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9.11から18年…タリバンと"和平交渉"を始めた米国の狙い トランプ騒乱の時代と中東、日本
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/261778
2019/09/14 日刊ゲンダイ
米軍の爆撃を繰り返し受けるタリバン支配地のラヘシト村(右)と迎え撃つタリバン兵士(C)共同通信社
2001年9月11日の米国同時多発テロから18年が経ったが、米国の対テロ戦争によって世界はいっそうテロと向き合う世界になった。米国の戦争は暴力的文化を中東イスラム世界に定着させ、軍事介入を行った米国など欧米諸国に対する反発が強まり、米国の戦争に協力した国の首都であるパリ、ロンドン、マドリード、ブリュッセルなどで大規模テロが発生した。
同時多発テロが発生すると、ブッシュ大統領はテロの容疑者であるオサマ・ビンラディンやアルカイダの指導者たちを国際的な警察力で逮捕、起訴して裁判にかけるのではなく、軍事力でひたすら「撲滅」することを考えた。タリバンの最高指導者ムハンマド・オマルの故地に近いアフガニスタン南部の都市カンダハルでは、宗教指導者や部族の指導者たち700人が集まるジルガ(会議)が開かれ、オサマ・ビンラディンのアフガニスタンからの自発的退去と米軍の攻撃の抑制を求めたが、米国はこの民意を無視して、911とは関係のないタリバン政権を武力で打倒し、アフガニスタンの主要都市などに激しい空爆を加えて反米、反外国感情を根強く定着させてしまった。
■アフガニスタンに定着した反米感情
現在、トランプ大統領は、米国がタリバン政権打倒後につくったアフガニスタン政府と交渉することなく、タリバンとだけ和平交渉を行うようになっている。トランプ大統領は、9月7日、キャンプデービッドで行われる予定だったタリバンとの会談を中止する考えを明らかにした。5日にカブールでテロが発生し、米兵1人を含む12人が犠牲になったからだ。8日付のアフガニスタン紙「ハシュテ・ソブフ(朝8時の意)」によれば、アフガニスタンのアブドラ行政長官は、米国とタリバンの交渉はアフガニスタン人の民意や切望に反して行われていると述べた。トランプ大統領は、タリバンとの交渉にアフガニスタン政府を同席させる意図はないようで、それはあたかも日本や韓国を飛び越えて北朝鮮の金正恩委員長と直接取引を行おうとする姿勢と同様に見える。
米国のザルメイ・ハルルザド・アフガニスタン和平担当特別代表は、この4カ月以内で、5400人の米兵をアフガニスタンから撤退させるとタリバンに提案したが、これはベトナム戦争のパリ協定で米軍の撤退を約束したことを彷彿させている。米軍が1973年3月に完全撤退すると、1975年4月に米国が支えていた南ベトナムの首都サイゴンはあっけなく陥落した。米国はタリバンがアフガニスタンを国際的なテロ組織の活動舞台としないことを条件に米軍がアフガニスタンから撤退することを提案している。しかし、すでにISはアフガニスタン東部の山岳地帯などを拠点に活動している。
今年1月末のニューヨーク・タイムズ紙のロッド・ノードランド記者の記事によれば、アフガニスタン全407地区のうちアフガニスタン政府が支配しているのは54%に過ぎない。タリバンは12%の地区を統制下に置き、34%の地区を政府軍と競合しているが、9月6日に西部のファラー州のアナール・ダラ地区を攻略するなど次第に支配する地区を増加させている。タリバンがトランプ政権と交渉するのは、その勢力を拡大させているという自信が背景にある。
■9.11でイラク犠牲者の死を悼まない米国
毎年、米国は911の追悼式を行うが、米国が始めたイラク戦争において亡くなったイラク市民を悼むことはない。米国ブッシュ政権は、911の同時多発テロの背後にイラクのサダム・フセイン政権があると主張し、大量破壊兵器保有という虚偽の理由で2003年3月にイラク戦争を開始した。米軍の軍事介入に対する反発やイラク戦争による混乱がある中で冷酷な過激派組織「IS(イスラム国)」の活動も生まれた。「イラク・ボディ・カウント」によれば、戦争開始の2003年から米軍が撤退した2011年までの市民の犠牲者10人のうち6人が米軍など有志連合軍の空爆によるものであった。ISが台頭した2014年にはイラク人1万人につき5.8%の人々がIS絡みのテロや戦闘の中で亡くなっている。2003年のイラク開戦から今年4月までに20万人前後のイラク人が命を落とした。911の犠牲者2977人と比較にならない数である。
アムネスティ・インターナショナルによれば、米軍はシリアのISの拠点であったラッカでも白リン弾をも使用する大規模な空爆を行い、米海兵隊はシリア民主軍の支援を得て榴弾砲でラッカ市内を砲撃したが、空爆や砲撃など米兵に犠牲を出さないで行う攻撃形態は、無差別であるために市民の犠牲が1600人にも上り、シリアでも反米感情やISなど過激派に対する共感を植えつけてしまった。
さらに、米国はサウジアラビアが「テロとの戦い」と称するイエメン内戦にも介入している。サウジアラビアの戦闘機が9月1日、ホーシー派の支配下にあるイエメン南西部の都市ザマールにある収容施設を空爆し、反ホーシー派の収容者100人以上が死亡した。これに対して米民主党のバーニー・サンダース上院議員は、米国の爆弾、米軍のロジステックや情報面での協力がサウジアラビアの独裁者による空爆の「共犯者」に米国を仕立てているとツイートした。2014年に始まったイエメン内戦では8000人以上が犠牲になり、全人口の半数余りが飢餓状態に置かれている。
■反米欧テロが止まないのはなぜか
過激派による反米欧のテロは、宗教や文化の対立によって起こされるのではない。むしろ、アフガニスタンやイラクでの戦争に見られたように、米国やそのヨーロッパの同盟国がイスラム世界への軍事介入を行い無辜の市民の犠牲を出すこと、パレスチナ問題で米国がイスラエルを偏って支援すること、さらにはイスラム世界における腐敗や貧困、人権抑圧などがある国の政府を米欧諸国が支援することなど、むしろ政治的、あるいは経済的要因によって発生している。
先日、在日のムスリムの宗教指導者に会ったところ、「安倍首相はジャーナリストの後藤健二さんが斬首される前にISと闘う国に2億ドル(約210億円)の支援金を拠出すると言いましたが、敵対する勢力のうちどちらかの側に加担することは非常にまずいことだと思います」と語っていた。小泉純一郎首相がイラク戦争を真っ先に支持し、自衛隊をイラクに派遣すると、日本人もイラクで拘束されたり、殺害されたりした。欧米とイスラム世界の政治的・軍事的対立には、日本は中立姿勢を貫いたがほうがいい。これが日本人の安全を確保するための911事件の教訓でもあり、ペルシア湾の有志連合への参加の議論にも教訓を与えている。
宮田律 現代イスラム研究センター理事長
1955年、山梨県甲府市生まれ。83年、慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻修了。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院修士課程修了。専門は現代イスラム政治、イラン政治史。「イラン〜世界の火薬庫」(光文社新書)、「物語 イランの歴史」(中公新書)、「イラン革命防衛隊」(武田ランダムハウスジャパン)などの著書がある。
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— 新保吉章 (@pat052) 2019年9月14日
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