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北朝鮮漁民は「100年前の船」で無謀な出漁......日本の漁師から同情の声も
2019年10月8日(火)14時15分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載
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石川県の日本海沿岸に漂着した北朝鮮のものと見られる木造船(2018年5月12日、デイリーNKジャパン)
<北朝鮮漁船の遭難の最大の原因は、「日本なら100年前のシロモノ」と言われる粗末な木造船による強引な出漁にあると見られている>
海上保安庁によると、7日午前9時10分頃、日本海の好漁場・大和堆の周辺海域で、水産庁の漁業取締船「おおくに」(約1300トン)と、北朝鮮の漁船が衝突した。現場は、石川県・能登半島から約360キロ北西の日本の排他的経済水域(EEZ)とみられる。
漁船は衝突から間もなく沈没。漁船の乗員約20人が海上に投げ出され、一部は救助されたもようだが、なお全員の安否が気にかかる。(編集部注:日本の海保は、北朝鮮の漁船乗組員約60人全員が救助され、別の北朝鮮船に乗り込んだと発表)
大和堆周辺では近年、北朝鮮漁船や中国漁船による違法操業が問題となっていた。その一方、遭難した北朝鮮船と見られる木造船や、北朝鮮の漁民と見られる遺体が相次いで日本の海岸に漂着した。
遭難の最大の原因は、「日本なら100年前のシロモノ」と言われる粗末な木造船による強引な出漁にあると見られている。サイズが小さすぎ、構造的にも沖合での漁業に向かない木造船は、大波に遭うと簡単に転覆する。海に放り出され命を落とした北朝鮮漁民の数は、漂着が多かった2017年の1年間だけで1000人を下らないと見られる。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は昨年3月、かつて北朝鮮でイカ漁に従事したことのある脱北男性のインタビューを掲載した。男性はその中で、木の葉のように大波にもてあそばれる木造船の様子を描写。「あの時の恐怖は言葉では言い表せません」と語っている。
<参考記事:「あの恐怖は言い表せない」北朝鮮の元漁師が体験した「生死の境目」>
また韓国のデイリーNK本社とデイリーNKジャパンは昨年5月、石川・山形・秋田の各県を訪れ、イカ釣り漁師や漂着木造船を取材した。石川県漁協小木支所で行ったインタビューでは、漁師たちから北朝鮮船の漁の実態や、日朝の民間漁業協定が結ばれていた1980年代に北朝鮮の港に避難した体験談も聞いた。漁師たちは北朝鮮の違法操業を批判する一方で、無謀な出漁をせざるを得ない北朝鮮漁民の境遇について、「かわいそうや。あの人らも帰れば妻や子がおるのに」と同情の声を漏らした。
石川県での取材では、北國新聞の連載記事「戦場の大和堆」取材班からの手厚いサポートを得ることができた。タイトルの通り、日本の国益が脅かされる海の最前線を精力的に追った企画だが、徹底的な取材に基づいた、次のような指摘も見られる。
「『協調的安全保障』という考え方がある。多国間で幅広い交流を持ち、信頼関係を醸成することで、安全保障上の危機の高まりを予防しようというものだ。もしも漁業協定が結べれば、その一部として機能しうるのではないか。(中略)北風も冷たいばかりではない。大陸から吹き寄せる季節風を、能登人は「あえの風」と呼び、恵みをもたらす吉兆とした。かつて朝鮮半島から人と文化を運んだ風でもある」(同紙2018年2月9日付朝刊)
まずは今回の事故での北朝鮮漁民の全員の無事を祈り、この出来事が、日朝になんらかの肯定的な結果をもたらすことを期待したい。
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/100-45.php
「あの恐怖は言い表せない」北朝鮮の元漁師が体験した「生死の境目」
2018年05月04日
日本海沿岸では昨年から今年の初めにかけて、北朝鮮のイカ釣り漁船とみられる木造船と、北朝鮮漁民と見られる遺体の漂流、漂着が急増した。背景には、不足する外貨を稼ぎたい国家が「漁労戦闘」と呼ばれる無理な漁獲増大キャンペーンを繰り広げ、それに、一獲千金を目指す庶民が呼応している実態があると言われる。
米政府系のラジオ・フリー・アジアは最近、かつて北朝鮮でイカ漁に従事したことのある脱北男性のインタビューを掲載した。その要約を以下に紹介する。
「帰らぬ漁師、近所だけで数十人」
2004年夏、咸鏡道(ハムギョンド)のある港。キム・チョルミンさん(仮名、当時38歳)は、イカ漁で商売のタネ銭を稼ぐという希望に胸を膨らませ、疲れも忘れて漁船に乗り込んだ。
「北朝鮮では『イカ漁で1年分の食料を解決できる』と言われています。それは事実です。2ヶ月のイカ漁の時期のうち、天気の良い30日間は漁に出ます」
大漁への期待を抱いて大海原に出たキムさんは、やがて襲ってきた雨風に船が飲み込まれそうになり、恐怖に震えることになった。
「夕方に出漁したときはベタ凪だったのに、深夜になって雨が降り始め、風が出てきたんです」
急に雨風が強まり、船は荒波に飲み込まれそうになった。
「小さな木造船だったので、波に揺られると、そそり立つ大波にさえぎられて左右が見えなくなります。シケがすごくて、波の高さは数階建てのマンションほどに見えました。あの時の恐怖は言葉では言い表せません。じっと目を閉じて船に身を委ねました。なんとか大波を乗り越えても、船は揺れ続けました」
(参考記事:【写真】石川県に漂着した北朝鮮の木造船)
その年の夏、2度の台風に遭い、命からがら逃げ帰ったキムさんはそれ以降、恐ろしくなって漁に出られなくなってしまった。
「2度も台風に遭うと、勇気が出なくなるんですよ。最初は子どものことを考えて、次には妻のことを考えました」
結局、キムさんは漁に出ることを諦めた。翌年に脱北し、今は家族とともに日本で暮らす。東京でRFAの取材に応じたキムさんは、昨年末から急増した日本海沿岸への北朝鮮木造船の漂着を見て、他人事ではないと感じたと語った。
「毎年、イカ漁の時期には、私の近所だけでも漁に出て帰ってこない人が数十人いました」
(参考記事:北朝鮮の漁師300人以上が事故で行方不明に)
北朝鮮の小型漁船のほとんどは、航海に必要な基本装備を搭載していない。
「小さな木造船に5?6人が乗り込むのですが、(これと言った装備もなく)羅針盤一つで漁に出るので、方向も現在地もわからないんですよ。距離もわかりません。どこに向かっているのかぐらいしかわからず、自分たちがどこにいるのかは(見当もつきません)」
それでも大漁への期待を抱き、遠くまで漁に出ていたと語るキムさん。
「イカの群れを追いかけているうちに、陸地から遠く離れたところまで来てしまうことがよくありました。エンジンは船の大きさに見合わない小さなものを使うことが多いので、風が吹けばエンジンは無用の長物です。ほとんど役に立ちません」
木造船漂着の報道を目を凝らして見たというキムさんは、船の大きさや装備が、自分が漁に出ていた十数年前と何も変わっていないことに驚いたと打ち明けた。
「船は、装備も大きさも10年前と全く同じです。増えたのは船の数だけのようです」
https://dailynkjp.com/archives/4191?nw=1007
北朝鮮の漁師300人以上が事故で行方不明に
2017年01月04日 | 漁業
昨年の12月29日、北朝鮮の平壌で金正恩党委員長が打ち出している漁業奨励策の成果を発表、賞賛するための、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第4回水産部門熱誠者会議が開催された。
(関連記事:北朝鮮軍水産部門熱誠者会議、平壌で開催)
しかし、北朝鮮当局は「1年のうち300日漁に出よ」などと言った無茶な指示を下している。そしてこのノルマを達成するために、不十分な装備の船で悪天候の中出港することが多く、事故が多発している。
平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、昨年の「漁労戦闘」で300人以上の漁師が行方不明になっている。とりわけ、6月下旬からのイカ漁では200人、11月からのハタハタ漁では100人の漁師が死亡または行方不明になっているとのことだ。
情報筋によると、この数字は道の人民委員会(道庁)行政局幹部から伝えられた。各道の人民委員会は秘密裏に海難事故の発生件数と死者数、行方不明者数を集計しているようだ。
漁師たちは、大工が作った小さな船に乗って漁に出るが、沈没した船やエンジンが故障して放置された船が数万隻に及ぶという。また、小型漁船には6?7人の船員以外に、他地方から出稼ぎに来た労働者数十人が乗っていることが一般的であることを考えると、死亡・行方不明者の数は、これよりはるかに多いだろうと情報筋は見る。
このような状況にもかかわらず、地方の労働党や行政官僚は、人命救助には全く関心を持とうとせず、捜索活動は一切行わない。身内が事故に遭っても、どこにも訴え出るところはない。訴えれば、逆に「脱北したのではないか」と疑われ、保安員(秘密警察)から責められたり、監視されたりする有様だという。
唯一伝えられたのは、沈没する船で金日成、正日氏の肖像画を守り抜き、命を落としたという船長の美談だけだ。このような状況に、人々の怒りは頂点に達していると情報筋は伝えている。
(関連記事:北朝鮮メディア、命をかけて肖像画守った船員を賞賛)
そして行方不明者の一部は、日本にもたどり着いている。
共同通信の調べでは、昨年10月以降だけでも16隻の木造船と27人の遺体が発見されている。12月20日には、能登半島沖で北朝鮮の漁船とみられる木造船が漂流しているのが発見された。また、12月11日に韓国東海岸の沖で発見された北朝鮮漁船は、3ヶ月間漂流していたことが明らかになっている。
(関連記事:能登半島沖でナゾの木造船が漂流…北朝鮮の漁船か?)
金正恩氏が2017年の新年の辞で強調した「より多くの近代的な漁船を建造し、東海岸地区に総合的な漁具生産基地を築いて水産業の物質的・技術的土台を強化しなければなりません」という言葉も空しく響き渡るばかりだ。
共同通信の調べでは、昨年10月以降だけでも16隻の木造船と27人の遺体が発見されている。12月20日には、能登半島沖で北朝鮮の漁船とみられる木造船が漂流しているのが発見された。また、12月11日に韓国東海岸の沖で発見された北朝鮮漁船は、3ヶ月間漂流していたことが明らかになっている。
(関連記事:能登半島沖でナゾの木造船が漂流…北朝鮮の漁船か?)
金正恩氏が2017年の新年の辞で強調した「より多くの近代的な漁船を建造し、東海岸地区に総合的な漁具生産基地を築いて水産業の物質的・技術的土台を強化しなければなりません」という言葉も空しく響き渡るばかりだ。
https://dailynk.jp/archives/80546
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