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中ロ、エネルギー互恵深化 初の天然ガスパイプライン/日経デジ
中国・台湾 ヨーロッパ 2019/12/2 18:12
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52860710S9A201C1EA1000/
【モスクワ=石川陽平、重慶=多部田俊輔】ロシアから中国に天然ガスを運ぶ初のパイプライン「シベリアの力」が2日稼働した。天然ガスの輸入で世界最大の中国と、輸出で最大のロシアが手を組み、エネルギーでの戦略的な関係を築く。中ロは軍事面にまで連携を拡大しており、経済や安全保障問題で摩擦を抱える米国に共同で対抗する。
2日の稼働式典にテレビ中継で参加したロシアのプーチン大統領は「エネルギー分野での中ロの戦略的関係を質的に新しい水準に引き上げる」と強調した。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席も「(中ロの)深い統合と戦略的協力の見本だ」と述べた。
新しいパイプラインはロシアの政府系ガス会社ガスプロムが建設した。東シベリアのガス田から中国北東部との国境地域に延びる全長約3200キロメートルで、2日はこのうちバイカル湖北方のガス田からの約2200キロメートルが稼働した。本格稼働は24年以降になる見込み。輸送能力は年380億立方メートルに達し、中国の年間輸入量の約2割に当たる。
ガスプロムは2014年、中国国有の中国石油天然気集団(CNPC)と期間30年の供給契約を結んだ。国境地点でCNPCが建設したパイプラインに接続し、当面は中国東北部の吉林省までの千キロメートルが開通する。
23年には上海近くまでのパイプライン網が整う見込み。中国の関係者によると、供給価格は当時公表の30年総額で約4000億ドル(約44兆円)より2割程度安くなるとみられる。
中国は大気汚染問題を改善するため、発電や熱源供給の燃料について環境負荷の大きい石炭から天然ガスへの転換を急ぐ。18年には日本を抜き、世界最大の天然ガス輸入国になった。急増する需要に対応するためには、隣国ロシアからの調達拡大が欠かせない。
中ロは近年、エネルギー協力を多様化させてきた。11年にはロシアから中国北東部に向かう石油パイプラインの支線が稼働した。19年にはロシアの北極圏での液化天然ガス(LNG)開発事業「アークティック2」への中国企業の出資も決まった。今回の両国間の初のガスパイプラインでエネルギー同盟は一段と強固になる。
資源エネルギー分野で中ロが接近する背景には、両国が対立を深める米国の存在がある。
中国は米国との貿易戦争の長期化に備え、資源エネルギーの新たな輸入先の確保が課題になってきた。米国はもともとLNGで主要な輸入先だったが、貿易摩擦の激化で急減した。現在はカタールなどからの輸入に頼るが、ロシアからのパイプラインによるガス供給で長期の安定調達先が拡充する。
ロシアも欧州のガス供給を巡って米国と対立する。ロシアは欧州への新しいガスパイプライン「ノルドストリーム2」(輸送能力、年550億立方メートル)を年内にも完工する見通しだが、欧州へのLNG輸出拡大をめざすトランプ政権は制裁を科す構えをみせる。
ロシアが14年にウクライナのクリミア半島を武力併合してから、米欧諸国は経済制裁に動いてきた。欧州向け輸出の長期戦略が描きにくくなったロシアは、中国への供給拡大に意欲をみせる。
中ロはエネルギー同盟と並行し、軍事や外交の面でも連携強化に動いている。中ロ両軍は9月、ロシア南西部で2年連続となる大規模な軍事演習を実施した。「強軍路線」を掲げる習政権は、軍事的応用も可能な技術開発についての中ロ協力も視野に入れているとされる。
「米国第一」を掲げるトランプ政権が内向き志向を強めるなかで、中ロは経済から軍事まで幅広い協力関係を築く。米国の民主主義に対抗する国家資本主義が中ロを軸にして台頭するリスクが高まりつつある。
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