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政権寄りの専務理事が返り咲いたNHKの政治報道は疑うべし 日本外交と政治の正体
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/252162
2019/04/19 日刊ゲンダイ NHK(C)日刊ゲンダイ 冷戦時代の共産圏のチェコで、こんなジョークがあった。 〈新聞にサッカーの試合の得点数が出たら、100%信じなさい。天気予報が出たら50%信じなさい。政治報道で信じていいのは0%〉 私は安倍首相の父親である故・晋太郎氏が外相だった時、外務省の調査企画部分析課長で、国際情勢を解説する日報を作り、時に世界のジョークを紹介した。当時の安倍外相はジョークを大変好まれたと聞いている。 さて、日本のマスコミを評価する時、このジョークの視点が重要だと思う。例えば、NHKだ。高校野球中継は公平中立で、天気予報の精度も高いが、政治報道は違う。 NHKの籾井前会長が「政府が右と言う物を左と言うわけにはいかない」と語ったのは記憶に新しい。政治の場面で対立軸があれば、政府の立場で報じると明言したのである。4月8日付の毎日新聞は〈NHK、板野裕爾氏が専務理事に異例の返り咲き〉と題した記事を掲載した。内容はざっと次の通りだ。 〈板野氏は、政権との距離が問題視される言動を繰り返した籾井勝人前会長時代に専務理事を務め、『会長の一番の理解者』と呼ばれた人物。(略)16年3月に「クローズアップ現代」の国谷裕子キャスターが番組を降板。複数のNHK関係者によると、番組全般を統括する放送総局長だった板野氏が、番組に対する政権内の不満を背景に降板を主導したとされる。また、15年の安全保障関連法案を巡る国会審議中、個別の番組で政治的公平性を保つのが難しいとの理由で、安保関連の複数の番組の放送を見送るよう指示したとも言われる〉 NHKの異常さは板野氏の返り咲きだけではない。NHK大阪放送局の司法キャップだった相澤冬樹氏は森友問題でスクープを連発しながらも左遷され、退職を余儀なくされた。相澤氏は当時を振り返り、著書やインタビューでこう語っている。 〈(近畿)財務局が学園側にいくらまでなら支払えるかを尋ね、『上限としておよそ1億6000万円という金額を提示していた』と言うのを報道した時、小池英夫報道局長が『私は聞いていない』と怒りの電話を大阪の報道部長にかけてきて、報道部長に『あなたの将来はないものと思え』と言われた。そして、財務省が直接、森友学園側に『トラック何千台も搬出したことにしてほしい』という『口裏合わせ』を行ったという特ダネを突き止め、これをクローズアップ現代で報道する予定であったが中止となった〉 NHKのスポーツ報道は称賛に値するだろう。しかし、政治報道は政府側に偏った報道をしている。板野氏の復権で一段の悪化が予測されることを国民は十分認識するべきだ。 孫崎享 外交評論家 1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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