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【コラム】日本巻き込む21世紀の「グレートゲーム」−スタブリディス
コラムニスト:James Stavridis
2019年2月27日 13:12 JST
中国がこれまで以上に深く太平洋に進出する動き
日本とシンガポールと共に列島線を押さえる大国が優位に立つ
中国の軍事力増強が「地域の内外に自国の意思を押し付けようとする」ポイントにまで達したと米国防総省の報告書は警鐘を鳴らす。アジアにおける米国の同盟国である日本とシンガポールへの最近の訪問を通じ、両国の陸(そして海)の現状がどのように見えるのかを理屈抜きで感じた。日本の高官が私に伝えてきたのは、軍事的拡大を決意した中国に直面する中で「在韓米軍をはじめ、地域における米国の長期コミットメントについての深い懸念」だ。
同盟相手としての欧米の信頼性が低下しているというシンプルなメッセージが繰り返し語られている。米政権が最も近い関係にあるパートナーを幾度となく批判し、防衛体制にただ乗りしているとのそしりを受けることにアジアの米同盟国はがくぜんとしている。英国の欧州連合(EU)離脱に直面する欧州の弱さと混乱についても懸念があり、中国が香港で採用している「一国二制度」を台湾に受け入れるよう圧力を強め、人工島を造成し南シナ海の軍事拠点化を図る中で、状況は複雑さを増している。
特に中国からさまざまな挑戦を受けているのが日本だ。両国間には第2次世界大戦のみならず、19世紀末の日清戦争までさかのぼる長く苦い歴史がある。さらに、中国は東シナ海の尖閣諸島などを巡る根拠のない領有権の主張を展開し、日本上空を通過する弾道ミサイルを試射した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を支持。日本政府の情報収集・防衛システムへのハッキング疑惑や米国をもいら立たせている知的財産の窃盗といった問題もある。そしてインド洋への入り口に位置するシンガポールは、中国の軍事的拡張と広域経済圏構想「一帯一路」にとって重要な足掛かりとなる地理的条件を持つ。
China's Strategic Vision
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あまり注目されていないが、極めて懸念すべきなのは、中国がこれまで以上に深く太平洋に進出し、日本とインドネシアを結ぶ「第2列島線」と呼ばれる地点までその勢力を拡大しようと一層大胆になっているように見えることだ。中国は近年の海軍・ミサイル能力増強において、日本からフィリピンに南下する「第1列島線」の西側を支配することを目標としてきたが、中国の戦略家たちがそれ以上の野心を抱きつつあると米当局者は警戒している。南シナ海に進出し始めた時と同じように、中国は「科学」ミッションを理由に海洋調査船を使い、こういった海域で活動している。
本質的に日本とシンガポールはこうした列島線の起点もしくは終点となる北と南のアンカー(いかり)であり、軍事演習や武器購入を通じて防衛力で米国と協力していく体制を取っている。太平洋とインド洋を単一の戦略区とする視点が強まっていることから、インドとの関係強化も探っている。これは同地域において米国が展開する戦略の極めて重要な要素だが、幾つかの変化が生じつつある。
アラスカから南下しハワイを含めニュージーランドに至る「第3列島線」を中国が見据えるとの想定があり、これは長く米中における戦略的境界線の最終ラインと見なされてきた。だがここへ来て、第4あるいは第5の列島線に言及し始めたアナリストもいる。いずれも米中間の競争が極めて激しくなっているインド洋での列島線だ。
インド洋1本目の列島線は、パキスタン南部からインド洋に浮かぶディエゴガルシアからさらに南に下る。パキスタンのグワダルでは中国が港湾を開発。英領海域にある環礁ディエゴガルシアは、米軍が中央アジアに展開するための重要な兵站(へいたん)拠点だ。インド洋2本目の列島線は、米中が共に大きな軍事基地を置く「アフリカの角」を起点とし、南アフリカ共和国の海岸線へと南下する。こうした状況を踏まえれば、米国が太平洋軍を「インド太平洋軍」に改称したことに驚きはない。
日本とシンガポールは太平洋における列島線の地理的重要性をしっかりと認識している。より遠くに位置する別の米同盟国オーストラリアとニュージーランドもしかりだ。米海軍が同盟国やパートナーと軍をまとめ、衝突が起きた場合に備え、(例えば長距離防空や情報収集、兵站の拠点として)これらの島々を使う説得力のあるプランをいかに策定していくかが極めて重要になる。
逆の見方をする外交専門家もいるが、こうした動きが米国を中国との不可避の戦争に導くということは全く意味しない。最も助けとなるたとえは、19世紀に南アジアの覇権を争った英国・ロシア間のいわゆる「グレートゲーム」だ。ただ当時と比べ現代において、米中両国はいずれもより大きな世界的野心と守るべき広範な貿易圏を持つ。優位に立つことができるのは、太平洋の最重要地点にある日本とシンガポールと共に列島線を押さえるどちらかの大国だろう。
(ジェームズ・スタブリディス氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。元米海軍大将で北大西洋条約機構=NATO=で司令官を務めた経歴もあります。米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院の名誉学部長であり、カーライル・グループのオペレーティング・エグゼクティブ・コンサルタントを務め、マクラーティー・アソシエーツの顧問委員会を率いています。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:China’s Military Seeks New Islands to Conquer: James Stavridis(抜粋)
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