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安倍首相はイラン外交の思惑をハメネイ師に見透かされた 日本外交と政治の正体
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/256525
2019/06/21 日刊ゲンダイ ハメネイ師と安倍首相(C)ロイター 安倍首相は、首相就任後から世界各国を訪問しているが、今月のイラン訪問は惨めだった。 日本の報道機関は、安倍首相の訪問前、緊迫する米国とイランの間で、安倍首相が緊張緩和を求める仲介外交だと持ち上げていた。ところが、会談したハメネイ最高指導者は「トランプ大統領とメッセージを交換する価値はない。今も今後も返答することは何もない」とのコメントを発表。さらに日本については「米大統領は日米首脳会談でイランについて議論した後にイランの石油化学セクターに制裁を課した。これが誠実さのメッセージなのか。日本はアジアの重要な国だ。イランとの関係拡大を望むなら、他の国々と同様に断固とした姿勢を取るべき」とまで言われてしまった。 安倍首相はハメネイ師との会談後、「イランの最高指導者であるハメネイ師と直接お目にかかり、平和への信念をうかがうことができました」と語っていたが、その日、ホルムズ海峡近くのオマーン湾でタンカー2隻が攻撃を受け、うち1隻は、日本の海運企業「国華産業」が運航するパナマ船籍のタンカーだった。 この攻撃の首謀者は薮の中だが、イランが関与している可能性は高い。 世界有数の経済紙である米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の主張は保守派であり、共和党寄りの立場を取っている。そのWSJ紙は安倍首相のイラン訪問について、〈初心者プレーヤーが痛みを伴う教訓を得た〉と題してこう報じた。 〈安倍首相、イラン訪問を米、イラン関係を一段と不安定にして終える〉 イランの核合意は、2015年、米、英、仏、独、ロ、中がイランの核兵器開発を止めるために行われ、今の米、イランの対立はトランプ大統領が核合意を一方的に破棄したことによる。 安倍首相が核合意の維持が重要と思うのであれば、説得するべき相手はトランプ大統領だが、安倍首相がトランプ大統領に「核合意を守りなさい」と促した、という報道はどこにもない。 安倍首相のイラン訪問の目的は仲介ではない。次の参議院選挙で自民党は〈地球儀を俯瞰する外交を進める〉ことを公約に掲げており、そのためのイラン訪問である。その意図をハメネイ師に見抜かれ、厳しい叱責を受け、無残な姿を世界中に示すことになったのである。 孫崎享 外交評論家 1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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