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増税でアベノミクスは「なかったこと」になる 来春の消費税増税はタイミングが最悪だ
高橋 洋一 : 政策工房会長/嘉悦大学教授 2019年04月02日
(写真:Piroschka Van De Wouw/ロイター)
日本の昭和末期から平成に至る政治史を振り返ったとき、消費税の導入や消費税の税率引き上げにまつわる動きは「呪われた歴史」といってもいいほど政権を潰し、苦境に追い込んできた。さらにはその都度、景気回復の兆しを迎える日本経済をどん底に突き落とすなど、悲劇的な状況を数々もたらす結果となった。嘉悦大学教授の高橋洋一氏が、『「消費増税」は嘘ばかり』から例を挙げて明らかにする。
中曽根内閣の「嘘」
本来、消費税というのは優れた税制です。脱税がしにくく、徴税コストが安く、安定財源となる税制です。その優れた税制を正しく運営すべきでした。
しかし、その導入において、国民や野党の反対をかわすためだけにあまりにも誤ったロジックをふりかざし、嘘ばかり重ね、しかもインボイス制度(適格請求書等保存方式)がない不完全な形で導入してしまいました。そして以後、税理論や社会保障理論を歪めてまで、ひたすら消費税の増税こそが正義であるかのように志向してきた歴史があります。
このような思惑で消費税の制度が歪めば歪むほど、無理が生じて、呪いにかかったかのように政権が潰され、日本経済にも悪影響を与えてきました。現在の消費増税議論がいかに歪んだものであるかを知るためにも、日本における消費税の歴史を振り返ってみたいと思います。
たとえば、中曽根康弘首相は1986年7月に大方の意表を突くかたちで解散し(死んだふり解散)、衆参同日選挙に打って出ます。この折には、「国民や自民党員が反対する大型間接税はやりません」「この顔が嘘をつく顔に見えますか」と発言をし、衆院で300議席以上を獲得する大勝利を収めていました。しかし、同年12月に政府税制調査会と自民党税制調査会が「売上税」を提案し、中曽根内閣は翌1987年2月に「売上税法案」を国会に提出したのです。
売上税はもちろん「大型間接税」ですから、「嘘つき」という批判が満ち満ちることになりました。結局、1987年の地方選挙で敗北をし、売上税は撤回に追い込まれました。大平内閣の挫折と、中曽根内閣の「嘘つき」で、消費税には決定的に悪いイメージが付くことになってしまいました。
また1993年6月、野党が当時の宮沢喜一内閣の不信任案を出し、小沢一郎氏たちが造反して野党に賛成した結果、内閣不信任案は成立し、衆院選が行われることになります。
ここで自民党は衆院での過半数を失い、逆に自民党を飛び出して新生党を結党した小沢氏たちは「非自民」勢力を糾合。かくして、自民党が下野し、八党派連立(日本新党、日本社会党、新生党、公明党、民社党、新党さきがけ、社会民主連合、民主改革連合)の細川護熙内閣が成立しました。
大蔵省と小沢氏に「抱き込まれた」細川首相
その細川首相が1994年2月3日未明に突然、記者会見を開いて「国民福祉税」構想を打ち出しました。税率3%の消費税を廃止して税率7%の福祉目的税にする、というものです。
細川内閣は、赤字国債を発行しないことを公約の一つにしていました。しかも当時、アメリカが日本の内需拡大を促すために、日本の所得減税を求めていました。赤字国債を発行せず、所得減税も行うとなれば、消費税を増税するしかない。しかし消費増税は、消費税反対を訴えて支持層を広げてきた社会党から受け容れられないことは目に見えています。
ならば、いっそのこと「消費税」を廃止してしまい、「新税」の衣をまとわせようと考えたのでしょう。袋小路に陥った状況を活かそうと考えた大蔵省と小沢氏が、よく事情をわかっていない細川首相を抱き込み、一気に税制改革も進めてしまおうとしたのではないかと思います。
ところが、これが見事に失敗します。政治家が目論む「新税」などすぐに見透かされるのであって、大蔵省とすれば、細川首相をうまく取り込んだつもりだったのかもしれませんが、連立政権内でも話し合われておらず、根回しがまったく不十分だったこともあって社会党などは猛反発。たちまち翌4日の連立与党代表者会議で撤回されるに至ります。政権の求心力は急速に失われて、細川内閣は同年4月25日に総辞職しました。
そして時代は下り、2012年12月の総選挙で、単独過半数を大きく超える294議席を獲得して圧勝した自民党が政権に返り咲き、第二次安倍晋三内閣が誕生します。
それに先立つ2012年9月の自民党総裁選の際、安倍首相は消費税を上げる前にデフレ解消をする、といいました。安倍首相は消費税の増税には消極的でしたが、法律になったものを無視することはできず、「法律どおり」2014年4月、消費税率が5%から8%に引き上げられました。
せっかくアベノミクスによってデフレ対策が打たれ、2014年4月時点ではインフレ目標達成にかなり近いところまで行っていたのが、消費税率を上げたことで景気は逆戻り。離陸し始めた状態で安定飛行に入っていなかった景気は、消費税の増税によって急失速してしまいました。
ようやく「賃金上昇」が始まろうとしていたが
こうした状況を受けて、2015年10月の増税予定は一年半先送りされ、2017年4月の増税予定がさらに2年半先送りに。安倍首相が財務省の意向を退け、かろうじて踏みとどまったかたちでした。
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過去3回の消費増税のうち、3%の税率で導入した1回目(1989年)は、バブル期で景気がよい状況でした。しかも物品税の減税と同時に行なったので、タイミングとしては悪くなかった。しかし、税率が3%から5%に引き上げられた2回目(1997年)、5%から8%に引き上げられた3回目(2014年)の消費増税は最悪です。いずれもデフレのときに行なったため、景気を大きく冷え込ませる結果となりました。
現在、デフレは解消されつつありますが、脱却には至っていません。企業で人手不足の状況が生まれ、雇用回復に次いで当初の狙いである「賃金上昇」がようやく始まる、と思ったところで、政府は事実上の「移民」緩和政策を決めてしまった。
外国人労働者の流入が日本の賃金を押し下げていることは、筆者の実証分析でも立証されています。あまりにもタイミングが悪く、さらに2019年10月に消費増税を実行してしまえば、2012年以降、7年に及ぶアベノミクスの努力はすべて水の泡でしょう。
https://toyokeizai.net/articles/-/273984
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