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離脱強硬派ジョンソン勝利でイギリス「連合王国」解体か
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/12/eu-206.php
2019年12月13日(金)17時05分 ジョシュア・キーティング ニューズウィーク
ボリス・ジョンソン率いる保守党の大勝でイギリスは来年1月にEUを離脱することに Toby Melville-REUTERS
<EU離脱の「脅威」から逃れようとスコットランドは独立へ、アイルランドは統一へ。イングランドの政治家も、もはや「連合王国」を維持する熱意がない>
イギリスは12月12日、事実上、ブレグジットの是非をもう一度問う総選挙を行った。2016年6月に国民投票でブレグジット(EU離脱)を選択したのだが、こじれにこじれてここへ至った。結果は、離脱強硬派のボリス・ジョンソン首相率いる保守党が下院の過半数を制し、来年1月の離脱にお墨付きを得た。
だが、そんな変化は序の口だ。ブレグジットのおかげで、イギリスはひとまとまりの「連合王国」としての存在を終えることになるかもしれない。
<参考記事>パリ高級不動産が急騰 イギリスEU離脱が追い風に
■勢いづくスコットランド独立派
EU離脱が現実味を帯びたことで、EU残留を望んできたスコットランドではイギリスからの独立派が勢いを増している。スコットランドの独立を目指す地域政党のスコットランド民族党(SNP)も、大幅に議席を伸ばしたようだ。SNPのニコラ・スタージョン自治政府首相は、選挙中は独立の主張を抑え気味にしてきたが、依然として2020年に独立を問う国民投票の実施を求めていることに変わりはない。
イギリス政府が住民投票の実施を許可しなければ、SNPはスペインのカタルーニャ方式を選択し、無許可の住民投票を実施することも辞さない構えだ。大混乱に陥っているカタルーニャの現状を考えれば、相当に憂慮される事態だ。
EUとの離脱協議で最大のハードルとして浮上した北アイルランド問題も未解決のままだ。イギリスがEUに加盟したことによって、その一部である北アイルランドは、隣国アイルランドと経済的文化的な絆を深めることができた。それによって初めて凄惨な北アイルランド紛争の傷を癒し、アイルランドとの和平を実現することができたのだ。イギリスがEUから離脱すれば、また北アイルランドとアイルランドの間に壁ができるのか。
北アイルランドの親英保守政党「民主統一党(DUP)」は、最近まで保守党と連立を組んできたが、今回は議席を減らすと予測されている。一方、北アイルランドのナショナリスト政党「シン・フェイン党」は議席を増やしそうだ。
<参考記事>イギリスが強硬離脱すれば、南北アイルランドは統合へ向かう
北アイルランドの有権者にイギリス残留を望むか、アイルランドへの編入を望むかを尋ねた9月の世論調査では、両者の意見は拮抗していた。しかしそれは10月にジョンソンの離脱協定案が出される前だ。この協定案では、北アイルランドにはEUの関税ルールが適用されることになっているため、経済上はEUに残留し、アイルランドとも行き来できることになる。
トニー・ブレア労働党政権時代の政権顧問が主張するように、「逆説的だが、ジョンソンとブレグジットはアイルランド共和軍(IRA)の独立闘争よりもアイルランド統一に貢献するかもしれない」。
だがイギリス連合王国にはもっと強大な脅威がある。それはイングランド人、特にイングランド人の保守党支持者だ。彼らは英連合を維持することに対する熱意を失くしている。
■保守党支持者の変質
今年10月に実施された世論調査で、イングランド人保守党支持者の53%が、例え北アイルランド和平プロセスが白紙になったとしてもブレグジットを支持すると回答した。また77%が、例えスコットランド独立を問う2度目の住民投票に繋がるとしても、ブレグジットを支持すると回答した。つまり保守党は正式名称が「保守統一党」なのに、彼らは、かつてのIRA(アイルランド共和軍)支持者でスコットランド独立派と手を組みそうなジェレミー・コービン労働党首よりも、イギリス「統一」への関心が薄い。
イギリス解体の実現は、まだ遠い先のことようにしか思えるかもしれない。現在の世界で国境線を引き直すのが極めて稀なのは事実だ。しかしイギリスの政治をみていると、単なる空想とはとても思えなくなる。
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