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公務員の定年延長が民間にもたらす喜べない事態 人事制度の大幅変更で、ライフプランの見直しは必至
2019.1.28(月) 加谷 珪一
(加谷 珪一:経済評論家)
政府内部で、国家公務員の定年を60歳から65歳に延長する法案について具体的な検討が始まった。政府は事実上、定年をなくし、生涯労働を可能にする方向で制度改正を進めようとしているが、最大の懸念材料となっているのが高齢者の処遇だ。公務員の給与は法律で定められるので、法案が成立すれば、民間における1つの目安となる可能性が高い。
再任用をやめ、定年延長に舵を切る
現在、国家公務員の定年は60歳だが、年金の支給開始は65歳となっている。このため60歳を超えた公務員については、無収入期間が発生しないよう「再任用制度」というものが用意されていた。
現在、検討されている法改正は、再任用制度をなくし、定年を65歳まで延長するという内容。これまでも再任用で60歳以降も働くことができたという現実を考えると実質的な違いはないよう見えるが、制度全体としては大きな変化となる。
再任用はあくまで定年後の一時的な処遇ということになるが、定年そのものを延長する場合、総人件費をどうするのかという問題に正面から向き合う必要が出てくる。定年が延長されると、制度上、総人件費が増加するので、これを抑制するためには60歳以上の公務員の給与を引き下げるだけでなく、60歳未満の給与についても見直しが必要となってくる。
さらにいえば、賃金の上昇カーブについても再検討が必要となる。60歳を境に急に年収が減少するというのは、人生設計上あまり望ましいものではない。もし総人件費を増やさないことを前提にするのであれば、60歳未満の公務員についても、段階的に賃金を引き下げる必要が出てくるだろう。
現在、政府では、60歳以降については、60歳未満の給料の7割程度まで減額することを想定しており、60未満についても賃金の上昇カーブを抑制する措置を検討しているという。60歳以上を7割にするというのは経過措置と位置付け、最終的には50代から給与水準がなだらかに下がる形を考えているようだ。
あくまで検討中なので、最終的にどうなるのかは分からないが、1つの方向性は示されたといってよいだろう。この法案が成立した場合、当然だが、民間企業の定年延長や賃金体系の改革にも大きな影響を与える可能性が高い。
最終的には70歳まで雇用は延長される
民間の場合、公務員のように税金が給料の原資ではないので、総人件費の抑制圧力はもっと高い。60歳以上の賃金を60歳未満の7割に抑えるという数字は、人事院が民間の事例をもとに算出したとのことだが、調査対象となっているのは大企業が中心と考えられる。大企業は公務員と似たような賃金体系を提示する可能性が高いが、中小企業はそうはいかないだろう。
賃金体系の変更に加えて、60歳以上の職員については短時間勤務にすることや、60歳を超えた場合には、原則として管理職から外す措置などについても検討を進めている。民間企業においても、一定年齢に達した段階で、有力なポストについていない社員を管理職から外すという、いわゆる役職定年の導入が進んでいることを考えると、一部の幹部職員以外は管理職から外れるという流れが定着してくるだろう。
年収はともかく、年金支給開始年齢までは雇用が保障されるという流れだが、話がこれで終わるわけではない。政府内部ではすでに、定年をさらに70歳まで延長し、事実上の生涯雇用とするための施策について検討が進められている。
現在、高齢者の雇用については、高年齢者雇用安定法によって、定年を65歳にするか、65歳まで継続雇用するか、もしくは定年を廃止するかのいずれかを選択することが定められている。政府が検討しているのは、この法律を再度改正し、継続雇用を70歳までに引き上げる施策である。
もしこの制度が具体的に動き出した場合、企業は難しい選択を迫られるかもしれない。
現時点における高齢者雇用安定法への対策としては、定年の延長や定年制の廃止ではなく、再雇用を選択している企業が圧倒的に多い。企業は人材のピラミッドを維持したいので、なかなか定年の廃止には踏み込めないというのが実状だ。
だが再度の法改正によって70歳までの雇用が義務付けられた場合、60歳以上の社員について、再雇用という中途半端な位置付けで処遇するのは難しくなってくる。一方で定年を延長した場合には、全社員の昇給やポストの配分など、人事制度全般の変更が必要となるため負担が重い。
40歳以降の昇給を抑制しないと実現は困難
企業はホンネとしては70歳までの継続雇用に反対だろうが、この動きを回避することは難しそうである。最大の理由は年金財政である。政府ははっきりとは口にしていないが、年金財政を維持するため、年金の支給開始年齢を最終的には70歳まで引き上げたい意向である。
そうなってくると必然的に70歳までの雇用を義務付けなければ、無収入者が続出してしまう。企業側は、60歳未満の社員の処遇をさらに抑制することで、この制度を受け入れるという形になる可能性が高い。
では、この制度が導入された場合、最終的に社員の処遇はどの程度になるのだろうか。
これまでの日本社会は、一定以上の規模の会社に入れば終身雇用が保障され、年齢に応じて給料が上がるのが当たり前だった。このため、歳をとるほど支出が多くなり、家計がメタボになるのもごく普通のこととされた。しかしながら、年金の減額がほぼ必至となり、事実上の生涯労働システムに移行しつつある今、年功序列の給与体系は維持できなくなる可能性が高い。
日本の給与所得者の平均年収から擬似的に算出した生涯年収(大学卒業後60歳まで勤務と仮定)は約1億8000万円である(これは男女合わせた数字なので、男性に限ると約2億3000万円になる)。
仮に従業員を70歳まで雇用する場合、企業は人件費総額の増大を強く警戒するので、生涯年収を増やさないよう、現役時代の給与を引き下げることになるだろう。
仮に、55歳から役職定年がスタートし、60歳以降は、従来の現役世代の6割に年収が下がると仮定した場合、35歳以降は基本的に昇給しない給与体系にしないと企業は総人件費の増加を抑制できない。あくまで仮定であり、厳しめに見た数字ではあるが、大まかに言ってしまうと、40歳以降は昇給が難しくなるという話だ。
日本の生産性が今後、大幅に上昇し、企業が総人件費の増大に対応できる可能性もあるが、現時点でそのシナリオは描きにくい。昇給が続くことを前提とした現在のライフプランの見直しはほぼ必至ということになる。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55302
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- 中国の日本侵略への備えを明確にせよ! 防衛計画の大綱:ドクトリンの柱なき日本の防衛 うまき 2019/1/28 11:32:40
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