http://www.asyura2.com/19/senkyo257/msg/386.html
Tweet |
去る2月7日、国連子どもの権利委員会から、2010年の第3回に引き続き、第4、5回最終見解(勧告)が発出されました。すでにこれについては、日本のメディアが、国連が虐待問題に対し抜本的な対策を採るよう勧告がなされた、という趣旨の報道をしています。この報道に接して、国連は日本の児童相談所にもっと予算を付け、介入機能を強化すべきだと勧告したと考えた人もいたでしょう。
しかし、この報道は、誤報と言ってもいいくらいミスリーディングなものでした。子どもの権利委員会は、子どもと家族の人権を尊重する立場から、厚労省の児童相談所行政に抜本的転換を迫る重要な勧告を出していたのです。
この、国連子どもの権利委員会の最終所見の原文(英語)は、下記のURLから読めます:
https://tbinternet.ohchr.org/Treaties/CRC/Shared%20Documents/JPN/CRC_C_JPN_CO_4-5_33812_E.pdf
児童相談所に関する勧告は、この最終所見の第29段落に太字で記されています。そこでは、委員会が日本政府にurge という動詞を使って、単なる勧告ではなく、政府に強く実行を迫ることとしてている諸項目があります。このうち、特に重要なのは、(a) と (c)ですから、それを引用します:
(a)「子供が家族から引き剥がされるべきであるかどうか決定することに対して、司法審査を義務化し、子供の引き剥がしについて明確な基準を設定し、そして子供たちを親から引き剥がすのは、それを保護するため必要で子供の最善の利益にかなっているときに、子供とその親を聴聞したあと最後の手段としてなされることを保障する。」
従来日本では、児童相談所長が、児童福祉法第33条に依拠して、証拠がなくてもその一存で子どもを次々と「一時保護」と称して親から引き剥がす行為が横行し、「拉致」とさえ呼ばれる状況となっていました。この現状に対し、国連子どもの権利委員会は、@事前司法審査導入、A引き剥がしのための明確な行政基準設定、B親と子供両者からの聴聞、C最後の手段に限定、といういくつもの条件を課すことで、手当たり次第に児相が親から子供を引き剥がす行為に根本的な歯止めをかけるよう求めたのです。換言すれば、現行児童福祉法第33条に依拠して行われている児相行政は、子どもの権利条約に違反していることを、委員会が指摘したことになります。
(c) 「児童相談所で子どもたちを一時保護することを廃止する。」
日本の児童相談所には、児童を収容する場所(一時保護所)が併設されていますが、その運用を廃止し、児相一時保護所は全面閉鎖せよ、という子どもの権利委員会の要求であり、読んで驚くラディカルな勧告です。児相の収容所が、児相職員による暴行や猥褻行為の温床となり、処方箋なき向精神薬が投与され、そして子供を学校に通わせないため発達権を侵害するなど、数々の人権侵害の巣窟となっていることをやめさせる要求だと考えられます。海外では、施設内虐待を行なった児童養護施設等には、直ちに全面閉鎖命令が下されますから、このことを考えれば、国際人権規準からすれば、この国連の要求はそれほど突飛なものではありません。
勧告の28段落でも、児相行政についての深刻な人権上の憂慮が、6点にわたって具体的に表明されています:
「(a) 多数の子どもたちが家族から引き剥がされているとの報告があり、その引き剥がしは司法の令状なしでなされ、児童相談所に最大2ヶ月間置いておかれることになること、
(b) 多数の子どもたちが、不適切な水準にあり、そこでは児童虐待の事案が報告されており、外部の監督と評価のメカニズムがない施設に収容されていること、
(c) 児童相談所にはより沢山の子どもたちを受け入れようとする強い財政的インセンティブがあることが伝えられていること、
(d) 里親に包括的なサポート、適切な訓練と監督が与えられていないこと、
(e) 施設に置かれた子供たちが、その生みの親との接触を維持する権利を奪われていること、
(f) 児童相談所は、子供の生みの親がその子どもを引き剥がすことに反対した際、もしくは児相の措置が児童の最善の利益に反するときに、家庭裁判所にその事案を申し立てるよう明確に指示されていないこと。」
これらを是正することを求める勧告は、いずれも子供の人権の立場から当然ですが、とりわけ、(c)において、児童相談所の「一時保護」が、年度ごとの予算で設定されている「一時保護見込み数」を充足する(現行の児相予算の約半分は、「保護単価」にこの見込み数を乗じた額で決定されています)という財政上のインセンティブによってなされている事実が指摘され、日本の児相行政が、子供の利益ではなく、児相の経済的利益すなわち利権のためになされていることが国際的に暴露されたこと、そして(e)で、面会禁止措置を規定している児童待防止法第12条が人権侵害であることが明確に摘示されたことが、画期的といえます。
また、法務省の管轄となりますが、44段落ならびに46段落では、children as ‘likely to commit crime' (虞犯少年)の規定(少年法第3条にあり)を廃止するよう勧告がなされています。この虞犯少年は、日本では逆に、厚労省が、児相に配置する弁護士を使って活性化しようと企んでいる規定であり、この二本の行政が国際的な人権規準に逆行していることを示す勧告となっています。
これに対し、報道された虐待対応を直接扱っているのは第24段落です。しかし、この段落をよく読むと明らかのように、児童相談所を強化すべきだとはどこにも書いてありません。児相への予算増加や設備・権限強化などの勧告も出されていません。国連勧告は、いま南青山で住民が反対しているような児童相談所新設を、全くサポートしていません。
「児童相談所」が国連最終見解の中で登場するのは、あくまで、上記の人権侵害を扱った否定的な脈絡(28.29段落)においてのみなのです。
野田や目黒で起ったような真の児童虐待事案を2度と繰り返さないよう、真摯な対応が必要であるというのは、ある意味で当然の主張ですが、国連は、それを今の厚労省や児童相談所にやらせるべきだとは、全く勧告していません。国連勧告の全体を見ると、むしろ、児童相談所は児童虐待防止には役に立たず、人権侵害のみを繰返す、既に終わった行政組織だということを示唆しています。
ところが厚労省は、早速、野田の事件を奇貨として、それに悪のりし、能力の無い児相にさらに介入権限を与え、人権侵害の政策を強化する政策を打ち出しました。これは、国連勧告の真意を歪め、悲しい虐待死を省益拡大のため利用しようとする厚労省の邪悪な意図を示して余りあります。このような厚労省の政策をいくら推進しても、虐待死は無くならず、逆に市民の人権が蹂躙されるばかりでしょう。
勤労統計の問題だけでなく、市民が、このような国連勧告によってハッキリ否定された厚労省の児童虐待行政の欺瞞をしっかり見抜き、批判と抗議の声を上げることが重要です。
一日も早く、日本政府に、この国連子どもの権利委員会勧告の真意をふまえ、児童相談所の解体的リストラを伴う児童虐待行政の抜本的見直しを行なわせましょう!!
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK257掲示板 次へ 前へ
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK257掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。