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アベノミクスは「過去の失敗の集大成」、平成の終わりの“既知感”の正体
https://diamond.jp/articles/-/201098
2019.4.29 金子 勝:立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授 ダイヤモンド・オンライン
写真:首相官邸HPより
4月5日に発表された内閣府の「社会意識に関する世論調査」で、現在の生活に「満足している」という答えが7.4%、「やや満足している」が57.3%で、合計64.7%の人々が現在の生活に「満足」していると答えた。
とくに1980年代後半の「平成バブル」を全く知らない18〜29歳は71.6%と高い。まれに見る高水準である。
他方で、ネット調査(マクロミル「2019年 新成人に関する調査」)では、若い世代では、日本の未来を「暗い」と思うが63%を占めた。
未来に期待がもてないとすれば、「今が一番よい」という感性が社会を支配するのは自然なことかもしれない。
「今だけ、金だけ、自分だけ」の気分がまん延した平成の初めに戻ったかのようだ。
平成の“振り出し”に
一巡して戻った日本経済
確かに、株価はそこそこ高い。日本銀行が470兆円を超える国債を買って金融緩和を続け、25兆円弱のETF(指数連動型上場株式投信)を買い、年金基金などにも株を買わせているからだ。
日銀はREIT(不動産投資信託)も5000億円以上買い支えているので、不動産価格も大都市商業地を中心に上昇している。
おまけに、この超低金利と金融円滑化法(中小企業等が返済負担の軽減を求めた際に、貸し付け条件の変更に務めることを義務づけた法律)があれば、利払いをほとんどせずに借金をつないでいけるので、倒産件数は増えない。
だが、その間に、世界では情報通信、エネルギー、バイオ医薬など技術の大転換が起きており、日本の産業衰退がどんどん進んでいる。
平成の始まった80年代後半から30年以上たつと、バブル崩壊の痛みを忘れてしまったのか、再び「ゆでガエル」状況が生まれている。「平成」が終わるというのに、振り出しに戻ってしまったかのようだ。
不良債権の先送りに象徴
本質見ずに財政金融政策で糊塗
このデジャブにこそ、平成の「失われた30年」への無反省が象徴されている。何度でも同じ失敗を繰り返し、そして沈んできたのだ。
1990年代初めにバブルが崩壊して、宮沢喜一首相(当時)は、1992年8月末の経団連の軽井沢セミナーで、公的資金を投入してでも不良債権を早期に処理する必要性があると発言した。
ちょうど、米国でも整理信託公社(RTC)ができ、公的資金注入が始まっていた。しかし、経済界、官僚、政治家たちの反対にあって、公的資金注入はタブーとなった。
銀行経営者も監督当局も不良債権問題をごまかし続け、地価の回復に期待し、それが難しいとなると、小出しに公的資金を注入して、ずるずると処理する方式をとった。
本来なら不良債権の査定を厳格に実施し、銀行は十分な貸倒引当金を積んで、また貸し付け先の企業も再生のために事業再構築を行うべきだった。
あるいは、銀行を国有化し、不良債権を切り離して、残る部分を再民営化するなどの根本的な処理策をとるべきだったのである。
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実際、海外ではそうだった。
一見、両極端に見える、市場原理主義をとる米国も、高福祉高負担の北欧諸国も大胆な不良債権処理策をとった。
米国はRTCを設け、経営者を監獄に入れ、中小銀行の貯蓄銀行(S&L)や州法銀行から不良債権を買い取り、経営統合させて救済した。
北欧諸国は銀行を国有化し、不良債権を切り離して再民営化する方式をとった。
そして両国とも情報通信技術を基盤としたイノベーション研究開発投資に金を注ぎ込んだ。それによって両国ともV字回復を果たしたが、日本はそうならなかった。
監督官庁の責任も経営者責任も問われず、日銀は金融緩和を続け、巨額の財政赤字を出して景気対策を繰り返した。
その後、経済政策は振り子のように振れた。
閉塞状況を打破すると称して、規制緩和や「小さな政府」を軸とする「構造改革」路線がとられたが、当然のように行き詰まる。
すると、今度は景気対策としての「マクロ経済政策(拡張的な財政政策と金融緩和政策)」がとられた。
政策と政権はこの両者の間で行ったり来たりした。それは、まるで、「供給サイド」に立つか「需要サイド」に立つかという主流経済学の対立軸をそのまま再現しているかのようだった。
問題の本質を直視せず、抜本的な改革をしないまま、財政金融政策で需要をかさ上げし企業を支える政策が繰り返された。
「無責任体制」を変えられず
97年を境に経済は変わった
2011年の東日本大震災で福島第1原発事故が起きた時も、経営者も監督官庁も政治家も責任をとらず、原発という不良債権を抱えて東京電力や東芝が実質的にゾンビ企業化したまま生き残ることになった。
当面もたせればいいと、ひたすら惰性の政策をずるずると続けてきた結果、世界的に起きているエネルギー転換や、情報通信、バイオ医薬などの先端産業の競争で取り残され、貿易赤字が定着するようになった。
「ゆでガエル」状況から抜け出せないまま、ついに「我が亡き後に洪水よ来たれ」と言わんばかりのアベノミクスに行き着いてしまったのだ。
だが、平成の時代は1997年を境に多くの経済指標が、日本経済の構造変化と「限界」を示すようになった。
たとえば、名目GDPと国の借金(長期債務残高)の推移(図1)を見れば、国の借金はうなぎ上りのように増加しているのに、97年を頂点にして名目GDPは停滞したままである。
平成の「長期停滞」は膨大な財政赤字でようやく経済成長率を持たせているだけなのである。
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je12/h10_data01.html
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h28/h28_kaku_top.html
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/files_kakuhou.html
財政赤字(長期債務残高)については、
http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/basic_data/201704/index.html
http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/basic_data/201704/sy2904h.pdf
※画像クリック拡大
同じように、97年を頂点に、多少の山谷はあるものの、雇用や賃金は低下傾向を示している。
統計改ざん事件によってその信頼性が揺らいでいるが、毎月勤労統計調査によれば、名目賃金(現金給与総額)は1997年の37.2万円から2015年の31.4万円へと約16%も減少している。
実質賃金指数で見ても、1997年を100とすると、2015年には88.7まで落ちている。
世帯所得の中央値(その半分が相対的貧困率を決める貧困線となる)も1995年の550万円をピークに1997年以降急速に減少し、2015年には427万円まで落ちている。
主たる働き手である生産年齢人口(15〜64歳)も、1995年の8717万人をピークに減少し、2015年には7592万人と1100万人も減った。
その一方、低賃金で不安定な非正規雇用数は1995年には約1000万人だったが、97年以降、急速に増加して2016年には倍の2000万人を超えた。
「3本の矢」のもとで進む劣化
産業の衰退や賃金の減少
平成の終わりに、今なお「衰退」が続いているのは、アベノミクスは過去の失敗した政策の集大成にすぎないからである。
「3本の矢」の一つとされてきた「成長戦略」は、かけ声倒れで成果は皆無といっていい。
財政支出と「異次元の金融緩和」に偏重し、しかも財政金融政策はただ規模を大きくして一斉に実施しているだけである。
それは、肺炎にかかっているのに、風邪薬が効かないからと、一瓶飲んでしまえと言っているようなものだ。
当然のことながら、「マクロ政策依存症」のような経済の衰退は止まらない。以下のような症状がどんどん進行している。
1.産業の衰退がひどい
特に情報通信、バイオ医薬、エネルギー、先端部門で決定的な後れをとっている。電気自動車(EV)転換で残った自動車も危ない。
2.貿易収支が赤字化している
2016〜17年にわずかに黒字化したものの、米中貿易戦争の影響で再び赤字化し、事実上の日米FTA交渉次第では一層の赤字化が進むことが懸念される。
3.継続的に実質賃金も家計消費も低下している
特に所得の 継続的低下は教育の機会均等を奪い、格差の固定化を招いている。
4.少子高齢化と地域衰退が止まらない
基盤産業である農業の衰退も著しい。空き地・空き家率が上昇を続け、町や村の崩壊が進んでいる。
5.マイナス金利で銀行経営が困難に陥っている
特に地銀・信金の経営悪化がひどく、バブルが崩壊すれば、引き取り手のない中小銀行が破綻するという戦前型の金融危機を招きかねない。
6.日銀の中央銀行としての機能がまひしてきた
異常な金融緩和政策は出口を失っているが、もしバブル崩壊や対外ショックが発生した場合、日銀が債務超過に陥り、政策手段(政策金利誘導、量的金融緩和、預金準備率操作)を失ってしまう。
これらは、アベノミクスの「6つの大罪」である。
自壊が始まったアベノミクス
金融システム不安再燃のリスク
一体、こうした状況はいつまで持つのだろうか。
多くの人々はまだ気づいていないかもしれないが、実は、アベノミクス自体の自壊が始まっているといっていい。中核をなす異次元金融緩和はすでに破綻している。
まず第1に、「2年で2%の物価上昇」というデフレ脱却目標はすでに破綻している。当初は「2年」の短期間での達成するとしていたが、6年経っても達成できていない。
3月の消費者物価上昇率は、総合で0.5%、コア指数(生鮮食品を除く)で0.8%、コアコア指数(生鮮食品とエネルギーを除く)で0.4%にすぎない。
この上昇分も、トランプ政権によるイラン制裁やサウジアラビアの減産などによるエネルギー価格の上昇や、円安による輸入食品の上昇が大きく、金融緩和の効果ではない。
日銀はいまや、物価目標の達成時期を「展望レポート」から消してしまったのに、ただ延々と金融緩和政策を続けているだけである。日銀は金融正常化の「出口」を失い、一方で金融市場もゆがみは拡大するばかりだ。
第2に、何より量的金融緩和自体が破綻しつつある。
日銀はデフレ脱却のために、表向きは年80兆円の国債を買うとしている。しかし、実際の日銀の国債購入額は減少の一途をたどっている。日銀の国債積み増し額は、2017年度は49兆4232億円、2018年度は33兆188億円と落ち込んできている。
すでに国債残高の42%を日銀が保有する一方で、金融機関の保有割合は15%まで落ち込んでいる。つまり、銀行はほぼ売れる国債は売ってしまい、日銀は「弾不足」になっている。
もはや金融機関には、過去の利回りの高い国債を売って、当座預金(せいぜい0.1%の金利しかつかない)に換える動機が働かないからである。
国内運用先のない金融機関は、まだ金利がわずかにプラス圏にある超長期債を買うが、それによって超長期債の価格がまた上昇(つまり金利が下がり過ぎて)、将来、銀行が評価損を被るリスクを生じやすくするので、日銀は買い入れを縮小せざるをえないという「矛盾」に突き当たっている。
第3に、そもそもインフレターゲット論は論理としても破綻した。
インフレターゲット論は人々の物価上昇「期待」に働きかけるものだが、日銀が金融緩和を行っていることに、7〜8割に及ぶ人々は関心がない。
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したがって、そもそも人々の「期待」を変えることができると想定すること自体に無理があるのだ。
日銀が実施している「生活意識に関するアンケート調査」によると、「物価の安定目標」を実現するために、「日本銀行が積極的な金融緩和を行っている」ことを、「見聞きしたことがあるが、よく知らない」という回答が38.1%、「見聞きしたことがない」という回答が35.1%を占める。
「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」にいたっては、「見聞きしたことがあるが、よく知らない」が31.8%、「見聞きしたことがない」が50.4%と半数を占めている。
第4に、減税などで企業や富裕層が豊かになれば、その富が滴が下に落ちるように中小企業や普通の人たちにも回ってくるという「トリクルダウン」は起きていない。
企業の内部留保(法人事業統計の利益剰余金)が2012年の304兆円から2017年度の446兆円まで増えている一方で、継続的に労働分配率は下がり、実質賃金や実質家計支出も下がり続けている。
アベノミクスのもとで、賃金が下がり続けていることが、毎月勤労統計の改ざんにも影を落としていたと考えざるを得ない。
2015年の3月31日に、当時の首相秘書官が厚労省幹部を呼んで、賃金統計が「下振れ」する問題を問いただしたのは、ちょうど、日銀が「2年」で物価目標を達成すると宣言していた期限直前だった。
トリクルダウンが起きておらず、インフレターゲット論は破綻しているとの批判が強まっていた時だった。
第5に、超金融緩和で、銀行とりわけ地銀・信金の経営を困難に陥れていることだ。
前述したように、超低金利政策で金利負担が少なく、借り換えを続ければ、企業は倒産しないですむが、それは金融機関に負担を強いることになる。
4月17日に発表された日銀の金融システムリポートは、人口減少と低成長に伴う資金需要の先細りで、約6割の地方銀行が10年後の2028年度に最終赤字になるとの試算を示した。
同時に、不動産業向け貸し出しが1980年代後半のバブル期並みの過熱サインが出てきており、不動産業向け貸出比率が高い金融機関ほど「自己資本比率が低い傾向」もあり、市況の悪化局面では「貸し出しよりも大きく価値が毀損し得る」とした。
日銀は、自ら進めてきた政策が危うい結果を招きかねなくなっているのを認めたようなものだ。
不動産市場の過熱が反転すると、不動産融資にのめり込んでいる地銀・信金が危なくなる。大手は店舗の整理や人員整理で何とかなっても、引き取り手のない破綻する地銀・信金が出てくるリスクがある。
こうした事態に陥れば、地域経済の崩壊を促進するだろう。
技術などの大転換期に
「需要の問題」で対応した間違い
こうして金融システム不安の再燃するリスクが高まる一方で、財政赤字の拡大は止まらず、日銀の国債購入がなければ金利は急騰しかねない。とはいえ国債は「弾不足」――アベノミクスは自壊の様相を呈している。
もとはといえば、平成の時代に起きた社会構造や産業、技術の大転換期の問題を、財政や金融政策の「需要」の問題にすり替え続けてきたことが根本的に間違いなのである。
(立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授 金子 勝)
ダイアモンド・オンラインに「アベノミクスは『過去の失敗の集大成』 平成の終わりの“既知感”の正体 自壊するアベノミクス――衰退の本質を直視せよ」を書きました。アベノミクスは実は戦後自民党のレジームの行き詰まりを意味しています。これは終わりの始まりなのです。https://t.co/PuWp6Nt1wW
— 金子勝 (@masaru_kaneko) 2019年4月28日
小泉総理の痛みに耐えるフレーズに乗せられていた時代、新自由主義の竹中平蔵が、雇用制度を破壊した。終身雇用の破壊以前に正社員採用制度を破壊した。今、思うと成果主義を押し付けられてじっくりと人材育成、仕事の深化を怠ったことが平成の大失敗の原因。結局、労働者や国民が、ツケを払うハメに。
— 山上禎男(千葉のヤーミー)#ツワモノ (@oZde5eYWyV118Q2) 2019年4月28日
国に借金が無ければ、貧乏でも慎ましい国としてミレニアル世代世代も生きて行けますが、国の膨大な借金により、近い将来セーフティーネットは破綻し、社会不安と諦めに満ちた国が生まれることをどの程度の国民が理解しているのでしょう。 金子先生の危機感は皆に共有されるべきと思います。
— Nick Muto (@muto_nick) 2019年4月28日
「平成は良かった・・」が7割とは、国地方の借金がこの30年間で845兆円増えた、この事実(ファクト)一つでも良いとは言えないのに。この事実さえ認識できない日本人の劣化が、令和時代には顕在化する。
— luckchan (@7j1cal) 2019年4月28日
お祝いなんて浮かれている場合ではない。労働者、年金生活者は腹立てています。👊😡💢
— Palmerhuges パーマーヒューズ (@Palmerhuges1) 2019年4月29日
独裁者安倍晋三総統は平成破壊活動続ける独裁者安倍晋三ですよ。戦後独裁者党の執行部体制の失敗続きで閣僚や幹部のアヤマチを認めない独裁者党です。自滅する独裁者安倍晋三総統です。本質を立て直せば。平成の終わりの正体は独裁者安倍晋三です。
— つとむ (@higashi237340) 2019年4月28日
これ以上安倍総理が続けても好転は期待出来ない。もうマンネリだ。変わる事で変化が始まる。
— ngt0803 (@IwaoNAGATA) 2019年4月29日
アクセルとブレーキを同時に踏む「過去の失敗の集大成」は確かだが、需要を大事にした訳ではない。ただ大企業にカネを廻しただけだ。★アベノミクスは「過去の失敗の集大成」平成の終わりの“既知感”の正体(金子勝) | ダイヤモンド・オンライン https://t.co/vbP2NLZFyP
— 日本国黄帝 (@nihon_koutei) 2019年4月29日
アベノミクスは「過去の失敗の集大成」、平成の終わりの“既知感”の正体(金子 勝)https://t.co/kUhggjRNAu
— The daily olivenews (@olivenews) 2019年4月29日
世界では情報通信、エネルギー、バイオ医薬など技術の大転換が起きており、日本の産業衰退がどんどん進んでいる。 pic.twitter.com/rdkxOJQBCi
金子勝先生
— 佐々木和男 〜 失われゆく言葉の重み 〜 (@nabe10101948) 2019年4月29日
分析力は凄い❗https://t.co/lVFnoVm5Rb
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