http://www.asyura2.com/19/kokusai26/msg/702.html
Tweet |
中国「本気のIT化」を嘲笑う日本人の危機的状況/msnニュース
ダイヤモンド・オンライン 及川卓也
2019/06/26 06:00
http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%80%8c%e6%9c%ac%e6%b0%97%e3%81%aeit%e5%8c%96%e3%80%8d%e3%82%92%e5%98%b2%e7%ac%91%e3%81%86%e6%97%a5%e6%9c%ac%e4%ba%ba%e3%81%ae%e5%8d%b1%e6%a9%9f%e7%9a%84%e7%8a%b6%e6%b3%81/ar-AADpHhW?ocid=iehp
中国の製品・サービスが「安かろう悪かろう」と軽んじられてきたのも、今は昔。QRコード決済やAIなど、テクノロジーの分野で中国は日本を既に追い越し、米国に迫ろうとしている。マイクロソフト、グーグルでエンジニアとして活躍し、現在は複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏が、中国で目にしたIT事情を解説しながら、日本の技術、ITの進化に関わる課題を浮き彫りにする。(クライスアンドカンパニー顧問 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)
IT技術を使えない・学ばない人に優しすぎる日本
昨年、深センと上海を数回訪ねましたが、今や中国では若年層から年配層まで幅広い年代の日常生活の中にITテクノロジーが浸透しています。
決済については、既にさまざまな報道で紹介されているとおり、スマートフォンによるQRコード決済が一般的になっています。「AliPay(支付宝/アリペイ)」や「WeChat Pay(微信支付/ウィーチャットペイ)」など、日本でも百貨店や家電量販店、ドラッグストアなどで、加盟店ステッカーを見たことがある方は多いでしょう。
深センや上海では、このQRコード決済を屋台のおじさん、おばさんも普通に使っています。これはすなわち、中国の一般の人のITリテラシーが高いことを示しています。実際、60〜70代の人が「モバイル決済がないと生活できないから」という理由で使いこなしています。どうやら最初だけお子さんやお孫さんがセットアップするなどして、使い方を教えれば、その後はそれほど難しくないので自分で使えるようになっていくようです。
日本で同じようにQRコード決済を普及しようとしたら、最初に「使えない人たちをどうするか」が問題になることでしょう。
日本は、IT技術を使えない人に優しすぎるのではないかと感じることがあります。私たちIT技術者はしばしば、システムやアプリの開発の際に「素人には分からない。もっと分かりやすくしてください」と頼まれます。もちろん分かりやすく、使いやすくするのは大切ですが、「さすがにこれなら使えるだろう」というレベルに到達しているものに対しても、指摘が入ることが多いのです。
つまり、中国の人は最新のIT技術を使いこなすために学ぶ努力をしているのに、日本ではその努力を求めるのはいけないことのようになっています。
日本人もかつてはそろばんなどで、計算の技術とツールの使い方を学んできました。スマートフォンよりそろばんの方が、よほど使いこなすのは難しいと思いますが、ちゃんと使えていたのです。ところが話がITになると「学ばなければ使えないなんておかしい」となり、それが正義となってしまっています。今や3歳児でも、スマホやタブレットでYouTubeの動画を再生できる時代です。中国人にできて日本人にできないというのは、IT技術を学ぶことに対する、ある種の甘えがあるからではないでしょうか。
こうしたIT技術を学ぶことへの姿勢は、ひいては国際競争力に影響すると私は考えています。日本人はITを学ぶことへの姿勢・考え方を改めなければならない、と中国人のITリテラシーの高さを実際に見て感じました。
社会受容性の低い日本では新しい技術がなかなか試せない
中国ではQRコードを使った、さまざまな面白いサービスが生まれています。私もいろいろ試してみましたが、中には「これは到底、サービスとして成り立たないだろう」と思えるものもありました。
例えば、とある外資系のスーパーで使われていた「無人レジ」をさらに発展させたシステム。これは、アプリをインストールするとスマホがバーコードを読み取るスキャナーになり、店頭商品を買い物カゴに入れるときに自分でスキャンすれば、そのまま持ち帰れるというものです。確かに楽ですし、レジスペースを無くすこともできます。しかし店員が、店を出る前に念のためカゴの品物を確認する仕組みになっていて、その手間がすごくかかるため、実際の運用は難しそうでした。
ただ、そこには「一応やってみる」という姿勢があります。ダメでもいいからつくってみて、試してダメならやめる。それが可能だから、そうしたサービスが雨後のタケノコのようにどんどん出てきている。つまり、彼らは、失敗から学んでいるのです。これは中国の「社会受容性」の高さが成せる技だと思います。
新しいサービスの中には、多少リスクがあるものも、たくさんあります。中国だけでなく米国でも、クルマの自動運転の実証実験が行われ、シリコンバレーなどでは何台もの自動運転車が走っています。その中には、事故を起こしたものもありました。もし日本で同じことが起きれば実証実験を行えなくなり、実用化はかなり先になるでしょう。
米国では事故が起きたからといって、全ての州で自動運転の実証実験を禁止することにはなりません。もちろん議論の中で「安全性をきちんと確認してほしい」という話にはなりますが、「新しい技術にはリスクがある」「人間が運転しても、同じように事故が起こるかもしれない」という考え方が当たり前で、「実験をやめろ」という意見が大勢を占めることはありません。これが新しいものに対する社会受容性だと思います。
AIをはじめとする新しい技術が登場しているのに、社会受容性が低い日本では実験すらできない。これでは先進的な技術を実装することができず、ITの進化は遅れてしまいます。日本でも昔は「やってみてダメならやめればいい」と新しい技術や仕組みにトライする姿勢があったはずですが、今の日本の姿勢には強い危機感を覚えます。
日本企業は米国の「まね」もしなくなってしまった
先進的なビジネスを始めるときの手法で「タイムマシン経営」と呼ばれるものがあります。米国で成功したビジネスモデルが日本に広まるまでに数年の「時差」があることを利用して、米国の「まね」をして日本にいち早く導入できれば成功する、という考え方です。ソフトバンクグループ代表の孫正義氏が1990年代後半に提唱していました。
しかし近頃の日本企業は、このタイムマシン経営すら実行に移せていません。最近では「Amazon Echo(アマゾンエコー)」や「Google Home(グーグルホーム)」といったAIを搭載したスマートスピーカー開発で追いつけていないのが、そのいい例です。
初代のアマゾンエコーが米国で発売されたのは、2014年11月のことです。その後2世代目にアップデートされていますが、日本での発売は2017年11月。また、グーグルホームが米国で発表されたのは2016年5月、発売は同じ年の11月です。こちらは、日本では2017年10月に発売されています。
つまり両社とも、日本展開には1年半から3年ほど時間がかかっています。その間に、日本の大手AV機器メーカーが独自のスマートスピーカーを生み出せる時間と技術力はあったはずです。しかし、彼らが独自製品を出すことはありませんでした。それどころか「グーグルのAIアシスタントが搭載されたスピーカーをつくる」と完全に向こうのプラットフォームに乗っかってしまっていました。スマートスピーカーは巨大ITプラットフォーマーの主戦場となっているので、例としては適切ではないかもしれないですが、同じような例は他でも見ることがあります。初めから、アマゾンやグーグルとの戦いを放棄しているのです。
もちろん、どの分野においても日本企業がダメということはありません。例えば配車サービスでは、米国発の「UBER(ウーバー)」を追って「JapanTaxi(ジャパンタクシー)」などががんばっています。配車サービスについていえば、アジア圏ではウーバーが撤退しつつあり、中国の「滴滴出行(DiDi:ディディ)」をはじめとしたアジア発のサービスが進出・台頭してきている状況です。国ごとに法律の違いやレギュレーションがあり、受け入れられるサービスにも独自の特徴がありますので、まだ十分に戦える場はあるでしょう。
今後のイノベーションではグローバルとローカルのバランスが大事
中国の検索サービス「百度(バイドゥ)」やマイクロブログ「微博(ウェイボー)」といったサービスは、グーグルやツイッターなど米国のサービスをまねて立ち上げられたものです。
中国市場では外資企業の活動が制限されており、海外から進出する企業にとってアンフェアな条件は確かにあります。しかし、中国で大きく成長したIT企業は米国から学んだものを独自に進化させた後、今や他国へ輸出するまでに発展させています。
中国は今、悔しいけれど日本より進んでいる分野が増えています。課題はありつつもテクノロジーを使いこなせているということは、世界最先端のAI国家になることが予測できるということ。日本人はそれを嘲笑している場合ではありません。
中国は広く、貧しい地域もいまだにたくさんあり、マナーがなっていない人もまだまだ多いのは確かです。一方で知性に秀で、グローバルでも引けを取らない富を持つ人もたくさんいます。日本人の、特に上の世代の人の中には中国を小ばかにしたり、下に見たりしている人もいますが、今や大国として米国も抜きそうな勢いです。
そのほか、個人情報に対する考え方が緩く、著作権の扱いや模倣ブランドといった評価できない部分も中国にはありますが、ダメなところだけを見てバカにし、「安かろう悪かろう」などと言っている場合ではありません。良い商品やサービスもたくさん出てきており、むしろ日本がまねすべきところが多くなっています。
ITの世界では一時期、グローバル展開によりビジネスを大きくすることが流行していましたが、今ではグローバルとローカルのバランスが大事になってきています。特に米国でトランプ政権が発足してからは、米国も含めた全世界でのビジネス展開が難しくなったこともあって、よりローカルが見直されています。そうした環境の下、日本でももっと日本に特化したサービスを展開してもよいのかもしれません。
日本は極端から極端に行きがち。「日本に特化したサービスを」となると、昔、台頭したガラケー(フィーチャーフォン)に象徴されるような、日本だけでしか通用しないイノベーションへ走りがちです。これからは、日本に特化した高機能・高性能なサービスや製品を開発した上で、それをそのまま他国へ展開するのではなく、他国で求められるスペックに落とし込んで、グローバルに輸出するビジネスモデルを模索してもよいのではないでしょうか。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。