http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/730.html
Tweet |
jbpress.ismedia
なぜトランプはバイデンを引きずり降ろしたいのか
2019/11/14
海野素央 (明治大学教授、心理学博士)
今回のテーマは「なぜトランプはバイデンを引きずり降ろしたいのか?」です。ドナルド・トランプ米大統領は支持率が伸びないジョー・バイデン前副大統領(民主党)に対する攻撃の手を緩めません。トランプ大統領はバイデン氏の次男ハンター氏のウクライナ及び中国におけるビジネスを引き合いに出して、「腐敗している親子」というメッセージを有権者に発信しています。
では、なぜトランプ氏は必至になってバイデン氏を引きずり降ろそうとしているのでしょうか。本稿ではその理由を説明します。
(Vitalii Abakumov/gettyimages)
バイデンにこだわるトランプ
トランプ大統領は11月4日、南部ケンタッキー州ルイビルで支持者集会を開き、「ウクライナから見返りを求めたのはバイデンの方だ」と強調しました。バイデン氏はハンター氏の汚職捜査をしていたとされるウクライナの検事総長を解任しないと、軍事支援を行わないと語ったと言うのです。その上で、「これこそ本当の見返りだ」と語気を強めて語りました。南部ルイジアナ州モンローで同月6日に行われた集会においても、同様の主張をしています。
トランプ大統領を応援する保守系の米FOXニュースの司会者ショーン・ハニティー氏は、同大統領の発言に呼応するかのように、バイデン前副大統領を「見返りのジョー」と呼んで揶揄しました。
確かに、バイデン氏がウクライナ政府に軍事支援をちらつかせて、同国の検事総長解任を迫ったことを自慢げに語っている様子がビデオに映っています。ただ米メディアは、汚職の疑いのある検事総長解任が目的で、ハンター氏とは無関係であったと報じています。
さて、ウクライナ疑惑に関する公開の公聴会が11月13日から米議会下院で始まります。トップバッターは、ウィリアム・テイラー駐ウクライナ代理大使です。米メディアによれば、テイラー代理大使は「ウクライナがバイデン親子に対する捜査を確約するまで、軍事支援は保留されると明確に理解していた」と語ったと報じています。
トランプ大統領は公聴会に関してホワイトハウス記者団に、「ハンターが証言しなければならない」と語りました。ここからも、トランプ氏はバイデン前副大統領に対して相当なこだわりを持っていることが分かります。
強敵はウォーレンではなくバイデン
民主党候補指名争いにおいてバイデン前副大統領とエリザベス・ウォーレン上院議員(東部マサチューセッツ州)が全国の支持率で1、2位を競っています。ところが州別の支持率をみると、トランプ大統領がウォーレン氏よりもバイデン氏を強く警戒している理由が明白になります。
来年2月3日に開催される中西部アイオワ州での党員集会並びに同月11日の東部ニューハンプシャー州での最初の予備選挙で、ウォーレン氏が優位に立つかもしれません。しかし激戦州では、バイデン氏が勝利を収める可能性が高くなっています。
最新の米ニューヨーク・タイムズ紙とシエナ・カレッジ(東部ニューヨーク州)による共同世論調査(2019年10月13−26日実施)によれば、中西部ウィスコンシン州でバイデン氏がウォーレン氏を14ポイントもリードしています。中西部ミシガン州では9ポイント、東部ペンシルべニア州では12ポイント、南部フロリダ州では8ポイント上回っています。
では仮にバイデン氏とトランプ大統領が一騎打ちになった場合、上の4州でどのような戦いが予想されるのでしょうか。
同共同世論調査によれば、バイデン氏がトランプ大統領をウィスコンシン州及びフロリダ州で2ポイント、ミシガン州並びにペンシルベニア州で1ポイントリードしており、大接戦になります。
一方、ウォーレン氏が民主党候補に指名された場合、上の4州においてトランプ大統領が2ポイントから5ポイント引き離しています。ちなみに、ミシガン州におけるトランプ氏のウォーレン氏に対するリードは5ポイントです。
「3+1」で勝てる候補は誰か?
一般に米大統領選挙では、「(中西部)オハイオ州を制する者が全米を制する」と言われいます。ただ、同州は共和党色が強くなっており、来年の大統領選挙ではむしろ「3+1(スリー・プラス・ワン)」の州が鍵を握るでしょう。
以前説明しましたが、「3」はウィスコンシン州(選挙人10)、ミシガン州(16)及びペンシルべニア州(20)を指し、選挙人の合計は46になります。 2016年米大統領選挙でトランプ大統領はこれらの3州においてヒラリー・クリントン元国務長官に対し、わずか1ポイント以下で勝利でしました。それに対して、「1」はフロリダ州(29)で、トランプ氏の勝利は2ポイント以下でした。
16年米大統領選挙においてトランプ大統領は選挙人306を獲得しています。選挙人270を獲得すれば、再選を果たすことができます。
前回のこの獲得選挙人をベースに考えると、トランプ大統領は民主党から奪還したウィスコンシン州、ミシガン州及びペンシルべニア州の3州を落とすと、同大統領の獲得選挙人は260になり、再選が不可能になります。ただし、ウィスコンシン州とミシガン州を落としても、フロリダ州で勝利すれば選挙人をカバーできます。
逆に民主党候補はウィスコンシン州、ミシガン州並びにペンシルぺニア州の3州を奪還すれば、トランプ大統領の再選を阻止できる公算が高まります。これらの州でトランプ氏に勝てる民主党候補はバイデン氏です。従って、トランプ大統領にはバイデン氏を引きづり降ろすことが不可欠になる訳です。
バイデンとウォーレンの「異文化連合軍」の相違
トランプ大統領がバイデン氏を引きづり降ろしたいもう1つの理由を挙げてみましょう。
バイデン氏はトランプ大統領の縄張りを荒そうとしているからです。それはどのような意味なのでしょうか。
12年米大統領選挙においてオバマ前大統領は女性、若者、ヒスパニック系、アフリカ系、LGBT(性的少数派)から構成された「異文化連合軍」を形成して、再選を果たしました。それに対して、16年の選挙でクリントン氏は連合軍を組むことができませんでした。
研究の一環として筆者は16年米大統領選挙においてクリントン陣営に入り、南部バージニア州フェアファックス市で左派のバーニー・サンダース上院議員(無所属・東部バーモント州)を支持する若者を対象に戸別訪問を行いました。彼らはヒラリー・クリントン氏が民主党大統領候補に指名されたので、投票に出向くことに消極的でした。
筆者がサンダース支持のある白人男性の若者を戸別訪問したとき、彼は「トランプが大統領になって、最高裁が保守化したら困る」と懸念を示していましたが、クリントン選対にボランティアとして姿を見せませんでした。
オバマ前大統領とは異なり、クリントン氏は異文化連合軍を組むことができませんでした。サンダース上院議員に若者の有権者を奪われてしまったからです。しかもアフリカ系及びヒスパニック系は、オバマ前大統領のときと比べて、クリントン氏に対する熱意が低かったことも事実です。
では、今回の民主党指名争いにおいて支持率で首位を争っているバイデン前副大統領とウォーレン上院議員は、果たして異文化連合軍を形成できるのでしょうか。
バイデン氏は、労働者及びアフリカ系にかなり依存した異文化連合軍でトランプ大統領に対抗するでしょう。ただ、バイデン氏は若者に人気がありません。クリントン氏と同じ轍の道を踏む可能性が高いといえます。
一方、女性及び若者を中心に異文化連合軍を組むウォーレン上院議員は、アフリカ系の支持獲得が課題になっています。
従って、バイデン・ウォーレン両氏の連合軍には穴があり、仮にどちらかが民主党の大統領候補になった場合、その穴を補う副大統領候補が必要になります。前回の大統領選挙では、クリントン氏は若者をエキサイティングにする副大統領候補を指名せず失敗しました。
トランプの「単一文化連合軍」
トランプ大統領の支持基盤は、労働者、退役軍人、キリスト教右派及び白人至上主義者から構成された「単一文化連合軍」です。文化的多様性に富んだ異文化連合軍に対して、白人中心の連合軍である点が特徴です。
トランプ大統領の単一文化連合軍とバイデン氏の異文化連合軍は、労働者の部分がバッティングしています。ここが問題になります。
南部フロリダ州オーランドでのトランプ集会で出会った白人労働者は筆者に、「バイデンはトランプから労働者を奪う可能性がある」と語り、警戒心を抱いていました。
民主党候補指名争いを戦っているどの候補も決め手に欠けているのですが、バイデン氏はトランプ大統領の支持基盤を崩せる可能性を秘めた唯一の候補です。
バイデン氏がトランプ支持層の核である白人労働者、殊にミシガン州及びペンシルべニア州の労働者を切り崩すことができれば、民主党にはトランプ再選阻止の光が見てくるかもしれません。おそらく、トランプ大統領がバイデン氏を引きづり降ろしたい最大の理由はここにあるでしょう。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17882
jbpress.ismedia
台湾支持を強調するペンス対中演説
2019/11/14
岡崎研究所
10月24日、ペンス副大統領は、米シンクタンク、ウィルソン・センターで対中政策演説を行い、中国との衝突を望んでいないとしつつ、中国の権威主義的で規範を守らない多くの行動を具体的に指摘しつつ厳しく非難した。ここでは、演説の中で台湾がどのように位置づけられているか見てみる。まず、台湾に触れた個所を2か所紹介する。
(inthevisual/GBlakeley/iStock / Getty Images Plus)
1.我々は、中国共産党が中国人民の信教の自由を弾圧していることを指摘してきた。何百万もの民族的・宗教的マイノリティが共産党による宗教的・文化的抹殺と戦っている。
我々は、新疆におけるイスラム少数派の取り扱いにつき北京に説明を求めてきた。9月、トランプ大統領は、ウイグル人その他の中国のイスラム教徒迫害のかどで、共産党幹部にビザ発給制限を課し、20の治安当局と8の中国企業に制裁を科した。
そして、我々は、苦労の末に手に入れた自由を守ろうとしている台湾の味方である。トランプ政権下で、我々は、追加的な武器売却を承認し、世界で最も貿易が盛んな経済体としての台湾、中国の文化と民主主義のかがり火としての台湾をよく認識している。
そして、我々は、何百万もの香港の人々が平和的デモに繰り出すたびに、彼らのために発言してきた。トランプ大統領は、当初から、1984年の中英共同宣言にある通り、香港人の権利を尊重する平和的解決がなければならない、と言ってきた。
2.トランプ政権は「一つの中国」政策の尊重を続けるつもりだが、この1年、中国は札束外交を通じて更に2か国の外交的承認を台湾から中国に替えるように仕向け、台湾の民主主義に対する圧力を強めている。
国際社会は、台湾への関与が平和を脅かすものではないということを決して忘れるべきではない。それは、台湾と地域全体の平和を守ることになるのだ。米国は常に、台湾が民主主義を受容していることは全ての中国人により良い道を示している、と信じている。
参考:?Remarks by Vice President Pence at the Frederic V. Malek Memorial Lecture’, October 24, 2019
ペンス演説の中核には、中国が自由、人権、民主主義、国際的規範を守らないことへの強い非難がある。演説では、台湾を、そうした中国と対照的な存在として称賛し、強く支持している。
上記で紹介した1か所目では、新疆―台湾―香港が自由をめぐる戦いのラインとして効果的に描かれている。台湾は自由、民主主義、繁栄の象徴である。新疆、台湾、香港は、いずれも中国が「核心的利益」と位置付けている。ペンス演説からは、そういうことは認められないという米国の強い意志が伝わってくる。
2か所目では、台湾の平和と民主主義を守ることが、台湾のみならず地域の平和と安定に資すると、国際社会に強く呼びかけている。これは、最近の蔡英文総統の「自由、人権、民主主義の価値を共有する国々が結束して中国の権威主義に対抗しなければならない」「台湾が中国から受けている嫌がらせや圧力は、明日は他の国にも降りかかり得る」といった主張と軌を一にしている。仮に来年の総統選挙で台湾に、中国との関係を重視する国民党政権が誕生すれば、中国との対決姿勢を辞さない、現在の米国の対中政策とは齟齬をきたす恐れがある。したがって、来年1月の総統選挙は、地域の安定と平和にとり極めて重要である。米国が蔡英文政権に対して事実上の支持を表明するのは自然なことである。
なお、台湾の外交部(外務省)はペンス演説を受け、10月25日、演説に感謝を示すとともに、米国など理念が近い国家との連携を継続し、共に民主主義と国際秩序を守っていく姿勢を、改めて表明している。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17823
ソロモン諸島でうごめく中国マネー
2019/11/13
岡崎研究所
中国は、台湾の国際的活動空間を狭めることで、台湾の蔡英文政権に圧力を加えているが、最近ソロモン諸島と、次いでキリバスが台湾との国交断絶を発表し、中国との外交関係の樹立を発表した。
(RoyFWylam/vitaga/iStock / Getty Images Plus)
これには、大きな中国マネーが動いたと言われている。10月24日号の英エコノミスト誌によれば、中国土木・建設会社は、外交関係の変更のために50万ドルの借款・贈与をオファーした。他にも、中国鉄道会社は、金鉱再生のために8億2500万ドルを貸すと約束した。中国政府はスポーツ・スタジアムを建設し、台湾への借金120万ドルを肩代わりすると申し入れた。
国交樹立後、中国がソロモン諸島の一つ、ツラギ島をいわば租借する話が持ち上がった。9月、ソロモン諸島の地方の高官が中国のサム・エンタープライズ(China Sam)社と合意を締結した。この合意では、植民地時代ソロモン諸島の首都であった小さな島、ツラギ島の75年間の賃借が石油、ガスターミナル、漁港、「経済特区」の建設と共に定められていた。これがソロモンで政治問題化している。どう決着するのか、まだよくわからない。
この島を賃貸する契約を結んだのはツラギの地方当局の代表であるが、地方当局にはそういう契約を結ぶ権能はないのではないかということが問題にされている。一般論としては、これについては相手が民間企業であるとすれば、権能ありとの論もなしとの論もありうると思うが、中国は中国式社会主義で企業と国家の関係が我が国のような場合とは異なる。これを考慮すれば、中国が南太平洋に島を賃借してでてくるというのは好ましいことではない。
ソロモン諸島のマナセ・ソガバレ首相は、10月はじめ北京を訪問し、中国の「一帯一路」構想 に署名した。また首相と閣僚はChina Samと華為技術などの中国の大企業の役員と会っている。
ソロモン諸島の隣のバヌアツ島に、中国は深海港建設の計画をもっており、これは中国海軍の本拠地にもなりうるものである。
第2次世界大戦中、この地域は日米の激戦地であったが、これらの諸島が持つ地政学的価値があるからである。特に、これらの諸島は米国と豪州を結ぶシーレーンの上にある。日米豪印が進める「自由で開かれたインド太平洋戦略」にとって、中国の進出は、その戦略を進めていく上で、大きな阻害要因になる。これは日米豪間で話し合うべき問題であろう。
中国は、A2AD(anti-access と area-denial)戦略をとっていると言われてきた。これは防衛的戦略とも言えるが、中国の戦略的意図はそういう防衛的な考え方からより積極的な影響圏の拡大になって来ていることを、この南太平洋への進出は示している。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17822
ウイグル人学者へのサハロフ賞授与の意義
2019/11/15
岡崎研究所
10月24日、欧州議会は、今年の「サハロフ賞」の受賞者として、中国で無期懲役の判決を受け服役中のウイグル人経済学者で人権活動家のイリハム・トフティ氏を指名した。正式には、12月18日に、仏ストラスブールの欧州議会で受賞式が開催される。
(Naeblys/Boonyachoat/iStock / Getty Images Plus)
「サハロフ賞」とは、旧ソ連(現ロシア)の反体制派の物理学者、サハロフ博士にちなみ、欧州議会が1988年に創設した賞である。自由や人権、民主主義の擁護のために尽くした人に贈られ、これまで、南アフリカのマンデラ元大統領やミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相らが受賞した。
受賞者の発表に際し、サッソリ欧州議会議長は、声明を発出し、「中国におけるウイグル人の権利を擁護するために人生を捧げた」と、トフティ氏の活動を評価した。トフティ氏は、インターネット等を通じ、新疆ウイグル地区の現状を伝えたり、中国で大多数を占め共産党を支配する漢族と、少数民族ウイグルとの和解や融和を説いたりしていた。
欧州議会は、サハロフ賞の受賞者の発表と同時に、中国政府に、トフティ氏を釈放するよう強く要請した。これに対して、中国共産党政府は、欧州議会が中国の内政事項に介入し、「国家分裂罪」の判決を受けた「犯罪者」に賞を与えたことを非難した。
今回のヨーロッパ議会のトフティ氏へのサハロフ賞授与は、歓迎されることである。中国のトフティ氏の処遇がこれで変わるとは思えないが、こういうことについては、間断なく、問題提起を続けていくことが望ましい。
中国は、ウイグルなどの人権問題は中国の国内問題であり、内政干渉は許さないという立場をとるが、戦後の国際政治においては、人権問題は国際的関心事項として確立している。南アフリカのアパルトヘイト政策は、国内問題であるとの主張は認められてこなかった。国連憲章は、国内事項に干渉してはならないとしているが、他方で、国連は人権理事会を作っている。これは、人権が国際関心事項として確立していることを示している。
香港人の人権も、ウイグル人の人権も、チベット人の人権も、国内問題として片付けることはできないことを、中国は認めるべきである。中国は人権規約については、A規約は批准しているが、B規約は批准していないと承知する。だが、そのことと人権問題が国内事項とは言えないというのとは別の話である。
先般、習近平は、ネパールを訪問中に、分離主義者はその骨まで打ち砕くと恐ろしい脅しを発したが、トフティも分離主義者とされている。こういうことは問題にしていくべきであろうし、そうすることが中国をルールに基づく国際社会の一員にすることに資すると思われる。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/17824
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。