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中村哲さん 聴診器をスコップに替えて アフガンに緑の奇跡
(18年のインタビューを再掲)
生活
2019/12/4 17:44日本経済新聞 電子版
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中村哲さんは2018年、日本経済新聞のインタビューに応じ、自身の人生について語りました。謹んでお悔やみ申し上げ、18年10月21日付 NIKKEI The STYLE「My Story」の記事を再掲します。
アフガニスタンで30年以上、医療・農業支援に取り組む中村哲さんは不器用な人だ。愚直で寡黙、困難に背を向けることを潔しとしない自称「古い日本人」。干ばつに苦しむ人々を放っておけず聴診器をスコップ…
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52952760U9A201C1000000/?n_cid=DSREA001
中村哲医師、アフガンで銃撃され死亡 現地で人道支援
中東・アフリカ 社会・くらし
2019/12/4 17:35 (2019/12/4 17:58更新)
アフガニスタンで医療や灌漑(かんがい)事業などの人道支援に取り組む非政府組織(NGO)「ペシャワール会」(福岡市)の中村哲医師(73)が4日、現地で銃撃され、死亡した。ペシャワール会が明らかにした。
アフガニスタン東部ナンガルハル州の報道官によると、中村さんのボディーガードや運転手ら5人も死亡したという。
ペシャワール会によると、現地時間の同日朝、東部の都市ジャララバードから灌漑用水事業の現場に向かう途中で、乗っていた車両が銃撃を受けた。中村医師は右胸に銃弾を受け、病院に搬送される際は意識があったという。
中村医師はペシャワール会の現地代表のほか、PMS(平和医療団・日本)の総院長を務める。2003年から深刻な干ばつで苦しむアフガニスタン東部のナンガラハル州で用水路建設を開始。年間の半分以上は現地に滞在し、農業振興に取り組んでいた。
【関連記事】 聴診器をスコップに替えて 中村哲さん、アフガンに緑の奇跡
反政府武装勢力のタリバン関係者は4日、日本経済新聞の取材に「今回の日本人の攻撃には関与していない」と語った。ただアフガニスタンにはタリバンのほか、過激派組織「イスラム国」(IS)など20強のテログループが活動しているとみられ、地域情勢が不安定になっている。
菅義偉官房長官は4日の記者会見で、アフガニスタンで医療活動などに取り組む中村哲医師が現地で銃撃されたことを受け、外務省に領事局長をトップとする対策室を、在アフガニスタン日本大使館に現地対策本部をそれぞれ設置したと明らかにした。「さらなる情報収集をしている。誰から銃撃されたとの情報はまだ得ていない」と語った。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52949440U9A201C1MM8000/
アフガニスタンでNGOの車両襲撃 中村哲医師含む6人死亡
2019年12月4日(水)17時52分
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アフガニスタン・ナンガラハル州の都市ジャララバードで、非政府組織(NGO)の車が襲撃を受け、ピースジャパンメディカルサービス(平和医療団日本)総院長の中村哲医師など6人が死亡した。写真は中村医師が乗っていた車の壊れた窓。アフガニスタンのジャララバードで撮影(2019年 ロイター/Parwiz)
アフガニスタン・ナンガラハル州の都市ジャララバードで4日、非政府組織(NGO)の車が襲撃を受け、ピースジャパンメディカルサービス(平和医療団日本)総院長の中村哲医師など6人が死亡した。
同州の当局者が明らかにした。犯人は逃走し、犯行声明は出ていない。
中村医師はアフガニスタンで灌漑(かんがい)や農業の復興作業を支援してきた。
[ロイター]
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/12/ngo6.php
故・中村哲医師が語ったアフガン「恐怖政治は虚、真の支援を」
治部 れんげ
2019年12月4日
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アフガニスタンで支援活動を長年続けてきた中村哲医師が12月4日、現地で銃撃を受けて亡くなりました。謹んでお悔やみ申し上げ、2001年10月22日号『日経ビジネス』の記事を再録いたします。
中村哲医師(写真:AP/アフロ、2008年8月撮影)
米軍によるアフガニスタンへの報復攻撃が続く中、一般市民はどんな状況なのか。パキスタン北西部の都市ペシャワールを本拠地に、アフガン東部で18年間にわたり医療活動を続けている、非政府組織「ペシャワール会」の現地代表・中村哲医師に現地の様子やタリバン政権の実態について聞いた。中村医師は米ニューヨークのテロ事件直後にアフガン入り。10月13日現在一時帰国中だが、今月中に再度ペシャワール入りする予定である。
市民は北部同盟を受け入れない
今、アフガニスタンの市民は思ったより冷静です。首都カブールと北部のジャララバードにある会のオフィスから毎日2回連絡がくるので、日本にいても状況はつかめます。会はカブール市内に5カ所の診療所を運営していて毎朝8時に朝礼をしていますが、空爆の後も変わっていません。
日本の報道で一番伝わってこないのが、アフガンの人々の実情です。北部同盟の動きばかりが報道されて、西側が嫌うタリバン政権下の市民の状況が正確に伝わらない。日本メディアは欧米メディアに頼りすぎているのではないか。
北部同盟はカブールでタリバン以前に乱暴狼藉を働いたのに、今は正式の政権のように扱われている。彼らが自由や民主主義と言うのは、普通のアフガン市民から見るとちゃんちゃらおかしい。カブールの市民は今、米軍の空爆で20人、30人が死んでも驚きません。以前、北部同盟が居座っている間に、内ゲバで市民が1万5000人も死にましたから。
今もてはやされている北部同盟の故マスード将軍はハザラという一民族の居住区に、大砲や機関銃を雨あられと撃ち込んで犠牲者を出した。カブールの住民の多くは旱魃で農村から逃げてきた難民。22年の内戦で疲れ切っていて、「もう争いごとは嫌だ」と思っている。
逆に言うと、厭戦気分が今のタリバン支配の根っ子にあると思います。各地域の長老会が話し合ったうえでタリバンを受け入れた。人々を力で抑えられるほどタリバンは強くありません。旧ソ連が10万人も投入して支配できなかった地域です。一方で市民は北部同盟は受け入れないでしょう。市民は武器輸送などでタリバンに協力しています。北部同盟に対しては、昔の悪い印象が非常に強いですから。
タリバンは訳が分からない狂信的集団のように言われますが、我々がアフガン国内に入ってみると全然違う。恐怖政治も言論統制もしていない。田舎を基盤とする政権で、いろいろな布告も今まであった慣習を明文化したという感じ。少なくとも農民・貧民層にはほとんど違和感はないようです。
女性の「隠れ通学」を黙認
例えば、女性が学校に行けないという点。女性に学問はいらない、という考えが基調ではあるものの、日本も少し前までそうだったのと同じです。ただ、女性の患者を診るために、女医や助産婦は必要。カブールにいる我々の47人のスタッフのうち女性は12〜13人います。当然、彼女たちは学校教育を受けています。
タリバンは当初過激なお触れを出しましたが、今は少しずつ緩くなっている状態です。例えば、女性が通っている「隠れ学校」。表向きは取り締まるふりをしつつ、実際は黙認している。これも日本では全く知られていない。
我々の活動については、タリバンは圧力を加えるどころか、むしろ守ってくれる。例えば井戸を掘る際、現地で意図が通じない人がいると、タリバンが間に入って安全を確保してくれているんです。我々のカバー領域はアフガン東部で、福岡県より少し広いくらい。この範囲で1000本の井戸があれば40万人程度は生活ができると思います。
次ページ禍根残す日本の対テロ法
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国連が描く難民救済のシナリオは、米軍の報復攻撃によってパキスタンに移動してきた段階で助ける、というもの。だが、中村医師は「難民化を食い止めることが何より重要」と主張する。
カブール市の人口は約100万〜150万人。平均して3〜4割は慢性の栄養失調で、放っておくと死にそうなのが1割くらい。だからこの1割、15万人が緊急食料援助の対象です。
カブールは標高1500〜1600mで、11月下旬〜2月が冬。雪に閉ざされるので冬ごもりします。食料を蓄える見通しがなければ、当然、難民化して動かざるを得ない。これから3〜4カ月を無事に過ごせる状態にすれば、移動すらできない貧しい人も助かります。
禍根残す日本の対テロ法
米国の食料投下は全く役立っていない。日本時間の10月12日夜に聞いた話によると、現地の人は気味悪がって食べずに、集めて焼いたそうです。タリバンが焼いた場合も、民衆が自発的にやった場合もある。例えば干し肉が入っていたら、豚肉の可能性もあるので、イスラム教徒は食べられない。
本当は小麦を送るのが一番いいんです。今行われていることを総じて言うと、イスラム社会の都合や考えを無視して、西欧社会の都合が優先されている。ものすごい運賃をかけて物を送ったり、自衛隊を出すかどうかで大騒ぎして、結局役に立っていない。
あちらの慣習法で大切なのが、客人歓待。ビンラディンもいったん客人と認めたからには、米国だろうと敵に客人を渡すのは恥、と考えるんです。
嘘みたいな話ですが、1億円もあればカブールの人が全部助けられる。我々が今回やる緊急の食料援助プロジェクトで試算すると、1家族10人が3カ月の冬を越すのにたったの6000円で済む。これで急場をしのいでいるうちに、国連などが動き出すはずです。
こんなふうに死にかけた小さな国を相手に、世界中の強国がよってたかって何を守ろうとしているのでしょうか。テロ対策という議論は、一見、説得力を持ちます。でも我々が守ろうとしているのは本当は何なのか。生命だけなら、仲良くしていれば守れます。
だから、日本がテロ対策特別措置法を作ったのは非常に心配です。アフガンの人々はとても親日的なのに、新たな敵を作り、何十年か後に禍根を残します。以前は対立を超えてものを見ようとする人もいましたが、グローバリズムの中で粉砕されていく。危険なものを感じます。
中村 哲(なかむら・てつ)氏
非政府組織「ペシャワール会」現地代表。1946年福岡県生まれ、九州大学卒。自身はクリスチャンだが「アフガン人は全く気にしない」という。
「ペシャワール会」とは
中村哲医師が現地代表を務める非政府組織「ペシャワール会(PMS)」は18年間、パキスタン北西部とアフガニスタン東部にまたがって医療活動を続けてきた。
現在、パキスタンの都市ペシャワールの基地病院を本拠地に、パキスタン側に3カ所、アフガン側に8カ所の医療施設を持つ。スタッフは日本人7人、現地人220人で、貧困層を対象に年間20万人以上を診療している。
中村医師は1984年に、キリスト教系の医療団体から派遣され、ペシャワールでハンセン病の治療に当たっていた。彼の現地での活動を支援しようと、福岡市の有志が結成したのがペシャワール会だ。現在4000人の会員からの寄付金で成り立っている。
PMSは昨年夏から、井戸掘り事業も手がけている。昨年の大旱魃で、全国民1500万〜2200万人のアフガン国民のうち、被災者1200万人、400万人が飢餓に瀕したためだ。同会は、医療以前に水の確保が急務と考え、アフガン東部の660カ所の作業地で550カ所の水源を確保、30万人の離村・難民化を食い止めた。
米国の攻撃で海外の援助団体が引き揚げてしまったため、中村医師は「既に巨大な難民キャンプ状態であるカブール市内で、10万〜15万人がこの冬を越えられずに餓死する」と判断。会では総額6000万円弱の緊急食料援助プロジェクトを開始した。
PMSの活動は、中村医師の著書『医は国境を越えて』『医者 井戸を掘る』(ともに石風社)で詳細が分かる。
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