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軍人が天皇を巧みに利用したせいで米国の思うつぼにはまる 保阪正康 日本史縦横無尽
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/251776
2019/04/13 日刊ゲンダイ 蒋介石(C)共同通信社 戦争終結に関する腹案は冒頭で「方針」と掲げ2項を上げている。その中に「蒋政権の屈服を促進し独伊と提携して先つ英の屈服を図り米の継戦意思を喪失せしむるに勉む」との一節がある。具体的には日独伊で英を屈服させる一方で、米の戦意を喪失せしむる。その上で日本が蒋介石政府を屈服させるために、独自に何をなすかが書かれていた。蒋介石政府を屈服させる方法として「在支租界の把握」「南洋華僑の利導」などが謳われている。これは現実には考えられない抽象的な内容であった。 腹案を作成した高級課員の石井と藤井は、いろいろな内容を並べておけば大本営政府連絡会議や御前会議が細目を検討し、より具体的に細目が決まるだろうと考えていた。2人のような下僚は東條英機や杉山元ら最高指導部の思惑や情報を知らない。命令に従って思いつくままに「勝利」の姿を夢想して見せたのであった。 ところが昭和16年11月15日の大本営政府連絡会議で、石井らが作った夢想気味の案は何の討議もされず、あっさりと原案のまま決まった。国策になったのである。驚いたのは起案者の2人だ。石井は私に「びっくりしましたよ。我々が幾分楽観的にまとめた案が通ったのですから」とつぶやいた(昭和50年代の初めである)。 これだけのことを含んで、もう一度開戦に至る道筋を検証してみよう。軍事指導者は戦争への道を歩むのに必死で、戦をどのように収めるかを真剣に考えていなかった。外交交渉では中国からの撤兵に反対で、アメリカにあれこれ言いたてたが、交渉を前向きに進める気はない。日本は石油がないから戦争という手段に訴えなければならないと言いつつ、裏では大手商社が密かに進めている石油輸入策を嗅ぎつけ、将校がその社に乗り込んで「国策の妨害をするな」と怒鳴りつけている。何が何でも戦争するぞというわけだ。むろん、軍事指導部のこうした動きは天皇には一切知らされていない。 終戦に関する腹案とて、この段階では天皇に知らされていない。自分たちに都合の良い事実を意図的に知らせるだけだから、軍人たちは巧みに天皇を利用したということになる。こうして11月26日にアメリカ側から、ハルノートを突きつけられ、日本の軍部は待ってましたとばかりに戦争に踏みきるのである。今にして思えば、ヨーロッパ戦線に参戦したいアメリカの思うつぼにはまってしまったのである。 (つづく) 保阪正康 作家 1939年、北海道生まれ。同志社大卒。編集者を経て「死なう団事件」でデビュー。「昭和天皇」など著書多数。2004年、一連の昭和史研究で菊池寛賞。
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