選挙があったとしてもごまかしきれないぐらいの得票が得られる状況にしていくしかないと思う。
どれだけ貧しくても億万長者でも持っている票は1票。いかに横につながるかで世の中をコントロールすることができる。そのための選挙であり、政治だ。あなたが政治から手を離した瞬間に喜ぶ人人がいる。投票率が下がれば下がるほど力を持つ人たちがいる。組織票を持っている人だ。国政選挙で投票率が6割にも到達しないような状況で、4割の人たちが票を捨てている。一方で現在政権を握っている人たちは約3割程度の票で世の中をコントロールし、皆さんを搾取することまでできている。であれば票を捨ててしまっている4割の人とも手をつないでいけば、別の方向に社会をつくっていける。
政治はパワーゲームだ。そのパワーゲームにさえ参加をするのを諦めてしまっている人たちにもそれを広げていきたい。あなたの生活を支えること、それを政治で実現することができる。コントロールする側に立ちませんか。一緒にあなたのコントロールを受けて国会の中で動き回るアイコンを手に入れませんか。
質問
今ロスジェネ世代に与党が就職支援とかいっているが、れいわ新選組の政策があればお願いする。
山本
私もロストジェネレーションだ。ロスジェネとは大学卒業と超デフレとが重なった世代だ。1997年、98年に本格的就職氷河期が始まった。引き金になったのは消費税が5%に上がり、世界で金融危機などもあった。これらが合わさってかなり厳しい状況に置かれたのがロスジェネ世代だ。前期が現在40〜44歳ぐらい、後期が35〜39歳くらいの方だ。もちろん正規で職に就いている方方もおられるが、なかには非正規だったり、働けていない方もいる。
大卒の有効求人倍率を見ると1996年、2000年卒は有効求人倍率が0・99などという状況まで陥った。とにかく勉強していい大学に入り、いい会社に就職すれば人生安泰だと刷り込まれてきたが、実際に自分が卒業するときにはほとんど就職なんてできず、いくら面接や試験を受けに行ったりしてもだめだった。一番最初に就いた仕事が非正規やバイトだった人が次に正社員になれるのはいつか。景気が持ち直せば自分よりも若い世代が正社員になっていく。自分の仕事の履歴は非正規やバイトで、正社員になることが非常に難しかった世代だ。
今もロスジェネ世代のなかには初めて就職した時と変わらないような所得で生活をされている方方がいる。なかでも多いのが女性だ。全世代の女性非正規労働者に占めるロスジェネの女性非正規労働者の割合を見ると、2018年には1451万人のうち21%を占めている【グラフ参照】。そしてロスジェネ世代から上の世代に非正規の割合が多い。全非正規雇用者で見た場合でも2120万人のうちロスジェネ世代が18%を占め、それから先で非正規雇用の割合が増えている。不安定な働き方の引き金になっているのがロスジェネ世代だ。
本格的デフレから非正規という働き方がどんどん増えていく状況になったということだ。本来であればロスジェネ世代は第3次ベビーブームを起こさなければいけなかった世代だ。少子化になることは50年前からわかっていたのに、政府はロスジェネ世代に対してなにも施策をしてこなかった。蛇口を絞り、財政をカットしまくった。望むなら誰もが家族を持てるぐらいの施策を打っていかなければ人口が減っていくのは当然だ。だとすればボリュームゾーンといわれているロスジェネ世代に投資をするのは持続可能な国をつくる戦略上、絶対にやらなければいけないことだった。
ロスジェネに限らず全世代横断的に効果がある施策として、一つは消費税の廃止がある。強制的な物価の引き上げをしてきた消費税をなくせば物価は下がる。消費税増税によって個人の消費が落ち込んだ。ということは所得も落ち込む。消費税が廃止になればまた消費が加熱していくのではないか。
また消費税廃止は中小零細企業にとってプラスになる。すべての税金の滞納の中で6割を占めるのが消費税だ。駅前の流行っているラーメン屋の主人から、もう1年も2年も消費税を払っていない状況にあると聞いた。なぜか聞くと、これだけ物の値段が安くなっていて、1杯のラーメンからとれる利益には限度がある。にもかかわらず従業員を増やさなければいけないし、いろんな状況を考えた時に消費税を払う余裕までないという。このような状態に置かれた中小零細がたくさんいると思う。そこを引き下げていけば最低賃金1500円にリーチしやすくなるし、できない場合には政府が保障する形をとれば実現可能だと思う。ロスジェネだけでなくすべての世代横断的に消費が盛り上がっていく、景気が回復していく道筋をつける必要がある。
奨学金をチャラにする政策も同じだ。学校卒業時に300万円、400万円、500万円ぐらいの借金を背負って社会に出て返済が始まるのが奨学金だ。大学院卒で1000万円をこえる人たちもいる。大人が借金するときには、どのくらい稼ぎがあるのかなどを調べたうえで返済可能額を貸してもらえる。しかし奨学金は将来どんな仕事に就くかわからないし、どれくらい給料がもらえるかもわからないのに、何百万円も貸し付けて利息までとる。年間350億円ぐらいの旨みを金融機関に差し上げるために利息をとる形が今も続いている。安い給料のなかで一人暮らしをしていれば家賃や水道光熱費、食費など生活費が必要だ。全部支払った後で奨学金を返済し、返済が可能であってもお金が残らない。せめて奨学金をチャラにすれば、返済分を必要な物に回してもらうことで経済に寄与してもらうことができる。デフレからの脱却をいうのであれば、よりみんなが消費しやすくなる施策を国が金を出してでもやらなければならない。
また、住宅政策が非常に重要だ。広島県では住居費は給料の3〜4割ということだが、都会に行くと5割などになる。これは先進国として大きな間違いだ。そうしたベーシックなサービスに関しては極力一人一人の負担を軽くしていくことが重要だ。これだけ不況、デフレが20年続いている国は日本以外にない。安倍総理に聞いても「他にございません」と答えている。20年間、みんな奪われ続けたということだ。その代表的なのがロスジェネ世代の人たちだ。収入のうち3、4割が住居費で消えてしまう状態を変えればいいのではないか。
今、私は東京の国会議員宿舎で暮らしている。国会議員は給料の1割で宿舎をあてがってもらっている。非常にありがたい。だったらみんなも望めば給料の1割程度で住める家があったらいいのではないか。なぜ国会議員や公務員だけの特権にしているのかと思う。そういうベーシックサービスを担保すればみんなお金を使うようになるわけだから、当然消費はより活気づくだろう。日本経済を救うためにも景気回復するためにも、そういうとりくみをする必要がある。医療、介護、保育、教育、住居といったものに対してより負担が少なくなることをしなければならない。
一番大事なことは安定した職に就いてもらうことだ。圧倒的に日本の公務員は数が少ない。そして非常勤や非正規に置き換わっている。今不安定な暮らし方をしている人や、ニーズがあるけれど給料が安すぎて人が集まらない職種を公務員化していった方がいいのではないか。例えば保育、介護。全産業平均の100万円以上給料が少なくて、保育士や介護士が足りないのはあたりまえだ。待機高齢者、待機児童をなくすためには処遇の改善以外にない。資格は持っているが、その仕事に就くと生活が立ちゆかなくなるから就かない方がたくさんいる。あたりまえの話だが、国はコストだと思っているのでやりたがらないが、払っているのは年貢ではなく税金だ。支え合える社会をつくり、持続可能な社会をつくる前提の下で税金を払い、政治家を選んでそれをやってもらうはずだ。しかし残念ながらそのような状況になっていない。
■消費税廃止の財源は?
質問
現在国民1人当たりの借金も大きい。日本は少子高齢化社会で未婚率も増え、子どもを産む人も少なくなっている。税以外で収入を増やす方法がなく、政府からの支出が多ければさらに赤字になり、将来の世代の負担が大きくなると思う。この政策だったら財政破綻の可能性も考えられると思うが、財源をどうするのか。
山本
消費税廃止にかかる費用はおよそ25兆〜20兆円規模だ。これを廃止する場合、かわりの財源が必要になる。さらに奨学金をチャラにする費用に約9兆円。当然その金をどうするのかという疑問は生まれる。財源の一つは税、もう一つは新規国債の発行だ。
税金で賄う場合、増税の必要があるなら、まずは大金持ちからいただくのが筋だと考えている。もうけている人からパーセンテージを高く、もうけていない人からは低くいただくのは税金の基本だ。日本は所得税に関しては累進制だが、法人税は税率が決められている。これで苦しんでいるのは中小零細だ。大企業にのみ、この税率からさらに税金が割引きされるメニューが80以上ある。明らかにとり方がおかしいと思う。だからこそ税金のとり方を変えるだけで税収は変わる。
例えば法人税に累進制を導入し、たくさんある割引きメニューを廃止する。この2つでどのくらいの税収が生まれるか、2016年の法人税で考えると、10兆4676億円だったものが19兆円も増えるという試算がある。なぜやらないのか。組織票をもらっている自分の最大のお客様に対して最大の配慮をおこなった形がこれなのだから、やめるわけにはいかないという話だ。大企業に対する優遇を廃止して所得税と同じ累進課税にすれば、法人税収は2016年で見ても2・8倍に増える。
そしてもう一つ、所得税の最高税率を引き上げる。1974年の最高税率は75%で、19段階の刻みがあった。それが今や最高税率は45%で7段階の刻みに変わった。より持っている人たちにとってプラスになった。これをやめる。さらに株など金融資産から得られる所得は分離課税になっているが、これをすべて所得として考えたうえで課税するなど、やり方はいろいろある。これらでだいたい10兆円くらい税収ができるとみられている。法人税とも合わせて29兆円生まれるという試算だ。これなら消費税も廃止できるし、奨学金にかかる9兆円も1年目には無理でも翌年にはできるではないか。
もう一つの財源は新規国債の発行だ。新規国債とは政府の借金だ。「このままだったら日本は破綻してしまう」というが、騙されてはいけない。政府の借金がなぜあなたの借金なのか? という話だ。今この国には1000兆円をこえる借金があり、1人頭約900万円の借金を抱えているとテレビ・新聞がいっている。その情報源は財務省だ。まず伝え方に誤りがある。
財務省の平成28年度の貸借対照表を見ると、右側の負債の部分は確かに1000兆円をこえている。しかし、右側だけ見て「国の借金が1000兆円をこえている。このままでは破綻する」というのは正しい伝え方ではない。負債と資産を差し引いたうえで純の負債という形で話をしなければならないのに、資産の部分を隠して負債だけで語っているのが財務省であり、それに逆らえないテレビ・新聞だ。国の借金は純で見ると半分以下になるということを大前提として共有したい【表参照】。
続いて、国の借金があなたの借金ということについてだが、だれかの借金はだれかの資産だ。つまり借金を全部なくしたら世の中からその分お金が消える。その根本に一回立ち戻りたい。たとえば国が20兆円借金し、社会保障分野に投資したとする。国にとっては20兆円の借金でも、みなさんにとっては20兆円の資産になる。当たり前の話だ。その裏付けとして日本銀行の資金循環統計がある。政府が赤字を拡大したときには民間の貯蓄が増えるという相関性があらわれている。ただしこれが一度崩れたときがある。それはバブルのときで、国も企業も一般も黒字になった。それ以外は同じ状況が生まれる。政府の借金はあなたの借金ではない。
逆に赤字を出さず、収入のなかでやるという一般の家計における勘定の仕方でやると、当然経済はしぼんでいく。企業と同じで、手持ち資金以上の融資を受けて事業規模を拡大していく。でも国は企業とは違う。破綻するのは最終的な貸し手がいなくなったときだが、国は日本円で借金をしていて、日本円を発行する能力を持っている。お金を刷れば返すことができる。この能力があってどうやって破綻するのかということだ。破綻したギリシャの通貨はユーロで、ヨーロッパ中央銀行しか発行できない。ユーロで借金をしていたギリシャは外国通貨で借金をしているのと同じだったということだ。日本は状況が違う。
2002年に世界の三大格付け会社が「日本国債の格付けを引き下げる」といったとき、財務省が怒って意見書を出したが、私と同じことをいっている。格付けを引き下げる理由はデフレ経済下の大幅な財政赤字だったが、財務省はそれに対し「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」といっている。円で借金していて円が刷れるのに、どうして破綻するんですかということだ。
財務省は他にも「ハイパーインフレの懸念はゼロに等しい」といっている。自国通貨建てで借金していて、円を刷って返済しようとしてもハイパーインフレにはならないということだ。デフレが20年続く国で、なかなかインフレにもならないのにハイパーインフレなんてずいぶん先の話だ。そして、戦後初期のアメリカはGDP120%をこえる債務を抱えていたし、1950年代初期のイギリスは200%近くの債務を抱えていたという事実を無視していると指摘している。問題は借金の量ではないということだ。インフレ率がよっぽど高くなるのはまずいが、インフレ率がしっかりと管理されていれば問題ないという話だ。
ちなみに日本が本当に破綻するのであれば、もうすでに日本自身の信用が失われてないとおかしい。であれば日本の金利、国債の金利が上がっていないとおかしいことになる。信頼のない相手にお金を貸すときに金利が下がるなんて話はない。だが、1997年からみても日本の国債金利は下がり続けている。このなかで長期国債、主役の10年物も、1997年から2018年まで金利は下がり続けている。マーケット・世界は日本が財政破綻しないことはわかっている。国内だけで、国の公会計と家庭の家計を混同したような方法で「日本は破綻する」みたいなことをいいながら、消費増税など、みなさんから金を搾りとろうとし続けているということだ。
現在の金利は6月12日時点でマイナス0・115。破綻どころではない。「これ以上借金したらやばい。借金を返すから増税します」「将来の世代に負の遺産を渡すんですか」といって増税されていく。でも実態はそんなことはない。どの国も借金して成長していっている。まともに成長している国は緩やかなインフレだ。デフレで消費が弱れば、従業員を増やそうという人たちもいない。大きな工場をつくろうとか新しく機械を入れ替えるようなこともしない。投資も弱り、消費も弱り、需要自体がどんどんこの国から失われていく。それが20年以上続いたら当然国力は落ちていく。それをやってきたのが自民党だ。民主党も同じだ。財務省の論議に乗らなければ政権がとれないから、それをやり続けてきた。それがみんなの困窮化につながっていった。
景気が良くなるとはGDPが拡大する状況のことだ。GDPの中身は個人消費、民間投資、政府支出、純輸出の4つだ。この4つのうち一番大きなエンジン、55%〜60%が個人消費だ。みんながお金を使えないとか、将来のためにお金を使わないようにしていたら景気が悪くなるのは当たり前だ。そこで政府が財政をカットするといい出したら、余計世の中にお金が回らない。消費税増税をいうが、それは消費にかかわるすべての部門にかかる税金だ。ただでさえ回っていないお金がどんどんひき抜かれていけばますます世の中にお金が回らない。明らかに間違っている。政府しかお金を出せない。デフレからインフレにできるのは国だけだ。舵取りできるのは国だけだ。だとするならば政府が個人消費がもっと活発になるようなことに財政出動しなければならない。財政再建の話を今、この時期にしてるなんて間抜け以外のなにものでもない。
政府や与党も野党もプライマリーバランスの黒字化と馬鹿みたいにいっているが、これを実現した国がどこかあるか。ギリシャは破綻した。アルゼンチンもだ。それ以降プライマリーバランスの黒字化を目指しているような国がどこかあるだろうか。今この国に生きている人人の状況も見えていないし、この国がこのままでは本当に沈んでしまう。
農業をやられている方方などは自分たちで食べ物をつくったり、物物交換しながら生き抜くことは可能かもしれない。でもそういうことのできる人たちは限られている。多くの人が生産者に頼りながら、お金というツールを使ってそれを買っていく。このままいけば本当に税金だけとられて受けられるサービスはますます少なくなっていく。「国の借金」ということに対しては心配する必要はないと思っている。必要なところにお金を出し、インフレ率が2%になったら世の中にお金が増えすぎないよう絞っていく。回り過ぎたお金は税制で話したように、税収として吸い上げて制御するような形になると考えている。
財政危機宣言、『朝日新聞』も1995年に記事で出している。過去の日本の財務大臣などは財政非常事態宣言みたいなことを1982年からいい続けてきた。で、いつ破綻するのかという話だ。
質問
使用済み核燃料を今保管するのに年間莫大なお金を使っていると聞いたが、火力発電になったらどうなっていくのかが心配だ。原発が稼働してさえいれば再利用できるサイクルがあるので、火力発電になったら核燃料の保管をどう考えているか。
山本
核の発電から生まれたゴミは今のところゴミとして計上されない。これを資産として計上するために「リサイクル可能な燃料だ」という立て付けが必要になる。だから核燃料サイクルを進めようという考え方だ。
核ゴミをこれ以上増やすわけにいかないので、「リサイクルできるから資源のない国としてはいいでしょう」という触れ込みだが冷静に考えていただきたい。地震が多い国の日本でこの先、南海トラフや首都圏直下などが来た時に核燃料サイクルであったり、原子力施設も維持していく場合には、たとえその時に稼働していなかったとしても同じような過酷事故が起こる可能性がある。冷やし続けなければいけないので、ステーションブラックアウトみたいなことになって電力が失われたとしたら同じようなことになる。私は大型の地震がもう来るといわれているなかで、原発は安全だといい続けるのは無責任だと思っている。原子力施設を含めその核燃料、核をリサイクルするという概念さえも辞めた方がいいと思っている。
原子力に関する学問がここで止まってしまうではないかといわれる方もいるが私はそう思わない。核燃料サイクルをやめたとしても核のゴミは残り続けるからだ。それ以外にも廃炉技術ももっと進めていかなければならない。世界でも類を見ないメルトダウンを起こした原発が今も存在している。これは収束の仕方が分かっていない。国は30〜40年といっているが、それは事故していない原発の収束期間と同じくらいだ。おそらく100〜200年単位だ。費用も天文学的にかかるであろう。でもそこに関してはやらなければならない。人類が挑戦しなければいけないような収束作業だ。原子力は学問的にも閉じられるものではない。
核ゴミについて日本では300bくらい掘って埋めてしまえみたいな話になっている。地震が多い国で地層処分にするのは大丈夫なのかという話だ。ドイツでも何十年も前から捨て場について実験を続けてきている。2011年にドイツの核のゴミ捨て場の候補地に行ったが、1000bくらい地下にアリの巣状に張り巡らされたような部屋に置いていくということだったが、水が溢れてくるという問題が起こった。核のゴミを保管している容器に水が接触したら腐食していく。いろんな議論があってドイツでも最終候補地が決まっていない。岩塩層は何千年も水が入ってこなかったから大丈夫だといっていたが、人間が穴を掘ることによって水の通り道をつくった。
核のゴミ置き場は議論しなければならないことだし、とくに推進してきた人たちが責任を持って提案しなければならないが、300b地下に埋めて安全が確保されるのかというと難しい。きちんとした技術が確立されるまでは地上に保管するしかないと考えている。「武力攻撃が」という話もあるが、日本海側の原発は今も元気だ。まったく矛盾した話だ。
質問
寄付金について金額だけでなく人数が分かるとその代表として、発言権が増えるのではないか。金額と人数が表に出てくるといいと思う。
山本
金額は常に出している。4月10日から6月15日までに1億9225万円集まった。いろんな方々が寄付くださり、外で食べようと思ってたけど我慢して1000円寄付しようという方、500円という方もいらっしゃるし、100万円出すという方もいらっしゃる。今この時点でこれだけの金額が集まれば、参議院は10人を立てることは宣言できる。
ただ事務所の業務内容として、人数を把握するところまでできる状況にはない。本来参議院で10人がたたかうというのは、数百人単位の給料を払って雇うような政党がやることだ。それを今回1人の議員事務所の事務機能を中心においてボランティアなどでやっている。ほとんどもう一杯一杯という状態だ。チラシを折る作業さえも非常に助かる。一人一人ができることを集めてなんとか大きな勢力にし、国会の中でガチンコでケンカするような勢力を拡大していけたらと思っている。
質問
今のような内容を、本来であれば国会で議論するのが当たり前だが、現実にできていない。参議院も衆議院の予算委員会も3カ月以上、2ヶ月以上開けていない。下手すれば今季は予算委員会なしで閉じるような現実がある。そんなことを許すわけにはいかないとは個人的には思うが、自民党・公明党が審議に応じないのをどうやって変えていけばいいのだろうか。最近一番怒りがたまっていることだ。
山本
現在予算委員会が開かれていない。その中でも集中審議が本当は開かれなければいけない。総理大臣も全閣僚も揃ったうえでテレビも入る非常に緊張感が高いものだ。審議しなければいけないことがたくさんある。賃金に関するデータなど8年分以上なくなっている。老後2000万円の問題やイージス・アショアの問題など、国会の中で話さなければいけないことがたくさんあるはずだ。トランプさんと話をして、「選挙が終わった後に得することを晋三がやってくれるって言ってるけど後でのお楽しみね」。みたいなことをツイッターでいわれているぐらいだから、おそらく農作物など、いろんな部分でアメリカ側に譲歩することが約束されているのだろう。
とにかく説明されていないことだらけなのに、なぜ予算委員会を開かないのか。自民党側は自分たちにマイナスのことが出るのは嫌だ。選挙が近づいているときにやりたくない気持ちはわかる。野党側がやるべき仕事で何ができるかというと、国会議員の仕事である行政監視だ。国会は立法府だが、安倍さんがいるところは行政府。安倍さんは行政の長だから、国会で決めた法律に従って皆さんの税金が適正に使われて、ちゃんと行政運営がされているのかをチェックしなければならない。そのチェックすべき内容がそろっているけれども、その行政をチェックする機会、疑義をぶつける舞台である予算委員会、とくに集中審議を一切開く気がないのは、仕事をしていないということだ。
これに対して野党がしっかり抗うしかない。ただし与党と野党では圧倒的に数は違うから、与党側が押し切れる。けれども野党側は武器がないわけではない。ここまできたら委員会や本会議を一切開かせないようにするという体を張った抵抗しかできない。野党が一切拒否して体を張ってでも止める気概でなければ与党は予算委員会を開くとはいわないだろう。本来ならそれをする必要があった。国会が不正常になればニュースは流すから、世の中のみんなに知ってもらえばよかった。その機会はゴールデンウィーク前にあったが、早々とその姿勢をやめて本会議開催につきあった野党がいる。「ずる休み」といわれるのが怖かったみたいだ。野党第一党の立憲民主党が与党とまず交渉をする。ここでたたかう姿勢を見せなければ、結局流されてしまう。最終的に本会議の採決に応じたのは立憲民主党だ。立憲民主党の支持者の人はお尻を叩いてほしい。政治家をシャキッとさせられるのはやはり支持者でしかない。
私が野党第一党だったらとことん体を張る。例えば私が政党になったとして、党首討論のようなところで腰が引けてる野党に対して、野党第一党でも第二党でも「日和って与党側と手組んだんですよね」という趣旨の話をしたら、「腰が引けて結局あれから予算委員会開かれてませんけど、責任感じないんですか?」という話をする。そうすることによって緊張感が生まれると思う。テレビは1%の視聴率で100万人が見る。まず今政治に必要なのは緊張感だ。その緊張感を生み出すためにもガチンコで喧嘩をする人間を国会の中に増やさなければいけない。
「どうせ数の力で決まるのだから選挙で勝つ以外にないのではないか」みたいな多数決の論理に持って行かれてどうするのか。のちのちみんなの首が絞まるような法案が去年通っているのにどうして国会が1日も延長せずに通っているのか。私が牛歩するのを嫌がるのは与党だけでなく野党もだ。どちらにとってもめんどくさい存在だから嫌われている。だったらその人数を増やす方がもっと緊張感が生まれておもしろくなる。国会がおもしろくなれば注目する人が増える。
今のまま国会におまかせ、議会におまかせしてきた結果、搾取され続けてきた。痛みを伴う改革のあとに良いことがあると信じた結果、さらなる痛みが続くだけだった。この先もそうだ。子どもの7人に1人が貧困、20歳〜64歳まで1人暮らし女性3人に1人が貧困、高齢者5人に1人が貧困。生活が苦しいといっている人は厚生労働省の調査で56%をこえて、シングルマザーの82%が生活が苦しい。壊れるのは時間の問題だ。
変えられると思っている。夢見過ぎだといわれてもいい。一緒に行ってくれる人を募集している。あなたが諦めてしまったという政治に、私が1人でもやっていく決意を固めている。そこに期待を寄せてほしい。疑ってくれて結構だ。疑ってかかるのが政治だ。そのなかでもこいつだったら動いてくれるのではないかと、私のお尻を叩きながらもっと国会を楽しみ、政治に興味を持って、それを動かせるという自信を取り戻してほしい。
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/12000
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