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イスラエル、シリア内のイラン軍事拠点を空爆か
中東・アフリカ
2019/4/14 23:12
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【カイロ=飛田雅則】シリアの国営通信は13日、同国中部ハマ県にある軍事施設が隣国のイスラエル軍により空爆されたと報じた。空爆された施設はシリア内戦に介入するイランが設置し使用していたとみられ、イラン側に死者が出たもようだ。イスラエル側は関与について明言していない。シリアをめぐりイスラエルとイランの軍事的な緊張が高まる恐れがある。
AP通信などによるとイスラエルの戦闘機がレバノン上空から、シリアにあるイラン関連とされる兵士訓練施設や中距離ミサイルの開発拠点を攻撃したもよう。シリア人権監視団(英国)によると空爆でイラン側に多数の死者が出たうえ、シリアの兵士も負傷したという。
イスラエルはシリア内戦でイランがアサド政権を支援するため、軍事顧問や民兵組織を派遣し、国内で影響力を高めていると警戒する。イスラエル軍はこれまでも空爆を繰り返してきたとされるが、関与を否定してきた。最近では3月下旬に空爆があったという。
3月下旬に、米トランプ政権はイスラエルがシリアから奪い占領するゴラン高原の主権を認めた。これに対してシリアやイランは批判を強めている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43725830U9A410C1I00000/
トルコ軍が分離主義テロ組織YPGに対し報復攻撃
シリアのアフリン地域で、トルコ軍を攻撃した分離主義テロ組織PKK(ペーカーカー)のシリアにおける派生組織YPG(イェーペーゲー)に対し、報復攻撃が行われた。
15.04.2019 ~ 16.04.2019
【シリア】 トルコ軍が分離主義テロ組織YPGに対し報復攻撃
アフリン地域の南東部にあるテル・ルファト地区を占領している分離主義テロ組織YPGは、ここにあるブセイリエフ地区からアフリン地域のキマル地区に駐留しているトルコ軍を標的にし、攻撃した。
分離主義テロ組織YPGが投げつけたミサイルは、トルコ軍の作業用機械に命中した。死傷者は出なかった。
これを受け、トルコ軍はテル・ルファト地区にある分離主義テロ組織YPGの拠点を攻撃した。
地元筋は、分離主義テロ組織YPGのテロリストが大量に無力状態になったと話した。
トルコ軍と自由シリア軍は、6年間占領されていたアフリン地域を2018年3月に分離主義テロ組織YPGから救い出した。しかし、分離主義テロ組織YPG は、3年以上占領しているアラブ人の地であるテル・ルファト地区からアフリン地域を攻撃し続けている。
(2019年4月15日月曜日)
キーワード: テル・ルファト地区 , 分離主義テロ組織YPG , シリア・アフリン地域 , トルコ軍
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https://www.trt.net.tr/japanese/toruko/2019/04/15/20190415-002-1184047
米軍撤退後のシリア 勢力圏確保を目論むイラン トルコ・シリア政府の圧力に直面するクルド
2019-04-14 22:37:09 | 中東情勢
(IS敗北が宣言された式典で写真を撮るSDF兵士【4月16日号 Newsweek日本語版】)
【不透明さも漂う米軍撤退計画】
トランプ大統領はISを打倒したとして2000人超の規模で展開する米軍のシリア撤退を公表していますが、ISの存在が未だ非常に危険なことは多くの者が指摘するところです。
****「IS打倒」宣言が正しくない理由****
3月23日、米国が支援するSDF(シリア民主軍)は、ISの最後の拠点を陥落させた。SDFの司令官は、同日、「ISを打倒した」と宣言した。
確かに、領土を持った「カリフ国」としてのISは終わった。しかし、ISは真に打倒されたと言えるのか。この点について、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのFawaz Gergesは、3月23日付けでニューヨーク・タイムズ紙に掲載された論説で、ISは打倒されていない、イラク、シリアで潜伏、再起の時を待っている、と分析する。論説の要点を紹介すると、次の通りである。
・ISは打撃を受け、イデオロギー・作戦上は弱体化されたが、打倒されたとは言えない。そのネットワークは未だ機能している。
アラブ・イスラム世界の政治の破綻、政治制度の脆弱性と正当性の欠如、地政学上の競争と外国の干渉というISが生まれた原因が続けば、IS等は再起する。
・ISを生み出す第一の要素は、統治の崩壊とシリア、イラク、リビア、イエメン、エジプトのシナイ半島、西アフリカ、アフガニスタンにある無政府状態の空間である。不十分な中央や地方の政府、あるいは政府の欠如は過激派の格好の温床になる。
・第二の要素は、スンニーのサウジアラビアとシーアのイランの激烈な冷戦である。両国の対立は地政学的なものであるが、イラク、シリア、レバノン、イエメンなどでは地方での宗派対立にもなっている。ISはスンニーの保護勢力としてこの対立を利用してきた。
・第三の要素は、ISの戦闘員の分布とそれがもたらす脅威である。ISが主要な市街地域で支配権を失うようになるにつれ、戦闘員は住民とともに各地に避難、潜伏した。その潜伏要員がそこで攻撃をするようになった。今やISは10を超える国に基地や潜伏支部を擁する世界的なネットワーク機構だ。
・ISは反乱の原点に戻った。今ISはイラクでゲリラ戦闘を行い、治安部隊や部族指導者などを殺害している。地域社会を恐怖化し、不安定要素を植え付け、イラク保安部隊の無能さを露呈するISの戦略は成果を生み出しつつある。
・アラブ・イスラム社会が直面する課題はジハーディズムのイデオロギーに代わる議論を発展させることだ。そのためには、仕事と希望をもたらす透明性のある、包含的な、代表性のある政府が必要である。
(論評)
(中略)妥当な分析をした、非常に良い記事である。
イラクの現状は、シーア派の中央政府がスンニー派地域への対応を怠っており、ISはそれに付け込んでいる。そして、最近のトランプ政権による米・イラン対立激化がイラクの中央政府の弱体化を助長し、それがISを勢いづかせている。
シリアでは、ISはトルコによるクルド抑圧と米軍の撤収により生じる真空に入り込もうとその時が来るのを待っていると思われる。
SDFがISの最後の拠点を制圧したことは良い知らせである。しかし、それは対症療法が終わったに過ぎない。根本解決は終わっていない。
論説の言う通り、カウンター・テロ戦略だけでは十分でなく、長期的な経済、政治、イデオロギー戦略が必要であると思われる。戦闘が唯一の雇用になり、過激活動が生活手段になることを先ず断ち切らねばならない。過激派の高まりやアラブの春の根本原因は雇用にあったと言っても過言ではない。
トランプの中東政策は、サウジとイランなどの地政学上の競争やアラブ・イスラエル対立を煽るというものである。これがうまく行くとは思われない。
米国はそうした対立を煽るのではなく、モスレム社会の和解・再建を支援すべきなのであろう。
論説は「トランプはそのような賢明な戦略をとる願望もビジョンも持たないだろう。しかしISに対して真に勝利したいのであればトランプは自分の行動の長期的な結末を考えるべきだ」と手厳しい。しかし、トランプのゴラン高原に対するイスラエル主権支持決定を考えると、この批判は一層の重みを増す。(後略)【4月11日 WEDGE】
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こうした情勢を受けて、米軍撤退のスケジュールは不透明です。
****シリア米軍、1000人残留を計画****
トランプ大統領の撤退命令から3カ月
米軍はシリアに1000人近い兵士を残留させる計画を準備している。政府当局者らが明らかにした。ドナルド・トランプ大統領は3カ月前にシリアからの全面撤退を命じたが、その方針は大きく後退し、残留する兵士の数はホワイトハウスの当初の予定を大きく上回ることになる。
トランプ氏は米軍撤退に際してシリア北東部に安全地帯を設ける方針だが、米国はトルコや欧州の同盟国、米国が支援するクルド人勢力との間で合意に達することができていない。
トルコ政府はシリア領内のクルド人戦闘員を越境攻撃する構えを見せているが、米政府はクルド人勢力と協力を続ける方針だと米当局者は述べた。米政府の案では、シリア北部から南部まで最大1000人の米兵が残留するという。(後略)【3月18日 WSJ】
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米国防総省は上記報道を否定しています。
****米国防総省、シリア米兵1000人 残留に関する報道を否定****
米軍のジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長は、シリアからの米軍撤退について、米国防総省は米兵1000人をシリアに残留させる方針だと報道されたことに関して、事実と一致してないと述べた。米国防総省が発表した。
ダンフォード氏は、12月に発表されたシリアからの米軍撤退に関する計画は現在も有効であるとし、米軍撤退に関するトランプ米大統領の指示は引き続き遂行されていると強調した。
同氏はまた、米国とトルコはシリアとトルコの国境の安全保障の問題解決に向けた生産的な対話を続けていると伝えた。(後略)【3月18日 SPUTNIK】
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【防衛ラインを築くイラン】
米軍撤退が進めば、その空白を埋めるのはロシアであり、トルコであり、イランであり・・・ということになりますが、そのイランはシリア内における拠点確保にまい進しているとか。
****イランがシリアで狙うのは「帝国の再現」か ****
内戦で疲弊したシリア国民に対し、イランは現金や食料、公共サービスを提供している
シリア東部で過激派組織「イスラム国(IS)」がかつて拠点としていた地域では、イランが軍事力と経済力を駆使して永続的な足場を築こうとしている。
イランは8年に及ぶシリア内戦で、軍事介入によりバッシャール・アサド大統領を勝利目前まで導いた。その後、イランは友好ムードを醸成し、シーア派への改宗を促進することでシリア国内での長期的影響力を確保しようとしている。
イランは戦争で疲弊したシリア国民に現金や食料、イランのIDカード、公共サービス、無償の教育を提供している。
「目標はペルシャ帝国の再現だ」。ISが首都と称していたラッカの市議会議員ムネール・アル・カリフ氏は語る。
人心を掌握しようとするイランの動きは、同国の影響力を抑え、シリアからイラン勢力を排除しようとする米国、イスラエル、アラブ諸国の取り組みを阻害している。(中略)
イランの影響力拡大は、シリアで多数派のスンニ派住民をターゲットとしている。その地域は東部デリゾール県から西部のレバノン国境にまで至り、かつてのISの拠点も幾つか含まれている。
イラク国境に近い東部アブカマルなどの主要都市では、地元住民への働きかけが目立っている。近郊の村ジャラー出身の男性(24)の話では、現在は警察署もイラン革命防衛隊(IRGC)の管轄下にあり、イラン兵が困窮者らに食料や家庭用品を配っている。
この男性によると、イランはこうした慈善活動と並行し、イラン民兵組織への参加やシーア派への改宗を促している。民兵組織に参加すれば、見返りとして防衛隊のIDカードと月200ドル(約2万2000円)の支給が約束される。IDカードがあれば、検問所通過の際の面倒がなくなる。
「どの家庭でも、1人か2人はシーア派に改宗している」と男性は語る。「仕事を得るため、あるいは誰にも邪魔されずに歩くために、彼らはシーア派に改宗している」
シリア東部や中部の一部地域では、イランの民兵がモスク(礼拝所)を乗っ取り、シーア派の祈りの呼び掛けを流している。彼らは歴史的に重要な場所に宗教施設を設け、ペルシャ語の学校も開設している。
シリア北東部カーミシュリーの支援活動家は、イランで学ぶ機会を与えられた友人もいると話す。「何であれ必要なものを彼らは与えてくれる。シーア派になればだ」
シリア政府にコメントを要請したが、回答はなかった。
シーア派の分派であるアラウィー派に属すアサド氏にとって、こうしたイランの動きは宗派の勢力図書き換えというよりも、内戦の主要支援国に借りを返すという意味がある。(中略)
かつてのISと同じ
シリア東部デリゾール県の住民は、若い世代を口説くというイランの戦略を、かつてISが使っていた洗脳の戦術になぞらえている。(中略)
男性の家族や友人の多くは、スンニ派からシーア派に改宗した。主に仕事の機会や安全を確保するためだ。
影響力を及ぼそうとするイランの戦略は宗教以外の分野にも及んでいる。
アサド政権は奪還した地域で公共サービスの提供に苦労しているが、それを埋めているのがイラン政府と同国の民兵、および慈善団体だ。シリア東部で米政府と連携している治安の専門家によれば、イランの慈善団体「フセイン・オーガニゼーション」はデリゾール県の都市や村落に発電機や給水ポンプを持ち込んでいるほか、食料や学校備品も提供している。
米シンクタンク「中東政策ワシントン研究所(WINEP)」の研究員ハニン・ガダール氏によれば、イランの主要活動地域は、同国が構築を目指すレバノンとの軍事物資供給ルートに的を絞ったものとなっている。(中略)
地元住民や米当局者らによると、イランはまた、親イラン派の外国人兵士に対し、内戦中にスンニ派住民が退去した地域に定住するよう働きかけている。(後略)【3月27日 WSJ】
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イランの影響が強い地域で、仕事の機会や安全を確保するために、多くの者がスンニ派からシーア派に改宗しているというのは興味深い現象です。(改宗というのは、そんなに簡単にできるものなのでしょうか?)
イランのこうした影響力拡大を「目標はペルシャ帝国の再現だ」と積極的な拡大戦略と捉えるのは誤りでしょう。
西側諸国の圧力におびえたソ連が衛星国を配置して防衛体制を固めたように、アメリカやサウジ・イスラエルと対立するイランとしては周辺地域に自国影響の及ぶ地域を確保するという「防衛戦略」をとっているということでしょう。したがって、地域的には“(親イラン)レバノンとの軍事物資供給ルートに的を絞ったもの”になっています。
なお、上記記事最後に出てくる“親イラン派の外国人兵士”というのは、レバノンのヒズボラのことでしょう。(イランは、アフガニスタンからも動員しているとも言いますので、そういう者も含むのかも)
イランのこうした影響力拡大に対し、イスラエルは現在でも激しい攻撃を加えています。
****イスラエル軍のミサイル攻撃で3人負傷、シリア国営メディアが報道****
シリア中部ハマ県で13日未明、イスラエル軍による攻撃があり、戦闘部隊の隊員3人が負傷した。国営シリア・アラブ通信が報じた。
SANAが軍関係筋の話として伝えたところによると、イスラエル空軍が午前2時30分(日本時間同8時30分)頃、ダマスカス北方ハマ県にある軍の拠点を標的とする攻撃を実施。また「防空部隊がイスラエル軍のミサイルの一部を迎撃した」ものの、「戦闘部隊の隊員3人が負傷し、軍施設が破壊された」という。
イスラエルはこれまでに、シリアに対して数百回にわたって空爆を行ってきた。その大半についてイスラエルは、イランとイスラム教シーア派原理主義組織ヒズボラを標的したものと主張している。(後略)【4月13日 AFP】AFPBB News
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【置き去りにされるクルド人の苦境】
一方、米軍撤退の成り行きを不安を抱えて見守っているのが、アメリカに協力してIS打倒の先兵となったクルド人勢力。米軍が撤退すれば、トルコの攻撃にさらされます。
****戦い済んで取り残されたクルド人****
ISIS掃討作戦で活躍したクルド人勢力と住民がトランプの米軍撤退計画で将来を脅かされる
(シリア東部の小都市)ハジンには昔から少数民族のクルド人が暮らす。(中略)しかし、ようやく避難民キャンプから帰還した市民たちの間には不安が漂う。
ISISは壊滅したのではない。占領軍という形から領土なき武装勢力へと変身しただけだ。彼らは自爆攻撃を繰り返し、道路脇に爆弾を仕掛ける。わが物顔で至る所に検問所を設け、通り掛かりの住民に引き続き忠誠を誓わせたりもする。 。゛
そこへ、クルド人にとって最も心配な事態の進展が重なった。米軍のシリア撤退だ。昨年12月、ドナルド・トランプ米大統領は「ISISの敗北」を宣言し、米兵約2000人を撤収させる計画を表明した。 ・
過去4年にわたって、米軍は訓練や武器の供与を通じて、クルド人主体のシリア民主軍(SDF)に支援を続けてきた。この協力関係は軍事的な勝利を導いたばかりでなく、少数民族として歴史的に軽んじられてきたクルド人にいまだかつてない政治力をもたらした。
シリア内戦で獅子奮迅の戦いをしたSDFは国土の約4分の1(その多くはISISから奪還したもの)を手中に収めた。
農業や石油の貴重な資源も管理下にある。今までになく強い立場に立ったクルド人指導層は、アメリカとの同盟関係を支えに、独立は無理でも相当な自治を獲得できるだろうと期待していた。
ところが米軍が撤退するというので、そんな夢はしぼみかけている。気が付けば四面楚歌、一転して存続の危機が迫っている。
米軍撤退なら「絶望的」
隣国トルコは、クルド人およびSDF系民兵組織の人民防衛隊(YPG)をテロリストと見なす。クルド人勢力が国境に近いシリア北西部アフリンで拠点を確保しようとしたときには、トルコ軍が2ヵ月にわたって越境攻撃をかけてきた。
シリアのバシャル・アサド大統領も、クルド人支配地域への圧力を強めている。クルド人がISIS掃討作戦中に制圧した地区の多くを、米軍の存在という抑止力が消滅するのを待って奪い返そうとしている。
クルド人にとって、今や道は2つしかない。米軍が駐留を続けて地域を安定させる道と、撤退してケルド人が周辺諸国の集中砲火を浴びる状況を生み出す道だ。
「3つ目の道はない」と筆者の運転手オサマ(身の安全のため姓は伏せることを希望)は言った。「絶望的だ」
クルド人が大国の意向に振り回されるのは今に始まった話ではない。オスマン帝国時代には今日のイラク北部部(シリアのロジャバ地方のすぐ東)で石油資源が発見されるまで、クルド人の存在はほば無視されていた。
第一次大戦後にはイギリスによる軽率な線引きでクルド人は置き去りにされた。
最も厳しいのはトルコ国内の状況だ。自治権を求めるクルド労働者党(PKK)は一貫して武装闘争を展開しているが、アメリカもEUも同党をテロ組織と認定している。
だが「アラブの春」とシリア内戦を受けて敵味方の区別が曖昧になった。やがて誰もが敵視したのがISISだ。
イラクとシリアの不安定な状況に付け込んで、彼らは一時イギリスの面積ほどの地域を支配した。そこで戦いの先頭に立つだのがYPGだ。
アメリカは14年にYPGへの武器供与と空爆による支援を決めた。顧問的な立場で米兵も送り込んだ。しかし米兵の立場は明確さを欠いていた。
そもそも制服に所属部隊の記章を着けていないしい国連のお墨付きもない。米議会が進駐を認めたわけでもないが、なぜかシリア北部のクルド人地域には米軍基地ができた。
ただしアメリカにとって、駐留継続の負担は大きい。米兵の命が危険にさらされるだけではない。終わりの見えない紛争に大金を注ぎ込むことになる。
アフガニスタンのように状況が悪化するリスクもある。(中略)それに、当該国政府の同意なしに米軍を駐留させるのは植民地支配に等しい。
トランプはこうした事情を聞いた上で、「出ていく」という言い方で撤収を表明した。(後略)【4月16日号 Newsweek日本語版】
***************
クルド人の置かれた苦境には同情しますし、自治権獲得に向けた道筋を期待もしますが、トルコとの対立が表面化した時点で予想された展開でもあります。クルド人指導層もこうした展開を念頭に置いていた・・・と思うのですが。
それにしても、ベトナムでもアメリカに協力した勢力・人々を残してアメリカは「名誉ある撤退」を行い、残された人々には苛酷な運命が襲い掛かりました。「大国」というのは、トランプ流「アメリカ第一」に限らず、そういうものです。
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