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(回答先: 米朝首脳会談、日本は「最悪のシナリオ」に備えを 在韓米軍撤退の可能性を真剣に検討すべし 投稿者 うまき 日時 2019 年 2 月 27 日 00:47:41)
米朝首脳会談、「寧辺核施設」に注目せよ
交渉を進めたいのは米国側、北朝鮮の大きな妥協は期待できない
2019.2.26(火) 黒井 文太郎
金正恩氏乗せた列車、中国に到着 27、28日にベトナムで米朝首脳会談
ベトナム・ハノイで開かれる2回目の米朝首脳会談のため、平壌駅を出発する北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長(中央)。朝鮮中央通信配信(2019年2月23日撮影、同月24日配信)。(c)AFP PHOTO/KCNA VIA KNS〔AFPBB News〕
2月27日、28日、ベトナムの首都ハノイで、2回目の米朝首脳会談が行われる。何が期待できるのか? どこに注目したらいいのか? 会談の前にポイントを整理してまとめてみた。(軍事ジャーナリスト:黒井 文太郎)
米国が得たメリットとデメリット
まず、米朝関係の現状はどうなっているのか? 昨年(2018年)6月の1回目の米朝会談を経て、米朝双方は、どんなメリットを得たのかをみてみたい。
米国側の最大のメリットは、北朝鮮の新規の核起爆とミサイル発射の実験を停止させることができたことだ。なかでもミサイルは、北朝鮮はアメリカ東海岸まで射程に収めるICBM「火星15」の発射実験まで成功させていたが、実用化して実戦配備するには、北朝鮮としてはさらに実験を重ねたいところだったはずだ。
ただし、それが実用化されれば、米国の安全保障には致命的な弱点が生じる。米国とすれば、それを阻止するために、危険な戦争も検討せざるを得なくなる。それは米国としても、リスクがきわめて高い。だから、北朝鮮がたとえ水面下で技術開発を継続していようと、実験の停止はメリットとなる。緊張をとりあえず緩和し、戦争の危機を当面回避したことも、短期的にはメリットだ。
また、米国にとってということとは別種の話だが、トランプ大統領個人にとっては、「自分はオバマ前大統領などには不可能だったことをやってみせた」という政治的パフォーマンスもメリットといえる。
逆にデメリットとしては、これは緊張緩和・戦争回避と表裏の関係になるが、北朝鮮に核廃棄を迫る軍事的圧力も緩和されたということがある。いわば北朝鮮の核温存の可能性への道を開いたともいえるわけだ。
実際、トランプ大統領の指示によって、米韓軍事演習の一部が中止された。北朝鮮に対する米軍の軍事的な抑止力はまだまだ圧倒的ではあるが、圧力の低減となることは確かである。
つまり、「北朝鮮との戦争のリスクを当面回避した」ことは、北朝鮮との緊張を大幅に緩和し、和解の可能性を残したが、これが北朝鮮の非核化に繋がるのか、あるいは北朝鮮の核武装を黙認する結果に終わるのかは未確定だ。なので、米国にとって良策だったのか否かは未確定である。
ただし、現実に、北朝鮮は「朝鮮半島の非核化」に合意はしたものの、自らの核武装の放棄に向けた具体的な措置を拒否している。昨年の1回目の首脳会談を経て、8カ月が過ぎた現在に至っても、非核化措置はなされていない。あくまで現時点だけで評価すれば、これは米国からすれば大きなデメリットとみることもできる。
金委員長のそっくりさん、ベトナムを国外退去へ 「これは犯罪」
ベトナム・ハノイのホテルでキスのしぐさをする北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長のそっくりさんのハワードXさん(左)とドナルド・トランプ米大統領に扮したラッセル・ホワイトさん(2019年2月25日撮影、資料写真)。(c)Manan Vatsyayana / AFP〔AFPBB News〕
北朝鮮が得たメリットとデメリット
他方、北朝鮮側にとってのメリットは、何と言っても、戦争の回避そのものだろう。
一時は米軍による「斬首作戦」(北朝鮮問題では金正恩委員長の抹殺の意)だの「鼻血作戦」(限定的先制攻撃)だのの可能性すら大きく報道されていた。就任直後のトランプ大統領は「何をするか読みづらい」人物であり、実際に米軍の空母が日本海に派遣されたりして、北朝鮮としては非常に脅威に感じていたはずだ。
もちろん戦争などということになれば、万に一つも北朝鮮に勝ち目はなく、それどころか金正恩政権の崩壊に繋がることも十分にあり得た。米朝交渉によって、北朝鮮は国家存亡にかかわる巨大なメリットを得た。
また、緊張が緩和されたことで、韓国、中国、ロシアなどとの関係も大幅に好転した。それまでも中国やロシアなどとは良好な関係にあったが、核やミサイルの実験を繰り返していた頃は、国連安保理で制裁決議が通り、各国とも表向きはそれに従わなければならなかった。
ところが、緊張緩和で融和ムードが広がったことで、石油の瀬取りなどの制裁破りが横行するようになった。米朝緊張激化の頃なら、露呈した場合に米国を怒らせることのリスクも高かったが、融和ムードとなってからはそのリスクが大幅に低下した。
これにより、全面的な制裁解除に比べたらまだ一部に留まるものの、厳重な制裁によって国内経済が極度に停滞していた状況は脱している。これも北朝鮮にとっては大きなメリットだ。
北朝鮮にとってのデメリットも、もちろんある。「核・ミサイル実験停止により、対米核抑止完成の一歩手前に留まったこと」「制裁解除に至っていないこと」「米軍の軍事的脅威の除去に至っていないこと。中でもその第一歩になる終戦宣言すら至っていないこと」などだ。
したがって、今後の交渉では、米朝は上記のデメリットの解消を目指すことになる。今回の首脳会談でもそこが交渉になる。
交渉を進めたいのは米国側
とはいえ、いきなりすべてのデメリットを解消することは不可能だ。では、双方は今回、どういった点を交渉しようとするのか?
米国側は、何と言っても、北朝鮮の非核化を少しでも進めることを目標としている。これまでは「完全非核化への行程表の提示」を要求し、特にその前提となる「核・ミサイル施設や開発計画のリストの申告」を優先させていたが、北朝鮮はリスト申告にすら激しく抵抗している。今回も、北朝鮮はそれに応じる気配はまったくない。
トランプ政権は、現時点では、非核化措置以前の制裁解除は明確に否定している。交渉の進捗についても、トランプ大統領自身が「急いではいない」と発言するなど、大きな進展を期待していない様子を示している。
かといって、トランプ大統領は金正恩委員長との良好な関係だけは、現在も大きくアピールしている。国内政治的に利用していることは明白で、仮に大きな進展がなかったとしても、トランプ大統領は必ず「会談は成功だった」とアピールする。北朝鮮敵視路線に回帰する可能性はまずないだろう。
そのため、形式的にも交渉進捗のアピールを目指すことになる。つまり、「何らかの妥協を北朝鮮から引き出す」ことを目指す。それも、本丸である核・ミサイルに関係する分野での進展を目指すだろう。
一方の北朝鮮側は、かねて要求を示している。制裁解除と終戦宣言だ。北朝鮮は「朝鮮半島の非核化」について、自身の核放棄だけ進めることを明確に拒否し、同時に「米国の核の脅威を完全に取り除く」ことを主張している。つまり、韓国が事実上、核の傘から外れることだが、これは当然、簡単に進む話ではない。そこで北朝鮮は、米国側にまずは制裁解除と終戦宣言を受け入れるよう求めているのだ。
北朝鮮側の主張は、すでに北朝鮮側が緊張緩和の措置を重ねてとっているのだから、次は米国側の順番だという論法である。昨年6月の首脳会談でも、北朝鮮は最初から「双方の段階的措置が必要」と強調していた。少しずつの交渉で、一気に動かすことを回避したいのだ。つまり、交渉を進めたがっているのは米国側、トランプ大統領の側なのである。
楽観的な観測はみられない国際メディア
では、今回の米朝首脳会談では、どのような成果が期待できるのか?
楽観的な見通しが韓国政府や韓国メディアからは報じられるが、いずれも根拠は薄い。前回の首脳会談でも先走った楽観的観測が連発されたが、結果的に外れているので、今回もおそらくアテにはならない。
それより交渉当事者である米朝の両政府がもちろん現実的な見通しを知っているわけだが、北朝鮮側からは情報が出ないから、注目すべきは米国側から伝えられる情報ということになる。
米国政府からのリークを受ける米国メディア、あるいは西側の国際メディアの報道をみると、あまり楽観的な観測はみられない。
たとえば、2月21日のロイター通信の報道では、複数の米政府高官の話として、以下のように伝えている。
・米国側は非核化の行程表の提示を引き続き要求するが、会談で得られる成果には懐疑的な見方が多い。
・在韓米軍の撤退は議題にしていない。
・非核化をめぐる共通認識を探る見通し。
同じロイター通信だが、2月25日には、以下のように伝えている。
・米国は北朝鮮への要求水準を下げ、限定的な合意を受け入れる姿勢のようだ。
・米朝高官らによると、事前協議では寧辺の核施設廃棄の査察受け入れや米朝の連絡事務所設置などが議題に上っている。
・米国側は、朝鮮戦争以来続く敵対関係の終結宣言や、北朝鮮の観光特区設置など南北朝鮮間プロジェクトの承認といった譲歩を示す可能性もある。
なお、朝鮮戦争のいわゆる「終戦宣言」については、中国や国連も含む議題であり、西側主要メディアでは「まだそこまではいかない」との見方が多いが、一部には「2国間だけで、法的拘束力のない声明の形で相互の不可侵に合意する可能性はある」などといった見方もある。
北朝鮮のカード「寧辺の核施設の廃棄」
ただ、終戦宣言などはあくまで付随的なものであり、注目点はやはり非核化に関する分野だ。そこで注目されているのが、前述のロイター記事にもあった北朝鮮の核開発の本拠地である寧辺(ニョンビョン)の核施設の廃棄の問題である。
寧辺(ニョンビョン)郡の位置(Googleマップ)
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北朝鮮の非核化措置をめぐる楽観的観測のほとんどは、北朝鮮が一度も言ってもいないことを勝手に期待する根拠のない話が多いのだが、実は北朝鮮が自ら出しているカードがある。それが「寧辺の核施設の廃棄」だ。
昨年9月19日、平壌で金正恩委員長と文在寅大統領が南北首脳会談を行った際に「米国が相応の措置を取れば、北朝鮮は寧辺の核施設廃棄などの追加措置を取る用意がある」と明記された。「米国が相応の措置を取れば」とあるように、米国から見返りを得るための交渉材料として出してきたのである。寧辺には、核兵器開発の研究機関、プルトニウムを製造している原子炉と再処理場、ウラン濃縮施設、さらにおそらく核融合に使用する三重水素の製造拠点もある。
プルトニウムを製造する原子炉は、地下に隠すことが困難で、仮に廃棄されれば、今後、北朝鮮はプルトニウムを増産できなくなる。他方、ウラン濃縮は多数の遠心分離器を接続すれば可能なので、地下に密かに建設することが容易だ。したがって、北朝鮮はおそらくすでに他にも秘密のウラン濃縮施設を建設している可能性がきわめて高い。
ということは、寧辺の核施設をすべて廃棄したからといって、ウラン濃縮活動は続けられるだろう。したがって、それで北朝鮮の核爆弾増産を止められることにはならない。
あるいは、北朝鮮がすでに、自分たちの対米戦力として当面は充分な量の核爆弾の原料を確保したと考えた可能性もある。それをどこかで隠し持ち続ければいいとの考えだ。
ただ、それでも寧辺の核施設を全廃するのは、北朝鮮にとってはかなり大きな妥協だ。決裂を避けたいトランプ大統領を相手に、有利な交渉を展開中の北朝鮮が、いきなりそこまで大きなカードを切る理由があまりないような局面でもある。
それよりこの寧辺カードのポイントは、北朝鮮が「寧辺の核施設廃棄」について、寧辺のすべての核施設なのか、あるいは一部の核施設に留まるのかを明言していないことだろう。交渉材料として差し出してきた核施設が、もうほとんど不要になった一部の核施設に留まるなら、実質的には非核化への一歩にもならない。
「すべての核燃料施設を廃棄」という情報も
そんななか、米国側の当事者から、驚くような証言も出ている。
米国務省で北朝鮮との交渉を統括するスティーブン・ビーガン北朝鮮担当特別代表が、1月31日、「北朝鮮が寧辺だけでなく、すべてのウラン濃縮とプルトニウム再処理施設を廃棄することを約束している」と発言したのだ。メディアへの匿名のリークなどではなく、当局の担当責任者の実名発言なので、それに近い話はおそらく出ていたのだろう。
ただ、この発言はやはり「米国が相応の措置をとるなら」と枕詞がついている。北朝鮮側にとっては、「米国の軍事的脅威が除去されれば、核兵器は必要ない」という金日成時代から言っていた対外フレーズに沿ったもので、具体的な交渉カードというほどの意味はないのではないか。むしろここで話を大きく広げたことで、逆に南北首脳会談での「寧辺核施設廃棄」のリアル性も薄れた印象がある。
ただ、いずれにせよ、北朝鮮側から公式に「寧辺核施設廃棄」カードが切られた以上、米国としてはそれを少しでも実のあるものに進めたいと、その内容について、米国側からの交渉カードを積み上げつつ、交渉に臨んでいることが推測される。
なお、前述したロイター記事にもあった「事前協議では寧辺の核施設廃棄の査察受け入れも議題に上っている」という話は、おそらく米国側が要求しているという意味での「議題に上っている」だろう。少なくとも、北朝鮮側はこれまで一度も、そうした約束はしていない。
(ちなみに、「北朝鮮は廃棄した寧辺の核施設にIAEA査察官を受け入れることにも合意した」という未確認情報も一部に出ているが、こちらは韓国発の報道なので信憑性は高くない。)
現状では追い詰められていない北朝鮮
それにしても、核施設の廃棄というのは、北朝鮮にとってはかなり強力なカードであり、そこまでいきなり進むのかいうと、疑問はある。北朝鮮側は現状、それほど追い詰められた状況にないからだ。
そこで注目したいのは、前述した昨年9月の南北首脳会談での「平壌共同宣言」に、寧辺核施設廃棄と並んで、次の一文があったことだ。
「東倉里のミサイルエンジン実験場とミサイル発射台を、専門家監視の下で永久廃棄する」
この東倉里のミサイルエンジン実験場とミサイル発射台の廃棄は、すでに北朝鮮側が公表してきたことにすぎないが、これを「専門家監視の下で永久廃棄」の措置をとるというのである。非核化とは程遠い小さなカードだが、平壌共同宣言にわざわざ書いたということは、北朝鮮はこれを目下の現実的な交渉カードとして使ってくる可能性がきわめて高い。
もちろんそれだけでは成果があまりにも小さい。あるいはその他に、米国が食いつきそうなカード、例えば米国安全保障に直結するICBM計画凍結に関連するカードなどを、北朝鮮側が切ってくる可能性もあるだろう。
いずれにせよ、東倉里のミサイル施設廃棄の検証が最小の期待値、まずは部分的にでも寧辺の核施設廃棄への約束が最大の期待値というあたりが、今回の首脳会談をみるポイントとなりそうだ。
ただし、繰り返すが、現状は北朝鮮がそれほど追い詰められておらず、あくまで友好的ムードを演出したいトランプ大統領が相手では、北朝鮮が大きな妥協をする可能性は小さいというのが、筆者の推測である。
(※)筆者はこのあとベトナムに飛び、今回の首脳会談を現地で取材する。会談後にまた結果をレポートしたい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55598
「米朝首脳会談」実現させるベトナムの秘めた思惑
漂流する東アジアを撃つ(第2回)
2019.2.26(火) 右田 早希
正恩氏は「意味ある」言動を、制裁解除に絡みトランプ氏けん制
1回目の米朝首脳会談が行われたシンガポール・セントーサ島のカペラホテルで、手を振るドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(2018年6月12日撮影)。(c)SAUL LOEB / AFP〔AFPBB News〕
(右田早希:ジャーナリスト)
トランプ大統領と金正恩委員長の2回目の米朝首脳会談が、今週2月27日と28日に迫っている。今回の開催場所は、ベトナムの首都ハノイである。
なぜ開催場所がハノイに決まったのか、また主催するベトナムにはどんな思惑があるのか。ベトナム政府関係者に、緊急インタビューを行った。
ベトナムは北朝鮮にとって東南アジア最大の友好国
――前回、昨年6月の米朝首脳会談は、シンガポールで開かれましたが、今度はハノイ。ベトナム政府としては、水面下でどのような動きをしていたのですか?
「昨年のシンガポールでの米朝首脳会談は、大成功を収めました。会談そのものもそうですが、主催したシンガポールにとっては、1965年の建国以来、最大規模のイベントとなったのです。米朝の政府関係者はもとより、世界各地から集まったジャーナリストは総勢3000人に及び、30億ドルもの経済効果をもたらしました。あの後、世界からの観光客も急増したと聞いています。あるシンガポール政府の人は、『これまで欧米の旅行サイトでは、シンガポールはあたかもマレーシアの植民地のような表記になっていたが、あの会談の後、ようやく独立国と認められた』と笑っていました。
そうした話を、昨年ASEAN(東南アジア諸国連合)議長国だったシンガポールの関係者たちから聞き、次回の米朝首脳会談の候補先として、同じASEANの仲間であるベトナムを推してほしいとお願いしたのです。
同時に、アメリカと北朝鮮に対しても、強い働きかけを行いました。2017年11月にベトナム中部のダナンでAPEC(アジア太平洋経済協力会議)を実施しており、トランプ大統領にもベトナムを気に入ってもらっています。
一方の北朝鮮とは、1950年1月に国交を樹立しており、ベトナム、中国、北朝鮮、ラオスというアジアの社会主義国の『血盟関係』にあります。金日成主席は1958年と1964年に訪越し、ホーチミン主席も1957年に北朝鮮を訪問しています。現在でも、東南アジアにおいてベトナムは、北朝鮮にとって最大の友好国で、ハノイの中心部には、東南アジアで最大規模の北朝鮮大使館があります。
そうしたことから、アメリカと北朝鮮に対して、強い働きかけをおこなったのです。両国からよい感触が伝わってきたのは、年明けになってからでした」
ベトナムの理想は米中等距離外交
――経済効果の他にも、トランプ大統領と金正恩委員長をハノイに招くという外交的効果は大きいのではないですか。
「その通りです。北朝鮮には、国連制裁に抵触しない範囲内で、経済援助を行う予定です。
わが国が最も力を入れているのが、トランプ大統領の訪越です。かつて1年半という短期間に、アメリカ大統領が2度もベトナムを訪問してくれたことはありません。
周知のように、ベトナム戦争は1975年に、われわれがサイゴン(現ホーチミン)を陥落させ、アメリカを駆逐して終結しましたが、アメリカとの国交を回復したのは、それから20年後の1995年です。わが国は1986年から、中国を見習ってドイモイ(刷新)政策を始めましたが、やはりアメリカと国交がないと、どうにも国が発展していかなかったのです。
21世紀に入ると、同じ社会主義国で国境を接する中国が、ベトナムにとって大きな脅威になってきました。わが国は長年、中国の属国でしたが、ベトナム人は伝統的に、激しい反中感情を持っています。その大国・中国を牽制するには、どうしてもアメリカの力を借りる必要があるのです。
一例を挙げれば、国交回復を果たしたのはクリントン大統領でしたが、中国に強烈なインパクトを与えたのはヒラリー・クリントン国務長官です。2010年7月にハノイで開かれたARF(ASEAN地域フォーラム)に出席し、アメリカとASEANが結束して、南シナ海での中国の脅威に対抗していこうという主旨の演説をしたのです。この日を境に、空気が一変しました。それまでベトナムは、アメリカに対して、ベトナム戦争から続く拒否感がありましたが、その後はアメリカ軍との交流が始まったのです」
――今回、トランプ大統領がハノイ入りし、ベトナムとどのような取り決めを行うのですか?
「グエン・フー・チョン書記長(国家主席)からトランプ大統領に、アメリカ軍にもっと頻繁かつ大規模な編成を組んで南シナ海に出てきてほしいと要請します。そのことは、トランプ大統領も望んでいると聞いています。越米間の軍事交流を、もっと盛んにしたい。
2017年11月にダナンAPECを成功させた後、翌2018年3月に、アメリカ海軍の空母カールビンソンが、ダナンに寄港しました。ベトナム戦争の激戦地に、ベトナム戦争後、初めてアメリカの空母が寄港したのです。すべては中国に対抗するためで、おそらく誰よりも驚いたのが中国だったことでしょう。
経済的にも、周知のようにトランプ政権は、中国と貿易戦争の真っ最中ですが、もっとベトナムを活用してほしいと、トランプ大統領に訴えます。アメリカ企業は中国を脱出し、ベトナムに工場を移転すれば、アメリカへ製品を輸出する際にも追加関税はかからないし、ベトナムの物価や人件費は中国よりも安いので、コストも安上がりです。実際、このところベトナムからアメリカ向け繊維製品の輸出が急増しています。
もっとも、トランプ大統領としても、わざわざベトナムに足を運ぶことによって、中国を牽制するという意味合いがあると思います。わずか数年前まで、ベトナム、北朝鮮、ミャンマーは、まるで中国の属国のような状態でした。それが2011年10月に、クリントン国務長官がミャンマーを訪問し、ミャンマーを親米国に変えた。今回は、ベトナムと北朝鮮を̪親米国に変えようというわけで、それはベトナムにとっても歓迎すべきことです。そうかといって、中国と敵対するといことではなくて、ベトナムの理想は、米中両大国との等距離外交です」
米朝首脳会の実現で中国を牽制
――他にも、今回の米朝首脳会談で、ベトナム側のメリットはありますか?
「グエン・フー・チョン書記長は、チャン・ダイ・クアン国家主席が昨年9月に急逝したことを受けて、国家主席も兼任しています。今回の米朝首脳会談を成功裏に終えた後、グエン政権の求心力が強まることは間違いありません。ベトナムは、まもなく人口1億人を超える大国となるので、政権の安定は何より重要です。
またグエン書記長は、トランプ大統領と金正恩委員長をもてなす一連の行事が終わった翌日から、ラオスを訪問します。ラオスも同じ社会主義の盟友ですが、新たなベトナムとラオスの関係を構築するのです。ラオスも、中国に侵食されて苦悩しているのです。そこで、トランプ大統領の後ろ盾を得たグエン書記長がラオスを訪問することは、ベトナムのラオスに対する立場を格段に引き上げる効果があります。
ともあれ、今回の米朝首脳会談を主催するベトナムの最大の効果は、中国への牽制です」
以上である。ベトナムの立場から今回の米朝首脳会談を眺めてみるのも興味深い。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55584
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