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【ベネズエラ・カラカス発】繁栄からの転落 政治腐敗で水も飲めなくなった
http://tanakaryusaku.jp/2019/03/00019733
2019年3月2日 21:00 田中龍作ジャーナル 山から染み出てくる水をボトルに詰める市民。ゴミ漁りと同じく当たり前の光景となっている。=カラカス郊外 撮影:田中龍作= 路肩にできた車列を見た時、故障か交通事故かと思ったが、そうではなかった。山肌から染み出てくる水を、人々が持参したボトルやタンクに詰めていたのだ。水はチョロチョロとしか流れて来ない。それでも皆、根気強くよく待っていた。 財政破綻した政府が水道設備のメンテをできないため、多くの世帯は水が出ない。公立病院に至っては手術ができない。事態は深刻だ。 街に出て必ず目にするのは、ゴミ漁りの光景だ。マドゥロ支持者が多く住むダウンタウンで最もよく見かける。老いも若きも、男も女もゴミ袋、ゴミ箱の中から食べ物を探す。 1990年代、「サウジ・ベネズエラ」と異名をとり、南米一の豊かさを誇っていたこの国が、どうしてここまで貧しくなったのか― 理由は汚職の蔓延と政治の私物化だ。 汚職は社会の隅々にまで行き渡る。例えば、政府が輸入した自動車(例:中国製)を買うには、政治家と役人の両方にワイロを渡さなければならない。 ワイロをもらった木っ端役人は上司に何割かを上納する。上司はさらにその上司に何割かを上納する。 公立病院が予算を計上、要望したとする。国家財政からは全額に近い金が下りるのだが、保健相が2割を中抜きする。 政治の私物化は、国家の最大基幹産業である石油を食い物にした。 2004年にチャベス前大統領が国営石油企業の社長と石油相を兼務にし、政府が完全掌握することになった。 国営石油会社は国民へのばらまきと政治目的のための大きな財布ともなったのである。 国営石油会社の生産能力が落ちたため、世界一の産油国でありながらガソリンを輸入する国に転落した。=カラカス市内 撮影:田中龍作= そのうえ先進的な技術のある欧米メジャーを追い出し、第三世界とのビジネスを活発化させた。イデオロギー上の対抗意識がそうさせたのだ。 2014年、チャベス前大統領の時代から私物化のため弱っていた国営石油会社を世界的原油安が襲う。 ベネズエラにとって唯一といってよい外貨獲得の手段だった石油収入は大きく落ち込んだ。 石油に頼り切っていた国家財政には致命的な痛手となった。マドゥロ大統領は財政難を切り抜けるために紙幣を大増刷(高額紙幣を印刷)した。ハイパーインフレの始まりである。 2017年、マドゥロ大統領は自らの力の源泉である軍の幹部を国営石油会社(PDVSA)の社長に据えた。社長はじめ要職を軍幹部で占めることになった。 石油の知識もビジネスの経験もない軍の将校たちが石油会社を運営できるはずがない。当然のごとく石油の生産量はさらにガタ減りしていった。 かくしてベネズエラは世界一の産油国でありながら、ガソリンを満足に生産できず、海外に依存する国に落ちぶれた。依存割合は40%とも50%とも云われる。 汚職も政治の私物化も、アメリカの経済制裁とは一ミリも関係ない。あるのは政治家や役人のカネへの執着だけだ。 実際、まっとうに汗を流すビジネスマンに聞くと皆が異口同音に「インフレはアメリカの経済制裁とは関係ない」と語る。 失政を口実に米国がマドゥロ大統領を追い出し、グアイド国会議長を新大統領にインストールしたとしても、この国に根付いた腐敗政治が一掃されない限り、人々の暮らしは良くならない。 マドゥロ政権が増刷した高額紙幣はハイパーインフレで紙屑と化した。 〜終わり〜 ◇ 政治の私物化が国家の破綻を招くことはベネズエラが証明しています。 政治の私物化と繁栄からの転落は日本と同じです。田中は警鐘を鳴らすため南米まで足を延ばしました。
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