http://www.asyura2.com/19/senkyo258/msg/732.html
Tweet |
ノルウェーの大臣が説く「補助金ゼロ漁業」
武田 健太郎
日経ビジネス記者
2019年3月22日
4 100%
全2136文字
ネースビーク漁業大臣に聞く
ノルウェー産のサーモンやサバは日本の回転ずしに今や欠かせない食材。北欧の漁業大国ノルウェーは、大規模化とテクノロジー導入で「稼げる漁業」を追求する。かたや漁獲量の減少や担い手の高齢化にあえぐ日本は、改革の足取りもおぼつかない。ノルウェーのハーラル・ネースビーク大臣の来日にあわせ、「目指すべき強い漁業」へのヒントなどを聞いた。
3月中旬に来日したハーラル・トム・ネースビーク漁業大臣。日本の政府関係者と捕鯨問題やEPAなどについて協議した
日本市場はどのような位置づけですか?
ノルウェーのハーラル・トム・ネースビーク漁業大臣(以下、ネースビーク氏):日本は極めて重要な国で、アジアで水産物の最大の輸出先です。経済連携協定(EPA)締結に向けた交渉を進めることで、より多くの恩恵を受ける事ができると考えています。サバやサーモンなどは身体や脳の働きに良い影響を与えることをアピールしたいし、品質も、我が家のリビングから工場の様子を毎日見ており自信をもって保証できます。
日本は国際捕鯨委員会(IWC)から昨年脱退しました。ノルウェーと協力は深められますか?
ネースビーク氏:今回、日本の政府関係者と捕鯨に関しても情報交換しますが、「持続可能な捕鯨」を目指している点は両国とも同じで、同じゴールを持つという点で我々の見解は一致しています。
日本とノルウェーは漁業国として多くの共通点があります。例えば、漁業の担い手の高齢化はともに大きな問題です。ノルウェーでも、若者はかつてのように漁業に従事したいと考えなくなっています。日本の課題へのアプローチを学び、ノルウェーに持ち帰りたいと思います。
日本の寿司は「芸術品」
日本の食文化に触れた感想は。
ネースビーク氏:東京の寿司店に行きました。感激したことは、日本の寿司は、料理であると共に芸術作品でもあるということです。職人たちが我々の頭では想像できないような創作をする。どのように準備して調理すれば、作品を生み出せるのか。学ぶところは多かったです。
ショッピングモールにも行きました。水産品の品ぞろえが極めて豊富だったほか、寿司や刺身などの陳列のしかたについても消費者の目を惹く工夫がなされていました。正直、ノルウェーではただ商品を並べているだけ。日本は魚の需要を喚起するためのノウハウを多く持っていて、学ぶ点は多いと感じました。
次ページ補助金ゼロは品質向上にもつながる
ノルウェーは、養殖サーモンの生産量(現在年間約130万トン)を2050年までに500万トンに引き上げる計画ですね。
ネースビーク氏:世界の人口が増え、食糧需要は急激に拡大しています。穀物生産や畜産の場となる陸地は限られていますが、漁業、特に養殖の重要性は増え続けています。世界には、ノルウェー産のサーモンの美しい色と香り、味に多くのファンがいます。需要が増え、価格は上昇している現状ですので、可能な限り、サーモンの養殖生産をしようと努力しているところです。
ただ、我々が最も重視するのは「持続可能性」です。生産量を重視するあまり、生態系を崩したり、海洋環境が悪化したりする事態は最も避けるべきだと考えています。生活の糧を得ている海を守ることが最優先です。
今回の来日中、千葉県銚子市の水産工場を訪れノルウェー産サバなどが貯蔵された冷凍庫などを視察した
補助金ゼロは品質向上にもつながる
次世代の養殖技術をはじめ、漁業には国としてどのような支援をしているのでしょうか。
ネースビーク氏:伝統的な養殖手法が当面、重要であり続けます。ノルウェーでは沿岸やフィヨルドの周辺でサーモンを主に養殖していますが、水質や温度管理、病気対策などで非常に厳しい規制を儲けています。成育環境をこれまでと大きく変える事は容易ではありません。
一方、政府としても生産効率を上げるため技術革新は欠かせません。どの水域で、どのような養殖法が可能かという研究も必要です。しかしながら政府としては、事業者に補助金は出していません。企業が自ら、研究開発などを持続可能な形で進めることが大切です。販売戦略やマーケティングに関しても補助金は出しません。
企業が成長するには、市場が求めているのは何かを常に考えることが不可欠です。消費者が何を食べたいか。これは政府が決めることではありません。実は、補助金がないことは品質向上にも寄与します。30年前にはノルウェー政府は補助金を出していましたが、今ではサーモンと同じように、サバやニシン、タラなどの魚種でも補助金を出さない方針に変えています。
サーモンの生食を日本に提案したのはノルウェーです。今後、新たな提案の準備はありますか。
ネースビーク氏:日本の市場は極めて成熟しています。消費者が何を食べたいかは日本の市場自体が十分知っているのではないでしょうか。我々は最高の食材を提供するので、日本の皆さんには最高の料理を作ってもらいたいです。
海洋管理協議会(MSC)がノルウェー近海などで漁獲されるサバの認証を一時停止しました。
ネースビーク氏:MSCが認証停止したのは、ノルウェーだけでなく、北東大西洋で漁獲されたサバです。確かに、このエリアのサバの資源量に関しては、我々が当初想定するより多くはありませんでした。ただ、ノルウェーのサバがそれほど悪い状況でないことは理解してもらえるはずです。国際海洋探査委員会(ICES)が行う資源評価の再検討結果を待ちたいと思います。さほど遠くない時期に認証を再取得できると考えています。
コメント4件
もっと見る
けーしー
日本の漁業者は持続可能な漁業が自分のために必要とあまり考えていないように見える。うなぎは何年も前から資源枯渇の危機が言われているが、未だに不漁、不漁と騒ぐだけだ。明らかに不漁ではなく、絶滅だろうに認めようともしないのは何故なのか疑問に思う。サンマもイカも獲れないとか、いや豊漁だとか、漁獲量ばかりに目が行っている。ニシンのように資源でなくなってしまう日も近いのではないかと不安を覚える。一部ホタテの様に計画的に育成を図ってうまくいっているところもあると聞く。海外の養殖産地に習い日本でも漁業が産業として高度化する事を願ってやまない。
2019/03/22 09:46:241返信いいね!
Rhizomorph
研究者
持続可能な漁業に取り組まれている三重大の勝川准教授のご意見では、日本での乱獲の解消には個別漁獲規制を導入すべきだという。将来のため今日の収入を捨てることは、一人だけでは出来ない。ノルウェーから学ぶべきは漁獲規制であり、補助金ゼロのような表面的なことや、ましてや養殖などではない。
養殖で問題は解決しない。日本には養殖に適した水面がノルウェーほど多くない。例えば近畿大学の開発したマグロの養殖技術に適した利用可能な海面はもうほとんど残ってないと聞いた(近大の先生に)。それに養殖に用いる餌はイワシなどの天然魚だ。有限の資源であり、野生生物としての動態は必ずしも明らかになっていない。持続可能性の問題を食用魚種から餌魚種にスライドさせただけだ。
昆虫を餌にする研究も行われているが、陸上の作物を育てるには化石燃料で固定した窒素と鉱山で採掘したリンや農業資材・農薬などが必要だ。食品残渣での昆虫飼育は一定の解決策となるだろう。
それにしても、日本の水産庁の異常な弱腰は不可解でならない。漁業者に対しても、市場に対しても。例えばIUCN/環境省がニホンウナギをレッドリスト入り(絶滅危惧IB類 (EN))させても動こうとしない。サンマの漁獲が減ったのに対し通年での操業を許す。わからない。
2019/03/22 11:40:465返信いいね!
natureizm
農林水産省が所管官庁ですが、稲作に導入した飼料米のような所得補償的な補助を10年くらい実施して漁業の構造改革をしたらどうでしょうか?急に収入が減ったら生活が成り立たないので、自分たちでの改革などできないと思います。事業者たちが改革ができないときこそ国ができることがあるのではないでしょうか。
2019/03/22 13:18:53返信いいね!
ゆいたんパパ
兼業主夫
養殖を「工場」として捉えれば、海外で持続可能な養殖場を設営して、漁業資源を確保していくのがよいのかなーと思います。ノルウェーのサーモンは成功事例ですが、国内で養殖されるサバとかは、まぁ、コスト高で国際競争力はないですが、日本人は高くてもそれなりに買ってますよね。でも養殖業者は経営が厳しいと聞きます。ということは、流通とか、価格決定メカニズムとか、どこかに非効率や歪みがあるんでしょうね(主に天然資源のボラティリティが原因と聞きますけれど)。
大胆なことをいうと、天然資源は政府が許可したお店(大手チェーン店ではない寿司屋や料亭みたいなところ)でしか取り扱えないようにして、食卓や大手チェーン店で食べられる魚は養殖に限定する、とかすると、天然資源の持続可能性を得ながら、養殖とマーケットも分けられていいんじゃないかなーとか妄想しました。
2019/03/22 15:53:09
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/031900010/?P=2&mds
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK258掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK258掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。