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日韓関係の緊張が高まる中、必要なのは憎悪ではなく希望/HARBOR BUSINESS Online・msnニュース
ハーバービジネスオンライン
2019/08/31 08:33
http://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e6%97%a5%e9%9f%93%e9%96%a2%e4%bf%82%e3%81%ae%e7%b7%8a%e5%bc%b5%e3%81%8c%e9%ab%98%e3%81%be%e3%82%8b%e4%b8%ad%e3%80%81%e5%bf%85%e8%a6%81%e3%81%aa%e3%81%ae%e3%81%af%e6%86%8e%e6%82%aa%e3%81%a7%e3%81%af%e3%81%aa%e3%81%8f%e5%b8%8c%e6%9c%9b/ar-AAGzIwC?ocid=iehp#page=2
日本政府の独自制裁により、北朝鮮からの土産品は没収
共同通信が8月24日、報道したところによると、「8月上旬に北朝鮮を訪問した千葉市の在日朝鮮人の男性が、日本へ戻り羽田空港で税関検査を受けた際、北朝鮮在住の親戚から受け取った土産品の持ち込みは「経済産業省の指示で10個が上限だ」と言われ、超過分を没収されたことが24日、男性らの話で分かった」という。(参照:共同通信)
この男性は千葉朝鮮初中級学校(千葉市)の校長である金有燮(キム・ユソプ)氏。北朝鮮訪問から戻ってきた金氏が、空港の税関で没収されたのは、ビール2缶と乾物ワラビ2袋、フェイスパックと、そして金氏の次男から頼まれていた「朝鮮切手セット」である(切手セットのみ税関指定ですべて没収)。
また、同記事では以下のようにも報じている。
「日本政府は独自制裁の輸出入禁止措置に基づき、現地での購入品の国内持ち込みを認めていないが、関係者によると、在日朝鮮人が親戚から贈られた物は通常『人道目的』として持ち込みを認めてきた。最近になって政府が親戚間の贈り物にも『数量制限』を設けた可能性がある。(中略)金さんが経産省に問い合わせると、『親戚からもらったものは(禁輸の)例外として一定数持ち込みが認められることがある。その基本は10個だ』との説明を受けたという」
北朝鮮からのお土産品の問題が公になったのは、2018年6月。修学旅行で訪朝していた神戸朝鮮高級学校の生徒らが関西国際空港の税関でお土産品を没収された。
政府が北朝鮮への独自制裁を課していることと、生徒たちのお土産品の没収に現実的な相関関係はなく、当事者のみならず日本市民からの強い抗議もあり、後日「人道的な配慮」として税関が没収したお土産品を返還している。
北朝鮮を巡る北東アジアの情勢は1年前に比べ劇的に変化している。
2度に渡る南北首脳会談や世界の耳目を集めた3度の米朝首脳会談。今年の5月には安倍首相も「あらゆるチャンスを逃さない。私自身が金正恩委員長と向き合わなければならない。条件をつけずに向き合わなければならない」と、それまでの北朝鮮強硬姿勢を崩し対話の道をさぐる発言をしている。
子どもが、国際政治の軋轢の犠牲になるべきではない
そのような中での今回のお土産没収騒動である。金氏が「持ち込み制限自体、日本が外交で打つ手がない状況での在日朝鮮人への嫌がらせでしかない」と評するのにも首肯せざるを得ない。
そもそも金氏はどのような理由で北朝鮮を訪問していたのか。
今回の金氏の訪朝は「個人旅行」ではない。千葉県の県議・弁護士・市民らで構成された「千葉朝鮮学校を支える県民ネットワーク(略称:千葉ハッキョの会)」の代表メンバーらと共に訪朝していた。千葉ハッキョ(※「ハッキョ」とは韓国・朝鮮語で「学校」の意)の会のメンバーらは、日朝親善と千葉朝鮮学校の支援をテーマに掲げ、今回で4度目となる訪朝をした。
日本にある朝鮮学校は、自治体からの助成金を長らく停止されている。
理由は、8月25日に埼玉県知事に当選した大野もとひろ氏が選挙期間中に公開した匿名の質問サービス「Peing質問箱」への回答を引用するのであれば、「拉致問題や非核化など、我が国に対する脅威と問題が継続する中で、補助は困難です」というものだ。
外交的な政治問題や北朝鮮に対する世論と、子どもの教育問題を同じ俎上で評することは、実はとても違和感のある事で、「子どもの学ぶ権利を政治的な理由で国家が侵害してはならない」と、日本は国連から5度も勧告されている。安倍首相が北朝鮮の短距離ミサイルを国連決議違反であると言うのならば、こちらの国連勧告にも真摯に対応すべきではないだろうか。
切手を没収された校長の次男に、とある日本人からプレゼントが届く
本稿の主題は、実はここからだ。
日本と韓国の摩擦が発火点を迎えようとしている。互いがナショナリズムを煽り、互いを貶めている。その結果、昨日報じたように野球のU18日本代表が、韓国での世界大会に行くのに、日の丸のついた服を着ないというまったく不可解な結果が生まれてしまっている。
国同士の外交と、民間レベルの相互交流は、これもやはり同じ俎上で語るべきものではない。
冒頭の金氏は、この没収騒動の件を自身のFBに公開した。その投稿を読んだ日本人が、金氏の次男に、自身が持つ「朝鮮切手セット」をプレゼントとして送ってきたと言う(冒頭の写真)。
「日本の方が、『次男さんへ』と朝鮮の切手を送って下さった。次男へのお土産を没収されたと聞いての事だ。熱いものが込み上げた。次男の喜びようは言うまでもない。人としての大切な心を感じとった事であろう。これぞ私たちがこの社会に決して絶望しない所以である。」(金氏のFBより)
メディアは対立や嫌悪を煽るのではなく、希望を語るべきだ
国の外交がどうであろうが、市民社会には希望がある。
日本メディアで数日間報道されていた、韓国・ホンデで、韓国人男性に汚い言葉で罵られ髪の毛を引っ張られた19歳の女性はこう言っている。
「韓国の人たちには『ごめんなさい』と言わないで欲しいです。ただ一人の個人的な悪意であって、韓国人みんなの悪意ではありません。日本と韓国の関係が、この事で悪化するようなことがないよう願います」(韓国メディアに紹介された文を筆者が翻訳)
所謂「嫌韓」モノや北朝鮮バッシングを扱うと視聴率やPV数が上がるというメディア関係者がいる。それだけ世論が注目しているという考え方だ。商業的な打算もそこに拍車を掛ける。そして、ナショナリズムは「熱狂」する。その先には互いの「痛み」しかないにも関わらずだ。
こんな時だからこそ、メディアは熱狂を冷やかに見つめ、そして希望を語るべきであろう。
<文・安達夕>
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