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フクシマ事故が喜劇として再現される日
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2019年3月10日 植草一秀の『知られざる真実』
イギリスの哲学者エドマンド・バークは 「歴史から学ばぬ者は歴史を繰り返す」 の言葉を遺し、 ドイツの思想家カール・マルクスは 「歴史は二度繰り返す。最初は悲劇として、二度目は喜劇として」 の言葉を遺した。 東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故発生から丸8年の時間が経過する。 この事故は、原子力発電所は制御不能である現実を私たちに突き付けた。 日本は地震大国である。 原発には耐震性能が備えられているが、原発が備える耐震性能を上回る地震の揺れが原発を襲う。 この揺れに原発は耐えられない。 ひとたび事故を引き起こせば、滅亡の危機が広がる。 福島原発事故は偶然によって東日本全体の滅亡をもたらさなかったが、そのリスクは十分に存在した。 偶然の結果として被害は限定されたが、それでも事態は収束していない。 被害は放置され、健康被害はいまなお広がっている。 放置された放射性物質の処理は一向に進まず、汚染された冷却水は今後、さらに大量に太平洋に垂れ流されることになる。 東京電力幹部の刑事責任を問う裁判が行われているが、日本が適正な法治国家であるなら、幹部の責任追及は免れない。 しかし、警察・検察当局は、いまなお強制捜査を実施していない。 日本の刑事司法が政治権力によって不当支配されているからだ。 安倍内閣は原発の安全性が確認されていないにもかかわらず、全国の原発の再稼働を推進している。 狂気の行動と言うほかない。 安倍内閣は原発が原子力規制委員会の定める規制基準を満たすことをもって原発再稼働を推進しているが、言語道断の対応だ。 原子力規制委員会は規制基準を定めて、原発が基準を満たしているかどうかを審査する。 しかし、原子力規制委員会は基準をクリアすることが、 「原発が安全であること」 を意味しないことを明言している。 原子力規制委員会は規制を定めて原発が基準を満たしているかどうかを審査しているだけである。 2014年4月11日、安倍内閣は「エネルギー基本計画」を閣議決定した。 エネルギー基本計画で安倍内閣は、原子力発電を「ベースロード電源」と位置付けた。 原子力発電を、「発電」、「運転」、「コスト」が低廉で、安定的に発電することができ、昼夜を問わず継続的に稼働できる電源として「ベースロード電源」としたのである。 最大の焦点は地震への備えである。 福島原発では、産業技術総合研究所が、再三にわたって福島原発の津波対策の不備を指摘してきた。 国と東電はこの警告を無視して津波対策を講じなかった。 これが、悲劇の原発事故を生み出す一因になったことは間違いない。 裁判ではこの点が審理される。 原発で「備え」をおろそかにしたことは犯罪行為であったと言える。 現時点での最大の問題は、発生し得る地震の揺れに耐え得る耐震性能を保持しないまま、安倍内閣が原発稼働を全面推進していることだ。 地震が原因で日本を破滅させかねない重大事故を引き起こした現実がありながら、その地震に耐える構造を保持しない原発を稼働させる判断はあり得ない。 日本では、2008年6月14日に発生した宮城岩手内陸地震で、4022ガルの地震動を観測している。 この点を踏まえて、福井地裁の樋口英明裁判長は2014年5月に大飯原発3、4号機の運転差し止めを命令した。 判決文で樋口裁判長は、「極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題とを並べた議論の当否を判断すること自体、法的には許されない」と述べた。 樋口裁判長は、 「基準地震動を超える地震が到来すれば、施設が破損するおそれがあり、その場合、事態の把握の困難性や時間的な制約の下、収束を図るには多くの困難が伴い、炉心損傷に至る危険が認められる」 と指摘している。 しかし、日本ではこうした正論を政治権力が排除する。 フクシマの悲劇が喜劇として繰り返される日は遠くないだろう。 |
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