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世界潮流を読む 岡崎研究所論評集
米軍駐留経費負担増を要求するトランプの考え方に足りない点
2019/04/04
岡崎研究所
トランプ大統領の米軍経費負担要求戦略「コスト・プラス50」については、様々な批判がある。「コスト・プラス50」とは、同盟諸国に対して、駐留米軍経費の全額プラス50%を負担すべきだというトランプ大統領の要求である。
Jun/Sudowoodo/AndreyPopov//iStock)
トランプ大統領は、NATO諸国には、防衛費をGDP比で2%以上にするよう求めている。とにかく、同盟諸国に、より多くの防衛費や駐留米軍経費を負担させようとの要求である。
先月2月、米国と韓国との間で、米軍駐留経費に関する新たな合意が発表された。それによると、今年2019年、韓国は、在韓米軍約2万6千人の駐留経費として、1兆400億ウオン(約9億2千万ドル)を負担することになった。これは前年比約8%増であった。ただ、この合意の有効期間はたった1年のみになった。
日本と米国とでは、2011年と2016年に、5年間を有効期間とする協定を結んだ。現行の日米協定は、2020年度末に終了するので、恐らく来年春頃には新協定の交渉を日米間で始めなければならなくなるだろう。現行協定(有効期間2016年度から2020年度まで)は、2016年1月に署名され、国会承認を得て同年4月1日に発効した。この協定に基づき、日本は、米軍駐留経費の労務費、光熱水道料等及び訓練移転費を負担してきた。前の2011年協定と比べ、労務費については、日本が負担する労働者数を増加し、光熱水道料等は引き下げ、訓練移転費は維持するとともに、米軍による一層の経費節約を明記した。
米国にとって重要な同盟国である日本には、約5万6千人の米軍が駐留している。これらの米軍は、日米安全保障条約に基づく日米防衛コミットメントを裏打ちすると同時に、インド太平洋地域での中国の台頭を含む様々な事態に対処するものである。
いずれにしても、トランプ大統領の「コスト・プラス50」の考え方は問題である。なお、3月14日、シャナハン国防長官代行は、上院軍事委員会で、この点に関する報道を「間違いだ」と否定し、「大事なのは公正な負担だ」とも述べたと報道されている。同盟国との交渉を、かかるブラフでやるのは同盟国間の信頼関係を損なうものだ。正に不動産取引の手法である。駐留米軍は日本などホスト国を守るためだけにあるものではない。米国の重要利益にもなっている。トランプの考えはゼロ・サムでコストだけの発想であり、間違っている。また同盟関係とは、駐留米軍の問題だけではなく、当該国との種々の軍事協力活動から成るものであり、その重要性を忘れてはならない。
日本の場合、我が国の防衛だけでなく、種々の協力、活動を通じて、インド太平洋地域の安全保障に極めて大きな貢献をしている。更に、日本は既に大きな負担(毎年 約2000億円)をしていることを認識して貰う必要がある。純粋に数学的比較は困難であるが、わが国の貢献は世界で最も大きいと理解される。また、訓練移転費の負担などは重要である。
駐留経費に関する協定の有効期間も重要な要素である。累次の交渉を経て有効期間は現在5年に延ばされているが、同盟関係の安定のためにも5年が望ましい。昨年行われた韓国との交渉では韓国が少なくとも3年の有効期間を主張したが、結局1年になってしまった。ただ、新協定が出来ない場合、延長が可能との規定はある。
米軍経費負担問題の観点からも、日本は引き続き、自衛力の強靭化に努めるとともに、米国等と地域、世界の平和と繁栄のために協力していくことが肝要であることは言うまでもない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15775
内憂外患、エルドアン大統領に陰り、地方選敗北、対米関係の悪化
2019/04/04
佐々木伸 (星槎大学大学院教授)
トルコのエルドアン大統領が窮地に追い込まれている。このほど実施された統一地方選挙で、与党候補が首都アンカラ市長選で敗れ、最大都市イスタンブールでも暫定結果ながら敗北するという激震に見舞われた。その上、ロシアの地対空ミサイル導入をめぐり、米国から最新鋭戦闘機F35の部品供給を停止されてしまった。内憂外患のエルドアン氏はどんな手を打つのだろうか。
(AP/AFLO)
開票への“介入”も検討?
現地からの報道などによると、異変が起きたのは開票日の3月31日の夜9時頃のことだった。それまで順調に開票状況を発表していた選挙管理委員会が突然沈黙したのだ。反国営のアナトリア通信も同様に開票発表を停止した。これについて選挙の監視をしていた民間団体の当局者は、エルドアン氏の「公正発展党」(AKP)を中心とする与党連合の敗北が濃厚になり、開票への“介入”が検討されたため、との見方を示している。
過去の選挙でも開票の際の不正操作が取り沙汰されており、今回もそうした疑惑が浮上したということだろう。両市の市長ポストは1994年からAKPとその前身の政党が維持してきており、予想を超える劣勢に与党連合が衝撃を受けたのは間違いない。
最終結果によると、アンカラでは野党候補が4ポイントの差をつけて当選。イスタンブールでは、野党候補と与党候補だったエルドアン氏の側近、ユルドゥルム元首相が共に勝利宣言をするという大激戦になったが、暫定結果では僅差(約2万5000票差)で野党候補が勝利したと伝えられている。与党側は不正があったとして、選挙管理委員会に異議申し立てを行った。
選挙は全体としてみれば、与党連合の得票率が51.7%と過半数を超え、辛うじて勝利した格好だが、最も重要な2大都市の首長ポストを失ったことが確定すれば、エルドアン氏にとっては手ひどい打撃だ。同氏自身、1994年から同98年までイスタンブール市長だったいきさつもあり、それだけショックは大きい。
エルドアン氏の敗北の直接の原因は経済の悪化だ。その低迷ぶりは各指標に如実に表れている。インフレ率は20%を超え、失業率も10%に達している。とりわけ若者の失業率は30%と高い。通貨リラも30%近くまで下落、政府は3月、景気後退を宣言せざるを得なかった。こうした状況に国民の日常生活は厳しさを増し、エルドアン政権への不満がうっ積していた。
大統領は野党をテロリストと罵り、遊説の際、最近のニュージーランドのモスク襲撃テロの動画を公開してまでイスラム教徒の宗教心と愛国心に働き掛け、経済問題から国民の関心を逸らそうとした。だが、この争点そらしの戦術はうまくいかなかった。
エルドアン氏は2016年のクーデター未遂事件の後、軍や政府諸官庁、警察、裁判所、学校、メディアなどからの反対派の一掃に乗り出し、特に政敵のギュレン師派を徹底弾圧。これまでに5万人を拘束、10万人以上を公職などから追放した。大統領はその強権姿勢を一段と強め、昨年6月には憲法改正で実権型大統領の権力を手に入れ、“独裁者”としての地位を固めた。
米説得を無視
しかし、選挙の敗北に塩を塗るようにトランプ政権が動いたのは、エルドアン氏の予想を超えるものだったのではないか。米国は1日、トルコに対する最新鋭ステルス戦闘機F35の関連機器の供給を停止したと発表、トルコがロシアから地対空ミサイル「S400」を取得するのは受け入れられないとの強硬姿勢を示した。
元々トルコは米国との間でF35を100機購入する契約を結び、同機のコックピットなどの一部製造に自身も参加することになっていた。しかし、対米関係が冷却化するにつれてロシアのプーチン大統領に接近、このほどロシアとの間で25億ドルにも上る「S400」の導入契約に調印した。
この間、米国は北大西洋条約機構(NATO)の同盟国でもあるトルコの説得を重ね、「S400」導入をやめさせようとし、昨年12月には、地対空ミサイル「パトリオット」を新たに引き渡すと提案した。米国が懸念したのは、ロシアの防空システムが導入されれば、F35の機密情報がロシア側に漏洩しかねないからだ。だが、トルコは結果的に米国の警告を無視した。
二股戦略が危機に
エルドアン氏が米国の説得を振り切り、ロシアからの兵器システムの導入に踏み切ったのはなぜか。それには大きく言って2つの理由がある。1つは政敵ギュレンシ師の送還問題だ。エルドアン氏がクーデター未遂の黒幕とするギュレン師は現在、米ペンシルベニア州の山中に事実上の亡命中だが、なんとしても米国からの強制送還を実現させたかった。
エルドアン氏は当初、強権志向でウマが合うトランプ氏ならギュレン師を引き渡してくれるのではないかと思いこんだフシがある。だが、案に反してトランプ政権はギュレン師の送還に応ぜず、完全に当てが外れてしまった。期待が大きかっただけに失望もまた大きく、故に対米関係は悪化の一途をたどった。
エルドアン氏はさらに「サウジアラビアの反政府ジャーナリスト、カショギ氏の殺害事件を利用してギュレン師の送還を獲得しようと図った」(ベイルート筋)。事件を穏便に解決したい米国から、サウジへの追及を和らげることと引き換えに、ギュレン師送還を成し遂げようとしたが、これにも失敗した。
もう1つの理由は、シリアのクルド人に対するトランプ政権の対応への反発だ。トルコにとって、シリアのクルド人はテロ集団と見なす自国の反体制クルド人組織「クルド労働者党」(PKK)と連携する勢力だ。米軍の支援を受けたシリアのクルド人が過激派組織「イスラム国」(IS)を掃 討する中、シリア北部一帯で勢力を拡大したことを安全保障上の深刻な問題として懸念した。
トランプ大統領がシリア駐留米軍の撤退を発表した後、米国はトルコに対し、クルド人を攻撃しないよう要求。これにエルドアン氏が激怒し、両国の話し合いは膠着状態に陥った。その後、米国はシリアに400人規模の部隊を残留させる方針に転換したが、エルドアン氏は困った立場に追い込まれた。米部隊に損害を与えかねないため、クルド人への越境攻撃ができなくなったからだ。
エルドアン大統領はこうして対米関係が悪化する中、ますますプーチン大統領との関係を深めていき、「S400」の導入にまで踏み込んだ。エルドアン氏にとってみれば、ロシアとの親密な関係を見せつけることにより、米国から譲歩を勝ち取りたいとの思惑もあったかもしれない。
だが、今回、米国が事実上、F35の供給停止をトルコに通告、エルドアン氏の米ロを天秤に掛けた「二股戦略」が危機に瀕することになった。生き残りの名人といわれる同氏の出方が見ものだ。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15834
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