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北朝鮮の「ロケットマン」復活で近づく米朝戦争の足音
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/12/post-13677.php
2019年12月25日(水)16時15分 フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト) ニューズウィーク
朝鮮中央通信は9月、超大型ロケット砲を視察する金の写真を公開 KCNA-REUTERS
<悪口合戦の再開とミサイル発射の懸念、トランプと金正恩の危険なゲームの行方は......>
ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の「ブロマンス」が終わり、再び「炎と怒り」の時が来る──。
トランプは12月初旬、NATO首脳会議出席のために訪れたロンドンで、金を「ロケットマン」と呼んだ。米朝の軍事衝突も危ぶまれた2017年当時、自ら金に付けたあだ名だ。この発言に、北朝鮮高官らは「老いぼれのもうろく状態の再発」と応酬した。
北朝鮮のミサイル発射施設では最近、新手のロケットエンジンの実験を示唆する動きが確認されている。北朝鮮は2019年に入ってから12月21日までに、短距離ミサイル発射を13回行っているが、韓国や日本の懸念をよそに、トランプは問題視していない。だが北朝鮮が約2年ぶりにICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験を再開すれば、さすがに黙っていないだろう。
米朝間の行き詰まりは、双方の指導者それぞれの思い込みの激しさに起因している。トランプは、2018年6月に行われた史上初の米朝首脳会談で金は核放棄を約束しており、いずれ実行すると信じているらしい。だが実のところ、金はそんな約束はしていない。
両首脳が署名した共同声明には、北朝鮮が「朝鮮半島の完全非核化に向けて努力する」とある。この表現は目標実現も、目標を達成する意志があることさえも意味しない。さらに「朝鮮半島の非核化」とは、北朝鮮側が主張しているように、核兵器搭載可能な米航空機や米艦船を含む全ての核兵器を、朝鮮半島を射程内に収める全ての場所から排除するということだ。
■どんな前進も望めない
もっとも、元CIAアナリストでブルッキングス研究所上級フェローのパク・ジョンヒョンによれば、最大の障害は金だ。祖父の金日成(キム・イルソン)、父親の金正日(キム・ジョンイル)も大国に対して瀬戸際戦術で臨んだが、彼らは引くべき時を心得ていた。一方、金の認識能力や洞察力ははるかに劣るようだ。
金が実務者協議に関心を持たず、再度の米朝首脳会談を、できれば平壌で実施したがっているのは明らかだ。その前提には、一対一の会議であれば、より簡単にトランプを懐柔できるとの読みがある。
だが、トランプはそれほど簡単な相手ではないかもしれない。金の最大の望みはアメリカの制裁解除だが、トランプは制裁を少しも緩和していない。ロシアやサウジアラビア相手の場合と違って、トランプの側近の間に、大きな譲歩のないまま北朝鮮を容赦する方針に賛成する向きはない。
つまり北朝鮮問題ではどんな前進も望めない。さらなる不安材料は状況悪化の可能性だ。北朝鮮がICBM発射に踏み切ったら、もしくは再度の核実験を行ったら? 「ロケットマン」にだまされていたと気付いたトランプが毒舌と脅しで襲い掛かり、北朝鮮が脅しで逆襲し、戦争の引き金が引かれるのか。
今となってはその可能性はより高い。トランプは何もかも問題ないと自信満々、金のほうは何をしても罰を受けないと信じ込んでいるからだ。
米朝の危険なゲームは今や特に危険だ。金がいくらか正気を取り戻し、トランプがより責任ある人物になる。そんなあり得ない展開に平和の行方が懸かっているのだから。
©2019 The Slate Group
<2019年12月31日/2020年1月7日号掲載>
【参考記事】米朝協議「決裂」で、またミサイル実験の応酬が始まる?
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