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桜田クビは目くらまし? 安倍政権が抱える“すさまじい闇”
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/251763
2019/04/12 日刊ゲンダイ 文字起こし バイバイ(C)日刊ゲンダイ 「復興以上に大事」と暴言を吐いた桜田義孝五輪相(69)が更迭され、大新聞テレビは朝から晩まで大騒ぎだ。競泳の池江璃花子選手が白血病を公表した時「がっかり」と口にしたことなど、過去の失言も大々的に取りあげている。 桜田が更迭されたのは統一地方選や参院選への悪影響を回避するためだ、などと解説されているが、無能大臣をクビにするのは当たり前のこと。いままでかばいつづけていた方がどうかしていたのだ。 意外かも知れないが、いまごろ安倍首相はニンマリしているのではないか。ニュースが「桜田更迭」一色になり、政権を揺るがしかねなかった「忖度発言」が消し飛んだからだ。安倍周辺は「忖度発言」が広がることに強い危機感を持っていたという。実際、「忖度発言」は致命傷を与えておかしくなかった。 「忖度発言」が飛び出したのは、1日に開かれた福岡県知事選の決起集会。国交副大臣だった塚田一郎参院議員(55)が、安倍と麻生副総理の意向を「忖度」し、それぞれの地元である山口県と福岡県を結ぶ「下関北九州道路」に予算をつけたと手柄話として口にした。 安倍周辺は塚田の「作り話」だったことにして収めようとしているが、なにがあったのか真相が明らかになりはじめている。 コトの発端は、昨年の10月25日だった。「下関北九州道路」について、首相官邸を訪ねた自民党の吉田博美参院幹事長と、大家敏志参院議員に対し、安倍が「早期建設に向けた活動をしっかりと取り組むように」と命じたのだ。大家が当時、フェイスブックに書き込んでいた。 首相の命を受けた大家は同12月20日、吉田と一緒に国交副大臣室に行き、塚田と面会。その時の様子を、塚田は「私、すごく物分かりがいいんです。すぐ忖度します。新年度の予算で、国で直轄の調査計画に引き上げました」と正直に口にしたのだろう。 「なぜ、無駄な公共事業だと批判され、凍結された『下関北九州道路』に予算がついたのか謎でした。なにしろ、必要性が低いのに総事業費が2000億〜2700億円という巨額プロジェクトですからね。驚いたのは、忖度だけではなく、総理自ら地元への利益誘導を指示していた疑いがあることです。安倍政治の本質を垣間見た気がした。もちろん、忖度もあったでしょう。総理が表立って動くわけにはいかないから、周囲が忖度して動いたということはある。でも、単なる忖度とも言えないと思う。この問題が大きくなることを、安倍首相は嫌がっていたはずです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学) これまで桜田を擁護してきた安倍が、今回あっという間にクビを切ったのは、大新聞テレビの関心を「忖度発言」から「桜田更迭」にそらすためだったのではないか。 「失言」の桜田前五輪相(左)と「忖度発言」の塚田参院議員(C)日刊ゲンダイ
安倍政権で「忖度」が問題になるのは、もうこれで3度目だ。 森友事件では、昭恵夫人が名誉校長に就いていいたことに「忖度」し、国有地が8億円もダンピングされて森友学園に売却されていた。 加計疑惑では、総理の“腹心の友”が理事長を務めていることに「忖度」して常識では認められない獣医学部の新設を認めている。これから毎年毎年、補助金などの形で加計学園に税金が投入されることになる。 これはどう考えても異常だ。毎回、安倍の意向を「忖度」して行政が歪められ、安倍周辺が巨額の利益を手に入れるというパターンである。ここまで同じ構図が、二度も三度も偶然つづくだろうか。もはや、安倍政権では、日常的に「忖度」が行われ、安倍周辺に利益が転がり込む構図が出来上がっているのではないか。 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。 「モリカケ疑惑だけでなく、経済統計の偽装も、安倍首相に忖度して行われたと指摘されています。いまこの国は、なにからなにまで安倍首相の意向を忖度して動いている。ここまで“忖度政治”が蔓延しているのは、安倍首相が忖度を望んでいるからでしょう。もし、トップが忖度を毛嫌いしていたら、下は絶対に忖度などしない。古今東西、独裁者ほど“忖度政治”を欲するものです。権力者にとって都合がいいからです。権力者の利益のために不正が行われても、トップは『私は関与していない』と、責任を取らないで済みますからね。下へ下へと責任が押しつけられ、末端だけが詰め腹を切らされる。森友事件でも、公文書の改ざんを強要された職員が自殺に追い込まれた。国家が私物化され、闇のなかでモノが決まっている状況です」 これまで安倍に「忖度」した結果、はたしてどれほど税金がムダに使われたことか。
ワイドショーを筆頭に、これでもかと「桜田更迭」を報じているが、大新聞テレビは「桜田更迭」でバカ騒ぎしている場合じゃないはずだ。もちろん、復興五輪を掲げながら「復興以上に大事」とは、とんでもない発言だが、しょせんはバカな男がバカな発言をしたに過ぎない。 なにより、ほかに報じるべき問題は、いくらでもあるはずである。どうして「忖度問題」を追及しないのか。「桜田問題」は個人の資質の問題が大きいが、「忖度問題」は国家を腐らせる大問題のはずである。 NHKの専務理事に、安倍官邸に近い人物が返り咲いた異例の人事だって、黙認すべき話じゃないだろう。 なのに、安倍の「目くらまし」にマンマとはまっているのだから、どうしようもない。いまごろ、安倍は「やっぱりメディアはバカだわ」「だますのはカンタン」と高笑いしているのではないか。 「日本の大手メディアは毎回、同じパターンです。水に落ちた犬を叩いては、政権を批判したような気分になっている。しかし、桜田義孝にしろ、塚田一郎にしろ、しょせんはトカゲの尻尾ですよ。トカゲは生き延びるために、尻尾を切って、天敵の目をそらす。大手メディアのやっていることは、胴体である安倍政権を見逃して、必死になって尻尾を叩いているようなものです。どうして、安倍政権の目くらまし作戦に気づかないのか。もし、桜田大臣を批判するなら、『本当に安倍政権は被災者のための政治をしているのか』『東京オリンピックは必要なのか』という本質的な批判をすべきでしょう。ところが、桜田大臣の特異なキャラクターを取り上げて血祭りにしているだけです。おそらく、キャラクターの面白い桜田大臣を叩けば、視聴率が稼げる、読者が喜ぶという感覚なのでしょう。レベルが低すぎます」(政治評論家・本澤二郎氏) 「忖度」は、安倍内閣の「本質」を表すものだ。「忖度政治」によって、内閣全体にとてつもない「闇」が広がっている。 ところが、大手メディアは安倍内閣の本質に切り込もうともせず、チンピラ大臣の更迭に大騒ぎしているのだから度し難い。大手メディアは自分たちの役割を自覚しているのか。これでは「闇」は大きくなるばかりだ。
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