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パーソナリティ荒川強啓氏 放送界の「政権すり寄り」危惧 注目の人 直撃インタビュー
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/252697
2019/05/07 日刊ゲンダイ パーソナリティーの荒川強啓氏(C)日刊ゲンダイ TBSラジオの人気番組「荒川強啓デイ・キャッチ!」を1995年から24年間にわたり、続けてきたのがこの人、荒川強啓さんだ。「聴く夕刊」として、平成のニュースを毎日、届けてきたのだが、その番組も3月、惜しまれつつ終わった。時代と番組を振り返ってもらおう。 ◇ ◇ ◇ ■時代を「平成」でひとくくりにする危険性 ――番組がスタートした95年といえば、2年前に宮沢政権が崩壊、バブルがはじけた直後でした。阪神・淡路大震災もありましたね。 日本で大きな戦争はなかったけれど、平成という時代は世界がものすごく混乱し、その混乱が今も続いていると思います。これからどういう方向に進んでいくのか、見通せない部分がありますね。 ――経済も一国主義が台頭しているし、政治でいえば、平成の最後に共謀罪、安保法の強行採決などがありました。 これからが一番大事になってくるんじゃないですかねえ。元号が変わるような大きなうねりって、よーく見ていないとガラッと変わってしまう怖さがあります。「平成はこういう時代でした」とくくってしまうのは実は危ないんじゃないかとも思いますね。元号が変わることで、体制まで変えてしまう、社会の方向、色まで変えてしまう。そういうことも可能ですから。ものすごく注意しなければいけない時期だと思う。その意味で、時代の変わり目を見届けておけなかったのは残念ですけどね。 ――リスナーも荒川さんの番組をもっと聴いていたかったという思いが強いです。というのも、放送業界って、とんがっている人がドンドンいなくなっているじゃないですか? 72歳の荒川さんはこの業界を長くご覧になってきた。昨今の息苦しさみたいなものを感じませんか? 感じますね、このままズルズル危ない方向に持っていかれちゃうんじゃないかって。 ――危ない方向とは言論の不自由? 何となく、政権にすり寄っていることに業界も気づいてほしいし、リスナーも「変だぞ」と思ってほしい。 ――ラジオはそういう意味では比較的自由であるように見えましたが。 そうでもないんですよ。私はともかく、コメンテーターの方々の発言とか、制作者は相当、気を使っていたんじゃないでしょうか。 ――「デイ・キャッチ!」のコメンテーター、青木理さんとか宮台真司さんとか過激ですもんね。 でも、「これはコメンテーターの方の発言ですし、生放送ですからハサミも入れられません」って言っちゃえばいいんですけどね。 ――なるほど。 放送ってのは「送りっ放し」って書いているんだから。 ■肩書もプライドもないからなんでも質問 ――でも、生放送だからのトラブルもあったのでは? 自民党の大物が僕の発言に怒って、帰っちゃったことがありましたね。 ――いいですね、そういうの。 「君、それを僕に聞きますか」って。 ――そういうところが魅力でした。 実は、馴染みの居酒屋のおばちゃんから、「あなたの番組のおかげで話題についていけるようになった。噛み砕いてくれるから分かりやすいのよ」と言われたことがあります。「これだ!」と思いましたね。僕は学者ではなく、研究者でもない。一庶民で、おばちゃんと居酒屋トークしている飲んべえのおっさんという感じです。だから、飲んべえのおっさんが理解できないことを知ったかぶりするとウソになる。専門家からしたら意識の低い質問でも、僕はできるんです。肩書もプライドもないので恥ずかしくない。 ――そもそも、「デイ・キャッチ!」はどういったコンセプトで始まったのでしょうか。 「聴く夕刊」というキャッチはあるんですけれど、放送していた午後3時から5時、6時というのは、今までの時代なら一日の終わりに差し掛かる時間帯。一方、主婦の方は夕飯の準備を始めるし、夜のお仕事をされている方は鏡の前でお化粧を始めたりする。そういう時間帯にコンパクトに一日の出来事を伝えていくというコンセプトですね。「聴く夕刊」は、あまり濃くなく、ザックリとした見出しみたいなものだけでいい。その日に何があったのかがすぐ分かるというのが狙いでした。 ――ニュースをランキング形式で紹介するコーナーも人気でしたね。 10本のニュースについて、街で3カ所、約100人に「どのニュースに関心がありますか」と聞くんです。あとはSNSで番組について投稿してもらう。それらを集めたもので順位をつける。皆さんが関心あるニュースについて、コメンテーターが一言入れる。アシスタントやスタッフ、何よりも強力なコメンテーターの支えがあったからこそ、ここまでやってこられたと思います。 ――テレビ局の報道番組は庶民目線じゃないというか、何か妙にお高くとまっているなと感じます。 「どうして出演者だけで分かり合っているの?」「もうちょっと砕いた報告してくれないの?」と思うことはありますね。 ――荒川さんは午前中に朝刊全紙に目を通すそうですが、新聞の読み方にコツはありますか? まずは見出しなどを読み比べるんです。海外ニュースでも、相手の方を見出しにするのか、日本の動きを見出しにするのか。この新聞は何をトップに伝えたいのかということから見ていく。さらに社説やコラム、天声人語などを読む。そのうえで、日刊ゲンダイはどこにメスを入れたんだろう、どこ突っ込んだんだろうと。これが楽しみで、「そうきましたか」とうなる時もありました。 新元号フィーバーに警鐘(C)共同通信社
――ありがとうございます。番組終了後の今はどうされているのでしょうか。 今は1紙だけ残して、全部解約しました。新聞を見なくなってどうなるんだろうということを、今は試しています。イライラしますかね? ――そうかもしれませんね。今の世の中の雰囲気は息苦しいものがありますから。なんで、このニュースにメディアはもっと突っ込まないのかって。 そうですね。実は番組が終わるに当たって、永田町あたりから圧力かかりましたか? という質問が、一部であったんですよ。逆におうかがいしたいのですが、そんな気配はありますか? ――詳細は把握していません。 そうですか、そんな声が聞こえてきていましてね。多分ないと思っているのですが。そこまで永田町を怒らせたかなあ、と思うんです。 ――そんな声が飛び交うくらい、番組に骨太の魅力があったのでしょう。 もったいないと思うことはあります。「平成の終わりとともに番組も終了」というニュアンスの記事もありましたが、ストンと腑に落ちない部分もある。もう少し続けてみたかったな、という思いもあるし、もうお役御免かなとも思います。 ――いやいや、もっと発言してください。とりわけ、東京五輪についての荒川さんの発言は過激な正論でした。 ずっと反対だと言い続けていたんですよ。招致当時、僕は東日本大震災の取材をしていた。何とかして災害から立ち直らなきゃいけないと取材をしている時に、東京五輪をやると聞き、腰が砕けそうになったんですよ。「被災地の人たちがどう思うか分かってますか?」と。復興資金や労働力、トラックと何から何まで全部、五輪準備に持っていかれちゃうわけですよ。 ――しかも「復興五輪」などと言ってますね。 おためごかしもいい加減にしなさい、ですよ。ほんとにそれを聞いた時は腹が立ちましたね。何を考えてるんだろうと。 ――そこまでしっかりと発言する方が、いなくなってしまいました。 元号が変わる、五輪をやる。お祭り騒ぎの裏で何が起きているのかということを注意して見ていかなければいけないと思います。若者の会話などを聞いていると、なんかこう、ひとつの方向を向いて流れている。そういうことにも危機感を覚えます。 (聞き手=小幡元太/日刊ゲンダイ) ▽あらかわ・きょうけい 1946年、北海道生まれ。東北学院大卒業後の69年、アナウンサーとして山形放送に入社。82年のフリー転身後、フジテレビ系「おはよう!ナイスデイ」の司会に抜擢。95年4月からTBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ!」のパーソナリティーを務めた、放送回数は全6250回にも上った。
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