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2019年3月12日 岡田幹治 :ジャーナリスト
スマートメーターの発火事故が続発する「根深い事情」
全国で切り替えが進められている次世代型の検針器スマートメーターの製品不良と施工ミスで発火事故が続いている(写真はイメージです) Photo:PIXTA
全国で切り替えが進められている次世代型の検針器「スマートメーター」の発火事故が続いている。
発火のほか異常音や照明がちらつくなどのトラブルも、東京電力と中部電力の管内で確認されている。
メーターに想定以上の電気が流れて発熱するためだが、原因のほとんどは製品の不良と施工ミスだ。
東電管内、27件の発火事故
異常音や照明のちらつきも
昨年11月30日午後2時ごろ、ランチタイムが終わりに近づき、客もまばらになっていた茨城県つくば市の飲食店に、アスファルトの舗装工事のような油っぽいニオイが漂った。
不審に思った店のマネジャーが外に出てみると、外壁に取り付けてあったスマートメーターから青白い炎が出ていた。あわてて備え付けの粉末消火器で消し止めたが、外壁が焼け焦げた。
店の電気が使えず、営業ができなくなったため、客には頭を下げて帰ってもらったという。
事故直後、マネジャーは「本当にびっくりした。気が付くのが遅かったら建物に燃え移っていた」「営業補償をもらいたいぐらい」などと話していたという。
「東京電力パワーグリッド」(東電の会社分割で2016年4月に発足した配送電会社=東電PG)は12月1日、自社のサイトでこの火災を公表し、6日には「原因は施工不良の可能性が高い」と発表している。
今年2月末に店を訪れると、マネジャーは「その件はいっさいコメントできない」と話すだけ。しかし痕跡は残っていた。
スマートメーターは真新しくなり、壁板が50センチ四方ほど取り換えられたことが、はっきりわかった。
発火まではいかないが、近所中に聞こえる異常音が出る事故も報道されている。
2017年元日、東京都江戸川区の住宅で、外壁に取り付けてあったスマートメーターから「ピーー」という、ものすごい音が出て鳴りやまず、大騒ぎになった。
当時、住人は留守だったが、向かいに住む夫婦が気づいて東電に電話で知らせ、1時間ほどで駆けつけた作業員がメーターを取り換え、異常音はおさまった。
取り換えにきた作業員が、このまま放っておけば火事になるところだった、と話したという(『東京新聞』昨年11月21日朝刊)。
東電管内だけでも、スマートメーターの発火事故は2016年5月から昨年末までに24件判明しており、今年も2月までに3件発生している(電磁波問題に取り組む市民団体「電磁波問題市民研究会=電磁波研」調べ)。
また東電PGによれば、異常音は約200件起きている。中部電力管内では、発火・異常音・室内の照明のちらつきといった「トラブル」が50件以上確認されている(注1)。
注1 日本に先駆けて切り替えが行われたアメリカやカナダなどでも、火災が多数発生している。米カリフォルニア州では2012年に、スマートメーターを設置した翌日に火災が発生し、1人が死亡する事故も起きている(加藤やすこ『電磁波による健康被害』)。
想定以上の電気が流れる
原因は「製品不良」と「施工ミス」
スマートメーターは、通信機能を持ったデジタル式の電力量計だ。
従来のメーターがアナログ型で、検針員が毎月検針していたのに対し、電気使用量を30分ごとに(中継点を経由して)電力会社へ送信できる。
政府が閣議決定した「エネルギー基本計画」で「2020年代早期に全所帯・全事業所に導入する」と定めている。
電力会社最大手の東電管内では、すでに約1900万台を交換し、20年度中に全世帯2900万台の交換を終える計画だ。
そのスマートメーターで発火や異常音が起きるのはなぜなのか。
東電PGの説明によれば、メーター内に想定以上の電気が流れて発熱するためで、その原因は2つある。
1つは、東光東芝メーターシステムズ(埼玉県蓮田市)製のメーターの一部、約9万台に欠陥があったことだ。
設置した世帯にはダイレクトメールで連絡し、年末までに正常なメーターに取り換えるという(注2)。
もう1つの原因は、スマートメーターを取り付けた際の施工ミスだ。
スマートメーターでは電線が何本もネジで留められているが、その締め付けが弱かった場合などである。
再発防止対策として東電PGは、設置工事を発注した会社に注意を喚起し、約600人の作業員に研修を実施した。さらに、設置済みメーターから5200台を抽出してネジの締め付け具合をチェックし、全体の状況を把握するという。
だが、施行工事を一時停止し、全数を調べるといった大掛かりな調査をしたわけではなく、発火事故は今後も発生する可能性がある。
スマートメーターが設置された家庭では、できるだけ早く異常に気づけるよう、ニオイや音に常に注意しているくらいしか、対応策はないようだ。
注2 不良製品は、東光東芝メーターシステムズで15年3〜12月に製造された型式「S43WS−TA」と16年8〜9月に製造された型式「S18WS−TA」。スマートメーターの表面にメーカー名・型式・製造年が表記されているので、自宅のメーターが該当するかどうか確認できる。
なぜ見過ごされてきたのか
「安全性軽視」や慣れあい?
「不良製品」や「施工ミス」がなぜ見逃されてきたのか。
そこには日本の電力業界に根ざす「構造問題」があるように思われる。
まず「安全性軽視」だ。
東電の場合、2010年度に実証実験を始めたが、福島第一原発の事故で中断し、仕様変更などをして14年4月に切り替えを始めた。20年度末に導入を終えるという10電力会社の中では最短の計画を公表している。
そのために製品の製造と設置作業を急ぎに急いでいる(他社は中部電力の22年度末など、22〜24年度)。その過程で安全が二の次にされた疑いがある。
東電管内では16年5月から発火事故が起きていたが、東電PGがそのことを自社のサイト(ホームページ)で発表したのは、最初の発火から2年半後、東京新聞が報道した翌日の昨年11月19日だった。
そのサイトでは、発生したのは「メーター内部の基板部分の発熱による焦げ跡や異音などの不具合」であり、「メーターの各種部品には難燃性の部材を使っているので、建物に被害を与える可能性は極めて低い」と記している。
しかし、つくば市の場合など、真夜中に発生して気づくのが遅れていたら、どうなっていただろうか。
スマートメーターの突然の発火に驚き、水をかけて消火しようとした人もいたが、これは感電の可能性のある危険な行為だ。
「スマートメーターは発火する可能性があること」や「消火には粉末式消化器を使うこと」などを事前に広報しておけば、このような行為は防げたはずだ。
次に指摘できるのは、「ファミリー企業」で仕事を分け合うことによる慣れ合いの体質だ。
東電発注の検針器は、東電幹部が天下りしているメーター製造会社4社が受注してきた。
東光東芝メーターシステムズ(東電が35%出資する東光高岳の子会社)・大崎電気工業・三菱電機・GE富士電機メーターの4社だ。
スマートメーターでもこの「慣行」が続けば、コスト高・料金値上げの一因になると、原発事故の後、指摘され、メディアでも「スマートメーター利権」(『週刊ダイヤモンド』12年4月14日号)などと取り上げられた。
このため東電は、予定していた「指名入札」をやめ、「国際入札」にしたが、結果は従来と変わらなかった(網代太郎『スマートメーターの何が問題か』)。
その東光東芝メーターシステムズ製のメーターで、不良製品が9万台も出たのだ。競争もなく身内同士の受発注で、製造工程や品質の管理に甘さがあったと言われても仕方がない。
情報隠す体質は変わらず
事故の「報告不要」を指示した総務省
安全性の軽視や閉鎖的な体質は、情報の公開が独りよがりで、都合の悪いことは隠す体質につながる。
たとえば、メーターの切り替え工事をする場合、施工業者から各家庭にチラシ1枚の連絡があり、断らない限り実施される。
配布される「取替工事のお知らせ」(チラシ)には、訪問予定日と工事の際の停電の有無が大きく記入されているだけで、何のために、どんなメーターに交換するのか、交換にはどんなリスクがあるのかなどの説明はない。
チラシが配布されたその日のうちに工事が行われ、知らないうちに交換された例や、偽りの説明をして強引に交換した例もあり、事実上の強制とみる人が多い。
ところで、電気製品の発火は、消費者庁などが運営する「事故情報データバンクシステム」に掲載(登録)し、広く消費者に知らせて注意を促すべき事故だ。
消費者安全法は、商品の安全性の問題で消費者が身体に一定程度の被害を受けたり、受ける恐れがあったりする事故の報告を行政機関に義務づけている。
実際、スマートメーターの発火事故は同システムに2017年1月から掲載されてきた。ところが、いつの間にか、東京都内の事故が掲載されなくなった。
原因は、総務省消防庁が18年4月、東京消防庁に「今後、報告しないよう」指示したことだった。
消防庁によれば、スマートメーターは東電PGの所有物であり、消費者が家の中で使う一般的な家電ではない。このような製品の火災は報告しないことに決めており、東京消防庁の運用は間違いだという。
これについて石田真敏総務相は昨年12月7日の会見で「スマートメーターの火災が複数発生している状況を踏まえると、消費者の注意を喚起することも重要だと考えられる。今後、消費者庁とも相談し、スマートメーターも報告対象とすることについて検討していきたい」と述べている。
昨年4月といえば、電磁波研などが、政府の全世帯への設置計画に対して、「スマートメーターの全戸強制をやめさせよう」と、訴え、衆院議員会館で集会を開いた時期だ。
その時期にあえて消防庁が「事故報告不要」の指示を出したことになる。
(ジャーナリスト 岡田幹治)
https://diamond.jp/articles/-/196561
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