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人類を襲っている新型ウイルス危機は、欧州と米国の感染拡大がひどくなる一方、発祥地の中国と、その周辺の日本と韓国などでは、感染増加が一段落し、事態が比較的安定している。中国は日々の新たな発症者がかなり減った。韓国も一時の急増が止まった。日本はまだ急増したことがない。中国や日韓では、ウイルス感染が最初に武漢で発生した時から事態が注視されており、政府当局や人々は感染拡大がひどくなっていくことに対して身構え、事前の準備がある程度できていた。日韓に感染拡大が波及し始めた(水際作戦が崩れた)のは、中国が武漢を閉鎖した3週間ぐらい後の2月中旬だっだ。
(悲観論が正しい武漢ウイルス危機の今後)
欧米は、感染拡大が始まったのが日韓より3週間ほど遅れて3月上旬だった(死者急増の始まりはイタリアが3月8日、米国は3月15日ごろ)。日韓中より準備できる期間が長かった。だが米国や欧州諸国は大した準備をせず、特に人々の事前の危機感がほとんどなかったため、実際に感染が急拡大するとパニックがひどくなり、イタリアなどで病院がパンクし、事態が不必要に悪化している。
(Average Age of Italians Who Have Died From Coronavirus is 81!)
EUは、域内の加盟諸国間の国境検問をなくして自由往来を維持する「シェンゲン条約」の体制を維持してきた。シェンゲン体制は、EUの経済を強化する市場統合の基盤だった。今回、シェンゲン体制をいったん破棄して加盟諸国間の国境を早めに閉鎖すれば、イタリアから他の諸国への感染拡大をある程度防げた。だがEUの上層部は、加盟諸国の反対派(ナショナリスト、ポピュリスト)を説得抑圧しつつ苦労して締結したシェンゲン体制を壊したくなかった。いったん国境の閉鎖や検問を再開したら、再び開放的なシェンゲン体制に戻すのが難しくなる。EU上層部は頑固に国境開放を維持した。そのため、イタリアから仏独西など他の諸国に感染が急拡大してしまい、手遅れになってから各国が耐えられなくなって勝手に域内の他国との国境を閉鎖し始めた。シェンゲン体制は無秩序な形で崩壊し、EUは域内だけでなく、EUと域外との国境も閉鎖することになった。各国ともウイルス危機を経てEU反対派が今後さらに増えそうで、シェンゲン体制の再生は困難だ。
("Assume Everyone Is Infected": US & Europe Wake Up To World In Lockdown As Death Toll Rises: Live Updates)
(EUの失敗を、上層部の誰かが意図してやったものと考えると、既存の軍産傀儡のEU上層部の支配体制を壊し、EUを対米自立・親露的なポピュリストに乗っ取らせる「隠れ多極主義」的な別の見立てもできるが、今回はそちらに入らない)
EUと同様、日韓中も市場統合のために相互の自由往来体制を続けており、ウイルス危機初期の1月末から2月中旬にかけて、日韓が中国からの人々(感染者)の流入を止めずに自由往来体制をかたくなに維持してしまったため、札幌雪まつりの中国人観光客から北海道全域へのウイルス急拡大の惨事などが起きた。EUも日韓中も、経済を優先して国境を閉めなかったため、感染拡大を防ぐ好機が失われた。だが、好機喪失によるウイルス危機拡大の規模は、日韓中より欧米の方がはるかに、桁違いに大きい。EUは陸続きなので、空路の日韓中より日々の越境人数が多い。
(世界に蔓延する武漢ウイルス 2)
3月20日、韓国では新天地教会の惨事があった大邱市で再び感染者が「急増」して「非常事態」になっていると報じられた。だが、韓国のこの日の感染者の増加は百人ほどだ。同日、欧米での感染者の増加はイタリアで6千人、ドイツで5千人弱、スペインで3千人強、米国で6千人弱となっており、韓国と桁が違う。
日本は、この日の感染者の増加が64人だった。とても少ない。日本は、感染が疑われる人に対してできるだけ検査をしないことで感染を隠蔽し、感染者の統計を過少に出している。日本は医療体制の充実を自慢するくせに、統計上の感染者数に占める死者の割合が3%で、韓国の3倍だ。嫌韓屋の言うとおり日本の医療体制が韓国より進んでいるのなら、日本の実際の感染者(軽症者)は統計の5倍にあたる5千人ぐらいいるのが自然で、8千人の韓国と似た水準になる(日本の人口は韓国の倍だが)。
日本政府が不正しているのは間違いない。だが不正をしても、欧米諸国のように発症者が毎日何千人という単位で急増してしまうと隠し切れない。軽症なら、家で寝ていろと言って検査せず追い返せるが、重症になって入院したら院内感染を防ぐためウイルス検査が必須になる。感染者を過少にごまかす不正は一定の幅でしかやれない。日本政府の不正がうまくいっているということは、日本の感染者(というより発症者)があまり増えていないからだ。不正があってもなくても大差ないことがわかる。
米国は、日本みたいな不正をやりたくて失敗した。トランプの米政府は「百万回分の検査キットを用意してどんどん検査する」と宣言したのに、8万回分しか用意しなかった。日々の検査数が少ないので、これでは感染の実態を把握できないと専門家から不満が出ている。米国はまさに日本と同じ不正をやっている。そもそも日本(安倍)に対し、できるだけ検査をしないことで感染者数をごまかそうぜと持ちかけたのは米国(トランプ)だろう。しかし結局、米国は各地で重篤な発症者が多数出てきて感染者が欧州諸国並みに急増し、日米談合・アングロ日本連合の不正の体制は破綻した。英国も発症者が急増している。
(It’s Dangerous to Test Only the Sick)
(英国式の現実的な新型ウイルス対策)
不正は大してやれるものでないことを踏まえた上で再度、日韓中の感染増加が一段落していることと、欧米の感染増加が爆発していることの対照性について考えてみる。私が言いたいことは、欧米がダメで日韓中(中国とその家来)がすぐれているといった、最近自信満々の傲慢な中国人たちが言っているようなことでない。私が重視するのは、日韓中の感染増加が一段落したのだから、いずれ欧米の感染増加も一段落することだ。日韓中は、国民に占める感染者の比率がとても低い状態で、感染増加が一段落している。
今回のウイルス危機の最終的な全体像について、欧米の権威権力がある人々が口々に言っているのは「人類の5−8割が感染し、そのうち1−3%が死ぬ。世界的に5−6月が感染のピークになる」という予測だ。これより大幅に低い予測(たとえば、人類の5%が感染するといった予測)は存在しない。そしてこの、人類の5−8割の感染予測をふまえて、実際の世界の感染者数の統計を見ると、2つの数字の間に大きなギャップがあることに気づく。実際の統計の感染者数は、人口比が最も多いイタリアでさえ、6千万人の人口に対して5万人の感染者で、感染者が国民の0.1%しかいない。軽症や無症状で未検査の感染者がその10倍ぐらいいるとして、現時点でイタリアの実際の感染者は国民の1%とか、そんなもんだろう。
(人類の7割が感染し2年以上続くウイルス危機)
この数字は「国民の5−8割が感染」という最終的に予測される姿とかけ離れている。日韓中は、感染者の比率がイタリアより低い状態(国民の1%以下)で感染者数の増加幅が減り、安定期に入った観がある。このままの趨勢が続き、日韓中で1日に百人以下の統計上の感染者(発症者)の増加がずっと続くとしたら、実際の感染者を統計の10倍(千人)と考えても、それが人口の5割(日本だと6千万人)に達するまでに、日本の場合6万日(164年間)もかかる。あり得ない。今後、日本や韓国で統計上の感染者が毎日1万人ずつ増えるような事態になるのか?。それも考えにくい。
ひとつ考えられる「修正」は、このウイルスのものすごい感染力から考えて、実際の感染者数の増加が1日千人でなく、もっと幾何級数的な増加幅の拡大がすでに起きているという新たな仮説だ。日韓では軽症や無発症で感染して体内に抗体を作って終わった人が人口の何割かに達し、集団免疫が形成されつつあるので、日々の新たな感染者(多くは中程度以上の発症者)の統計の増加幅が減っているといった仮説が成り立つ。この場合、実際の感染者に占める、病院に行かねばならないほどの重篤な発症者の割合は、極小の1%以下とかになる。軽症の人は感染から数日で症状が消えるという話も出ている。この仮説は、かなり楽観的ではある。この仮説が正しいとしても、よっぽど簡単・安価で正確に感染を測定できる検査方法が登場して全人類を検査してみようという話にならない限り、検証は不可能だ。
(UK coronavirus crisis 'to last until spring 2021 and could see 7.9m hospitalised')
「人類の5−8割が感染し、何千万人も死ぬ」という、いかにも恐ろしげな予測を各国の政府筋が発表する理由の一つは、各国の国民の間に「発症してもふつうの風邪と一緒だろ。外出や社交をするなという政府の要請は無視して良い」といったウイルス軽視の考えが多いためだ。イランの政府の保健省は、ウイルスを軽視して出歩く国民が多いので脅しの意味を込めて国営放送に恐ろしげな報道をさせたと本音を言っている。ドイツのメルケルは人気が下がり、自分の政権の後継者(AKK)が2月に辞めてしまうなど政権維持が危うくなっていたので、メルケル自身の権力の再掌握・引き締めの意図も込めて、国民の6−8割が感染すると宣言した観がある。日本では、権威筋がこの手の予測を全く出してこないが、それは日本人が従順で、脅して従わせる必要などないからだ。「人類の5−8割が感染」は政治的な数字だ。だが、他の数字は出ていない。これが唯一の公式な予測像だ。
(Iran medical council says coronavirus crisis still developing)
(Angela Merkel is running out of road and should step down)
(Merkel Successor Unexpectedly Resigns As CDU Leader In Latest Shock To Germany's Political Establishment)
結局のところ「人類の5−8割が感染する」という最終的な全体像と、各国とも1日に百人から数千人ずつしか感染者が増えていかないという統計数とのギャップがいつまでも残る。もしかすると実際は、5−7月ごろには全人類的に何億人かの単位で集団免疫を獲得できるのかもしれないが、そのころになっても感染者の統計は人類全体で百万人とかの水準なのだろうから、2つの人数の間の大きなギャップは消えない。このギャップが残る限り、世界的にウイルス危機が続き「まだ感染は拡大している」「国際的な人々の移動を制限し続けねばならない」「できるだけ自宅から出るな」「飲食店を再開してはならない」といった社会と経済の両面での大きな制限が残る。実は終わっているのに、終わりのない危機が続く。
経済活動が世界的に前年比20-40%減少し、多くの企業が倒産して債務が不履行になり、すでに起きている社債・ジャンク債の金利高騰がもっと激しくなり、米国中心の世界の金融システムが破綻し、米国の覇権を支えてきた巨大な金融バブルが崩壊し、戦後の米国覇権の体制が終焉する。2つの人数の間の大きなギャップは少なくとも今年じゅう、ずっと消えないので、ウイルス危機は終結宣言を出せないまま続き、世界経済のV字型の回復もない。経済は少しずつしか回復せず、L字型に近くなる。
(Fed Boosts Daily QE By 66% Overnight To Record $75 Billion In One Day)
今回の新型ウイルスは実体が不明だ。いろんなことが不確定なまま放置され、その一方で恐怖心やパニックだけが扇動され続ける。実際に重篤に発症して苦しんだり死んだりする人もけっこういるが、それが日本で何百万人も出てくるわけではなさそうだ。たぶん最終的に、それほど多くの人が重篤に発症するものではない。それでも「あなた自身を含む、驚くほど多数の人々が発症したり死んだりする」という脅しが今後も流され続け、金融バブルの崩壊で米国覇権体制が不可逆的に完全に潰れるまでそれが続く。これは、ある種の国際詐欺である。隠れ多極主義的な詐欺だ。米覇権に対する前回の自滅策であるリーマンショックでやり切れなかった米金融システムの破壊を新型ウイルスがやってくれている。QEで金融システムを延々と延命させている中央銀行群を潰すためのの策でもある。これが意図的なものであると仮定すると、いろんなことに合点がいく。大量破壊兵器の存在詐欺によって米国覇権を失墜させたイラク戦争と似ている。
(無制限の最期のQEに入った中央銀行群)
ゴールドマンサックスは先日、顧客に向けて、新型ウイルスの予測的な全体像を発表した。それによると、米国では国民の半分(1.5億人)が感染し、2か月後(5月半ば)に感染がピークになる。ウイルスは従来の風邪と同様、北緯30-50度に発生が集中しており、寒い気候を好む。夏に少しおさまるが、冬に再発する(英国政府と同じ予測だ)。感染者のうち80%は軽症、15%が中程度、5%が重症。重症は高齢者に集中する。米国で300万人が死ぬが、この死者数は米国の例年の年間死亡者と変わらない。死者が倍増するのでなく、もともと死にそうな人がコロナで死ぬのだから、死因が変わるだけで、全体の死者数はあまり増えない。
("Half Of America Will Get Sick": Here Is What Goldman Told 1,500 Clients In Its Emergency Sunday Conference Call)
人々を最大限に恐れさせ、世界経済を大恐慌に陥れ、米国覇権を崩壊させ、覇権構造を多極化するが、死者数はあまり増えない。ゴールドマンはとってつけたように「ウイルスは、米金融界の史上最長の上げ相場を終わらせるものの、金融システム自体の危機にはならない」と言っているが、これは全く(笑)である。現状は、金融システムの危機以外の何物でもない。
長期化し米国覇権を潰すウイルス危機 田中宇の国際ニュース解説
http://tanakanews.com/200320hegemon.htm
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