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国民はファシストを望むのか 令和で民主主義は消滅の危機
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/252958
2019/04/28 日刊ゲンダイ 野党はだらしないが…(C)日刊ゲンダイ 平成が終わり、令和を迎える。果たしてどんな時代になるのか。せめて、マトモな政治に期待したいが、絶望的な気分になってくる。平成という時代をひと言で振り返れば、最後の最後になって、民主主義が徹底的に破壊され尽くされた時代ではなかったか。選挙は行われるが、形だけ。実際は1党独裁、安倍様ファシズムの時代ではないか。ファシズム研究の第一人者、慶大教授の片山杜秀氏は3月30日付の東京新聞、<考える広場 我が内なるファシズム>でこう書いていたほどだ。 〈現実主義の自民党と理想主義の社会党が対立した五五年体制が崩壊し、現実主義の政党ばかりになった。似たような価値観の政党ばかり。その中では、経験豊富な自民党が選ばれやすい〉 〈「政治主導」の名の下に内閣人事局が設置され、内閣に官僚は抵抗できなくなった。今の内閣は各官庁の情報を吸い上げて力が肥大化し、戦前・戦中にはなかった強力なファシズム体制を実現させたと思います〉 似たような政党ばかりだから、「それならば、一日の長で自民党を選ぼう」となる。何度やっても安倍自民党が勝つものだから、人事権を押さえられている官僚も逆らえず、言いなりになる。内閣に不利な情報は隠蔽、改ざんされ、忖度が横行し、ますます1強政権がのさばる。片山氏が指摘する通り、安倍政権はすでに「強力なファシズム体制を実現させた」ということだ。しかも、それが「政党に差異がない以上、経験豊富な自民党」という選挙民の意思によるものなのだから、絶望的になってくる。元外務省国際情報局長の孫崎享氏も嘆くひとりだ。 「例えば、米国の民主党は世論調査をもとに国民目線に立った政策を訴え、共和党のトランプ政権を本気で倒そうとしている。しかし、日本の野党は国民が何を望み、どんな政策を訴えれば支持が得られるのかを勉強していない。ハッキリ言って努力不足なのです」 日本では、米国のサンダースのような候補者がてんで出てこないのだから、どうしようもない。選挙民は選択肢のない絶望から、安倍ファシズムを選んでしまう。令和になってそれが変わるのか。ますます、こうした傾向が強まるのではないか。令和で民主主義は「消滅危機」と言ってもいいのである。 ■現代の民主主義の死は「選挙」から始まる ともにハーバード大教授のスティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット両氏の共著「民主主義の死に方〜二極化する政治が招く独裁への道〜」(邦訳・新潮社)によると、かつての民主主義は革命やクーデターによって死んだが、現代の民主主義の死は「選挙」から始まる、という。 「選挙」というプロセスを経た強権的なリーダーが、異論を唱える政敵やメディアを公然と批判して二極化を促す。そして、司法機関などを支配して対立相手を恣意的に罰し、選挙制度や憲法を変えて独裁体制を確立させるというのだ。この指摘には背中が寒くなるではないか。 少数野党の意見に全く耳を貸さず、アリバイ的に審議時間だけを重ねて強行採決を繰り返す「アベ政治」。こんな政治が常態化したのも、選挙を経て衆院で3分の2超という圧倒的多数の議席を確保したからだ。安倍首相が特定メディアを名指しで批判している姿も同じ。そうやってケンカを仕掛け、二極化を促す。そういえば、イタリアのムソリーニやドイツのヒトラーも選挙の大勝によって、「ファシズム」を完成させた。「ファシズム」とは、ある日突然、ファシストが登場して、国民の権利を制限するのではなく、選挙民が強大な権力を与えた結果、暴走するものなのである。 当時のイタリアもドイツも国民の間には経済的な不満が渦巻いていた。独裁者はそれを利用し、巧みなプロパガンダで民衆を洗脳した。当時と今はそっくりだし、問題は、この傾向が日本だけではないことだ。 ヘイト拡大!(C)日刊ゲンダイ
9日に投開票されたイスラエル総選挙では、ネタニヤフ首相率いる右派政党リクードが勝利。昨年は、ハンガリーで反移民政策を掲げたオルバン首相率いる右派フィデス・ハンガリー市民連盟が圧勝した。 ロシアのプーチン大統領やトルコのエルドアン大統領ら、ファシズム化が懸念される政権を挙げればキリがない。 これらの政権に共通しているのが、「危機」や「脅威」を訴えて自分の政権運営を正当化し、反対勢力を封じ込めて民主主義を「破壊」するやり方だ。例えば、エルドアン大統領は一部の国軍クーデター未遂を理由に世論不安を煽り、多数の兵士や公務員、記者を拘束した揚げ句、大統領に権限を集中させる憲法改正を実施。プーチン大統領も、チェチェン共和国の「独立派によるテロ」を口実に「垂直の権力」と呼ばれる体制を構築した。 人権監視団体「フリーダムハウス」が2月に公表した「世界の自由度調査」によると、世界の自由度は13年連続で低下。今や世界中で「民主主義」は後退する一方だ。 ■右派政治家は大衆の不満を煽って支持を集める 埼玉学園大学経済学部教授の相沢幸悦氏は「巨大な資本主義による経済のグローバル化が世界中で富裕層と貧困層の格差拡大を招き、右傾化の動きを加速させた」と言い、こう続けた。 「先進国、途上国に限らず、今やどの国でも人々の不満が高まっており、その怒りの矛先が外国人や移民に向けられつつあります。米国第一主義を掲げる米トランプ大統領が象徴的ですが、EU加盟国で起きている移民排斥の運動もその流れでしょう。日本を含む右派思想と呼ばれる政治家はその大衆の不満を煽り、支持を集めているのです。世界経済の減速が叫ばれる中、こうした動きはさらに強まるでしょう」 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)は「選挙という民主的な手続きを経て権力を集中させた上で、やりたい放題を正当化するのが現代の『ファシズム』。選挙制度、主権者教育など、あらゆることを見直さないといけない」と言った。 「令和」は戦前に逆戻りなのだろうか。
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