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トップニュース2019年3月26日 / 11:27 / 2時間前更新
焦点:
ウーバーの手荒な作戦、ライドシェア非合法国チリで物議
Aislinn Laing
5 分で読む
[サンティアゴ 19日 ロイター] - ウーバーの運転手は、チリの首都サンティアゴ郊外にある国際空港に彼の真新しいスズキ車を寄せた。予約した乗客がにさっと乗り込むと、運転手は何かトラブルの兆候はないか、そっと周辺を見回した。
「空港での商売は簡単ではない」。バックミラーに付けたロザリオを揺らしながら自動車道へと車を急がせる運転手は、ロイターの記者に対してこう話した。「チリでウーバーの運転手をやるのは大変だから」
それというのも、乗客を乗せているところを当局に捕まれば、ウーバーの運転手は罰金を科されるか、自動車を押収されてしまうからだ。チリはまだ、ライドシェア(相乗り)に関する規制の枠組みを整備していない。
チリのフット運輸相は昨年、「こういう(ウーバーのような)方式は合法ではない」と述べた。「現時点では、有償乗客輸送に関するチリの法令に沿ったものではない」
チリのような急成長市場において米ライドシェア大手のウーバーが法的な根拠を得られていないことは、待望の新規株式公開(IPO)に向けた準備を進める同社にとって、潜在的なリスクとなっている。
こうした背景から、チリではときには滑稽に思えるほどのいたちごっこが当局と運転手たちとの間で繰り広げられている。運転手らは、警察官や運輸省の取締官が待ち伏せしている乗車・降車ポイントについて情報を交換している。
また彼らは、乗客を「共犯者」に仕立て上げている。乗客は助手席に座るよう指示され、取り締まりにあったときに備え、口裏を合わせるための作り話を覚え込まされることも日常茶飯事だ。
先日、別の機会に乗ったウーバーの運転手は、ロイターの記者に対して「誰かに聞かれたら、知人のディエゴおじさんだということにしてくれ」と頼んだ。
ギレルモと名乗る41歳の別の運転手は、ロイターに対し、男性の乗客の場合には、自分たちはサッカー仲間だという作り話が定番になっている、と話した。彼も他の運転手も、当局に身元が割れることを恐れて、姓は教えてくれなかった。
ウーバーの配車アプリにもウェブサイトにも、チリにおける法的な地位が確定していないことについては何も書かれていない。だが、2014年にサービスが開始された同国では現在、月間利用者数が220万人、運転手は8万5000人が登録しているとされる。
ウーバーは、法律上の問題など何もないかのように、サンティアゴ各所のビルボードや広告メールを通じて派手な宣伝を展開している。
チリ国内でウーバーの広報を担当しているベロニカ・ジャドゥ氏は、ウーバーは合法だと主張している。彼女が引き合いに出すのは、チリのタクシー会社や労働組合が北部ラセレーナ市においてウーバーのサービスを中止させようとした訴訟を却下した2017年の最高裁判決だ。
この判決は、2016年にバチェレ前政権が提出したた配車サービス規制に関する法律を根拠としている。3人の判事で構成された法廷は、「その趣旨は配車サービスを規制することであり、その発展を防ぐことではない」と判示した。
「ウーバー法」とも呼ばれるこの法律はまだ施行されておらず、政府と強力なタクシー労働組合、配車アプリを使う新興企業が合意を探っているところだ。
広報のジャドゥ氏は、チリ国内のウーバーの運転手らが、運輸省当局者の目をごまかすために協力するよう乗客を指導していることを同社が把握しているかどうか、確認を拒んだ。「当局への協力が重要だと強調している」と、同氏は話した。
ウーバーの評判は、一連のスキャンダルによってすでに傷ついている。同社はこれまで、男性優位な企業文化、強引なビジネス戦術、世界各国の規制当局との長引く論争ゆえに批判を浴びてきた。サンフランシスコに本社を置くこの新興企業の株式時価総額は実に1200億ドル(約13兆2000億円)に達するが、その成長は鈍化した。
チリをはじめとする諸国で法的な地位がクリアになれば、ウーバーにとっては追い風になるだろう。とはいえ、サンティアゴを本拠としてシード段階での投資を行うベンチャーキャピタル、マグマ・パートナーズのマネジングパートナーであるネイサン・ラスティグ氏によれば、ウーバー株に興味を持つ投資家がより気にしているのは、中国の配車サービス最大手、滴滴出行(ディディ・チューシン)などの競合他社が進出しつつあるラテンアメリカやその他の地域で、ウーバーが優位を維持できるかどうかである。
「投資家が気をもむのは、競争がある地域で、市場シェアや収益性を維持できるかどうかだ」とラスティグ氏は言う。
<待ち合わせは駐車場で>
ウーバーはロイターに対する声明の中で、チリのライドシェア規制が前進するよう、「全力で取り組んでいる」と述べている。
一方で、罰金が積みあがっている。2016年以来、チリ運輸省の取締官はウーバー運転手に対して、700─1100ドルの罰金を7756回科している。各地の警察官も数千件の出頭命令を発した。
運転手らはロイターに対し、業務を続けられるよう、罰金として負担したコストはウーバーが補填(ほてん)してくれると話している。ウーバーによれば、「ケースバイケースで対応している」という。
同社のテクノロジーも役に立っている。たとえば、サンティアゴ地域の利用者は、運転手が空港を乗車・降車地点とする配車を拒否することが多いとソーシャルメディアに不満を投稿している。というのも、空港では取り締まりが盛んに行われているからだ。
その解決策として、ウーバーのチリ国内向けアプリには「ウーバーX SCL」と呼ばれる特別カテゴリーが用意された。SCLとは「アルトゥロ・メリノ・ベニテス国際空港」(サンティアゴ)を示す空港コードである。運転手らがロイターに語ったところでは、このカテゴリーの配車予約は、罰金を受けるリスクを承知で車を走らせる大胆な運転手が対応するという。
だが、運転手を確保するだけでは道半ばである。ウーバーのチリ向けウェブサイトでは、空港を出る乗客に対して、短時間用駐車場で運転手と待ち合わせるように指示している。運転手らはロイターに対し、取締官らしき人物がウロウロしている場合には、ウーバー配車アプリのメッセージング機能を使って待ち合わせ場所を変更しているという。
チリ向けにコミュニケーションの手法を修正している理由について、ウーバーは説明を拒んでいる。広報担当のジャドゥ氏によれば、ウーバーのチリ向け製品は「乗客と運転手にポジティブな経験をもたらすことを意図している」という。
チリの活気あふれるスタートアップ経営者の1人であるマティアス・ムチニック氏は、こうした「カオス」には困惑している、という。チリは外国人投資家に対して自国の秩序と洗練を売り文句にしているのに、国際便から降り立つ彼らが、運輸省当局者の取り締まりを逃れる冒険を目の当たりにすることになりかねない。
人工知能関連のスタートアップを経営するムチニック氏は、12月にサンティアゴで開催された投資カンファレンスで、「来訪者に与える第一印象が悪くなってしまう」と話した。
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だがミシガン大学のデービッド・ブロフィ教授(金融論)は、こうしたエピソードは一部のIPO投資家に対してはセールスポイントになる可能性がある、と話す。
「大切なのは、警察に制止されれば不愉快なことになるにもかかわらず、それでも人々がウーバーを利用したがっているという点だ」と同教授は言う。
<警察官もウーバーを利用>
ウーバーは、他のラテンアメリカ諸国も含め、世界各地で規制当局ともめごとを起こしている。
たとえばアルゼンチンでは、市場に参入してから数年になるのに、まだ法的根拠を得られていない。タクシー運転手らは「ウーバーはタクシー会社が負担している諸経費をすべて回避する一方で、不自然に低い運賃を設定している」と抗議しており、アルゼンチン政界はもっぱら彼らの味方だ。
だが、ラテンアメリカの通勤客らはウーバーの価格と利便性にひかれており、車両のオーナーらもチャンスを見いだしている。ウーバーによれば、ラテンアメリカにおける実利用者数は月間2500万人、運転手は100万人を数えるという。
新たな国に進出するたびに、ウーバーはお決まりのシナリオに基づいて成功してきた。法律上の空白を突いてサービスをすばやく拡大し、人気と市場支配力を生かして法整備を促す、という作戦だ。
だが、地方政府の中には自らの権限を改めて主張するところもある。たとえば米国では、ニューヨーク市が昨年、市中の道路におけるライドシェアの台数に上限を設けた。ロサンゼルスは交通混雑を低減するために「配車税」を検討している。
チリにおける「ウーバー法」を巡る議論は進んでいない。
タクシー労組は議会に対し、ライドシェアに携わる運転手に上限を設け、料金がタクシー料金を下回らないようにすることを望んでいる。ウーバーを代表とする輸送関連のスタートアップ企業の側でも、独特のロビー活動を精力的に展開している。
ウーバー利用者もスマートフォンを通じて賛同する。長年にわたって高い料金を維持し、質の低いサービスを提供してきた「タクシーマフィア」にほとんど共感を寄せない人は多い。
両者の板挟みになっているのは、チリの当局者だ。ハット運輸相は、自分の子どもたちがウーバーの配車アプリを利用しており、昨年の現職就任までは自身もユーザーだったことを公の場で認めている。ウーバーの運転手らがロイターに語ったところでは、警察官を含む公務員も頻繁にウーバーを利用しているという。
ホセ・ルイス・ドミニゲス運輸次官は、サンティアゴにある自らのオフィスでインタビューに応じ、運輸省がジレンマを抱えていることを認めた。
「(ウーバーは)事業を行うべきではないし、乗客も利用すべきではない」とドミニゲス次官は言う。「だが、現に存在するものを無視するのは、目を覆って太陽を見ないようにすることと変わらないだろう」
(翻訳:エァクレーレン)
https://jp.reuters.com/article/uber-chile-idJPKCN1R30OF
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2019年3月26日 / 15:23 / 41分前更新
アングル:
ボーイング最新鋭機に試練の歴史、50年前の「教訓」
David Ljunggren
2 分で読む
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[オタワ 25日 ロイター] - 大手航空機メーカー米ボーイング(BA.N)と各国の航空会社は、ボーイング737MAXによる2度の墜落事故を受け、同機に対する信頼回復に努めているが、約50年前を振り返ると、似たような「教訓」が存在した。
革新的な技術を駆使した新型機の就航後にボーイングが危機に直面するのはこれが初めてではない。
1965年、着陸しようとしていたボーイング727─100型旅客機が3カ月もたたない間に、3度墜落事故を起こし、計131人が死亡した。
エンジンを3基搭載した727─100型機は当時、737MAX同様、最先端の航空機といわれた。ボーイングは1964年に727型を導入し、当時の標準だった4発機に代わる効率の良い機体だとしていた。短い滑走路でも運航しやすいよう新たな機能が搭載されていた。
低速で大きな浮力を得られるよう設計された翼のフラップ(高揚力装置)は、非常に大きく高性能で、競合機よりも短時間で降下するとともに、滑走路付近の建物や障害物を回避することを可能にした。
727─100型機の墜落事故を捜査した当局は、一部の操縦士が同装置を十分に理解せず、かなり高速で降下していたことを発見した。
「機体には何も問題なかったが、注意を怠れば、降下率が非常に大きくなりかねなかった」と、米エンブリー・リドル航空大学のビル・ウォルドック教授は指摘する。同教授は727型機の事故を事例研究の一部に使っている。
航空当局は操縦士の訓練を強化するよう命じたが、政治家から運航停止を求める声が出ていたにもかかわらず、運航継続を許可した。
ボーイングは、飛行規定と最終進入時の手順に修正を加えた。
737MAXの場合、ボーイングはソフトウエアと操縦士の訓練を見直している。
https://graphics.reuters.com/ETHIOPIA-AIRPLANE-LJA/010091231EG/ETHIOPIA-AIRPLANE.png
<1年後には遠い過去>
727型機墜落事故を調査している米国の航空史家で、輸送関連の訴訟を専門に手がけた元弁護士のアラン・ホフマン氏は、今回の墜落事故に対する注目の高さを考えると、米連邦航空局(FAA)は、修正がうまく機能していると確信しない限り、737MAX8型機の運航再開を許可しないとみている。
「737MAX8型機は運航を再開し、ほかに何か起きない限り問題は悪化せず、1年後には遠い過去の記憶となっているだろう」と、同氏はロイターの取材に語った。
ロイターはボーイングにコメントを求めたが得られなかった。
737MAX8型機が2度目の事故後直ちに運航停止となったのとは対照的に、727型機は1965年11月に起きた3度目の事故からわずか2日後、米民間航空委員会(CAB)が運航を停止させる理由がないと発表した。
「727型機は就航前、非常に厳しい認証テストに合格していた。われわれの調査の中で、同機の安定性を疑うような結果は何も見つからなかった」と、CABは当時指摘した。
こうした説明をすぐに受け入れる乗客は少なかった。相次ぐ墜落事故を受け、同型機への搭乗を拒否する事態も起きつつあった。
「約半年間、727型機の多くは搭乗率が半分程度で運航していた」と、前出のウォルドック教授は言う。
それでも、727型機の危機は過ぎ去った。
727型機は次第にボーイングのベストセラー機の1つとなり、その後30年間、世界の空を飛び回った。しかし音が大きく、燃費の悪いエンジンを航空各社が敬遠するようになり、2003年には事実上、退役した。
(翻訳:伊藤典子 編集:久保信博)
https://jp.reuters.com/article/boeing-five-decades-ago-idJPKCN1R70G0?il=0
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