2005-2008年に公開された米国CIAのレポート「2025年までの世界の傾向」95ページより
・Global Trends 2025 Final Report
もう少し合理的に考えないと…
本題と全然関係ないですが、今日、銀行に行ったところ、窓口に行くところに検疫所みたいな入口が設けられていました。通ろうとすると、銀行員の方が、「手を消毒してからお入りになって下さい」と「手の常在菌皆殺し製品」である消毒液を指さして私に言います。
私「しなきゃいけないと?」
銀「お願いということで」
私「じゃあ、まあ、いいですわ」
と銀行を出てきたのですが、実は私は実験的とはいえ、もう1ヶ月以上「基本的に手を水道水で洗っていない」のですね。
手だけではなく、「体の表面と口内などの一切のバクテリアを殺さない実験生活」をしているのです。もちろん「感染予防のため」ですけれど、もともと、石鹸やシャンプーはもう何か月も使ったことがないですが、1ヶ月ほど前に、ふと、
「塩素もだめじゃん」
と気づき、うちはキッチンには浄水器がついているのですが、お風呂のほうにも塩素を濾過する安価な装置をつけて、塩素の含まれていない水だけ使っています。歯を磨くのも、その水と天然成分の歯磨き粉を使っています。
塩素を抜いた水で手を洗うことはありますが、普通の水道水には、基本的には触れません。皿を洗うときも、塩素を抜いた水で洗っています。
それはそうと、そういう実験的生活を続けている中で、「消毒液で手を洗え」と言われるのは、「弾が6発入ったリボルバーでロシアンルーレットを先攻でやって下さい」と言われているのも同じで、
「せっかく大事に育ててきたバクテリアを死滅させられてはたまらない」
ということで、これではいつまで経っても銀行の窓口で用は足せなそうです。
しかし、スーパーなどで見ていますと、「消毒液を手につける」人たちはかなり多くて、それがどれだけ自分の体にダメージを与えることなのか、考えることがあるのかなとは思います。
たとえば、以下は長崎大学医学部の「感染症ニュース」というコラムですが、強力な消毒液で洗浄することはほぼ「百害あって一利なし」のはずです。
体にいる数百兆個以上の微生物は健康を守ってくれるパートナー
長崎大学 感染症ニュース 2018年2月
常在菌は皮膚にもいます。皮膚は体の表面を覆う最大の器官で、外からの異物の侵入を防ぐバリアでもあります。皮脂や汗に加え、皮膚常在菌が作る物質が皮膚の表面を弱酸性に保ち、病原菌の感染を防いでいます。皮膚には約 1000種類の常在菌がいますが 、主なものは3つです 。
皮膚表面や毛穴にいる表皮ブドウ球菌と、皮脂腺にいるアクネ桿菌は、汗や皮脂を食べてグリセリンや脂肪酸、プロピオン酸を作り、肌を弱酸性に保ちます。三つ目の黄色ブドウ球菌は病原性が強く、皮膚がアルカリ性になると増殖して皮膚炎などを引き起こしますが、表皮ブドウ球菌とアクネ桿菌が黄色ブドウ球菌の増殖を抑えています。この3つの細菌を含む多くの種類の常在菌がバランスを保ちながら、私たちの体を守っているのです。
口の中にも約700種類、2000億個の細菌が住んでいます。生まれた直後から、母親など近親者からうつされた細菌が歯の表面や粘膜に住みつき、「バイオフィルム 」という細菌の固まりを作ります。この固まりの多くは歯の表面にあり、外からやって来た病原微生物などが口の中に定着することを防ぎます。
あるいは、以下は、慶応大学の福田真嗣特任教授の書かれたコラムです。
「腸存共栄」の未来
朝日新聞 2019/08/08
菌と聞くと、ばい菌や汚いもの、悪いものと思いがちではないでしょうか。近年では、デパートや公共施設などあらゆる場所に、消毒用アルコールが「ご自由にお使い下さい」と、置いてあります。私は、このことに少し懸念を抱いています。
それらはもちろん、悪い菌やウイルスを抑える目的で置かれているのですが、悪い菌が死ぬということは、私たちの体に常在している良い菌まで殺してしまうわけです。
そのため、手のひらにアルコールをシュッと吹きかけると、常在菌で覆われていた手のひらの細菌叢が焼け野原のようになり、部分的に菌がいない状態がつくられます。そこに、悪い菌が最初に付着すると、それらが一気に増殖してしまう恐れがあるわけです。
私たちが、特に現在のようなパンデミックの中でおこなうべきことは、長崎大学の記述にあります、
> 皮膚にある約 1000種類の常在菌
を守り、
> 口の中の約700種類、2000億個の細菌
を守ることだと思うのですよ。
少し複雑な話となるかもしれないですが、私たちの皮膚が、外部から来た病原体から身を守るためには、「3段階のバリア」が存在しています。
それは、
・物理的・化学的バリア → 皮膚そのものが病原体をブロックする
・生物学的バリア → 常在菌が病原菌をブロックする
があり、そして、体内での「免疫のバリア」があり、この3段階で、人間は多くの病原体を自然にブロックしています。
・東海大学医学部
しかし、この中での「体内の免疫のバリア(腸内細菌が大きく関与しています)」は、現代の生活の過度な清潔状態により多くの人から失われてきており、つまり、「私たち現代人は以前より病原体を防ぎにくくなっている」と思われます。
風疹や梅毒など、今となって感染が増加する理由がわからない多くの感染症が最近になって増加している理由の一部もここにあると思われます。主要国の人類は感染症に対して弱くなっているのです。
その状態の中でパンデミックが起きたということは重大な話ではあるのです。
そういう意味では、「体表の常在菌による病原体のブロック」は、「病原体から身を守る最後の砦」に近いものだと私は考えています。
この意味からは、常在菌を殺すことは「やってはいけないこと」だと思うのです。
特に今のような状況でこそ。
その「やってはいけないこと」が、社会中に広まっている。
それまで消毒液で消毒などしたことのなかったような人たちまでもが、頻繁に消毒液で手を洗っている光景を見て、ふと「今後のパンデミックの拡大」を予測してしまい、寒気がすることがあります。
なぜ衛生状態の悪いと思われている国で、まったく新型コロナウイルスの感染が拡大していないのかということは、(さまざまな理由があるだろうにしても)ここにも理由があると思います。つまり「不潔が彼らを救っている」と。
先進国が軒並み「優れた衛生観念の下で感染拡大が止まらない」中、以下の地図が示しますようにアフリカやモンゴルなどでは、検査や統計の不備があるにしても、そういう他の条件を上回るほど、現時点では拡大が起きていません。もちろん、今後のことはわからないですけれど。
2020年4月5日の新型コロナウイルスの感染状況(赤が濃いほど感染者が多い)
・foreignpolicy.com
皮肉なことに、アフリカの中で最も衛生観念が進んでいると思われる南アフリカとアルジェリアが、アフリカ大陸で最も感染者が多いということも地図は示しています。
もちろん、だからといって、「不潔にしよう」という話ではないです。
しかし、冷静に考えていただきたいのですけれど、日本人の生活というのは、普通に生活していても、他の国や地域と比較して、十分に清潔です。
そういう中で、通常の生活での衛生レベルを上回る過剰な殺菌をおこなうことは、「病原体からの保護機能の損失につながる」わけですから、いいわけがないはずです。
社会全体が、過剰な殺菌など効果の理論的な整合性が伴っていないと思われることを「雰囲気」で進めてしまっている気がします。
それと同時に、私は今の街を見ていて、
「人間ってこんなに統制されやすいものだったんだなあ」
と、ややがっかりしています。
いずれにしても、どなたか立派な方が、きちんと身体防衛の真実を言うべき時なのではないかと思います。
今のままでは、パンデミックが悪化していくとしか思えないのです。
さて、本題です。
といっても、そんな大した話ではないですが、アメリカの CIA (米中央情報局)が、15年くらい前に「パンデミックの状況を正確に予測していた」ことについての話です。
あまりにも正確な状況を描く2005年のCIAのレポート
最近、ロシアやフランスなどの比較的メジャーな報道メディアが、アメリカの情報機関である CIA の「 2005年の報告書」についてのことを相次いで報じており、それらの報道で、この CIA のレポートのことを知りました。
2020年3月23日のロシアのプラウダより
・Pravda
この報告書というのは、2005年に書かれた「2025年までの世界の傾向 完全に変わる世界 (Global Trends 2025 / Transformed World)」というレポートです。
こちらが表紙ですが、全部で 120ページもあるレポートです。
・Global Trends 2025 / Transformed World
特に秘密資料とかではなく、一般に公開されているものですが、書かれたのが、今から 15年前のことでしたが、このレポートに、
「世界的なパンデミック発生の可能性」
という項目があり、パンデミックが起きる状況と結果を記しています。
そのページを翻訳しました。
Global Trends 2025 / Potential Emergence of a Global Pandemic
CIA 2005年
世界的なパンデミック発生の可能性
適切な治療法が存在しない、伝染性が高く毒性の強いヒト呼吸器疾患の出現が、世界的なパンデミックを引き起こす可能性がある。
2025年までに世界的パンデミックが発生した場合、この感染を回避したり、感染源からの流入を防ぐために、各国政府は移動の制限などの政策を行うことにより、各国の国力は低下し、国内および国境を越えた緊張と紛争が発生する可能性が高くなる。
パンデミックとなる病原体は、現在すでに存在している疾患株の自然の遺伝子変異または再集合によるものか、ヒト集団への新しい病原体の出現に依存している。
専門家たちは、H5N1などの高病原性鳥インフルエンザ株のような病原体が形質転換したものが候補である可能性があり、また、SARS やコロナウイルスなど他の病原体のパンデミックの可能性もある。
パンデミックが発生した場合、おそらく最初は、人口密度が高く、人間と動物が密接に関連している地域、たとえば中国や東南アジアの地域で人間と動物が近くに住んでいる場所から始まる。
それらの畜産の慣行が規制されていない国や地域では、人畜共通感染症が家畜集団に蔓延する可能性があり、パンデミックの可能性がある系統への突然変異の機会が増加する。病原体が効果的に伝播するには、人口密度の高い地域に病気が伝染する必要がある。
そのようなシナリオの下では、発生源となる国内の不十分な健康監視体制により、病気の拡大の早期発見と同定が妨げられると考えられる。公衆衛生への対応が遅いと、伝染性の高い病原体が出現して広がっているという認識が遅れるのだ。
パンデミックの可能性がある疾患の存在を確認する確定的な検査結果が得られるまでには数週間かかる場合がある。
暫定的に、中国や東南アジアの町や都市にこの病気のクラスターが出現し始める。その後、海外旅行に制限が課せられる段階になっても、症状が軽度な患者や、症状の出ない感染者の旅行は続き、疾患は大陸を超えて運ばれる可能性がある。
新しい症例の波は数ヶ月ごとに発生するだろう。
効果的なワクチンがなく、ほとんどの人に免疫がないために、この疾患は非常に感染しやすい。最悪の場合、アメリカ本土内で数千万人から数億人のアメリカ人が感染し、数千万人が死亡する。
アメリカ以外では、世界規模で全人口の約 3分の 1が感染し、数億人が死亡する。そして、世界規模での重大なインフラの劣化と大規模な経済的損失が発生する。
病気がどれほど速く広がるか、何人が病気になるか、どれくらいの期間パンデミックが続くか、そして死亡率と後遺症はどのようになるかは、パンデミックの原因となる病原体の特定の特徴によって異なる。これらのシナリオは、これらの変数の範囲内での可能性の最も高い特性を示している。
ここまでです。
とても現状とよく似ています。
まとめますと、2005年の時点で、アメリカの CIA は、以下のように予測分析していたということになります。
・2025年までにパンデミックが起きる可能性が高い
・病原体は、新型インフルエンザか変異したコロナウイルスの呼吸器感染症
・最終的には、全世界の約 3分の1が感染し、数億人が死亡する
このように正確に予測している文書ですが、以下の部分は気になります。
> 新しい症例の波は数ヶ月ごとに発生するだろう。
つまり、「パンデミックはそう簡単には終わらない」と予測していたということになります。
それと、
> 国内および国境を越えた緊張と紛争が発生する可能性が高くなる。
というのもそうですね。
まあ、このレポート自体は、当時の CIA が、専門家たちの話をまとめて作成したレポートだと思われ、特に陰謀論的なものではないですけれど、ただ、不思議なのは、
「こんなに正確に予測していて、どうしてアメリカは対処できなかった?」
ということです。
そして、このレポートは、歴代のアメリカ大統領も読んでいるものだそうで、少なくとも、オバマ大統領と現在の大統領は内容を把握していたようです。なら、最初に中国で発生したと聞いた時に、なぜ、その後の状況をこのレポートから想像できなかったのかなとは思います。
このレポートに対して、ロシアのプラウダは、記事で以下のように皮肉げに締めくくっています。
2020年3月23日のプラウダより
2015年の科学誌ネイチャー・ メディスン・ジャーナルには、アメリカの科学者たちがコウモリなどのさまざまな動物にコロナウイルスのハイブリッドバージョンを人工的に作成したと記された記事があった。さらに、2013年に研究者たちは、このウイルスを人間に感染させる可能性を研究していたことが説明されている。
アメリカ政府は先日、アメリカの科学者たちが新型コロナウイルスに対する実験的ワクチンを作成し、それをテストし始めたことを報告している。どの国が売上高から莫大な利益を得るのかを想定するのは容易い。 (Pravda)
プラウダもすっかり陰謀論色に染まっていますが、こういうようなさまざまな国の意見の対立も、エスカレートすると、先ほどの CIA のレポートにありました、
> 国内および国境を越えた緊張と紛争が発生する可能性が高くなる。
ということに結びつかないとも限らないですので、注意していただきたいところです。
最近、ふと思うのは、このウイルスの出所が自然であれ、プラウダが漂わせているような人工であれ、「どうも当初と違う想定のほうに変異しているのではないか」という気はします。
当初と比べて、「症状」があまりにも多彩となっているのです。
最初、「呼吸器感染症」として扱われていた新型コロナウイルスは、その後、たとえば「嗅覚と味覚が消える」とったような症状が有名になったりしていますが、今では、以下のような影響が明らかにされています。
カッコ内は、公開されている医学論文のリンクです。
査読されていないものも多いですので、確定したものではなく、「その可能性がある」ということですが、ただ、ほぼすべてが実際の臨床現場からのデータですので、ある程度こういう多彩な影響を持っているようです。
なお、どこの国であろうと、対ウイルスの政策はうまくはいかないだろうことは、今回ご紹介した CIA の予測レポートからも明らかです。
感染や発症を防ぐための確実な方法はないとは思いますが、しかし、個人個人で考えることにより多少の工夫はできるかと思います。パニックになったり、無意味に恐れたりしても意味がないです。
そして、私個人としては、できる限り平常と同じ生活を継続する政策こそが、日本の滅亡を防ぐ最後の方法だと思っています。
この CIA の 15年前のレポートは、未来の社会に対しての危機感があふれているものなのですけれど、現時点の世界の指導者たちの姿勢は、CIA が懸念していた暗い未来に向かっているようにも感じます。