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トランプの「ディール」を崩せなかった安倍外交、日本の期待は空振りに
https://wezz-y.com/archives/66394
2019.06.03 wezzy 写真:代表撮影/ロイター/アフロ ■トランプ大統領の一人勝ち 来年の大統領選挙を控えた米国のトランプ大統領と、この夏の参院選に合わせてダブル選挙も画策する安倍総理。ともに大事な選挙を控えた両首脳が4月に続いて再び会談しました。今度は令和最初の国賓としてトランプ大統領を東京に招き、上にも下にも置かない異例の接遇でもてなしました。 外交交渉という観点から見ると、今回のトランプ訪日は、トランプ大統領の一人勝ちの印象を強めました。羽田空港に降り立ったときも両国国技館に来場したときも、国民は「怖いもの見たさ」もあったかもしれませんが、万雷の拍手で迎え、歓迎一色に染まりました。まるで「スター」の来日のようでした。 トランプ大統領はワシントンを発つ前から、新天皇との面談など、歴史的な栄誉を米国民にアピールしていましたが、日本政府から最大限の接遇を受けた「成果」も米国民に最大限アピールすることができます。選挙戦を前に、大きな得点を得たことになります。 本来、「おもてなし」の心は、相手に見返りを求めない無償の接待で、お客様に喜んで帰っていただければ、それ自体大成功と言えるのですが、4月の首脳会談でこの5月にも貿易交渉の結論を出す可能性をトランプ氏からチラつかされ、危機感を持った安倍総理は、「無償の心」ではなく、接待の見返りを期待して異例のもてなしをしました。つまり、自分の選挙にも協力してほしいというものです。 前回の首脳会談後、安倍総理は「夏には大事な選挙があるので、その前に貿易交渉の結論を出すのは勘弁してほしい」と頼んだと一部に報道されています。そのためにあらゆる手段を講じ、トランプ氏に満足してもらって「ディール」先延ばしを依頼したと言います。実際、トランプ大統領から多くの問題は選挙後の8月に発表するとの言質を得ました。 トランプ大統領にしてみれば何の負担にもならない「サービス」で、その裏できっちり貿易交渉は進めるぞ、との「ディール」は崩していません。日本としては多少なりとも攻撃の手を緩めてもらえないかとの期待はあましたが、それはかなわなかったようです。 ■貿易交渉で米は譲らず トランプ大統領にとっては、令和最初の国賓として招かれた栄誉と、貿易交渉の「ディール」は別物のようです。トランプ大統領は「貿易問題の解決が最大のテーマ」と言ってはばからず、接待の最中にも日本の農業開放、自動車問題を協議すると明言していました。そして、彼の「成果」とは中国との貿易戦争で疲弊する米国農業を喜ばせる結果を得ることと、米国自動車業界を復活させるべく、輸入自動車を削減することです。 今回、トランプ大統領はこれらの問題の多くを8月の発表まで延ばすと言いましたが、この問題で米国が譲歩するとは一切言っていません。自動車に関しては対米黒字を減らし、米国の自動車業界の生産雇用を圧迫しないように、需給調整することを念頭に置いています。基本は日本車メーカーに米国での現地生産化へのシフトを期待しますが、すぐにその成果が上がるわけではありません。 現地生産化で調整できない分は、「自動車関税」の脅しをちらつかせながら日本の対応を見るというもので、日本政府は現地生産の拡大にともなって、いずれは輸出をある程度減らせるとの説明はしているようです。それでも米国が期待するほどの輸出減にはならないので、暗黙のうちに日本の対米輸出の自主調整を期待している節が見られます。 昨年1年間の日本車の対米輸出は175万台ですが、米国からは一時100万台の削減要請があったと言われます。簡単に対応できる数字ではありません。これを受ければ、自動車業界はもちろん、日本経済全体に大きな打撃となり、政権をも揺るがしかねません。農業分野での要請も、日本の「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が限度」では納得せず、それ以上の関税引き下げ、市場開放が求められているといいます。 令和最初の国賓としての招待も、ゴルフ接待、大相撲観戦も、このトランプ「ディール」を崩すまでには至らず、日本の期待は空振りに終わった感があります。 ■威力増すトランプ砲 それどころか、トランプ砲の威力はますます強まり、中国だけでなく、日本にも及びそうな砲撃も少なくありません。なかでも2つの動きに注意が必要です。 1つは、中国の通信機器大手ファーウエイを排除する動きが強まり、その余波が米国企業や日本企業にも及ぶようになったことです。米国ハイテク株が売られ、日本の通信、半導体関連などにも影響が及んでいます。中国のハイテク化に対する警戒は、それが安全保障面で米国の脅威となるとの認識が強まって一段と攻勢が強まっています。 こうした警戒は中国のドローンにも向けられ、監視カメラ業界にも監視を強めるようになっています。そしてこれらと並行する形で、中国製品のほぼすべてに関税を課す準備をしています。米中戦争の激化が、日本も含め、世界経済への大きな重しになりつつあります。 もう1つは、米国商務省が5月23日に提示した「相殺関税」です。ウィルバー・ロス商務長官は、自国通貨を安く誘導することで不当な利益を上げ、米国の産業や国民に不利益を与える国からの輸入品に、これを相殺するための「相殺関税」をかけるルールを検討していると言います。 当初は中国をターゲットにしていると考えられていましたが、米国は「為替報告書」で、中国のほか、日本やドイツ、韓国などを「監視国」にリストアップしています。そしてトランプ大統領はかつて日本の円は長期的な均衡水準から20%ほど円安になっているとの認識を示しました。当時のドル円は120円前後でしたから、ドル円は当時で100円程度が適正水準と見ていた節があります。 またムニューシン米財務長官も、日米交渉には為替条項も盛り込みたいと言います。日本は近年、政府による為替介入はしていませんが、米国は日銀の異次元緩和で円を不当に安く誘導していると見ている模様で、それが日本の金融政策から自由度を奪い、ひいては円高に誘導されるとの懸念がもたれています。 日本政府が米国との「蜜月」を演出する一方で、トランプ砲は一段と威力を増して、中国や日本に砲撃準備をしているように見えます。 ■安倍総理の選挙にも手かせ足かせ トランプ大統領が示した「多くの問題は選挙後の8月に発表」という認識は、表向き安倍総理の選挙戦略に配慮した発言に見えます。しかし、農業や自動車を巡る厳しい通商交渉自体を伏せておきたかった安倍政権にとっては、8月までにこれを日米で協議することが白日の下にさらされてしまいました。 そればかりか、実はこれが安倍総理の選択肢を限定させる面があります。今通常国会の会期は6月26日までとなっています。その直後の28日、29日には安倍総理が初めて議長を務めるG20サミットが大阪で開かれます。ここで近年低調気味のG20を活性化させられるか、安倍総理のリーダーシップが問われる重要な会議となります。 したがって、安倍政権としては会期を延長してその間にG20で成果を挙げ、7月に衆議院を解散し、8月にダブル選挙というシナリオを密かに描いていたといいます。ところが、トランプ大統領から「選挙後の8月に結論を出す」と言われ、総理は慌てたはずです。日程を逆算すれば、政権に有利なダブル選挙に出るなら、6月の会期末に解散を打ち、7月に衆参ダブル選挙ということになります。 その場合、衆議院を解散し、世間が選挙モードのなかで大阪G20を開催することになり、安倍総理の選挙戦略には負担になります。さりとて、衆議院を解散せずに参議院選挙を単独で行えば、自民党内部の分析では野党の共闘で与党が議席を減らすリスクが高まる、との結果が出ています。 安倍総理としてはもう一度トランプ大統領に泣きついて、8月の発表を9月以降に先延ばししてもらうか、あえて7月に衆参ダブルに打って出るかの選択となりますが、トランプ大統領は少しでも早く日米通商協議をまとめ、結論を出したいとしているので、再度先延ばしを求めるのは極めて難しい状況にあります。 あとは7月に予定通り参院選を単独で行うか、G20会議と重なっても野党の共闘が整わない7月にダブル選挙に出るか、戦略は限られてきます。異例の接遇によって選挙までの「時間」を買ったはずでしたが、詰めがやや甘かったようです。あるいは、外交を政治利用する点では、トランプ大統領のほうが役者は一枚上だった、ということかもしれません。 斎藤満 一橋大学経済学部卒業(竹中平蔵元大臣と同じクラブで活動)。1975年4月 三和銀行入行。85年、三和総合研究所調査部主任研究員。90年、三和銀行資金為替部ニューヨーク駐在エコノミスト。2001年9月、WTCにて「9.11同時多発テロ」に遭遇。著書に『ドル落城〜ついに日本経済が目を覚ます』(2003年、講談社)、共訳著にジョセフ・サックス『レンブラントでダーツ遊びとは』(2001年、都留重人監訳、岩波書店)などがある。 |
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