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OPCWは調査チームの報告を無視した化学兵器に関する文書を新部署に発表させた
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202004120000/
2020.04.13 櫻井ジャーナル
OPCW(化学兵器禁止機関)が2018年に設置したIIT(調査身元確認チーム)は4月8日、シリア空軍が2017年3月に化学兵器を使用したとする報告書を証拠抜きに公表した。
シリア政府が化学兵器を使ったとする話の発信源はアル・カイダ系武装集団のジャイシュ・アル・イスラムや、その医療部隊でイギリスの情報機関と関係が深いとも言われるSCD(シリア市民防衛/通称白いヘルメット)。
シリアやリビアへの侵略戦争ではイギリスやフランスが積極的だったが、ジャイシュ・アル・イスラムを指揮していたのはイギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーだと言われている。
SCDを率い、昨年11月にトルコで変死したジェームズ・ル・ムズリエはイギリスの対外情報機関MI6のオフィサーだった人物。どの国でも情報機関に所属すると、仕事をしなくなることはあっても組織から抜けることはできないと言われているので、ル・ムズリエはMI6の工作としてSCDを動かしていたのかもしれない。
アメリカのバラク・オバマ政権がムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を使ってシリアやリビアに対する攻撃を始めたのは2011年春。その前年の8月にオバマ大統領はムスリム同胞団を手駒として使うことを決め、PSD-11を出している。
2011年10月にリビアのムハンマド・アル・カダフィ体制は倒され、戦闘員と武器/兵器をシリアへ運び込むのだが、その時点でNATO軍がアル・カイダ系武装集団と連携していることが広く知られるようになっていた。
そこでオバマ大統領は「穏健派」というタグを持ち出す。自分たちが支援しているのは「穏健派」だという主張だが、アメリカ軍の情報機関であるDIAはこれを否定する報告書を2012年8月に政府へ出した。
その中で反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、アル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだとしている)の名前も出している。オバマ大統領が言うところの「穏健派」とは、一般的に「過激派」と見なされているグループだとしているのだ。
それだけでなく、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになると警告していたが、これは2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)という形で現実になった。
DIAがホワイトハウスへシリア情勢に関する報告書を出した頃、オバマ大統領はシリアに対する直接的な直接的な軍事介入のレッド・ラインは生物化学兵器の使用だと宣言している。「反体制派」の攻勢、シリア政府による「化学兵器の使用」、そしてアメリカ/NATO軍の軍事介入というシナリオを描いていたのだろう。
2012年12月になると国務長官だったヒラリー・クリントンはシリアのバシャール・アル・アサド大統領が化学兵器を使うかもしれないと語り、13年1月29日付けのデイリー・メール紙には、オバマ政権がシリアで化学兵器を使ってその責任をアサド政権に押しつける作戦を大統領が許可したという記述がイギリスの軍事関連企業ブリタム防衛の社内電子メールの中にあるとする記事を載せた。(同紙のサイトからこの記事はすぐに削除された。)
しかし、すでにシリア政府はロシア政府のアドバイスに従い、化学兵器を全て廃棄していた。これはアメリカ政府も否定できないため、一部が隠されたと主張している。勿論、その主張を裏づける証拠はない。
何度嘘が明らかにされても化学兵器話をアメリカ政府は繰り返してきた。大嘘を単純化して言い続ければ、結局、皆信じるようになると考えているのかもしれない。
ロシアとの関係修復を訴えて大統領両選挙で当選したドナルド・トランプだが、大統領に就任してから方向転換する。その節目は国家安全保障補佐官に据えたマイケル・フリン中将の解任。2017年2月のことだ。オバマ大統領にダーイッシュ的な武装集団の出現を警告した当時のDIA局長がフリンだ。
そしてシリア政府が化学兵器を使ったという宣伝が始まり、4月7日にアメリカ海軍は地中海に配備していた2隻の駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射した。この攻撃はドナルド・トランプ大統領がフロリダ州で中国の習近平国家主席とチョコレート・ケーキを食べている最中に実行されている。
この攻撃でシリア空軍を壊滅させ、手駒の武装勢力に一斉攻撃をさせるつもりだったのだろうが、ロシア側の説明によると発射されたミサイルのうち6割が無力化されてしまう。アメリカ側は成功したと主張しているが、さまざまな情報を分析すると、ロシア側の主張が事実に近いようだ。この出来事は朝鮮半島情勢へも影響を及ぼした可能性がある。
その1年後、板門店で韓国と朝鮮の首脳が会談する13日前の2018年4月14日には100機以上の巡航ミサイルをアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍が地中海、紅海、ペルシャ湾からシリアに向けて発射した。このときは7割が無力化されてしまう。2017年には配備されていなかった短距離用の防空システム、パーンツィリ-S1が効果的だったという。アメリカが行った2度のミサイル攻撃によってロシアの防空システムが優秀だということが証明された。
2018年のケースでもアメリカは化学兵器話を使っていた。ミサイル攻撃の直前、国連の専門機関であるWHO(世界保健機関)は化学兵器の使用で多くの犠牲者が出ているとする声明を出したが、その情報源はWHOがパートナーと呼ぶ団体で、その中に含まれているMSFはSCDを訓練している。独自の調査をしたわけでない。
攻撃の直後にOPCWの調査チームが現地へ入る。つまり調査する前にアメリカはシリアをミサイル攻撃した。その調査チームのリーダーだったイアン・ヘンダーソン名義の文書によると、化学物質が入っていた筒状の物体は航空機から投下されたのではなく、人の手で地面に置かれていたことを証拠は示している。シリア政府軍が投下したのではなく、ジハード傭兵が置いた可能性が高いということだ。
それに対し、OPCWの上層部は最終報告書で調査チームの結論と逆の主張をした。報告書の捏造だ。その事実をヘンダーソンは国連の安全保障理事会で1月20日に証言することになるのだが、本人が会議場に現れることはなかった。アメリカがビザの発給を拒否したからだ。化学兵器の専門家を屈服させられなかったOPCWの上層部としてはIITを設置しなければならなかったのだろう。
化学兵器話がインチキだということは本ブログで繰り返し書いてきたが、オバマ政権もトランプ政権も宣伝し続けている。それを信じたがっている人もいるようだ。
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