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中東における帝国主義と解放戦略
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2020年2月 5日 マスコミに載らない海外記事
現在、アメリカは中東で覇権を維持するのに大きな困難を味わっている。アメリカ軍は、イラクでも、シリアでも迷惑だと宣言され、アメリカと連中のテロリスト外人部隊の大群は、毎月、領土と陣地を失っている。アメリカは本格的なエスカレーション、より多くの軍隊派兵と、イランに対する絶え間ない恫喝で、これに反撃した。同時に、我々は、レバノンやイラクやイランで強い抗議行動を目にしている。
Pål Steigan
2020年2月1日 InformationClearingHouse
何百万人ものイラク人が最近、抗議行動をした際、彼らの主要スローガンは≪アメリカは中東から出て行け!≫だった。
これを、どのように解釈すべきだろう?
明らかに、中東には多くの社会的緊張がある。階級的、民族的、宗教的、文化的な。この地域は、何百年だけではなく、数千年も遡る対立と緊張の継ぎはぎ細工だ。世界中のどこであれ、常に不正な上流階級に反抗する多くの理由がある。だが個々の国や地域の特定状態の、現実的、徹底的な分析に基づいていなければ、いかなる反乱も成功できない。
アフリカと同様に、中東の国境は恣意的に引かれている。国境は、人々自身が欲した産物というよりは、帝国主義列強のごまかしの産物だ。
非植民地化の時代には、統一されたアラブ世界の創出を願う、強力な、非宗教的汎アラブ運動があった。この運動は、当時大衆の強い支持があった民族主義と社会主義の考えに影響されていたを。ヨルダンのアブドゥッラー1世国王が、ヨルダン、パレスチナとシリアから構成される王国を構想していた。エジプトとシリアは、短期間、アラブ連合共和国と呼ばれる連合を設立した。カダフィは、リビア、シリアとエジプトを結び付けたアラブ共和国連邦を望んでいた。1958年に、まもなく解消された同盟、アラブ連盟と呼ばれるものが、ヨルダンとイラク間で設立された。これら全ての努力は一時的だった。結局、残ったのは、国家の連邦でも、同盟でもない、アラブ連盟だ。もちろん、クルド国家や、類似の、何かが複数のクルド極小国家から構成されるものへの要求はある。それでも、第一次世界大戦後の、最も争いの種となった産物は、パレスチナ人の土地へのイスラエル国家設立だった。第一次世界大戦中、イギリスのアーサー・バルフォア外務大臣が、後にバルフォア宣言として知られるようになった≪ユダヤ人がパレスチナの地に国民的郷土を樹立することにつき好意をもって見ることとする»約束をしたのだ。
だが国を作るこれら全ての試みの基盤は一体何だろう?成否の必要条件は何だろう?
帝国主義列強は、彼らの間の権力関係によって世界を分割する。
レーニンはこれについて《資本主義の最高の段階としての帝国主義》で最良で最も永続性がある解説をし、帝国主義時代の五つの基本特徴を説明した。
1.生産と資本の集中は非常に高い段階に発展し、経済生活上、決定的役職を果たす独占を生み出す。
2.金融資本と産業資本の統合と、この「金融資本」を基にした金融寡頭政治の成立
3.商品輸出とは異なる資本輸出が、例外的に重要になる。
4.彼らの間で世界を分割する独占資本主義者の国際的連合の設立
5.最大の資本主義列強間での全世界の地域分割が完了する。
だがレーニンは、とりわけ、様々な資本主義諸国における生産力の不均等な発展ゆえに、資本主義諸国は不均等に発展すると指摘した。しばらくすると、世界の分割のされ方と、帝国主義列強の相対的な勢力との間に差が生じる。この相違は、最終的に、権力の新しい関係に基づいた世界の再分割を強いることになる。レーニンは、こう述べている。
「資本主義の下で、片や生産力の発展と資本蓄積と、片や植民地の分割と金融資本の勢力圏との間の乖離を克服するのに戦争以外あり得るだろうか?というのが問題だ。」 |
二つの世界大戦は、帝国主義列強間の力関係の不均衡さゆえに起きた戦争だった。大英帝国は全盛期を過ぎており、イギリス資本主義は競争で遅れていた。アメリカとドイツが最大の産業的、技術的成長をしていた強国で、最終的にこの不均衡は爆発した。一度ならず二度。
ベルサイユとヤルタ
第一次世界大戦の勝利者は、敗者を犠牲にして世界を彼ら自身の間で分割した。主な敗者はドイツ、オーストリア・ハンガリー、ロシア(ソ連)とオスマン帝国だった。この分割は、ベルサイユ条約と、それに続く小規模な条約で決められた。
ベルサイユ条約(ウィキペディア)後のヨーロッパ
この地図はオスマン帝国がどのように分割されたかを示している。
第二次世界大戦の終わりに、勝利者の列強が、ソ連、クリミア半島のヤルタで会合した。ドイツの差し迫った敗北後、ヨーロッパをどのように分割すべきかについて、ルーズベルトとチャーチルとスターリンが協議した。この地図はそれがどのように構想されたかを示し、その後に現れた二つのブロックが、冷戦の基盤になった。ベルサイユの後、1919年に作られたユーゴスラビアは維持され、《二つのブロック間の》として統合されたことに留意願いたい。だからユーゴスラビアは、ベルサイユとヤルタ合意両方の遺産を維持する国だった。
ソ連が崩壊した際の決定的変化
帝国主義時代には、種々の列強間の争いが常にあった。戦いは、市場、安い労働力の利用、原材料、エネルギー、輸送路や軍事支配を巡るものだった。帝国主義諸国は、その勢力によって世界を彼らの間で分ける。だが帝国主義列強は不均等に発展する。
ある大国が崩壊したり、ある地域に対する支配を失ったりすれば、ライバル国が空隙を満たすために競争する。帝国主義列強は、自然哲学で、アリストテレスが、ホロール・ヴァキュアイと呼んだ「自然は真空を嫌悪する」原理に従うのだ。
ソ連が冷戦に破れた時に、まさにそれが起きたのだ。1991年、ソ連は存在を停止し、まもなく東欧圏も過去のものになった。それで古い秩序を維持していた均衡が破れた。巨大な領域が、再分割可能になったのだ。弱体化したロシアは、少し前まで、ソ連が支配していた地域ではなく、かろうじて自身の領土を保存するのに成功した。
「これほど広大な地域が、再分割に開放されたことはこれまで決してなかった。あらたに手に入れることが可能になったのは、二つの恐ろしい世界大戦の結果だった。戦争にならざるを得なかった。」(Pål Steigan1999)
ソ連が崩壊したとき、ヤルタ協定とベルサイユ協定の両方が現実に崩壊し、この地政学的空間を支配するための荒々しい競争への道が開けたのだ。
これが、巨大なユーラシア大陸の支配確保に全力を注ぐ、アメリカのユーラシア地政学戦略のため土台を築いたのだ。1990年以来、大半の戦争の基礎にあったのは、アメリカ合州国に有利なこの再分配のための取り組みだ。ソマリア、イラク戦争、バルカン戦争、リビア、ウクライナとシリア。
アメリカは積極的に、この先頭に立っており、東方にNATOを拡大し、いわゆる《カラー革命》の形で政権交代を引き起こすプロセスも、この戦いの一環だった。キエフでのクーデター、ナチ分子を利用した、ウクライナのアメリカ植民地への変換や、ドンバスでの戦争もこの構図の一部だ。ロシアが征服されて、手足をばらばらにされるか、アメリカの攻撃を終わらせるまでは、この戦争は終わるまい。
そこで要約しよう。世界には、帝国主義列強間で分ける、征服すべき新植民地がもはやないので、諸列強は再分配のために戦うしかないのだ。新たな分割の基盤と可能性を作り出すのは資本主義の不均等な発展だ。経済的、技術的に、より速く発展する列強は、より大きな市場、より多くの原材料、更なる戦略的支配を要求するのだ。
二つのひどい戦争の結果は、またもや、再分割に対して開かれたのだ。
第一次世界大戦は、おそらく2000万人の死者と、少なくとも同じぐらい多くの負傷者を、もたらした。第二次世界大戦は、約7200万人の死者をもたらした。これはおおよその数で、正確な数値を巡って、いまだに論争があるが、ともあれ、数値はこの規模だろう。ベルサイユ条約とヤルタ条約で終わった二つの世界大戦は、他の苦しみや信じ難い数の損失と、一億人をわずかに下回る死者をもたらした。1991年以来、低強度《世界大戦》が、《真空》を征服するため、特にアメリカによって戦われている。ドナルド・トランプは最近、アメリカが、ウソに基づいて、8兆ドルと、何百万人の命を失った戦争をしたと述べた。アメリカによる戦利品の新分配は、平和裡には起きなかったのだ。
《サイクス-ピコ協定に対する反乱》
中東の状況を巡る議論で、左翼的、急進的、反帝国主義に見られたいと願う人々の中には、サイクス-ピコ条約とベルサイユ条約で引いた人為的国境に反対する時期だと言う人々がいる。確かにこれら国境は人工的で帝国主義的だ。だが、左派と反帝国主義者は、今これら国境を、一体どのように修正させるつもりなのだろう?
現実には、中東再分配のために戦っているのはアメリカとイスラエルだ。これがパレスチナを永久に葬ることを目指すドナルド・トランプの《世紀の取り引き》の根本的基礎であり、イラクを分割するアメリカ新戦略でも、それは露骨に述べられている。
これは全中東分割を目指すシオニストの、イスラエルの本当の敵がいなくなり、地域全体を支配し、大イスラエルの創生も可能にするイノン計画の最新版に過ぎない。
1919年以来の帝国主義国境見直しを率いているのは反帝国主義者ではない。帝国主義者だ。これを実現するため、彼らはしばしば、初めは大衆運動や、国民運動を利用するが、それもやがては、より大規模なゲームでの、手先か代理にされてしまう。これは、もはや数えられることができないほど歴史で何度も起きたことだ。ヒトラー・ドイツは、ウスタシャを代理人として使い、クロアチア人の愛国心を利用した。1929年から1945年まで、彼らは何十万というセルビア人やユダヤ人やロマ人を殺した。彼らのイデオロギーの政治的子孫は、1995年、クライナ地域で極めて残忍な民族浄化を実行し、いわゆる「嵐作戦」で200,000人以上のセルビア人を追い出した。ヒトラーも、ステパーン・バンデラのウクライナ民族主義者組織OUNの過激ウクライナ民族主義者を使い、バンデラ死後、CIAはソ連に対し、彼らを第五列として使い続けた。
1991年の湾岸戦争から2003年のイラク戦争までのアメリカによる低強度イラク戦争は、イラクを飛び領土に分割するのを助けた。イラク・クルディスタンはアメリカ《飛行禁止区域》の助けを借りて、石油豊富な北部で自治を実現した。アメリカは、それでイラクで彼らの道具となる自治区を作り出したのだ。確かに、イラクのクルド人はサダム・フセインの下で虐げられていた。だが確実に(彼らのイラク《クルディスタン》はアメリカの言うなりになる属国になったのだ。ブトロス・ブトロス・ガリ国連事務総長がジョン・ピルジャーとの会話で認めたように、飛行禁止区域が非合法だったことに疑問はない。
今アメリカ合州国は、イラクを三つに分ける計画で、北イラクのクルド人をいまだに利用している。その目的で、彼らはエルビルに世界最大の領事館を建設している。彼らが計画しているのは、単なる《国づくり》に過ぎない。
よく知られているように、アメリカは、シリアの27パーセントを占領しておくため、シリアでも、クルド人を口実として使用している。クルド民兵のシリア民主軍SDFやクルド民主統一党PYDが、いくら民主政治やフェミニズムや自治主義を主張しても助けにはならない。彼らはアメリカに北東シリア占領を維持するよう懇願する結果になっている。
新世界戦争のための準備
イスラエルとアメリカは対イラン戦争の準備をしている。この戦いで、彼らは人々をだますために必要なだけ大量の《進歩的》言説を開発するはずだ。そこにあって至極当然の、この地域における本物の不満が誇張され、大きく炸裂するだろう。イスラエルが《社会運動》に最新ニュースを用意し、大量の現金の他に、訓練や後方支援というアメリカ《暴動キット》を受け取るだろう。
1919年の国境を修正する良い理由があるかもしれないが、今日の状況では、そのような動きは直ぐさま大戦争を引き起こすだろう。クルド人には、彼ら自身の国家をもつ権利があるという人々がおり、おそらくそうかも知れない。問題は、究極的に、クルド人以外の、他の人々によって決められるのだ。問題は今日の地政学の状況で、統一クルディスタンを作るには、《それ》がトルコとシリアとイラクとイランを打倒するのを要求することだ。彼らの同盟諸国、特にロシアと中国が紛争に巻き込まれずに、それがどのように起きるかを考えるのは困難だ。そうなれば、我々にとって新たな世界大戦になる。その場合、一億人ではなく、おそらく、その十倍が死亡するか、我々が知っている文明の崩壊になる。クルド問題には、それだけの価値はない
これは、社会的てあれ、国家的であれ、圧迫や不正と戦うべきではないことを意味するのではない。確実に、戦うべきだ。だが中東地図を修正するのは非常に危険な計画で、非常に危険な結果になるリスクを冒すのを理解しなければならない。これに代わる選択肢は、アメリカとイスラエルの覇権を弱体化させ、それにより将来の戦いのための、より良い条件を引き出す政治闘争を支持することだ。
小国が何らかの形の国家独立を実現するため、地政学状況に頼るのは目新しいことではない。これは例えば、私の生国ノルウェーで事実だった。1814年にナポレオン戦争でフランスに敗北し、デンマークが、ノルウェーをスウェーデンに取られたが、同時にそれは別のノルウェー憲法と内部自治の余地を生んだ。皆が、1814年のノルウェー建国始祖たちを讃えるが、これはヨーロッパ戦場で決定されたのだ。そして再び、ほぼ百年後の1905年、スウェーデンとの強制された連合解消のための地政学的土台を築いたのは日露戦争でのロシア敗北だった。(これはごく大雑把な説明で、遥かに多くの細部があるが、ロシアが極東で艦隊の大半を失ったことが、西欧で利用可能な権力の空白を作ったのは確実だ。)
だから、今すべき最善のことは、各国の分裂を支持するのではなく、アメリカを中東から追い出すための共同戦線の支持だ。バグダッドでの百万人抗議行進が口火を切った。それに続いて更に多くの勢力を強化すべき十分な理由がある。アメリカが撤退した時だけ、この地域の民族と国々は、より良い未来の発展を可能にする、彼らの間での平和協定に達することが可能になるだろう。この文脈で、中国が他の列強よりも気高いからではなく、このプロジェクトが少なくとも現状では、非宗派的で、非排他的で、正真正銘、多国間なので、中国が(一帯一路構想としても知られる)《シルクロード》を開発しているのは良いことだ。ワシントン支配下の世界警察を持ったアメリカによる独占的支配に代わる選択肢は多極世界だ。こうしている間にも、それは成長している。帝国の余命はいくばくもない。これが、20年、あるいは50年後に、どういう姿になっているか、まだわからない。
Pål Steiganは現在ノルウェーのベテラン・ジャーナリストで活動家、独立ニュースサイトSteigan.noの編集者。テーリエ・マロイによる翻訳。
記事原文のurl:http://www.informationclearinghouse.info/52930.htm
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