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「腰が引けた?」「期待外れ」 ロシア疑惑巡るモラー捜査報告書に失望の声
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/04/post-12067.php
2019年4月28日(日)14時36分 ニューズウィーク
左派寄りの米国人の多くが、モラー特別検察官(写真)を勇気と不撓不屈(ふとうふくつ)の精神の模範例ととらえ、断固とした姿勢でトランプ米大統領に法の裁きを下すものと期待していた。ワシントンの議会で2013年3月撮影(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)
左派寄りの米国人の多くが、モラー特別検察官を勇気と不撓不屈(ふとうふくつ)の精神の模範例ととらえ、断固とした姿勢でトランプ米大統領に法の裁きを下すものと期待していた。
ベトナム戦争で海兵隊の小隊指揮官を務めて勲章を受けたモラー氏は、ホワイトハウスから圧力を受けながらもトランプ氏の元側近を次々と訴追し、そうした期待をより高めることになった。
だが、2016年の米大統領選におけるロシア介入疑惑を巡り448ページに及ぶ捜査報告書が公表されたことを受け、元連邦捜査局(FBI)長官のモラー氏が、十分に強硬な姿勢で捜査に臨んだのか、疑問視する声が出ている。
元検察官や法律専門家など、20人以上の「モラー支持者」にロイターが取材した結果、モラー氏の捜査結果に対する批判は、主に2つの点に関するものだったことが判明した。
まず、トランプ大統領が司法妨害を行ったかどうか、明確な結論を示さなかったこと。これにより、バー司法長官が記者会見で、大統領による司法妨害は証拠不十分と断定することが可能になった。
次に、トランプ氏に宣誓の上で証言させることができなかったことだ。
「最も致命的だったのは、モラー氏がトランプ氏の事情聴取に固執しなかったことだ」。リベラル派の監視団体「アメリカン・オーバーサイト」のメラニー・スローン、シニアアドバイザーはこう指摘する。同団体は、トランプ氏が就任した2017年1月以降、政権を相手取った公的記録を巡る訴訟を70件以上起こしている。
バー司法長官が先月、トランプ陣営とロシアの共謀を示す証拠はなかったと述べ、さらに訴追可能な犯罪や司法妨害はなかったと宣言したことを受けて、トランプ氏は「勝利宣言」していた。
18日公表された捜査報告書は、バー長官が公表前の発言で示唆したものよりも大統領に不利な内容で、トランプ氏のうその傾向を具体的に並べ、議会が司法妨害容疑を取り上げるための土台を提供した、とモラー氏の支持者は指摘する。
モラー特別検察官は、現職大統領は訴追しないという司法省の見解を踏襲したものの、捜査は「(大統領の)容疑を晴らすものではない」と言明し、大統領は退職後に刑事責任を追及される可能性があると述べた。
「未来の検察官が大陪審に訴え、訴追するための青写真を(モラー氏は)残した」と、バーモント法科大学院のジェニファー・タウブ教授は指摘。ただ、そうした動きは恩赦される可能性があるとも述べた。「素晴らしい仕事をしたと思う」
モラー氏の広報担当者は、コメントの求めに応じなかった。
■隠せぬ失望
その一方で、モラー氏の捜査でトランプ政権に終止符が打たれると信じていたファンの多くは、失望を隠していない。
「結局は、腰が引けた部分があった」と、保守派ニュースサイトへの批判的立場で知られるメディア監視団体メディア・マターズ・フォー・アメリカの創設者デービッド・ブロック氏は言う。
特に、対面での事情聴取が行われていたなら、トランプ大統領の意図について新たな証拠が得られ、トランプ氏のうそを押さえられた可能性があると、一部の法律専門家は指摘する。
「もしトランプがうそをつき、そのうそが報告書で指摘されていたなら、バー長官が無罪を宣言するのはもっと難しくなっていただろう」と、ワシントン州の法廷弁護士のローレンス・ロビンス氏は言う。
トランプ大統領が自主的に事情聴取を受けることを拒否したため、召喚状を出した場合、法廷闘争が長引くことを懸念した、とモラー検察官は報告書で説明。モラー氏はまた、別の提供者から十分な情報を確保したとしている。
だが、もし長期化をそれほど心配するのであれば、もっと早期に召喚状を入手できたはずだと、クリントン政権でホワイトハウスの法務担当を務めたネルソン・カニンガム氏は言う。
1990年代の「ホワイトウォーター疑惑」捜査で、当時のクリントン大統領にホワイトハウスの実習生との関係について大陪審で証言させるため、ケネス・スター特別検察官は召喚状を入手した。
クリントン氏は証言に同意し、のちに偽証と司法妨害で下院から弾劾訴追されたが、上院で無罪となった。
「トランプ氏はこの事案全体の中心人物であり、1998年のスター特別検察官のように証言を求めなかったことは、2年にわたるモラー氏の捜査に巨大な穴を残した印象だ」と、カニンガム氏は言う。
トランプ大統領が司法妨害の罪を犯したかどうか、モラー特別検察官がはっきりさせなかったことも、批判されている。
モラー氏は報告書で、トランプ氏は、汚名を晴らすために迅速かつ公の裁判を受けるという通常の手続きを踏まなかっただろうとして、自らの判断は妥当だとしている。
「犯罪があったかなかったかを見極めるために、彼は指名された。これは、説明不能で明確な失敗だ」。元連邦検察官で、今はサンフランシスコで弁護士を務めるマシュー・ジェイコブス氏は言う。
明確な結論を出さなかったことにより、モラー特別検察官は事実上、バー長官が司法妨害容疑の立件に否定的な見解を示すメモを司法省に示していたことを認識しながら、そのバー氏に判断を委ねたことになる。
モラー氏は、自らの「不活動」がどういう結果を呼ぶか分かっていたに違いないと、1990年代に司法次官補としてバー氏の下で働いたジミー・グルール氏は言う。
「そして、われわれは、法律のブラックホールに取り残された」と、現在はノートルダム大法学教授のグルール氏は総括した。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
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