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トランプの独裁者贔屓は要警戒レベル
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/07/g20-28.php
2019年7月1日(月)19時30分 フレッド・カプラン ニューズウィーク
トランプの呼び掛けで実現した米朝会談は、ロマンチックなミュージカルのようだった(6月30日、板門店) Kevin Lamarque-REUTERS
<G20でも板門店でも、仲良く写真に並ぶのは強権的な首脳か独裁者ばかり。もうトランプの恥ずかしい言動を笑っているだけではすまされない>
先週、大阪で開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)でドナルド・トランプ米大統領がやらかしたいくつもの愚かしい言動を思うと、1つ1つあげつらいたくもなる。
例えばフィナンシャル・タイムズのインタビューでロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「時代遅れ」と切って捨てた「西側のリベラリズム(自由主義)」の状況について問われ、明らかな勘違いから、「リベラル(進歩派)」が強いカリフォルニア州についてまくし立てた。
6月26〜27日に行われた民主党の大統領候補を争うテレビ討論会では、バスで子供たちを遠くの学校まで通学させ、黒人と白人を一緒に学ばせて人種差別を解消しようとした1970年代の施策が重要なテーマとなった。この件について問われたトランプは、バスは一般的な通学の足だと答えた(ちなみに当時、この施策は今よりももっと大きな話題だったし、その頃トランプはすでにいい大人だった)。
要するに、今のアメリカ大統領は頭が良くない。アメリカの民主主義の基礎となった政治的な概念も分かっていない。歴史についてはほとんど何も知らず、悪いことにそのことに対する罪悪感がまったくない。どれも以前から分かっていたことではあるのだが。
<参考記事>トランプ=金正恩、南北非武装地帯で3度目の首脳会談 核問題めぐる協議再開で合意
■「専制主義の枢軸」の仲間入り
今回のG20でトランプが見せたパフォーマンスで、前から薄々見えていた傾向が確かなものになってきてしまった。トランプは、アジア・タイムズ・オンラインのダニエル・スナイダーが言う「専制主義の枢軸」の仲間入りをしつつある。
トランプは政治的なイメージ操作の技術には長けている。だから彼が大阪で作り上げたイメージは検討するに値する。集合写真の撮影の場で 20カ国首脳の多くがポーズを取り、カメラに向けて手を振る中で、トランプはサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と並んで正面中央に陣取っていた。
かつて会談した際にトランプは皇太子のことを「友人」で「すばらしい同盟相手」で「アメリカ製品のいいお客」だと持ち上げた。アメリカ在住のジャーナリスト、ジャマル・カショギ殺害への皇太子の関与についても、「直接指摘する者は」いないと述べた。トランプ政権の情報機関のトップや国連の報告書ははっきりと、殺害は皇太子の指示だったと「指摘」しているのに。
ムハンマドと反対側の隣に立っていたのは、同じく強権で知られるトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領だ。
<参考記事>北朝鮮と戦う米軍兵士は地獄を見る
そして、トランプとプーチンの仲睦まじい首脳会談だ。ニューヨーク・タイムズ紙は、記者がトランプに、アメリカの選挙に干渉するのをやめるようプーチンに言うつもりか、と聞いた時のトランプの反応をこう伝えている。
「トランプはプーチンのほうに顔を向け、にやりとしてからわざと真剣そうな声で、『選挙に介入しないで下さい、大統領』と言った」
ロシアが2016年の米大統領選挙に介入したという点については、米情報機関の調査結果もロバート・ムラー司法相特別検察官の報告書も同様に認めている。この件について問われたトランプ政権の高官や共和党の政治家のほとんどが、同じく介入はあったと言っている。それなのに、ロシアの介入で利益を得た当人が、これをジョークとして一蹴してしまったのだ。
ブルームバーグ・ニュースのジェニファー・ジェイコブズ記者は、トランプとプーチンがメディア蔑視で意気投合している会話を耳にした。「連中をつまみ出せ」とトランプは言い、「フェイクニュースっていうのはすばらしい用語だろう? ロシアにはこんな問題はないが、アメリカにはある」と付け加えた。これに対しプーチンは英語で「ロシアにもある。同じだ」と答えたという。
■イバンカ、首脳気取りでひんしゅくを買う
プーチンが政権を握って以降、ロシアでは何十人ものジャーナリストが――多くはロシア政府の命令で――殺害された。一方のトランプはと言えば、西側世界のリーダーという立場にあり、報道の自由など西側にとって重要な価値の擁護者とされている。そんな2人が個人的にとは言え「フェイクニュースっていうのはすばらしい用語だろう?」などと皮肉を共有したのだ。
トランプが専制主義に傾いている兆候は他にも見られた。すべてのハイレベル協議の場に娘のイバンカと娘婿のジャレッド・クシュナーがいたのだ。2人ともホワイトハウスのいかなる職種のインターン資格も認められないだろうに、それぞれ大統領補佐官と上級顧問として働いている。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領やイギリスのテリーザ・メイ首相、カナダのジャスティン・トゥルドー首相、IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事との会話に加わろうとしているイバンカの姿を捉えた動画がある。特にラガルドは、この下っ端を部屋に入れたのは誰?と言わんばかりの嫌悪感丸出しの表情だ。
イバンカは首脳同士の会話に割って入ろうとして「国家的恥さらし」と批判された
Ivanka Trump appears to be trying to get involved in a talk among Macron, May, Trudeau and Lagarde (IMF head).
— Parham Ghobadi (@ParhamGhobadi) 2019年6月29日
The video is released by French Presidential palace. pic.twitter.com/TJ0LULCzyQ
外相や国防相といった高官でさえ、呼ばれたりしない限りは首脳同士の会話に首を突っ込むことは許されない。そんな基礎的な外交慣習もイバンカは知らなかったのだろう。だがそうした常識の欠如は驚くことではない。そもそも「自分はアメリカ政府の一員だ」という印象を与えてしまったのは父親なのだから。トランプ政権のホワイトハウスは、まさに家族経営だ。トランプ政権は専制主義的な政権と手を組もうとしているだけでなく、自身が専制的な政権に似てきている。
■金委員長へラブコール
とどめの一撃が突然の米朝首脳会談だろう。トランプは6月30日、まず韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を訪ね、その後本当の目的である北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と南北軍事境界線の非武装地帯で顔を合わせ、握手をし、言葉を交わした。2人は韓国と北朝鮮を隔てる軍事境界線を越え、少し歩いた。こうしてトランプは現職で初めて北朝鮮に足を踏み入れたアメリカ大統領になった。
この会合はその段取りからして、赤面するようなものだった。会合の2日前、トランプはツイッターで金委員長に、韓国に行くついでに挨拶をしたいから、非武装地帯で会いたいと呼びかけたのだ。
この気恥ずかしいツイートで私が思い出したのは、ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の有名な場面だ。主役のイライザに惚れている貴族の若者フレディ・アインスフォード=ヒルはストーカーのように、彼女の家の前までやってきて、会えるまでそこで待つ、と歌う。(「どの家の扉からも歓びはあふれているのか?いやいや、それは、君の住むこの通りだけ」)
そんな感じで、トランプは「彼」の元にやってきた。2人の仲の良さときたら、昨年6月にシンガポールで行った初の米朝会談の後、トランプが支持者集会で「私たちは恋に落ちてしまった」と語ったほどのものだ。握手をした後、抜け目のない金は、だまされやすい友人に、 国境を越えようと誘ったことだろう。そうすれば最初の北朝鮮に足を踏み入れる最初の米大統領になれる、と。
トランプと金が何を語り合ったかは、まだわからない。彼らが交渉を再開することに同意したなら、それは結構なことだ。
だが2人がいかに気安い関係にあろうと、北朝鮮がウランを濃縮し、弾道ミサイルを製造し続けていることを私たちは知っている。北朝鮮が「非核化」の計画を提示していないだけでなく、第一歩さえ踏み出していない。北朝鮮の主な戦略目標が、依然として韓国とアメリカの絆を断つことであることも、知っている。
だがトランプは、そんなことは一向に気にしない。その代わりトランプは、核合意に応じて核兵器開発を中止したイラン政府を罵り、イラン経済を壊滅させることに全力を尽くしている。
トランプはひどく独裁者を羨ましがっている。独裁者のような絶対的な権力、マスメディアを支配する力、イエスマンだらけの側近を欲しがっている(閣議では、既にそれらしい人物が集まっている)。
しかし、かつてはトランプだけが楽しんでいた政治ショーが、今は現実の災難を招こうとしている。これからどんなことになるのか、不安に思わずはいられない。
トランプは独裁者のように政策を実行し、アメリカの力を行使している。だが、やることが支離滅裂なため政策はスムーズに実行できず、アメリカはかえって力を削がれている。
■自分のことしか頭にない
アジア政策を主に扱うサミットに参加するのに、トランプはアジアの専門家を連れてこなかった。その理由のひとつとして、トランプ政権のハイレベルの役職にそうした専門家がいないという事実はある。だが専門家が何人かいたとしても、トランプは彼らに相談しなかっただろう(ロシア、中東、その他の地域が専門のスタッフは一応、ある程度いるが、トランプが彼らに相談することはめったにない)。
トランプにとってはすべてが「自分」だ。彼の政権運営の本当のスローガンは「アメリカを再び偉大な国に」ではないし、それは最も重要なことでもない。
独裁主義に傾いていく自分の動きがアメリカの力の復活につながるとトランプは考えているかもしれないが、それは反対の効果をもたらす。世界中の人々が笑っているが、なかには不安を感じている人もいる。
イバンカがリーダーの一員のように振る舞おうとする恥ずかしいビデオを公開したのは、マクロンの広報室だ。トランプが自分に向かってウインクをしたり、笑顔を見せたりするたびに、プーチンは神に感謝しているはずだ。中華人民共和国の習近平(シー・チンピン)国家主席はゆっくりと辛抱強く、貿易交渉を中国に有利な方向に動かしている。そして、アメリカとの安全保障協定を懐疑的に見始めたアメリカの同盟国をつついて、中国のほうへ誘っている。
トランプのツイートや怒りにまかせた暴言で、彼のがさつで愚かな本性が明らかになる。それを笑うのもいいし、ため息をつくのもいい。
ただ、トランプが何をしているのか、どこへ漂っていくのか、そして彼はアメリカにどんな影響を与えるのか、結果として世界の中でアメリカがどういう地位を占めることになるのかといったことは、もっとよく監視していなければならない。なにしろ、それこそが災いの元なのだから。
(翻訳:村井裕美、栗原紀子)
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