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2019.02.13 by 阿部泰尚『伝説の探偵』
千葉県野田市で1月24日、小学校4年生の栗原心愛さんが虐待死した事件。逮捕された父親の異常な言動や児童相談所の考えられない対処など、次々と信じ難い「真相」が明らかになりつつありますが、そもそも心愛さんの命を救うことはできなかったのでしょうか。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、さまざまな児童虐待案件を見届けてきた現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、これ以上虐待による被害者を出さないため、役所や政治家が今すぐすべきことについて記しています。
■千葉県野田市虐待死事件について
私がT.I.U.総合探偵社を立ち上げて間も無く、調査依頼を受けて数日あるアパートを張り込んだとき、事前情報で聞いていた小学生と未就学の幼児の姿がなかった。風邪でも引いて家にいるのだろうと勝手に思い込んでいたが、調査の最終日に真っ暗になった部屋のベランダで人影が動くのをみた。
深夜、街灯もまばら、耳の感覚がなくなるほどの寒い日、その姉妹は裸足でベランダに置かれた物置の中に閉じ込められていたのだ。
翌日、その地域の児童相談所に直接通報したが、私が言われた言葉は、「無関係の人からの通報ですぐに動くわけにはいかない」。ならばどうしたら動くのか?と問えば「死ぬほどの怪我をするなりして、病院から通報でもあれば…」であった。
私の率直な感想は、この国では虐待児は守ってもらえないのだということだ。
だから私は、もしも児童虐待を発見した時は、無償で調査をすることを決めたのだ。権限のない私が動くのは大きなリスクが伴う。時には通報されるし、虐待親に雇われた弁護士に訴えると脅されることもある。それでも私がこの活動をやめないのは、一人でもまともな大人が真剣に信念を持って動けば、現状を変えられることもあるからなのだ。
前述の事件は、その母親が彼氏を家に連れ込む際に、その彼氏が子供を邪魔者扱い(暴力・暴言)を吐くことや情事を見せようとするなどの行為から、ベランダにわざわざ物置を置いて行っていた虐待行為であった。そして、その母親自体も悩んでいた。近隣住民を説得し通報してもらったり、地元警察に見てもらい、結果的にこの虐待は止んだが、その母親の就業や子供達のケア、ストーカー化した暴力彼氏を追っ払う(玄関前で騒ぐ、待ち伏せして叩こうとするなど)など、多くの人を巻き込んで再生に取り組んだ。
「一体、こんなことをしてあなたに何のメリットがあるのか?」
今でもそうだが、私はこの言葉を投げかけられる。思いつくままに、答えるとすれば、「見過ごすことは、私の正義に反する」だ。
あの時に比べれば、今は法整備なども進み、虐待防止への理解も社会的に進んでいるから、随分児童相談所も動きやすくなっているはずだ。
ところが、目黒の船戸結愛ちゃんの事件や千葉県野田市での虐待死、栗原心愛ちゃんの事件が発生している。その間にも多くの児童虐待死が起きており、何も変わっていないではないかと思えて仕方がない。
■栗原心愛ちゃん虐待死事件の概要
ニュースで明らかになっているが、千葉県野田市山崎の小学4年生、栗原心愛(みあ)ちゃんが自宅で死亡し、父・勇一郎容疑者が逮捕され、続いて母・なぎさ容疑者が逮捕されたという事件。
両親は沖縄で結婚、離婚、再婚という関係で、離婚原因は勇一郎容疑者のなぎさ容疑者へのドメスティックバイオレンスであった。
再婚後、一家は千葉県に移り住む。勇一郎容疑者は、沖縄観光についての仕事をしており、真面目な仕事ぶりで転居後も同じ会社の東京事務所に勤務していた。
事件が表に浮上したのは2017年11月生活アンケートの自由欄の記載に心愛ちゃんが「お父さんにぼう力を受けています。夜中に起こされたり、起きている時にけられたり叩かれたりされています。先生、どうにかできませんか」と書いたことであった。聞き取りと確認技、小学校は児童相談所に通報、児童相談所は一時保護を決定した。
一家は3ヶ月に一度程度の引越しを繰り返していた様子で、虐待の疑いが生じると、転居していた可能性が強い。こうした虐待常習者は、虐待に依存していることが多く、異常な執着が見受けられるケースが多い。一方、母・なぎさ容疑者は、元々DVの被害者であるがその後の再婚、子への虐待の放置などから見ても、勇一郎容疑者に精神的支配をされていた可能性が高い。
勇一郎容疑者は野田市教育委員会で前述のアンケートを閲覧複写させろと威圧的に要求し、恐怖を感じた市教委は開示に応じてしまった。一方、なぎさ容疑者は勇一郎容疑者のメッセンジャーとなり、心愛ちゃんに「暴力を受けているというのは嘘、家族と暮らしたい、児童相談所の人と会うのも嫌だ」という内容の手紙を書かされており、これを児童相談所も薄々勇一郎容疑者が書かせたのだろうと勘ぐりつつも、一時保護の解除に応じてしまった。
その後転校した小学校では特に問題なく、心愛ちゃんは学級委員長などをしていてしっかりしていたようだ。ところが服で隠れる部分は痣だらけであった。
心愛ちゃんは、今年1月の始業式以降はお休みで、1月24日自宅で遺体で発見された。
■事件現場
事件が起きた千葉県野田市山崎のアパートは、アパートというより小型のマンションという造りで、多くは2LDKの間取り、家賃は6万円代後半である。
近くには国道16号線や歩いてすぐ東武野田線梅郷駅があり、小学生などもよく遊ぶ小さな公園や畑もある。新旧の家屋が並ぶような街並みで、印象としては自動車が比較的多いと感じる地域だ。事件は3階の一室で起きたのだが、近隣住民はメディアが殺到してから事件を知ったという人の方が多いという印象であった。
事件現場から車で5分程度の場所に野田市市役所や警察署がある。多くの記者などは、市役所にいるということであった。
■関係者の話
事件を受けた2月8日厚労・文科省が野田市で聞き取りをしたというニュースが流れた。報道では、派遣された副大臣や、それに応じた野田市市長、千葉県内の児童相談所を所管する千葉県健康福祉部部長が報道陣の質問に答えた様子が報じられているが、どなたも「児童相談所、学校、教育委員会の連携の強化」や「弁護士や警察OBの配置」について話している。
つまりは、弁護士をつけるだけの予算がないので国が支援するなど、仕組みの話が多いのだが、ハッキリ言って的外れなのだ。
そもそも児童福祉法の改正に伴い何度も関係機関の連携や児童相談所と警察の情報共有は強化されてきた。はじめの小学校のようにアンケートでSOSを拾い、確認をして児童相談所が一時保護したという連携は全国的に広がりつつあるのだ。
この事件の大きな問題はヒューマンエラーであり、事なかれ主義になった児童相談所、教育委員会自体の問題なのである。
関係者は私に、その場には教育長もいたんですと話した。各局の報道を比較すると、確かにこの聞き取りには教育長がいたことを報じている局もあった。
続けて、関係者は、「教育長は次から次へと出てくる隠蔽とも取られかねない不祥事的な情報について、膿は全て出せ、隠しても無駄、全て包み隠さず報告しなさい」と怒られていたと話していた。
例えば、児童相談所は自身らが持つチェックシートで、心愛ちゃんの状況が一時保護を解除できない要件があるという結果があったのに放置したし、教育委員会については加害者である父親からの開示に応じて、心愛ちゃんが書いたアンケートを提示してしまったのだし、始業式以降学校に来ない状況で電話や家庭訪問などについてしていたのかという情報もいまだに出ていない。
つまり、公共の行政機関であれば、必ずやるべきガイドラインに沿った対応すらしていなかったのである。
今後も報道が進めば、今まで隠していたことが明るみに出るはずだと関係者は言っていた。
■教員の話
仮に栗原心愛ちゃんと同じような状況であった子を教員が発見した場合、どのような対応が可能か聞いてみた。すでにガイドラインがあり、見てわかるレベルであれば、校長に確認してすぐに児童相談所に通報するそうだ。
ガイドラインでは、本人以外にも親などにも確認してから職員会議や学校経営層での承認を経て児童相談所などに通報するということになっているが、「そんなのしていたら、子供が死んじゃうでしょ」ということから、すぐに通報という手段を取る事もあるとのことであった。
多くの学校教員はいじめでこそ後手後手の対応が目につくが、児童虐待問題については戦う姿勢の教員が多く、実務上の機能的なシステムはできているのだ。
運用する学校は、この事件でも一時保護までさせている実績があるが、もう一方は気がつかず、本来最も動くべき教育委員会が敵前逃亡の上、機密情報まで漏らすという大失態をしたのである。要は無能なのだ。できない人にどんなに良い道具を持たせても、できないものはできないのだ。
■児童相談所の限界
虐待死が起きるたびに、児童相談所は徹底的な批判の嵐に晒されてきた。その度に言われるのが人員不足だ。確かに、職員の労働環境は極めてきつい。一人が抱える案件数が度を越しているのだ。
しかし、付け焼き刃の人員強化をしても無駄であり、人が育ち機能し始めるまでには、数年待つ必要もある。
ただし、今回の事件で出た柏児童相談所の所長は経歴を見る限り、児童相談所の職員としてはベテランと言える。一時保護までの判断も早かった。しかし、保護解除までの経緯は、勇一郎容疑者を恐れての意味合いがチラつき、要領を得ない。
ベテランであっても、怖いものは怖いのだろう。本来それではいけないのだが、児童生徒にまつわる問題ではモンペやクレーマー、異様なキレ方をする大人は必ずいるものだ。現場は危険なのだ。24時間いつでも起きる虐待事件に児相単独では対応できないし、学校と教育委員会といくら連携するにしても、心愛ちゃん虐待死事件で起きたように、虐待親からの恫喝に屈し、「ひみつはまもるよ」と書いてあった守られるはずのアンケートを渡してしまっている。
つまり、この連携も児童相談所も限界なのだ。
■児童相談所解体論と警察
虐待死が止まらない、児童相談所が虐待を把握していながらみすみす見過ごす現状から、機能しない役所は税金の無駄だという声は多い。
だからこそ、厚労・文科省の副大臣は、警察OBや弁護士の配置について言及したのだろうが、虐待親の脅しに対抗したりすることはできても、それを機能させるには予算が必要だし、もしも、アンケートを渡してしまってから、一時保護を解除してしまってからでは、手遅れになり兼ねない。
一方で、児童相談所には有能な人材は確かにいる。そして、今支えられている家族もいる。
児童相談所は機能している面では極めて有効な組織であることは間違い無い。例えば、自ら虐待をしてしまうことに悩む親や様々な問題を抱える児童生徒へのカウンセリングや対応には、現場にいて有効性があることは確かだ。
目黒の船戸結愛ちゃんの事件や千葉県野田市の栗原心愛ちゃん事件でわかることは、虐待常習者は引越しをして児童相談所をめくらまししようとする事だ。連携や全国的な情報共有を進めるというが、それができていないということは事件が起きている以上明らかだ。であれば、情報共有ではなく、情報を一括管理した方が良いだろう。
そして、警察との情報共有もよく問題となるが、いっその事、警察署に場所を借りて直接情報のやり取りをしたらどうかと思う。そうなれば、暴力的なモンペや恫喝をしようとする輩は寄りつかないだろう。
あくまでも、1つの提案でしかないが、現場にいて思うことは、確かに今のままでは救える命が救えないということだ。政治家の面々がいかにも深刻そうに「遺憾」砲を撃ったりするのは構わないが、彼らにできることは、子どもに関する問題にきちんと予算をつけることだろう。野田市に限らず、全国的に。
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