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米軍に非協力、中国軍に協力するグーグルの大問題
米軍との共同開発を中止、中国には軍事転換可能なAI技術を供与
2019.3.28(木) 渡部 悦和
グーグル従業員ら公開書簡、中国向け検閲版検索サービスの開発中止を要求
グーグル従業員ら公開書簡、中国向け検閲版検索サービスの開発中止を要求。写真は米グーグルが中国に進出していた当時の北京本社(2010年3月22日撮影、資料写真)。(c)AFP/LI XIN 〔AFPBB News〕
グーグルが各方面から批判されている。
欧州連合(EU)から独占禁止法違反を理由に約1900億円の制裁金を科せられたし、日本でもグーグルをはじめとするGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)に対する規制が議論されている。
また、グーグルは、ドナルド・トランプ大統領、米軍トップのジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長、パトリック・シャナハン米国防長官代行から次のように弁解の余地のない批判を受けている。
「グーグルは中国軍に恩恵を与えている」
「グーグルは米国の国防省には協力しないが、中国軍に直接的および間接的に協力している」
中国の脅威にあまりにも鈍感なグーグルに対する彼らの批判は、現在進行中の米中ハイテク覇権争いが背景にある。
グーグルに対する批判は、他人事ではなく、中国で活動する米国や日本のその他のハイテク企業に対する注意喚起でもある。
ダンフォード統合参謀本部議長のグーグル批判
米軍のトップであるダンフォード統合参謀本部議長は、3月17日の上院軍事委員会の公聴会で、「グ―グルの中国での企業活動は、間接的に中国人民解放軍に恩恵を与えている」と批判した。
彼はさらに以下のように批判している。
「産業界のパートナー企業が中国で間接的な利益、いや間接的ではなく、率直に言うと直接的な利益を人民解放軍に与えていることを知りながらも活動していることに、我々は大きな懸念を持って見てきた」
「米国のハイテク企業が国防省に協力することに抵抗する一方で、中国のような地政学的な競争相手になぜ協力するのか」
「中国では自由が制限され、企業の知的財産が盗まれることが分かっているのに、善良な米国側が中国でビジネス上の利益を得るために譲歩するというのは理解し難い」
「中国はしばしば、民間技術を自らの軍事力を高めるために利用している。民間技術の軍事面への転用は直接的なパイプになっている」
以上のようなダンフォード議長の発言の背景には、グーグルは中国にAIの研究拠点を設けたり、中国のネット通販企業の京東(JD.com)(京東は人民解放軍空軍に協力している)と提携しており、グーグルの革新的な技術が軍事分野に転用されるリスクに対する懸念がある。
グーグルのダブルスタンダード
グーグルが批判される背景には同社の安全保障に対する甘い認識があり、米国と中国に対するダブルスタンダードがある。
このグーグル批判は、「米中ハイテク覇権争い」に密接に関係していて、グーグルだけではなく、中国でビジネスを行う全ての西側企業にも当てはまるという視点が必要だろう。
グーグルは、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」を経営理念とし、「邪悪になるな(Don’t be evil. )」を非公式な従業員行動基準にしていた。
ところが最近では「正しいことをやろう(Do the right thing.)」を行動基準にしているとも言われている。
この邪悪の中に軍事も入っていて、正しいことの中に「軍事に係らない」ことも入っているようだ。
一方で、グーグルには中国の最先端技術を軍事に応用する戦略に対する認識の甘さがある。
その結果、中国人民解放軍に対するグーグルの認識は甘い。AIなどの最先端技術は軍民両用技術であるが、人民解放軍はグーグルがオープンソースとして公開している「TensorFlow(テンソルフロー)」を使用している。
このテンソルフローを使うと、誰でもAIを使ったアプリケーションが作れる。また、グーグルは、中国にAIの開発センターを開設し、軍と関係のある中国企業とも協業している。
●米国防省とのAI関連の研究「プロジェクト・メイブン」の契約を更新せず
グーグルは2018年6月、2019年に期限を迎える米国防省との人工知能関連の研究「プロジェクト・メイブン」に関する契約を更新しないことを明らかにした。
グーグルが参加していた「プロジェクト・メイブン」には、小型無人飛行機(ドローン)が集める大量の映像データの解析にAIを導入し、テロリストなどの目標選別能力を高める狙いがあったとみられている。
このプロジェクトに対して、「邪悪になるな」という同社のモットーに反していると、多くの従業員が批判し、契約から手を引くことを決定した。
●米国防省のクラウド・コンピューティング契約の入札にも参加せず
グーグルは2018年10月8日、米国防省の100億ドル(約1兆1100億円)相当のクラウド・コンピューティング事業の入札に参加しないことを決めた。
このプロジェクトは、「JEDI」として知られ、国防省の大量のデータを民間のクラウドシステムに移管するもので、契約期間は最長10年に及ぶ大きなプロジェクトだ。
グーグルが技術革新の最先端企業であることを踏まえると、国防省と契約しないことは極めて異例のことだ。
ちなみに、マイクロソフトは、最近10年間で国防省と数百件の契約を結び、その中には約86億円の複数年にわたる米空軍との契約が含まれている。
一方、グーグルは、中国向けに中国政府が許可した情報のみを表示する検索エンジン「ドラゴンフライ」の開発を進めているが、200人以上の社員が開発中止を求める公開書簡を2018年11月27日に公開している。
ダンフォード議長は、「グーグルの社員がロシアあるいは中国の規範や基準が中心となる世界秩序を快いと感じるとは思わない」と批判している。
特殊な中国にグーグルの甘えは通用しない
中国で活動をする国内外の企業にとって、中国は極めて特殊な国であることを認識しなければいけない。
例えば、中国には国家情報法があり、軍民融合が重視されている。
まず、2017年6月に施行された国家情報法は問題の多い法律で、その第7条には「いかなる組織および個人も、国家の情報活動に協力する義務を有する」と規定している。
この規定は、すべての個人や企業が国家の命令に基づきスパイになることを求めるものであり、米国などでのファーウェイ排除の根拠となっている。
なお、この国家情報法第7条は、中国人や中国企業のみならず、中国で事業を展開する外国人と外国企業にも適用されると解釈した方が無難である。
次いで、習近平主席が主導する軍民融合は、「米国の軍産複合体をお手本として、人民解放軍と企業の人材や技術の交流により、軍民のデュアルユース技術の発展を促進し、経済建設と国防建設を両立させること」だ。
習近平主席は、「軍民融合は、強い軍隊を建設するために不可欠である」と発言している。特に中国のハイテク民間企業は、この軍民融合に積極的に参画することが求められている。
●中国のAI企業は中国共産党にノーとは言えない
中国においては共産党一党独裁であり、中国で活動する企業は共産党の指導にノーとは言えない。
アイフライテック(iFlytek、科大訊飛)は、人工知能を活用した音声認識や自然言語処理で世界的に有名であるが、新疆ウイグル自治区における監視能力向上の事業に従事している。
顔認識の分野で有名な企業イトゥ・テック(Yitu Tech)やセンスタイム(SenseTime)は、中国の警察や公安の活動を支援している。
人民解放軍は、AIの軍事利用を追求しているが、中国の有名大学(精華大学など)や企業がこれを支援している。
例えば、精華大学は中国のMITと呼ばれ、軍民融合を積極的に支援している。
バイドゥ(Baidu)は、軍の情報指揮統制技術向上を目的とした統合研究所の設立において、国営の軍事企業の中国電子技術グループと協力している。
つまり、中国のAI企業は、人民解放軍や治安組織と密接な関係がある。彼らには、グーグルの「邪悪になるな」などという倫理など存在しない。
中国共産党が国家情報法を制定し、軍民融合を重視する限りにおいて、最先端技術を有する企業は軍に協力せざるを得ない宿命なのだ。
また、中国に進出する外国企業も含めたすべての企業は、共産党の監視組織が会社内に配置され、その指導を受けることが義務づけられている事実も指摘したい。
つまり、中国は、世界の中でも極めて特殊な専制監視国家であることを認識すべきだ。
●グーグルの技術は人民解放軍に利用されている
グーグルは、中国で第2位のネット通販企業の京東(JD.com)と提携している。
京東は中国でアリババに対抗する勢力であるが、グーグルが京東と提携する目的は、アジア市場においてアマゾンに対抗することである。
しかし、京東は、兵站(補給、整備、輸送など)特に兵站ネットワークの構築において人民解放軍の空軍に協力していて、グーグルの技術が人民解放軍に活用されるのは時間の問題だ。
「外国で花を摘み、中国で蜜を作る」
人民解放軍科学者に注意
オーストラリアの著名な研究所「オーストラリア戦略政策研究所」(ASPI)が「外国で花を摘み、中国で蜜を作る」 という衝撃的なリポートを発表した。
このリポートによると、中国人民解放軍に所属する科学者が、所属・身分を偽ってファイブ・アイズ(Five Eyes)を構成する諸国(米国、英国、豪州、カナダ、ニュージーランド)、ドイツ、シンガポール、日本などの有名大学で研究活動を行い、技術や知識を中国に持ち帰り、人民解放軍のために優れた兵器を開発しているという内容だ。
2007年から海外に派遣された人民解放軍の科学者数は、米国と英国に各500人、豪州とカナダに各300人、ドイツとシンガポールに各100人以上、そして数百人がオランダ、スウェーデン、日本、フランスに派遣されているという。
特に人民解放軍の国防科技大学(NUDT )に所属する1600人以上の科学者が2013年までに、学生や客員教授として海外の大学に派遣されたと記述されている。
日本学術会議や大学もグーグルに似ていないか?
今回のグーグルが批判されている状況は、日本学術会議や日本の大学の状況に似ているような気がする。
日本学術会議は、平成29年3月24日、「軍事的安全保障研究に関する声明」を公表し、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」を批判し、防衛省への協力に関して否定的な立場をとっている。
グーグルの「邪悪になるな」に似ている。
そもそもAIや5Gなどの軍民両用のデュアルユース技術を軍と民に区別することが実際的に難しい時代において、防衛省の安全保障研究を「軍事的安全保障研究」と決めつけ、これに否定的に対応することの妥当性が問われる。
また、日本学術会議や大学が中国企業や中国の大学との共同研究を「軍事的安全保障研究」との観点でいかに厳密に行っているかを聞きたいと思う。
最近の報道では、日本の大学が今話題のファーウェイから研究費を受け取っているという。
防衛省との研究には消極的で、人民解放軍と関係の深い中国企業との研究を積極的に行っているのではないかという思いがしてくる。
特に懸念されるのは、ASPIが指摘しているように、人民解放軍に所属する科学者が身分を偽って、日本の大学で研究活動を行っていないかどうかである。
ダブルスタンダードはやはり問題である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55890
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