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クルド人見殺し「次は台湾」が現実味
トランプ大統領のオバマ化に備えよ
2019.10.31(木)渡部 悦和
世界情勢 アメリカ 安全保障
負傷した仲間を運ぶクルド人部隊(シリア北部で、10月24日、写真:ロイター/アフロ)
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米国のドナルド・トランプ大統領は10月27日、過激派組織イスラム国(IS)の指導者アブバクル・バグダディの殺害に米軍が成功したと発表した。
米軍のIS掃討作戦の節目を迎えたとは言えるが、トランプ大統領の「世界はこれで一段と安全になった」という主張は手前味噌過ぎるであろう。
トランプ氏がバクダディの死亡をことのほか喜ぶのは、米国が中東政策や北朝鮮政策で迷走し、国内外から多くの批判を受けてきたからだ。
その迷走ぶりを観察すると、トランプ氏の対外政策がバラク・オバマ前大統領の消極的な対外政策に似てきて、「トランプのオバマ化」と言わざるを得ない状況になっていることを指摘せざるを得ない。
最近の事例では、シリア北部からの米軍の一部撤退を決めたことをきっかけに、トルコは10月9日、シリア北東部への軍事作戦を開始した。
攻撃目標は、これまで米軍と共にISと戦ってきたクルド人勢力だ。この米軍撤退を受けて、ロシアやシリアがこの地域で影響力を拡大させる動きを活発化させていて、米国の影響力の低下は避けられない状況になっている。
本稿においては、「トランプのオバマ化」が米国の日本などの同盟国や友好国に与える影響に言及したいと思う。
シリアのイドリブ県。バグダディ容疑者はシリア北西部イドリブ県のトルコ国境に近い村落で殺害された(Googleマップ)
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オバマ化が顕著に
オバマ政権時代、米国内の共和党を中心とする保守派(トランプ氏を含めて)は、オバマ氏を「危機に対処できない弱い指導者である」と徹底的に批判した。
この弱い指導者という評価は間違ってはいないと思う。オバマ氏の危機への対処は、「まず武力を行使しない」と宣言した後に外交交渉を行うのが特徴であった。
武力を行使しないことが分かっているオバマ氏を軽く見る中国の習近平主席、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、北朝鮮の金正恩委員長などの指導者は、米国による口先だけの警告を無視した。
例えば、中国は米国との約束に違反し、南シナ海における人工島の軍事拠点化や米国に対するサイバー攻撃をやめなかった。
ロシアはクリミア併合とウクライナ東部地区…
ロシアはクリミア併合とウクライナ東部地区への侵攻を行い、北朝鮮は核ミサイル開発をはじめとする挑発行為を継続した。
そして、これらの問題国家の乱暴狼藉に対して、「戦略的忍耐」という極めて消極的な姿勢で対応したのがオバマ氏であった。
一方、トランプ氏は、2016年の大統領選挙において打ち出した「力による平和」を大統領就任当初においては実行した。
例えば、シリアのバッシャール・アル=アサド大統領が反体制派に対して行った化学兵器使用に対する報復としてシリアの軍事基地を空爆した。
北朝鮮の核ミサイル開発などの挑発に対しては、「(軍事力の行使を含む)あらゆる選択肢がテーブルにある」「最大限の圧力をかける」というフレーズを連呼して、北朝鮮の非核化を迫り、国連の経済制裁もあり、一定の効果を収めた。
しかし、2018年6月に実施された第1回米朝首脳会談以降、「力による平和」路線を放棄したのではないかと思わざるを得ない状況になっている。
例えば、金正恩委員長に対する甘すぎる対応のために北朝鮮の核ミサイルの開発は継続している。6月にはイランに対する軍事作戦を一度は決断したが、決行10分前に見送った。
ジョン・ボルトン前国家安全保障担当大統領補佐官は、「軍事攻撃を見送ったために、イランに足元を見られるようになった」と批判している。
最近では、シリア北部からの米軍の撤退を唐突に発表し、それをクルド攻撃のゴーサインと判断したトルコのシリア北部への侵攻を招いてしまった。
以上のように最近のトランプ氏の対外政策は明らかに「力による平和」から逸脱していると思わざるを得ない。
私は、「軍事行動を積極的にすべきだ」と主張しているのではない。しかし、世界最強の軍事力を背景とした「力による平和」を追求しないトランプ大統領は、オバマ前大統領と同様に世界のしたたかな指導者から今後も軽んじられるであろう。
そして、米国の同盟国や友好国のトランプ政権に対する信頼感は低下するであろう。
撤退に対する評価…
撤退に対する評価
シリア北部からの米軍撤退の決定は、トルコのエルドアン大統領が狙っていたクルド攻撃にゴーサインを出したに等しい。トルコはクルド人が居住する地域に対する攻撃を実施し、その地域を占領した。
北部シリアに居住するクルド人に対するトルコの攻撃を抑止してきた最大の要因は米軍の存在だった。トランプ氏の撤収決定は米軍の戦友ともいうべきクルド勢力に対する裏切り行為だった。
第一線の米軍人たちも、ISとの厳しい戦いを共に戦ってくれた勇敢なクルド人たちを見捨てる決定に憤りを表明している。
米軍の一部撤収を受けてISが勢力を盛り返すという懸念が出るなか、トランプ大統領は10月23日、小規模の米軍部隊を「油田が存在する」シリアの地域にとどめると表明した。
ところが翌24日には「原油の安全は確保された。米軍はシリアから別の地域に移動している」とツイッターで支離滅裂な投稿をしている。
この米軍を過早にシリア北部から撤退させた決定は、イラクからの米軍の撤退を過早に実施し、大きな惨禍を招いたと批判されたオバマ氏の決定と極めて似た様相を呈している。
●撤退決定を批判する意見
トランプ大統領の決定を批判する人たちは多い。
米議会の下院は10月16日、シリア北部からの米軍撤退に反対する決議案を圧倒的多数(賛成354、反対60)で決議した。
民主党議員は225人全員が撤退に反対し、共和党議員でも189人中の60人が撤退に反対した。共和党の反対者の中には外交委員会の共和党トップや海兵隊出身の議員が含まれている。
共和党の有力な上院議員であるリンゼー・グラム氏は9日、「トランプ政権に恥知らずにも見捨てられた我らがクルド人の盟友のために祈ろう」「これにより、ISは確実に息を吹き返すだろう」とツイートし、撤退決定を批判した。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、共和党議員の大半は、米国が世界的リーダーシップを発揮し、必要があれば断固として軍事力を発揮することが適切だと思っている。
そして、彼らは、トランプ大統領の対外政策がオバマ前大統領の非常に消極的な政策に似てきたことに懸念を示している。
そして、実際に撤退を命じられた第一線の兵士たちも大統領の決定に憤慨したことが伝えられている。
クルド人の次は台湾か?…
●撤退決定に理解を示す意見
イスラム政治思想が専門の東京大学・池内恵教授はフェイスブックで、次のように記述している。
「米軍がシリアの情勢を変える能力も意思もないことは明らかであり、やがては撤退しなければならず、シリア内陸国としてのクルド独立は極めて困難で、それを米国が支え続けることも困難なことは明らかです」
「トランプは必要な決定を、粗雑なやり方でやったというのが妥当な評価です」
池内教授の主張は適切だと思う。米国の能力と意思をリアルに分析すると、トランプ大統領の決定を全面的に否定するのは適切ではない。
ただ、この決定が政権内で事前に十分議論されて出てきた結論であったとは思えない。このことは決定後の政権内のドタバタ劇、第一線部隊の困惑を見ても明らかだ。
米国にシリアを巡る諸問題を処理する能力がないとすれば、米国に代わって中東での影響力を拡大しようとするロシアにも能力がないことは明らかだ。
今後、ロシアも米国と同様の苦難を経験することになろう。つまり中東を上手くコントロールできる国は存在しないのだ。
クルド人の次は台湾か?
トランプ大統領は、なぜトルコ軍の攻撃に対してクルド人を見捨て、中東の地政学的状況をロシア、シリア、トルコなどの独裁国家に有利な状況にしたのか。彼は次のように言い放っている。
「シリアの発展は米国とは無関係であり、そこにいたテロリストたちは7000マイル離れていて、危険にさらされたアメリカ人はいなかった。なぜ米国政府が関与すべきなのか」
「第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦にクルド民族は手助けをしなかった」
クルド人をドライに見捨てたトランプ氏の予測不能な言動の次なる犠牲になるのは台湾ではないのかと心配する人たちがいる。
例えば、ワシントン・ポストは「トランプは…
例えば、ワシントン・ポストは「トランプはシリアのクルドを見捨てた。次は台湾の可能性?」という記事*1を掲載している。
ワシントンからシリア北部まで約7000マイル離れている。台湾は、ワシントンから7800マイル以上離れている。
シリアよりもさらに遠く離れていて、台湾の人口は2300万人であり、クルド人の約半分だ。
このデータだけを見れば、トランプ大統領が台湾を見捨てる確率は、クルドを見捨てる確率よりも高いと言えそうだ。
習近平主席は、2012年に中国共産党の総書記に就任して以来、台湾統一が悲願であることを発言してきた。
習氏は、中国が台湾に対する「武力行使を放棄する」ことはないと何回も発表している。彼は10月13日、ネパールでの演説でも同じ脅しを繰り返し、中国を分離しようとすれば「砕かれた体、砕かれた骨」になるとまで警告した。
もしも、中国が台湾を攻撃し、米国が黙認したならば、日本を含むアジア諸国に衝撃を与えることになろう。
米国の同盟諸国は、米国の安全保障上のコミットメントに疑念を抱かせ、中国、北朝鮮、ロシアを勢いづけるであろう。そして、中国の海洋権益が西太平洋にまで拡大し、中国がこの地域を支配することになる。
中国は台湾の人々に「一国二制度」方式を提案し、資本主義と民主主義の体制を維持すると約束した。
しかし、香港に提示した「一国二制度」方式は、中国により破られてしまい、実質的に一国一制度になっている。台湾の人たちの「今日の香港は明日の台湾」という懸念には根拠がある。
*1=John Pomfret, “Trump abandoned the Kurds in Syria. Could Taiwan be next?”, The Washington Post、Oct.19, 2019
過度な米国依存避け自助自立が重要…
一方、トランプ大統領と彼を支えるスタッフの台湾を支持する姿勢には乖離があると思う。
トランプ政権の中で、台湾への支持は依然として大きい。新たに任命されたマット・ポッティンジャー国家安全保障担当大統領副補佐官とランドール・シュライバー国防次官補 (インド太平洋安全保障問題担当)は、台湾の安全保障を強力に支持する2人だ。
そして、マーク・エスパー国防長官はシリアからの撤退に関連し、「長期的な最大の脅威は中国だ、米軍は中国対策にシフトする」と主張したが適切だと思う。
しかし、トランプ大統領は依然として予測不能だ。台湾の一部には、台湾が米国と中国との貿易交渉の人質になるのではないかと懸念する向きもある。
過度な米国依存避け自助自立が重要
ドイツは、過度な米国依存は危険だとして、独自の中東政策を模索している。我々は、このドイツの姿勢に学ぶべきであろう。
米国は現在、アメリカ・ファーストで内向きになり、世界の諸問題を解決する意思も能力も低下させている。
日本や台湾は、有事において必ず米軍が来援してくれると期待することは重要だが、それ以上に重要なことは、自らやるべきことをしっかりやるという自助・自立の姿勢だ。
まず自助により日本が経済力、外交力、防衛力、科学技術力を強化すること。自助を基盤として、日米同盟や他の国々との共助により生き残りを図ることが不可欠であろう。
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バグダディ殺害の前からすでに落ち目だったIS
IS最高指導者、アブバクル・バグダディの殺害はシリア情勢、米露やトルコなど関係各国の方針、そしてイスラム・テロの趨勢にどういった影響をもたらすのか?
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58085
米国の後退はトランプ大統領以降も続く
リーダーシップを放棄し、内向きになる国
2019.10.18(金)
Financial Times
世界情勢?アメリカ?政治
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2019年10月11日付)
トルコ軍の空爆によって黒煙が上がるシリアのトルコ国境の町ラス・アルアイン(10月16日、写真:ロイター/アフロ)
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共産党支配の70周年を記念する式典での中国の軍事力の披露は、はっとさせられる瞬間だった。
新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む高度な兵器のラインアップは、強国を目指す中国の野望について多くを物語っていた。
だが、戦車が大きな音を立てて天安門広場を進むなか、欧州はよそを向いていた。目下、ドナルド・トランプ米大統領の命運を推測することが唯一の関心事なのだ。
トランプ氏は歴史のリズムを壊した。
我々は、確立された秩序に対する脅威は台頭する新興国からやって来ると考える。その点では、非常に素早く、非常に大きくなったとはいえ、中国も変わらない。
しかし、戦後の「パックス・アメリカーナ」に対する攻撃を率いたのは、そう、当の米国だった。
欧州の人々が新たな戦争の勃発について心配する時、彼らは通常、トランプ氏のツイッター・アカウントを見ている。
シリア北部から米軍を撤収し、同盟相手のクルド人勢力を侵攻してくるトルコ軍と対峙させることにしたホワイトハウスの決断は、目的にかなっている。
クルド人は欧米諸国にとって、「イスラム国(IS)」などのジハード主義組織との戦いで最も頼りになる同盟相手だった。
トランプ氏は、米国はクルド人に何の借りも…
トランプ氏は、米国はクルド人に何の借りもないと判断した。
米政府が信頼に足る相手ではないことを、米国の同盟国は改めて思い出させられた。現在クルド人が警備している収容施設からISの戦闘員らが脱走し始めたら、どんなことになるだろうか。
トランプ氏の外交政策の中に壮大な戦略を探すことには、ほとんど意味がない。
同氏の世界観は、感情的な直感によって形作られている。そこに一定の枠組みを探すことは、皿に盛られたスパゲッティーに対称的なパターンを探すようなものだ。
結局のところ、これは、かつて「炎と怒り」を浴びせてやると脅した北朝鮮の独裁者、金正恩(キム・ジョンウン)氏をもてはやしている大統領だ。
今では、金氏に代わってイランのハッサン・ロウハニ大統領が矢面に立たされている。だが、何があるか分からない。
ホワイトハウスの来賓としてロウハニ氏の名前が挙がっても、それほど驚く人はいないだろう。
トランプ氏が、米国は好きなことができるという前提に立っていることは分かっている。同氏にしてみると、多国間主義は米国に対するグローバリストの陰謀であり、貿易制裁は友人と敵を一様に威嚇する良い方法だ。
ビクトリア女王のパーマストン子爵のように、トランプ大統領は恒久的な同盟関係などに全く関心がない。
もっと心強いことに、トランプ氏は世界的な…
もっと心強いことに、トランプ氏は世界的な緊張を燃え上がらせることについては不注意だとはいえ、あえて始める戦争には慎重だ。
いくつかの例外――イスラエルとハンガリーが思い浮かぶ――を別にすると、大半の友好国と同盟国にとって、「米国第一」は危険の定義そのものだ。
欧州と東アジアの安全保障は、米国の指揮下で稼働する同盟・条約システムに埋め込まれていた。繁栄は、主にワシントンで設計される多国間ルールにかかっていた。
米国の安全保障という接着剤を取り除くと、システムは瓦解し始める。
ロシアと中国が地域の脅威として大きくそびえ立つようになり、同盟国が互いと争う公算が大きくなる。
戦後補償をめぐってエスカレートする日本と韓国の論争を見ればいい。国際貿易のルールへの米国の支援を取り除くと、グローバル化が逆回転し始める。
このため、今ワシントンで繰り広げられているドラマに諸外国の猛烈な関心が集まっていても、誰も驚くべきではない。
大半の国にとって、近い将来にすでに見えている最大の地政学的イベントは2020年の米大統領選挙だ。
もし欧州の外交政策のエスタブリッシュメントが、世界をもっと安全な場所にするために1つだけ望みをかなえてもらえるのだとすれば、それはトランプ氏の退陣だろう。
大統領選に向けた民主党の候補者討論会でジ…
大統領選に向けた民主党の候補者討論会でジョー・バイデン前副大統領とエリザベス・ウォーレン上院議員を見て、ヨーロッパ人はあきらめが広がるのを許した。
バイデン氏の時機は去った。欧州の基準で社会的民主主義者に当たるウォーレン氏は、米国にとっては左に寄り過ぎているように見える。
もしかしたら、トランプ氏の大統領2期目は前もって定められていたのかもしれない。そうなれば、同氏は戦後秩序を完全に壊す時間を手に入れる。
ウクライナ大統領を脅そうとしたトランプ氏の試みが焦点となっている弾劾手続きは、気分を高揚させた。
たとえ上院を説得して大統領を有罪にできなくても、情報開示のプロセスと次第に不規則になる本人の発言によってトランプ氏はホワイトハウスを失うかもしれない。違うだろうか。
何しろウォーレン氏は最近、同氏が危険なマルクス主義者だという批判を払拭しているように見える。もしかしたら大統領弾劾が免罪符になるかもしれない。
現実の世界は、悲しいかな、そうはいかない。大方のヨーロッパ人は、世界が抱えているのはトランプ問題であって、米国問題ではないと教えてくれる。
この大統領の振る舞いが比類なく移り気だという限りにおいては、その言い分には一理ある。だが、トランプ氏がホワイトハウスに到達する前の時代に時計の針を戻すことはできない。
パックス・アメリカーナは、アフガニスタンとイラクの戦火によって、世界金融危機で露呈した経済的な弱さによって、そして中国の台頭の前代未聞のスピードによって失われていった。
バラク・オバマ前大統領は、米国のリーダー…
バラク・オバマ前大統領は、米国のリーダーシップを招集力によるリーダーシップとして描き直そうとした時、これを理解していた。
トランプ氏の好戦的なユニラテラリズム(単独行動主義)は米国の後退を大きく加速させたが、米国が進む方向はすでに定められていた。
トランプ氏がいなくなれば、世界はより安全になるはずだ。だが、筆者の考えでは、同氏の後継者について自信をもって言えることが3つある。
次の大統領は、それが男性であれ女性であれ、誕生するのが2020年であれ2024年であれ、米国が内向きになる流れを食い止められない。
何より技術が豊富な産業のことになれば、保護主義の傾向はさらに強くなる。
そして、米国は海外で血を流し、お金を費やす前に、今よりはるかに国益に気を配るようになる。
成功しようが失敗しようが、弾劾はほかの誰の問題も解決しないのだ。
By Philip Stephens
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英国とEU、ブレグジットは終わりなき旅
1933年、ナチス・ドイツの宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスは次のように語った。「ドイツ国家の近代的な構造は、より高度な形態の民主主義である。ここにおいては国民の負託によって統治が権威をもって行われ、国民の意思の遂行を妨げたり不首尾に終わらせたりする議会の干渉が行われる可能性は存在しない」。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57960
中国の映画・漫画に東南アジア猛反発
子供たちの洗脳を狙った文化輸出に発禁処分相次ぐ
2019.10.31(木)末永 恵
中国 アジア・オセアニア 政治 経済 芸術文化 教育
事業収益の6割を海外市場で占める中国の通信機器メーカー、ファーウェイの「5G覇権」は現代のコミンテルン。経済投資の裏でソフトパワーにより東南アジアなどを”侵略”しようと画策しているといわれる(マレーシア・クアラルンプール、筆者撮影)
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東南アジアで中国共産党の共産主義や覇権主義の台頭に反発する動きが続発している。
米中合作のアニメ映画「アボミナブル」で中国が独自に主張する「九段線」*1が登場することから、領有権を争うベトナム、フィリピン、マレーシアの東南アジア諸国で相次ぎ上映禁止が決定され、公開中止の事態が続出している。
*1=中国が主張する南シナ海の領海を断続する9つの線(破線)によって示したもの。
同作品は、米映画制作大手ドリームワークスと中国のパール・スタジオが共同制作した子供向けアニメで、10代の中国人少女がヒマラヤの伝説の雪男イエティの帰郷を手助けするというストーリー。
映画の冒頭シーンで、主人公の少女が、中国の地図を広げると、地図上には中国南岸を起点に南シナ海全域を包囲するU字形の破線が描写されている部分がクローズアップされる。
米ハリウッド映画界は、中国最大財閥の王健林率いる不動産コングロマリット「大連万達集団」が映画館大手チェーンや映画製作会社を買収するなどチャイナマネーが流入。
こうした中国によるハリウッド爆買いの影響で、中国からの投資を目論み、中国的価値観や嗜好を反映した映画制作が急増している。
この影響で、中国からの独立を主張するチベットのダライ・ラマ氏と親交が深いベテラン俳優で、渋谷に銅像がある忠犬ハチ公をテーマにした映画にも主演したリチャード・ギアがハリウッドで起用されなくなっている。
中国政府の意向や趣向に沿った映画作りや俳優が登用される事態が国際社会から憂慮され始めている中での出来事だった。
とりわけ今回のケースでは、洗脳教育の一環とも思われる子供対象のアニメ映画にまで中国共産主義の覇権を拡大させていることが問題視されている。
東南アジア諸国で上映禁止された今回のアニ…
東南アジア諸国で上映禁止された今回のアニメ映画に登場するこの破線(九段線)は、同主張を巡って2016年7月に、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、「国際法上の根拠はない」と違法であると判断している。
ベトナムを含む同地域のマレーシア、フィリピン、ブルネイなど少なくとも4か国は、国際法上の自国領域を侵害するとして中国が主張する九段線に異議を唱えてきた。
しかし、中国は、国内で販売されるすべての地図に九段線を描き、国際法の決定を無視続けるどころか、今年7月からはベトナムの排他的経済水域(EEZ)内で石油探査活動を強行している。
さらに、現地メディアなどによると、ベトナムでは中国からの輸入車に搭載されたカーナビの地図に、今回の映画と同様、南シナ海で中国が独自に主張する「九段線」が示されていることが先週末、明らかになった。
このため、ベトナム政府は自動車輸入関係業者や団体に対して、地図のアプリを直ちに削除するよう指示した。
東南アジアの中でも、特にベトナムと中国は南シナ海の領有権争いで激しく対立している。
今回の映画や中国輸入車の九段線問題が拍車をかけ、2国間に新たな軋轢を生むのではないかと懸念されている。
一方、同じく南シナ海の領有権で中国と対立するマレーシアは、11月7日から上映されることになっていた九段線が描かれた南シナ海の地図をアニメ映画で使用した映画の上映を急遽、中止した。
さらに、これと前後して、サイフディン外相が10月17日、「南シナ海で想定する衝突に備えるため、海軍の軍事力強化が必要」と域内の活発化する中国の覇権拡大に懸念を表明。
同外相は「中国海警局がマレーシア東部サラワク州沖の南ルコニア礁の周辺で24時間活動している」と明らかにした。
南シナ海では今年9月、米海軍駆逐艦が中国…
南シナ海では今年9月、米海軍駆逐艦が中国が領有権を主張する西沙(英語名;パラセル)諸島の周辺海域を航行し、緊張が高まっている。
これを受けて同外相は「(衝突は)避けるべきだが、南シナ海で大国同士が衝突した場合、マレーシア海域の管理能力を高めるため、我々の(軍事的)資産を強化する必要がある」と述べた。
こうした事態が続く中、マレーシア政府は10月23日、習近平国家主席が主導する経済圏構想「一帯一路」を推進する漫画本「相互利益になるウィンウィンの一帯一路(原題;Belt and Road Initiative for Win-Winism)」を発禁処分にした。
その理由として、「共産主義と社会主義を宣伝し、マレーシアの公共秩序と社会的安全に危害を与える危険性がある」としている。同漫画の製作者と漫画家ら関係者が警察当局の取調べを受けている。
この漫画は今年4月、習国家主席の肝煎りで北京で開催された一帯一路関連の国際会議の席上、マハティール首相らマレーシア政府団が、習国家主席に贈呈したもの。
マレーシアでは、昨年5月に61年ぶりに政権交代し、財政逼迫、国益に相当しないなどの理由で一帯一路の大型プロジェクトを中止した経緯などから、両国間に暗雲が立ち込めていた。
こうした背景から、同漫画が習国家主席に手渡された際、習氏がその場で目を通し、満面の笑みを浮かべる様子は中国の国営メディアなどで大きく報道された。
(参照:https://www.scmp.com/week-asia/politics/article/3034279/malaysia-bans-controversial-belt-and-road-comic-cultural)
折しも、両国は今年、国交樹立45周年の記念すべき年を迎え、同漫画は「二国間の雪解けの象徴」として、中国政府も歓迎していた。
しかし、それから半年足らずで二国間の友好の証とみなされた一帯一路漫画が発禁処分となったのだ。
マレーシア首相府は「同漫画の制作に首相府は一切関与しておらず、マハティール首相の顔写真が使われているが、許可は与えていない」と説明。「マハティール首相はその内容について把握していなかった」としている。
実は、23日に政府が発禁処分を発表する直…
実は、23日に政府が発禁処分を発表する直前の21日、マハティール首相が「中国は友好国で一帯一路の開発には賛同するが、中国の思想や共産主義は受け入れられない」と同漫画を批判していた。
同国政府は昨年12月にも、マラヤ共産党の歴史書「マラヤ共産党歴史画集(一)」を発売禁止処分とした。
その理由は、「共産主義運動を推進する意図があり、国家の独立は共産党のおかげであったとした虚偽の記載があり、共産党に対する同情と支持を呼び込む内容が見られた」というものだ。
今回、発禁処分になった一帯一路の漫画本は、北京に本部を置くマレーシア・中国商務理事会の首席理事で、華人系マレーシア人の丘光耀氏が編集を担当、同じくマレーシア人の張宝玲氏が作画を担当した。
丘氏は、香港中文大学の博士号を取得、スーパーマンのTシャツを好んで着用することから「スーパーマン」としてマレーシアの華人界では知られる弁舌家。
マレーシアの華人を支持基盤にする現与党の一角、民主行動党(DAP)の元党員で、過去の演説で「南シナ海は中国の領土」と発言し、DAPを除名されている。
今回、一帯一路の漫画が発禁処分となった直接の引き金は、処分の前週にマレーシアの2500校の中学校や高校に同漫画(中国語、英語、マレー語版)が寄贈されたこと。
SNSなどで内容などに関して、国内から批判や不満が噴出、警察に通報する父母も多かった。教育省はこうした批判を受け、すでに各学校から漫画の回収を命じている。
さらに、国内の出版法に基づき、同漫画の3カ国語版の発行を禁止した。不法に印刷、出版、販売、保有した場合、最高3年の実刑判決などが言い渡されることになる。
政府は「特に若い世代がマレーシアの歴史について正しくない認識を得る危険性がある」とする声明を発表。
マレーシアは共産党と共産主義を禁止してい…
マレーシアは共産党と共産主義を禁止している国家の一つだからだ。
その背景には、他の東南アジア諸国と同様、独立の過程で中国共産党や共産主義ゲリラと闘ってきた歴史がある。
マラヤ連邦は、のちの初代首相となるトゥンク・アブドゥル・ラーマンの下、1957年8月31日に独立したが、マラヤ共産党は1948年から41年間にわたり武装闘争を行ってきた。
マラヤ共産党は1930年代にコミンテルン代表のホーチミンのもとで結成され、中国共産党の海外支部として、中国共産党南洋臨時委員会と称された。
1955年、英国統治下のマレーシアで初の普通選挙が行われ、連邦自治政府が誕生、自治政府とマラヤ共産党は和平会談を行ったが、共産党は共産党のイデオロギーを放棄せず、合法的地位を求めたため、決別。
第2次世界大戦中は、日本軍がマラヤで中国人敵視政策を導入。マラヤ共産党はマラヤ人民反日軍を組織し、反日運動を展開したが、親日的なマレー人は日本軍に協力した背景がある。
しかし、中国共産党の毛沢東やケ小平国家主席が陳平らを北京に招聘し、資金や武器などで支援し、武装闘争はその後も20年間続いた。
中国の策謀家で知られる「陳平」の名を借り、「マラヤの陳平」と呼ばれ、1947年3月、23歳の若さで総書記となり、共産化した中国と連携を図った。
1989年12月のマレーシア政府との和平協定で闘争が終焉を迎え、陳平は「最後のコミュニスト」と呼ばれた。
今回の一帯一路漫画は、こうしたマレーシアの共産主義との長年にわたる暗く長い闘いを彷彿させるからだ。
同漫画には中国が弾圧するイスラム系民族の…
同漫画には中国が弾圧するイスラム系民族のウイグル人に関して、「中国の国家融和を破壊する分離独立主義者」との記述がある。
さらに「マレーシアのマレー系は、ウイグル人を支援するラディカルな民族」とマレー系を批判している。
こうしたこともマレーシア政府が発禁処分を行った理由の一つと見られる。
マハティール首相は国連総会でも、中国のウイグル人への弾圧を非難しているほか、マレーシア国内のウイグル人引き渡しを拒否するなど、中国との経済投資を重要視する一方、共産主義に対する断固たる姿勢を崩していない。
圧倒的な経済と軍事力だけでなく、映画や漫画などというソフトパワーを駆使して中国の体制を正当化し、経済や政治体制が脆弱な国を覇権下に置こうと企む中国。
しかし、中国の共産主義と長年闘ってきた歴史をもつ東南アジアの国々はそうやすやすと中国の軍門に下ることはない。
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ベトナム漁船が仰天、目の前に中国原潜が突如浮上
多数のベトナム漁船群が操業していた西沙諸島周辺海域で、ベトナム漁船のまっただ中に中国海軍原子力潜水艦が突如浮上した模様
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58087
『ジョーカー』にヒーローを見始めた香港の若者たち
'Joker' Is Inspiring Some Hong Kong Protesters
2019年10月31日(木)15時55分
ジェームズ・パターソン
悪役ジョーカーは、世界中で抵抗のシンボルになりつつある(写真はボリビアのデモ参加者) Kai Pfaffenbach-REUTERS
<ゴッサムシティはまさに今の香港だ、反逆者ジョーカーは自分たちのリーダーだ、という危険なアナロジー>
スーパーヒーローのバットマンが、リドラー、ペンギンやキャットウーマンといった犯罪者や、宿敵ジョーカーとの戦いを繰り広げるゴッサムシティ。この架空の街ゴッサムと実在の街である香港が「似ている」という指摘は、これまでにもあった。
それが今回いっそう熱を帯びているのは、映画『ジョーカー』が、香港の反政府デモが何カ月も続くなかで公開されたからだ。この映画を観た香港デモ参加者の一部が、正義の味方のバットマンではなく、悪役ジョーカーに「ヒーロー」を見ている。「レジスタンス(抵抗)の象徴」「反逆者の精神的リーダー」として。
映画でジョーカーを演じたのはホアキン・フェニックス。冴えない大道芸人だったアーサー・フレックが、ゴッサムシティ有数の凶悪な犯罪者ジョーカーへと変貌していくという役どころだ。貧富の格差が広がり、荒廃したゴッサムシティで権力をあざ笑うジョーカーに、自分たちの姿を重ね合わせているのだ。
不気味なほど似た破壊の光景
そうした香港の感情を表すソーシャルメディアへの投稿を幾つか挙げると......。
「2016年に香港独立を求める『暴力的な抗議デモ』に関与したとして実刑判決を受けた活動家、梁天gはジョーカーそのものだ」
「林鄭月娥行政長官のモデルは、バットマンの父親トーマス・ウェインに違いない」──映画の中でトーマス・ウェインは、裕福で傲慢で現実を理解しない人物として描かれ、ゴッサム市の市長選に出馬する。
映画を観た学生キミー・ウーは、ジョーカーのカウンセラーを香港政府になぞらえた。「いつまでも耳を傾けないところが似ている」という。
ゴッサムシティの市民が地下鉄の駅で戦うシーンは、誰が見ても、香港の地下鉄の駅で実際に起こった警察とデモ隊の衝突にそっくりだ。
映画のラストではゴッサムシティ暴動が起きる。街ではさまざまな破壊行為が行われ、空気中には催涙ガスが漂い、店先の落書きや割れたガラスが映し出される。ここ数カ月の香港の街頭と不気味なほど似通っている。
<参考記事>『ジョーカー』怒りを正当化する時代に怒りを描く危うい映画
<参考記事>香港の若者が一歩も退かない本当の理由
次のページ悪評を懸念する人々も
デモ参加者たちの見解は分かれている。ジョーカーを自分たちと重ね合わせる者もいる一方で、そうした比較に恐れを抱く者もいる。デモや暴力に終わりが見えないなか、香港を去って別天地に移住した香港人も多い。
ジョーカーのようなキャラクターと一緒にされれば香港の評判が落ち、デモ隊の主張までが誤解されかねないと懸念する声もある。
ハロウィンでは、香港の多くの若者がジョーカーに扮することだろう。中国の人民解放軍が乗り込んでくる前に、香港版のバットマンが現れてくれることを願う。
(翻訳:森美歩)
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https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13302_2.php
米中ウオッチ】1日に協議、PMI悪化、世界最大5G、合併中止か
笠原文彦
2019年10月31日 13:23 JST
米中を巡る主なニュースは以下の通り。それぞれの記事を読むには、青地のリンクをクリックしてください。
• 中国と米国の貿易交渉トップが11月1日に電話協議−中国商務省
• 米中首脳の貿易合意実現に新たな障壁−チリがAPEC開催断念
• 米財務長官「中国の約束心強い」、市場開放や投資制限撤廃−ロイター
• ムニューシン米財務長官、11月の中国との部分的貿易合意は重要な成果
• 中国製造業PMI、10月に悪化−内需低迷や貿易戦争響く
• 中国は成長安定化をさらに重視へ、不確実性高まる中で−人民日報
• 中国で世界最大の5Gネットワーク始動−月約2000円から利用可能
• 香港金融管理局も追加利下げ、米に追随−リセッション入り濃厚
• HSBC、香港のプライムレート引き下げへ−11年ぶり
• 中国、ケムチャイナとシノケムの合併取りやめる計画−英紙FT
• アリババが11月にも香港上場か、最大150億ドル調達目指す−ロイター
• 「ティックトック」IPO、早くても20年後半か−海外強化優先
• 野村、中国で資産運用事業拡大を模索−上海部門幹部
• SOHO中国、総額8700億円の商業不動産売却を検討−関係者
• 英スタンダードチャータード、7−9月利益は予想上回る−経費抑制で
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-31/Q07ZYPDWRGG001?srnd=cojp-v2
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