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太陽光が「普通のエネルギー」になるとき
バブルが終わって高い電気代が残った
2019.1.11(金) 池田 信夫
経済産業省は1月9日、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)にもとづく事業用太陽光発電の買い取り価格(500kW未満)を、2019年度は14円/kWhとする方針を決めた。FITが始まった2012年の40円から、7年で65%も下がる。
日本は世界から周回遅れでFITに加わり、非常識な買い取り価格をつけたため、混乱が続いてきた。経産省も昨年(2018年)まではそれを座視してきたが、ようやく方向転換した。その背景には、エネルギーをめぐる状況の変化がある。
バブルで積み上がった「未稼働案件」
日本で固定価格の全量買い取り制度が始まったのは、民主党政権のときだ。政権運営に失敗して「反原発」しか売り物のなくなった菅直人首相が「自然エネルギー」を売り物にしたのだ。このように政治的な動機で始まったことが、日本のFITの不幸だった。
特に太陽光が注目を集め、買い取り価格が40円/kWh(事業用)に決まった。当時、世界的には太陽電池の価格は20円以下に下がっていたが、その2倍以上の買い取り価格をつけ、20年間その価格で電力会社に全量買い取りを義務づけたのだ。
世界の2倍以上の価格で20年間、政府が利益を保証するのだから、リスクなしで儲かる。おかげで太陽光発電への参入は爆発的に増え、設備認定容量は、FIT開始前の2060万kWから、2018年度には8524万kWになった。
しかしこの制度はドタバタで決められたため、多くの欠陥があった。特に問題なのは、電力の買い取り価格が設備認定の時点で決まることになっており、いつまでに操業開始するかについて明確な定めがなかったことだ。
このため価格の高いとき駆け込み的に認定だけ取り、太陽光パネルの価格が下がってから建設しようとする業者が大量に出てきた。さらに用地買収して認定だけとって権利を転売するブローカーも出てきて、「太陽光バブル」が出現した。
このような「未稼働案件」が、設備認定容量の51%を占める。特に2012〜14年度の買い取り価格は40〜32円と高かったので、これが今後、稼働すると高価格で買い取らなければならない。そこで経産省もバブルの後始末に乗り出したのだ。
問題は製造業の国際競争力
今回の制度改正では、原則として2019年度中に運転開始できなければ、初期に認定を受けた案件でも、買い取り価格を21円以下に下げることになった。未稼働案件の買い取り価格はほぼ半分に下がるので、操業開始は絶望的だろう。
経産省は2030年には事業用太陽光の買い取り価格を7円まで下げるという長期見通しを示しているが、これは市場価格とほぼ同じだ。もうFITの時代は終わったといえよう。
この背景には、国民負担の上昇がある。次の図は経産省の資料だが、2016年度まで急速に伸びた再エネの国民負担を2030年度に向けて抑制する方針を示している。
http://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/038.html
国民負担の状況(経産省の資料)
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/6/0/447/img_60adf1fddd9b834e559dd280551caafb69315.jpg
2018年の買い取り費用の総額は3.1兆円になり、賦課金の総額は2.4兆円になった。これは家庭用電気料金の11%、産業用の16%に達し、日本の電気代はOECD諸国でトップレベルになった。
これは家計を圧迫するだけではなく、製造業の国際競争力を低下させ、生産拠点の海外流出を招いている。財界からも「これ以上、賦課金は負担できない」という声が高まり、経産省も方針転換したわけだ。
図のように経産省は2030年度までに買い取り費用を4兆円、賦課金を3.1兆円に抑えようという計画だ。これによって再エネ比率は、エネルギー基本計画で想定している24%になる予定だ。
再エネのコストは火力や原子力より高いので、今はFITで補助しないと市場で競争できない。今までのようなペースでFITの買い取りを増やすと、再エネ比率を30%以上に高めることもできるが、それでは賦課金が今の2倍以上になってしまう。
今でも中国の2倍以上になっている産業用の電気料金がこれ以上あがると、日本で製造業はやっていけなくなるおそれが強い。つまり再エネの本質的な問題は、製造業の国際競争力なのだ。
再エネの特別扱いはもうやめよう
世界的にもFITは終わり、再エネ補助金も市場で決める方向だ。民主党政権が手本としたドイツも、FITは廃止した。日本でも太陽光はすでに500kW以上は入札になっており、それ以外の再エネについても経産省は「FIT制度からの中長期的な自立化を目指す」としている。
FITの財源としては原発を再稼働して浮く化石燃料のコストが見込まれていたが、再稼働が進まないため、賦課金を大幅に上げざるをえなくなった。東電の場合、賦課金は電気代の値上げ分のほぼ7割を占める。
本来の電力自由化は、再エネも含めて市場で競争するものであり、原発を止めたまま再エネに巨額の補助金を注ぎ込む政策は長続きしない。FITに甘えてきた再エネ業界も、自立できる電源になるときだ。
今まで太陽電池のコストが急速に下がったのは、世界的にFITで需要が嵩上げされてきたからだが、中国がFITから撤退する方向を打ち出し、世界的にも太陽光バブルが終わった2018年は、太陽電池の世界市場は史上初めて縮小する見通しだ。
長期で考えると太陽光は有望なエネルギーだが、天候に左右されるので、蓄電技術に奇蹟的な技術進歩がない限り、100%電力をまかなうことはできない。負荷を調整するには、火力や原子力で補完する必要がある。
これまで再エネはクリーンエネルギーとして特別扱いを受けてきたが、基幹的な電源となる時代には、火力や原子力と同じ条件で競争すべきだ。補助は炭素税のような技術中立的な制度で行うことが望ましい。もう再エネの特別扱いはやめ、「普通のエネルギー」になるときである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55192
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