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トランプ大統領の司法妨害 「証拠不十分」の判断に反発/nhk
2019年3月25日 12時08分トランプ大統https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190325/k10011859711000.html
アメリカのトランプ大統領をめぐるロシア疑惑で、司法長官は、特別検察官による捜査の結果、トランプ陣営とロシアとの共謀は認定されなかったと明らかにしました。一方、トランプ大統領の司法妨害については、特別検察官は罪を犯したとも無実ともせず結論を出さなかったにもかかわらず、司法長官が立件には証拠が不十分だとする判断を示したため、反発が出ています。
アメリカのロシア疑惑をめぐってバー司法長官は24日、議会に書簡を送付し、疑惑の解明に当たったモラー特別検察官の捜査結果の概要を明らかにしました。
それによりますと、特別検察官は2016年の大統領選挙でロシアの干渉があったとしましたが、トランプ陣営とロシアとの共謀は「認められない」として、認定されなかったとしています。
その一方で、特別検察官は、トランプ大統領による司法妨害については、法制度や事実の認定における問題で判断が難しいとするとともに「大統領が罪を犯したとは結論づけないが、無実だともしない」として結論を出さなかったということです。
これについてバー司法長官は、最終的な決定は自分に委ねられたという認識を示したうえで、「私は司法妨害の罪で立件する十分な証拠がないと結論づけた」として、立件には証拠が不十分だとする判断を示しました。
これを受けてトランプ大統領は記者団に対し「ロシアとの共謀はなかった。司法妨害もなかった。完全な潔白の証明だ」と強調しました。
しかし書簡を受け取った野党民主党の下院議員、ナドラー司法委員長は「報告書は完全な潔白とはしていない」と指摘するとともに、バー司法長官が司法妨害について証拠不十分だとしたことを批判しました。
民主党は今後、特別検察官の捜査報告書の全面開示を求めるとともに、議会にバー司法長官を召喚して追及する構えを見せていて、疑惑をめぐる攻防は一層激しさを増しています。
バー司法長官の書簡要旨
モラー特別検察官は19人の法の専門家に加え、FBI=連邦捜査局の関係者や情報分析官など、およそ40人のスタッフで捜査にあたった。
出頭や証拠提出を求める令状の発行は2800回、捜査令状の執行は500回近くにおよび、およそ500人の証人を聴取したとしている。
モラー特別検察官による報告書は新たな起訴を提言していない。報告書は2部からなり、第1部は2016年の大統領選挙におけるロシアの干渉についての捜査、第2部はトランプ大統領による司法妨害の疑いについての捜査で構成される。
第1部に関する捜査では、トランプ陣営や関係者とロシアとの間での共謀や連携は認められなかった。ロシアは主に2つの方法で選挙に干渉した。
1つ目はロシアの団体「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」がデマを流したり、ソーシャルメディアで社会に不和の種をまこうとしたことであり、トランプ陣営や関係者のロシアとの共謀や連携は認められなかった。
2つ目はハッキングで、ロシア政府の関係者はクリントン陣営や民主党の関係者の電子メールを手に入れ、ウィキリークスなどで拡散したと認定されたが、トランプ陣営やその関係者はロシアの関係者から支援の申し出を複数回、受けたものの、ロシア政府との共謀や連携は認められなかった。
報告書の第2部に関しては、トランプ大統領の行動や意図が司法妨害に当たるかどうかは、法律や事実の認定で「難しい問題」があり、結論に達しなかった。
モラー特別検察官は報告書で、「トランプ大統領が罪を犯したとは結論づけないが、無実だともしない」と述べている。
モラー特別検察官は司法妨害に関する捜査で法的な結論を記さない決断をしたことから、犯罪に当たるかどうかの法的な結論は司法長官の判断に委ねられることになった。
報告書を検討し、省内でも協議したうえで、私(バー司法長官)とローゼンスタイン副長官は、司法妨害の罪で立件する十分な証拠がないと結論づけた。
トランプ大統領の行動の多くは公の場で行われ、報告書は司法妨害に当たる行為や、不正な意図で行われた行為とは認定していないとわれわれは判断した。
大統領「アメリカは地球上で最もすばらしいところ」
南部フロリダ州にある自身の別荘から24日夜(日本時間の25日午前)、首都ワシントンのホワイトハウスに戻ったトランプ大統領は、記者団の質問には直接答えず、「これだけは言いたい。アメリカは地球上で最もすばらしいところだ」と述べました。
民主党 下院司法委員長「議会としてさらに調査」
バー司法長官の書簡について議会下院の司法委員長を務める野党・民主党のナドラー議員が24日、記者会見を開きました。
このなかでナドラー委員長は、「トランプ大統領は間違っている。捜査の報告書はいわゆる『完全な潔白』に等しいとは言えない。モラー特別捜査官は報告書でトランプ大統領について『潔白は証明されていない』とはっきり述べている」と述べ、司法妨害の疑惑は晴れていないと主張しました。
また、「バー司法長官の書簡は明らかになったことより疑問のほうが多い。司法長官が司法妨害について訴追すべきかどうか判断した前例はないのではないか」と述べ、バー長官が、書簡を受け取って48時間もたたないうちに「司法妨害の十分な証拠はない」という判断を示したことを強く批判しました。
そのうえでナドラー委員長は「バー司法長官はすべての報告書と証拠を議会と国民に対して速やかに公表しなければならない。下院司法委員会でのバー長官の証言と、すべての報告書の公表を求めていく」と述べ、モラー特別検察官の捜査報告書の全文を開示するよう要求するとともに、バー司法長官を議会に召喚して追及する構えを示しました。
さらに、ナドラー委員長は「われわれ議会は法の支配を守るため、司法妨害や権力の乱用、汚職について調査を進める。モラー特別検察官は犯罪の捜査だけだが、議会には幅広い権限がある。議会が改めて報告書を作成するという事態を避けるためにも報告書の全文の公表を求めていく」と述べ、議会としてさらに幅広く疑惑の調査を進めていく考えを示しました。
米国民の受け止めは
アメリカのトランプ大統領をめぐるロシア疑惑の捜査結果の主な内容が公表されたことについて、アメリカ国民からはトランプ大統領の疑惑が晴れたとして歓迎する声が聞かれる一方で、さらなる調査が必要だという意見も聞かれました。
このうち、トランプ大統領を支持しているという南部ウェストバージニア州に住む男性は「もともとこのロシア疑惑の捜査は、ほとんどジョークのようないいかげんなものだった。トランプ大統領がロシアと共謀していたら、すでに結論はでているはずだ。魔女狩りのようなものだ」と述べ、トランプ大統領の疑惑が晴れたという考えを示しました。
また、西部カリフォルニア州に住んでいる女性は「もともと十分な証拠がないと感じていたので、今回の結果には満足しています。そもそもこの捜査はでっちあげられた捜査だと思っていました」と歓迎しました。
一方で、西部ユタ州に住む女性は「今後、さまざまな捜査について明らかになると思いますが、大統領が何の責任も問われなかったことは信じられません」と話し、トランプ陣営とロシアとの共謀が認定されなかったことなどについて疑問の声をあげました。
また、中西部ミシガン州に住む女性は「この問題は、政治から離れて進めることが非常に重要だと思います。今後、より多くの情報が明らかになってほしい」と話し、さらなる疑惑の解明が必要だという考えを示しました。
専門家「議会での与野党攻防激しく」
アメリカ中西部オハイオ州にあるヤングスタウン州立大学のポール・スラシック教授は、公表された捜査結果の概要について、「トランプ政権にとってとてもよいニュースだ。司法妨害については完全に潔白となったわけではないが、妨害の対象となるロシアとの共謀が認められていないため大きな問題にはならない」と述べました。
また、スラシック教授は、捜査結果を受けて、野党・民主党内でトランプ大統領の弾劾を求める声は弱まるとの考えを示したうえで、「クリントン元大統領の弾劾裁判では、国民は時間のむだだと感じ、共和党側も打撃を受けた。仮に、民主党がトランプ大統領の弾劾手続きを進めれば、国民は否定的に受け止めると予想されるため、捜査結果は民主党にとってもよかった」と指摘しました。
一方、捜査結果が来年の大統領選挙に与える影響については、「トランプ大統領の再選の可能性を高めた一方で、民主党は、ロシア疑惑を争点にできなくなるうえ、トランプ大統領が合法的に選ばれたことを認めなくてはならず、前の大統領選挙でトランプ大統領を支持した有権者にどう訴えるべきか考えなくてはならなくなった」と述べました。
そのうえで、スラシック教授は、今後、捜査報告書の全面開示を求める民主党とトランプ大統領との対立が厳しくなり、トランプ大統領が成果を上げたい貿易政策で民主党が反対するなど、議会での与野党の攻防が激しくなるとの考えを示しました。
トランプ大統領めぐる疑惑はほかにも
トランプ大統領をめぐっては、モラー特別検察官が捜査をしていた「ロシア疑惑」だけでなく、一連の捜査を通じて複数の新たな疑惑が発覚しています。
その1つが、トランプ大統領の顧問弁護士だったコーエン氏が、大統領選挙中にトランプ氏と不倫関係にあったとされる女性らに違法に口止め料を支払った問題です。
この事件をめぐっては、モラー特別検察官から捜査を引き継いだニューヨークの連邦地検が捜査を行い、コーエン氏は選挙資金法違反などの罪で実刑判決を受けました。
そして、この裁判では、検察側は「口止め料はトランプ大統領の指示で支払われた」と指摘しており、トランプ大統領の関与について引き続き捜査が行われています。
また、アメリカのメディアは、おととし1月に行われたトランプ大統領の就任式をめぐり、就任式の実行委員会が、政権内のポストなどを見返りに寄付金を集めていた疑いや、サウジアラビアなど中東各国から寄付を受け連邦法に違反していた疑いで、ニューヨークの連邦地検が捜査を進めていると伝えています。
さらに、野党・民主党もトランプ政権に関する疑惑に対して追及を強める構えです。議会では、民主党が多数派の下院の司法委員会が今月、トランプ氏が大統領選挙中に手がけていたモスクワでの不動産事業をめぐるロシア政府との関係や、大統領による捜査当局へのたび重なる非難が職権の乱用にあたらないか調査するため、トランプ大統領に近い関係者や団体など合わせて81の個人や団体に資料の提出を求める書簡を送っています。
また、民主党は議会の調査権限を最大限利用し、トランプ大統領の娘婿のクシュナー上級顧問が不正に機密情報にアクセスした疑いなどでも調査を進めています。
- ロシア疑惑は「国家への反逆」トランプ大統領 攻勢強める〜潔白の証明に自信をみせる/nhk 仁王像 2019/3/26 06:24:45
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