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トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請求書
2019年11月16日(土)19時15分
ララ・セリグマン、ロビー・グレイマー(共にフォーリン・ポリシー誌記者)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13400.php
トランプ政権は日本政府に対して「思いやり予算」を現在の4倍以上に増やすように要求 Jonathan Ernst-REUTERS
<21年3月末の日米特別協定更新の期限を前に、日本が負担している約20億ドルを約80億ドルに増やすことを日本政府に求めた>
トランプ政権は日本政府に対して「思いやり予算」を現在の4倍以上に増やすように要求 Jonathan Ernst-REUTERS
<21年3月末の日米特別協定更新の期限を前に、日本が負担している約20億ドルを約80億ドルに増やすことを日本政府に求めた>
トランプ米大統領が日本政府に対し、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を大幅に増やすよう要求していることが分かった。
事情を知る米政府関係者および元米政府関係者がフォーリン・ポリシー誌に語った話によれば、トランプ政権は日本政府に米軍駐留経費負担を現在の4倍以上に増額することを求めているという。7月に日本を訪問したジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官とマット・ポティンジャーNSCアジア上級部長(いずれも当時)が要求を伝えたとのことだ。
米政府が米軍駐留経費の負担増を要求しているアジアの同盟国は、日本だけではない。ボルトンとポティンジャーは韓国にも、経費負担を現在の約5倍に増やすよう求めたと、同じ消息筋は語っている。日本には約5万4000人、韓国には約2万8500人の米兵が駐留している。
「このように法外な要求を一方的に突き付けるやり方は、反米感情に火を付けかねない」と、元CIA分析官でもあるヘリテージ財団のブルース・クリングナー北東アジア担当上級研究員は懸念する。「同盟が揺らぎ、米軍のプレゼンスが縮小して抑止力が弱まるようなことがあれば、恩恵に浴するのは北朝鮮や中国、ロシアだ」
基地整備や兵器購入も
トランプ政権の日韓両国政府への要求は、世界規模で同盟国に国防支出を増やさせようとする動きの一環と位置付けられる。
トランプは以前から、ヨーロッパの同盟国の国防予算が少な過ぎると批判していた。そうした圧力は効果を発揮したらしい。NATO諸国は来年末までに、国防予算を2016年の水準に比べて1000億ドル以上積み増すことにした。
トランプがNATOの次に目を向けたのがアジアの同盟国だったようだ。アジアでは、中国が軍事力を増強している上に、北朝鮮の軍事的脅威も再び高まっている。日本は、アメリカとの特別協定の下、米軍駐留経費として約20億ドルを拠出している。現在の特別協定は、21年3月末に更新期限を迎える。3人の元米国防総省当局者によれば、米政府は協定更新に向けた交渉が本格化するのを前に、この予算を約80億ドルに増やすことを日本政府に求めた。
韓国も年内に同様の協定の更新期限を迎える。ある元米国防総省当局者によれば、米政府は韓国政府に対し、駐留経費負担を約50億ドルに引き上げるよう要求している。
次のページ防衛装備品の90%以上も米企業から購入
しかし、日本と韓国は既に米軍の活動のために莫大な費用を負担している。
米議会調査局によると、日本は、第二次大戦後の米軍外国基地建設プロジェクトの中でもとりわけ大規模な3つに関して費用のかなりの部分を負担する。具体的には、沖縄県の普天間飛行場代替施設建設に121億ドル(費用の全額)、山口県岩国の海兵隊航空基地建設に45億ドル(費用の94%)、そして、海兵隊員4800人が沖縄から移転することになるグアムの施設に31億ドル(費用の36%)である。
日本の経済的負担は、米軍駐留経費だけではない。日本は防衛装備品の90%以上をアメリカ企業から購入している。ロッキード・マーティン社の最新鋭ステルス戦闘機F35やボーイング社のKC46空中給油機などだ。
膨張し続けるトランプの要求に対して、日本政府は頭を悩ませることになりそうだ。
From Foreign Policy Magazine
<本誌2019年11月26日号掲載>
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no name
ID: 483dc7
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単純に、日本独自で軍備増強するから大丈夫ですと言えばOK
鎖を外す怖さも感じてもらわないとね。
でも、まだ時期尚早なんだよね。実際には…
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12時間前
no name
ID: 303f3a
どうせ日本を命懸けで守ってくれる訳じゃないんだからそのお金で自国防衛のために使えばいい。
アメリカを敵に回す必要はないが、信じ過ぎてもだめだと思う。
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12時間前
no name
ID: ce3f48
米国は一方的に米軍駐留費の4−5倍を日本や韓国に突きつけて反米感情が沸き起こるのを気にしないでいる。国内向けのアピールのみを狙って相手国の感情など無視だ。米国は相手国のためにのみ米軍が常駐しており、その費用は同盟国が支払うべきだと主張している。冷戦後、米国は自国の世界戦略に従って同盟国に米兵を常駐させてきたが、トランプ大統領は、その世界戦略はそのままに、支払いは同盟国がおこなうべきだと方針を変更し
...
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11時間前
no name
ID: fa36c2
今までは、米国に親近感がありましたが、4倍の思いやり予算とは。
同盟国に対するあまりの請求額に、交渉ごととはいえ、そのやり方に不信感、嫌いになりそうです。
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4時間前
no name
ID: 6b9f72
憲法改正の手伝いとしての発言ならありだけど、そうじゃないのならトランプは最大の味方を失う。
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12時間前
no name
ID: fbd4da
金を出すなら、口も出す。
先ずは日米地位協定の改定だ。
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10時間前
no name
ID: af3f61
法外な要求は無視すれば良い。そもそも「思いやり」と言うだけあって既に過大。
最悪中国側について「米帝」と争うくらいの意気込みこそ良い。と、天安門の前は考えていたんだけどね?今じゃ無理だな。結局、トランプ退陣までのらりくらりが一番かね?
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12時間前
no name
ID: 9d2fed
予算を出す代わりに、基地を島根県竹島に移転してくれるなら、10倍でもokですよ。
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12時間前
no name
ID: ce3f48
米国のやりたい放題には、あきれる。韓国の米韓同盟も文大統領の登場の前から見直し要望が出ていた。トランプ大統領は同盟国からの米軍の撤退が選挙の公約であるから、費用負担の要求(4−5倍)、米軍機能を同盟国に移管してくると思われる。まだまだエスカレートしてくるぞ。
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11時間前
通りがかり
ID: 25f7f9
日本にいる米軍の大半は、第二次朝鮮戦争が始まった時の、国連軍と称した米軍の後方支援のためだから、全部を日本が負担するのは可笑しいだろう。
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10時間前
RUSH
ID: e8eedd
日本に米軍が居ないと困るのは日本だけどアメリカとて同じでは?
たまにはそんな法外な要求するならお引き取り下さい、と言ってみたら?
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2時間前
さいさい
ID: 067c12
コレだけは日本も拒否すべき。
アメリカ軍が必要だからやっている事!
中国やロシアを仮想敵国としている以上、日本に基地が必要なことは、以前から言われている。
必要無いなら、沖縄はもっと前に返還されている。
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4時間前
no name
ID: 0e0221
今までも在日米軍には莫大な費用を払ってきたのに中韓の日本への領海侵犯さえみないふり
もはやあてにならない日米同盟や国連加盟は破棄してその費用を軍事増強に充てたほうがいい
核は最もおろかな兵器だが、他国が核を使い恫喝してくるようなら日本も核保有するしか自衛手段はないだろう
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6時間前
no name
ID: 9d0fb7
なんかレンタカーで長年かりっぱって感じ。 流石にそろそろ法律変えていかないとアジアは面倒な国とその後ろで腕組んだ国も含めてきついよ。 遺憾砲での攻撃0ダメージに気付かなかった訳でもないだろうし。
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7時間前
no name
ID: c10455
そろそろ米国ともサヨナラかな、タカリの韓国タカリの米国。ー
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1時間前
おさむくん
ID: baa09f
弾劾でいっぱいいっぱい。疑惑そらしかな。
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9時間前
no name
ID: b39790
ここら当たりで日本独自の防衛を考える時期に来ていると思う。米国に傭兵として駐留させる案もあるがその場合の傭兵経費は日本側で決定する必要がある。傭兵に持たせる兵器や装備も日本側から注文できなければ傭兵を雇う意味がない。また核武装も選択肢の一つにあがるが日本は核武装はするべきではないと思う。核を使用できなければ保有する意味がない。
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12分前
no name
ID: 7ede2a
いやまあトランプのやり方は一部納得できるよ?そもそもアメリカの核の傘ってもんがあるわけだし、アメリカからすりゃなんで極東の小国相手に大金出さなきゃいかんのかとは理解できる。
まあでもやり方ってもんもあるし既に出してる普天間とかの金を勘案には入れるべきだとは思うけどね。トランプの得意なことはビジネスであって荒らしじゃないんだから、出したからにはこっちからも対応する幾つかの要求を通すべき。そ
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47分前
まこと
ID: 61cbad
仕様がないでしょ。自国を守る気無い日本人には金で解決する以外選択肢無いよね。
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24分前
no name
ID: 95d9d0
自前防衛と五倍では五倍の方が安くすむ。首相や防衛関係者の苦しみを国民は知るべきではないか。
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26分前
日本人
ID: 1c0899
ジャイアンに似てるトランプ大統領(笑)
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41分前
no name
ID: 586799
アメリカからしたら日本が全て払うべきって思わな。これでも少ないくらい。
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1時間前
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13400.php
前ウクライナ米大使「根拠のない虚偽の主張に基づき解任された」
2019年11月16日(土)08時48分
トランプ米大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾調査で、マリー・ヨバノビッチ前駐ウクライナ大使は米下院委員会で公開証言を行い、トランプ大統領の個人弁護士ジュリアーニ元ニューヨーク市長から攻撃された後、5月に突然「根拠のない虚偽の主張」に基づき解任されたと述べた。写真は同日、公開証言に臨むヨバノビッチ氏(2019年 ロイター/Sarah Silbiger)
トランプ米大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾調査で、マリー・ヨバノビッチ前駐ウクライナ大使が15日、米下院委員会で公開証言を行った。
ヨバノビッチ氏は、トランプ大統領の個人弁護士ジュリアーニ元ニューヨーク市長から攻撃された後、5月に突然「根拠のない虚偽の主張」に基づき解任されたと述べ、先月の非公開で行った証言の内容を踏襲した。
ヨバノビッチ氏は「ジュリアーニ氏による攻撃の動機は理解できない。また、彼が私について広めていた主張に対し意見を述べることもできない」と述べた。
駐ウクライナ大使の職を解任されたことについては「私は定められた外交政策目標の達成のみを目指していた」とし、「このように外国や個人的な利益が米国の利益を損なうことができた状況を巡りいまだに理解に苦しんでいる」と述べた。
ヨバノビッチ氏の証言開始後、トランプ大統領はツイッターへの投稿で批判を展開。「ヨバノビッチ氏がポストに就いたすべての場所で状況は悪化した。彼女が働いていたソマリアはどうなったか?」と皮肉った。
弾劾調査を主導する下院情報特別委員会のアダム・シフ委員長(民主党)はヨバノビッチ氏に対し、トランプ大統領のツイートについて質問。ヨバノビッチ氏は「非常に威圧的だ」とし、「トランプ大統領が何を目的としているのかは分からないが、威嚇的な効果を発している」と応じた。
同委員会のメンバーであるエリック・スウォルウェル下院議員(民主党)は記者団に対し、トランプ氏によるツイッターでの批判について「証人による証言への威嚇、干渉は一段の妨害行為」とした上で、「自身の行為に対する罪悪感の表れだ。無実の人間はこのような行動は取らない」と語った。
来年の米大統領選に向けた民主党候補氏名を争うカマラ・ハリス上院議員もツイッターへの投稿で「証人への威嚇は犯罪」と批判した。
ワシントン 15日 ロイター]
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13397.php
弾劾調査:新証言でトランプ大統領「最悪の日」
<参考記事>トランプ弾劾調査の引き金になった「ウクライナ疑惑」のすべて
<参考記事>トランプ、ウクライナの次は中国にバイデンの調査を要求 民主主義に最悪の反則と元米NATO大使
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13256.php?
精神医学の専門家が危惧する、トランプの「病的自己愛」と「ソシオパス」
2017年10月27日(金)15時00分
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精神医学の専門家が危惧する、トランプの「病的自己愛」と「ソシオパス」
トランプは単にクレイジーなのか、それともキツネのようにずる賢いのか? Carlos Barria-REUTERS
<トランプの危険な人格を「警告」する義務感に駆られた専門家が寄稿した解説書は、何より米社会の「邪悪の正常化」に警鐘を鳴らす>
2015年6月16日に大統領選への出馬を発表して以来、ドナルド・トランプの常軌を逸した言動に関する話題は途切れたことがない。
ビデオやツイッターでの揺るぎない証拠があるというのに平然と嘘をつきとおし、それを指摘されたり、批判されたりすると、逆上する。そして、こともあろうか、ツイッターで個人を執拗に攻撃する。
これまでの大統領候補や大統領からは想像もできなかったトランプの言動に対し、インターネットやメディアでは「彼は単にクレイジーなのか、それともキツネのようにずる賢いのか?(Is the man simply crazy, or is he crazy like a fox?)」という疑問が繰り返されてきた。
しかし、精神科医や心理学者、心理セラピストなど精神医学の専門家の大部分は、専門的な見解は述べず沈黙を守ってきた。その主な理由は、「ゴールドウォーター・ルール」というアメリカ精神医学会の行動規範だ。
この行動規範の名前は1964年大統領選の共和党候補バリー・ゴールドウォーターから来ている。核兵器をベトナム戦争で標準兵器として取り扱うことを推奨するゴールドウォーターに対して「Fact」という雑誌が精神科医からアンケートを取り、「1189人の精神科医が、ゴールドウォーターは大統領になるには精神的に不健全だと答えた」というタイトルの特集号を刊行した。大統領選に敗戦したゴールドウォーターは名誉毀損で雑誌の編集者を訴え、勝訴した。
この経緯から、精神医学専門家の品格や信頼性を維持し、公人や有名人を名誉毀損から守るために「公的な人物について、直接に正式な検査を行なわず、また承諾を得ずして、その人の精神の健康について、専門家としての見解を述べることは非倫理的である」というゴールドウォーター・ルールが生まれた。
トランプ大統領が就任した2カ月後の3月、アメリカ精神医学会の倫理委員会は、「もしある個人が国や国の安全にとって脅威だと信じている場合に意見を述べても良いのか?」という仮の質問を挙げた上で、改めてゴールドウォーター・ルールを遵守するよう呼びかける声明を発表した。
だが、このアメリカ精神医学会の対応に疑問を抱く専門家は少なくなかった。
翌4月20日、イェール法律大学院でも教鞭をとる精神科医のバンディ・X・リー准教授が「『警告義務』も専門家の責務に含まれるのか?」というカンファレンスを企画した。
リーに招待された多くの専門家は関わるのを避けたようだが、インターネットやメディアで関心を集め、複数の大手出版社が出版を持ちかけた。執筆希望者も多く、その中から27人が3週間というタイトなスケジュールで書き上げたのが本書『The Dangerous Case of Donald Trump(ドナルド・トランプの危険な症例)』だ。
内容は大きく三部に分かれている。
次のページ指摘される「邪悪への適応」
一部の「われわれの警告する義務」では、「警告義務」は専門家と患者の間にある「黙秘義務」を覆すという立場で書かれている。「警告義務」とは、患者から特定の人物への殺意を告白されていたのに、治療者が「黙秘義務」を守ったために実際に殺人が起きたタラソフ事件が発端である。この事件で治療者は責任を問われ、現在では、第三者への危険が明らかになった場合には「黙秘義務」より「警告義務」が優先されることになっている。
この部分では、それぞれの執筆者が「検査もせずに診断はできない」というゴールドウォーター・ルールをわきまえたうえで、公の場で簡単に入手できるトランプの言動から該当する人格障害などを挙げ、「トランプは大統領として危険だ」と警告している。
二部は精神医学専門家が抱えるジレンマがテーマだ。国や人々の安全が脅かされる場合、ゴールドウォーター・ルールよりも「危険を知らせる義務」のほうが大きいのではないか、というものだ。
三部のテーマは、トランプが社会に与えた影響や、今後の危険性についてだ。
だが、読み逃してはならないのは、本文に移る前のロバート・J・リフトンによる「まえがき」だ。
朝鮮戦争のとき空軍の精神科医として日本と韓国に駐在したリフトンは、戦争と人間の心理に興味を抱くようになり、原爆の被害者、ベトナム戦争帰還兵士、ナチスドイツの医師などについて本を書いた。そんなリフトンが警告するのは、「Malignant Normality(悪性の正常性)」だ。
私たちのほとんどは、自分が暮らしている環境が「正常」だと思っている。けれども、「正常」の基準は、特定の時代の政治的環境や軍事的な動向の影響を受けて変化する。そして、私たちは、その変化にたやすく慣れてしまう。
極端な例はリフトンが研究したナチスドイツの医師たちだ。彼らは、アウシュビッツで恐ろしい人体実験や殺人を行った。
「動揺し、震え上がった者がいるのも事実だ。しかし、手慣れた者が一緒に大量の酒を飲み、援助や支援を約束するなどのカウンセリング(歪んだ心理セラピーとも言える)を繰り返したら、ほとんどの者は不安を乗り越えて殺人的な任務を果たす。これが、『邪悪への適応』プロセスだ」とリフトンは言う。ナチスドイツの医師たちの間に起こったのは、「邪悪への適応」から「邪悪の正常化」だった。
リフトンによると、近年のアメリカにも「悪性の正常性」の例がある。ジョージ・W・ブッシュ政権下で、CIAは「増強された尋問のテクニック」と称して「拷問」を取り入れた。その拷問プロトコルの作成者の中に心理学者が2人含まれていたのだ。
冷戦時代の初期には、政府が核兵器の大量貯蔵を「正常なこと」とアメリカ国民に説得させる任務を精神心理学の専門家が導き、近年では地球の温暖化を否定するグループのために専門家が働いた。
このような過去を念頭に、「(トランプ時代の専門家は)この新しいバージョンの『悪性の正常性』を無批判で受け入れることを避けなければならない。そのかわりに、我々の知識と経験を活かしてあるがままの状況を暴露するべきだ」とリフトンは主張する。
さて、肝心のトランプの精神状態だが、専門家はどう見ているのだろうか?
次のページソシオパスの性質が顕著
自己愛(ナルシシズム)の専門家でハーバード大学メディカルスクール教授のクレイグ・マルキンは、まず「pathological narcissism(病的な自己愛)」について説明する。
自己愛そのものは病気ではなく、自信を持って幸せに生きるためには必要なものだ。自己愛を1から10までのスペクトラムで測ると、4から6は健全なレベルであり、それより低かったり、高かったりすると問題が生じる。有名人は普通より高いものだが、10に近づくと「病的な自己愛」の領域になる。「自分が特別だという感覚に依存的になり、ドラッグと同様に、ハイになるためには、嘘をつき、盗み、騙し、裏切り、身近な人まで傷つけるなどなんでもする」という状態だ。この領域が「自己愛性パーソナリティ障害(NPD)」だ。
トランプの言動パターンは、この自己愛性パーソナリティ障害(NPD)と精神病質(サイコパシー)が混ざりあったときの「malignant narcissism(悪性の自己愛)」だと言う。
「悪性の自己愛」は診断名ではない。元はパーソナリティ障害の専門家であるエーリヒ・フロムの造語で、「自分のことを特別視するあまり、他人のことを自分がプレイしているゲームで殺すか殺されるかの駒としか見ていない」。いとも簡単に殺人命令を出したヒトラー、金正恩、プーチンなどが例として挙げられており、このエッセイのタイトルである「病的な自己愛と政治:致命的な混合」の意図が理解できる。
専門家としてさらに踏み込んでいるのがハーバード大学メディカルスクールの元准教授のランス・ドーデスだ。冒頭の「トランプは単にクレイジーなのか、それともキツネのようにずる賢いのか?」という疑問に対して、はっきりと自分の見解を述べている。ドーデスは、トランプの言動がもっと深刻なものであり、「精神錯乱」の徴候だと考えている。
ふつうの人間には他人への「empathy(共感、感情移入)」がある。それが欠落しているのが「ソシオパス(社会病質者)」だ。深刻なソシオパスの多くは社会から脱落するが、チャーミングで思いやりがあるフリができるソシオパスも存在する。彼らは人の操縦に長けているので、成功していることが多い。
ソシオパスはときおり「サイコパス(精神病質者)」と同様に使われるが少し異なり、上記の「病的な自己愛」の重要な側面であり、公式の診断名である「反社会的パーソナリティ障害」と同意語だとドーデスは説明する。
ドーデスは公の記録にあるトランプの言動から、「重篤な社会病質者の傾向がある」と結論づけている。そして、「これまでトランプ氏ほどの社会病質的な性質を顕わにした大統領はほかにいない」と言う。
ドーデスがこれほどはっきりと発言する理由は「重篤な社会病質によるパラノイアは、非常に大きな戦争のリスクを生む」からだ。戦争を起こせば、国の指導者として非常事態のために大きな権力を手にすることができる。この際に、憲法で保証されている人権を停止し、戒厳令を出し、マイノリティを差別することも可能になるという計算が背後にあるというわけだ。
論文を書くのに慣れている専門家たちなので、根拠もきちんと書かれており、本書を読むとトランプの精神状態への危機感を強く感じる。
この本を読了した翌日、筆者は別件でホワイトハウスを訪問する機会があった。
次のページ共和党議員も止められない
招待してくれたのは、これまで4回の大統領選挙を経験している共和党のベテラン戦略家である。彼自身は「社会的にはリベラル、経済的には保守」という立場であり、筆者がヒラリー・クリントン支持だったことも承知している。
雑談のときに率直な意見を求めたところ、彼は言いにくそうにこう語った。
「(共和党の議員たちは)みな、トランプはクレイジーだと知っている。トランプに票を投じた者の多くもそう思っている。だが、有権者は自分たちの生活を良くするために何もしてくれない議会にうんざりして、ぜんぶ捨ててしまいたいと願った。彼らは、すべてをぶち壊して、新しく何かを始めてくれる者としてトランプを選んだのだ」
最近になってようやくジョン・マケインなど何人かの共和党議員がトランプ批判に乗り出したが、いずれも再選を狙わない者だけだ。そのほかの共和党議員らが後に続かないのは、次の選挙で有権者から見捨てられるのがトランプではなく自分だと分かっているからなのだろう。
翌日のパーティでも、集まったのは共和党の人たちばかりなのだが、みな税金を湯水のように使うトランプ政権の閣僚たちに呆れ果てていた。だが、それを公に追及するのは「大人げない」という雰囲気があるのも事実だ。民主党の議員やヒラリーの支持者がトランプを糾弾するのもそうだ。「選挙に負けたのだから、潔く沈黙せよ」と批判されてしまう。
先の共和党の知人も「メディアはトランプの言動にいちいち振り回されてはならない。自分に都合が悪いことから目をそらすための目くらましなのだから」と言う。
しかし、こういう態度こそが、先に出てきた「悪性の正常化」の一種ではないかと感じた。
トランプ大統領の精神状態について最も重要な点を指摘しているのは、二部の「トランプ・ジレンマ」に寄稿したニューヨーク大学教授の精神科医ジェームズ・ギリガンかもしれない。
『男が暴力をふるうのはなぜか そのメカニズムと予防』の著者であるジェームズ・ギリガンは、エッセイの中で「われわれが論点として挙げているのは、トランプに精神疾患があるかどうかではない。彼が危険かどうかだ。危険性は、精神科の診断ではない」と主張する。
トランプの危険性を証明する言動は多く記録に残っているが、ギリガンが例として挙げているのは、「使わない核兵器を持っていることに何の意味があるのかという発言」、「戦争の捕虜に対して拷問を使うことを奨励」、「すでに無罪であることが証明している黒人の少年5人に対して死刑を要請」、「『スターならなんでもやらせてくれる』と女性に対する性暴力を自慢」、「政治集会で、自分の支持者に抗議者への暴力を促す」、「(大統領選のライバルである)ヒラリー・クリントン暗殺をフォロワーに暗に呼びかける」、「5番街の真ん中に立って誰かを拳銃で撃っても支持者は失わないと公言」といった多くのアメリカ国民が熟知しているトランプ発言だ。
次のページ戦前のドイツがおかした過ち
これらは、ギリガンも書いているようにほんの一部でしかなく、暴力の威嚇、自慢、鼓舞が次から次へと絶え間なく続いている。
「ドナルド・トランプが繰り返し暴力の威嚇をし、自分の暴力を自慢しているのに対して私たちが沈黙を守るとしたら、彼のことをあたかも『正常な』大統領、あるいは『正常な』政治的指導者だとして扱う危険でナイーブな失敗に加担し、可能にすることになる」とギリガンは訴える。
トランプが独裁者になりたがっていることは、専門家の指摘を待つまでもなく、彼の言動から明確だ。だからこそ、次のギリガンの呼びかけが重要になる。
「1930年代にドイツ精神医学会がおかした過ちを繰り返さないようにしよう」
これこそが本書の真髄だろう。
【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
この筆者のコラム
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プロフィール
渡辺由佳里
Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe>
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。近著に『ジャンル別 洋書ベスト500』(コスモピア)、『どうせなら、楽しく生きよう』(飛鳥新社)。新著に『トランプがはじめた21世紀の南北戦争:アメリカ大統領選2016』(晶文社、2017年1月11日発売)。
公式ブログ:「洋書ファンクラブ」
https://www.newsweekjapan.jp/watanabe/2017/10/post-37.php
平然と他人に責任を転嫁しがちな「誇大型ナルシスト」の特徴
Narcissists Are Less Likely To Get Depression
2019年11月15日(金)17時30分
カシュミラ・ガンダー
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誇大型のナルシシストは批判されても落ち込まず、平然と他人に責任を転嫁しがちだ(写真はイメージ) skyNext-iStock
<人間関係を破壊し、社会に危険をもたらしかねない自己愛者だが、強く生きるにはいいのかもしれない...>
ナルシシスト(自己愛者) はその性格上、精神的な回復力が強く、鬱病になる可能性が低い── 。最近の心理学の研究で分かったことだ。
ナルシズムはマキャべリズム(目的のためなら手段を選ばない傾向)やサイコパシー(反社会的な人格障害)と並んで「人格のダークな3大特性」の1つとされ、さらに誇大型と過敏型に分類されている。
誇大型のナルシシストは謙虚さや慎み深さを欠き、自分を誇示したがり、支配欲が強い。対して過敏型のナルシシストは否定的評価に過敏で承認欲求が強く、他者から特別な扱いを求める。
今回の研究では軽度のナルシズムの持ち主はそうでない人よりも「精神的に強い」という主張を検証するため、質問紙による調査を20代の被験者364人、244人、144人の3グループを対象に実施した。
【参考記事】サイコパスには犯罪者だけでなく成功者もいる
調査では多くの質問を通じて、被験者がナルシシストかどうか、精神的にタフか、新しい物事を進んで受け入れるか、ストレスを感じているか、鬱病の症状があるかなどを判定した。
結果、誇大型のナルシズム特性で高いスコアを示した被験者は精神的にタフな傾向が強く、鬱病の症状を示す確率は低かったという(これとは別に、誇大型ナルシシストはストレスに強いとする報告もある)。
欧州精神医学会の学会誌に発表された論文の共著者て゛英クイーンズ大学ベルファストのコスタス・パパゲオルギオ准教授によれば、この調査は「反社会的とされるダークな人格特性が存在し続け、むしろ増加しているという矛盾の解明」が目的だった。
長所となる側面も
「ナルシズムを是とするつもりはない」、とパパゲオルギオは言う。「むしろ私たちが言いたいのは、そもそも人格特性は善悪とか社会性の有無とかで判断されるべきて゛はなく、そうした特性を持つ人の適応・不適応のレベルをさまざまな文脈で特定する必要があるということだ」
パパゲオルギオによれば、誇大型のナルシシストは何らかの困難に直面しても、自分はそれを乗り越えるにふさわしい人間だと思い込む。だから落ち込んだり、自信喪失に陥ったりしない。そして「困難を乗り越えるたびに、彼らは精神的にタフになるのだろう。そんなメンタル面の強さが精神疾患に対する抵抗力を高めている」。
【参考記事】ナルシストは危険信号 浮気がちな7つのパーソナリティを精神科医が指摘
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一方、今回の研究に関わっていない立場で本誌の取材に応じたアメリカの心理学者ステファニー・クリスバーグによれば、「この研究ではナルシシストが精神的に強く、自信家で粘り強く、発明や創造、指導に適している可能性が示された」。実際、「アップル創業者の故スティーブ・ジョブズをナルシシストに分類する人もいる」そうだ。
誇大型のナルシシストは批判や失敗にも落ち込まず、平然と他人に責任を転嫁しがちだ。今回の研究はそういう事実と符合するとクリースバーグは言う。
とすると、今の世界で最強のナルシシストはアメリカの現役大統領かもしれない。
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https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2019/11/post-282.php
ナルシストは危険信号 浮気がちな7つのパーソナリティを精神科医が指摘
2018年6月25日(月)16時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
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写真はイメージです martin-dm-iStock
<浮気経験のある女性の3分の1以上、男性では半数以上が、恋人/配偶者に不満を持っているわけではないのに浮気をしたという調査結果も...>
結婚したカップルの40%が浮気の問題に直面している── FOXニュースによると、アメリカでこれだけ多くのカップルがどちらか、または双方の浮気行為のせいで良くない影響を受けている。一部の専門家はその原因を、近代急速に発達したインターネットの功罪による部分が大きいとしているが、精神科医のケネス・ポール・ローゼンバーグは20年以上にわたる研究を経て、その原因を解き明かした。
まず、彼は著書『Infidelity: Why Men and Women Cheat』のなかで、浮気に結びつく3つの大きな要因をこうまとめている。
脳:神経構造
心理:性/ロマンスを捉え方に影響を与えた成長過程の環境
文化:セックス、愛、浮気に関して世間が持つイメージ
浮気を促す「3つのA」とは
ローゼンバーグの研究によると、浮気をする人としない人では、脳内化学物質が生物学的に違うそうだ。そしてこの差が、浮気の原因の約50%を占めるらしい。
環境上の最も大きな原因になるのが、浮気が実際問題できるかどうか、ということ。簡単であればあるほど、浮気に走る可能性が高くなる。浮気は不誠実な人だけがするものではない。条件が揃えば、真面目な人でもいとも簡単に浮気をする。
その条件を、専門家は"3つのA"と呼ぶ。Affordable(費用面をクリアし)、Accessible(相手がいて)、Anonymous(バレなければ)という条件が揃えば、浮気をする可能性が高くなる。
浮気する者はこう思っている。自分には浮気をする権利がある、もしくは自分には浮気をする価値がある。
浮気型かチェックポイント
以下の7タイプの性格の持ち主が、この思考回路を生み出しやすいらしい。
1.ナルシスト:自分を特別と思っていて、自分最優先
2.共感力に欠ける:相手の立場にたって考えることができない
3.自信家 :自分の能力、特に性的能力を過大評価していて、セックスが上手と思われたい
4.直感型:決断力があり、大事なことにも長く時間を割かない
5.ミーハーもしくはスリル好き
6.元々、恋人・夫婦という関係に向いていない、責任のある関係を望んでいない
7.自傷型もしくはマゾ
浮気は誰でもする可能性がある
ローゼンバーグのもとには、浮気に苦しむ多くの患者が訪れるという。彼らは、さまざまなバックグラウンドを抱えている。性癖だけでなく、年齢や宗教、人種、社会的立場も異なる。
サイバーセックスやインターネットポルノ、初デートでのセックス、そしてセックスフレンドの存在が当たり前のミレニアル世代もいれば、ミドルエイジ・クライシスの真っ只中で、性欲の衰退やそもそも生活全般においてやる気を失いかけている男女もいる。
年配者も例外ではない。医療の発展によって、かつてないほど長く健康的な生活を送り、性欲が衰えていないのだ。
厚い信仰心を持ちながら浮気する人もいれば、配偶者に満足しているにもかかわらず浮気をする人もいる(浮気経験のある女性の3分の1以上、男性では半数以上が、恋人/配偶者に不満を持っているわけではないのに浮気をしたという調査結果がある)。
そう、浮気は誰でもする可能性があるのだ。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2018/06/post-10458.php
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