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ダボス会議が映し出す「ポスト米国」の世界
2019/02/25
岡崎研究所
1月下旬に開催された今年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)は、極めて盛り上がりに欠けるものとなった。米国は政府代表団の派遣を中止し、欧州の最重要国である英仏独の首脳からは、レームダック化が進むメルケル独首相しか参加していない。近年大いに注目を浴びてきた中国も、王岐山・国家副主席が出席して当たり障りのない演説をしたに過ぎない。
makasana/artisteer/serikbaib/opolja
こうした状況は、今日の世界のあり方をよく映し出しているように思われる。ワシントン・ポスト紙コラムニストのザカリアはダボス会議を熟知したジャーナリストであるが、1月24日付け同紙掲載のコラム‘Davos is a microcosm of the world — and the outlook is grim’において、次のような観察を示しており、参考になる。
・米国政府代表団の派遣が取りやめられたのは、トランプと議会の対立が直接の原因だが、米国の世界への関与の弱まりを示唆する。
・欧州は、散漫、分裂、落胆の状況である。英仏独からメルケルしか参加していない。自由民主主義と秩序に基づく国際制度の擁護者が欠席したという印象を受ける。
・従来のリーダーの欠席を穴埋めするような新たなリーダーの出席もなかった。中国は王岐山・国家副主席が出席し、インドはモディ首相が今年予定されている総選挙での苦戦もあり欠席した。
・他方、独裁者が多数出席したわけでもない。国際社会は独裁者を歓迎してはいない。プーチン、エルドアン、サウジのムハンマド皇太子は欠席した。
・多国籍企業の経営者たちは、米中貿易戦争の世界経済、グローバル化の進展への悪影響に懸念を示した。
・今年のダボス会議が示しているのは、ポスト米国の世界である。それは、中国が圧倒する世界でもなく、反米一色の世界でもない。世界が米国の関与を望むべき状況だが、各国は自国の利益追求にばかり汲々としつつ、国際制度の継続的な安定を根拠もなく期待している。
つまり、ザカリアの観察は、各国でナショナリズムとポピュリズムが台頭する中、最も望まれる米国の世界への関与が縮小し、グローバル化が停滞しているということである。賛成できる見方である。
振り返ってみると、2017年のダボス会議では、中国の習近平国家主席が自由経済の重要性を説き、米国に替わり中国が自由経済の擁護者となるかのように印象付けようと振る舞った。欧州を中心に一部の西側メディアの間で、中国が自由経済の旗手となったと持ち上げるような論調が見られたのは、トランプ大統領誕生という衝撃を受けてのこととはいえ、滑稽と評すべき事態であった。中国が望んでいるのは、中国主導の中国に都合の良い国際秩序作りである。続いて、昨年は、トランプ大統領が米国第一主義を強く打ち出さず、それまでトランプに否定的だったダボス会議の出席者たちは、トランプへの見方を変えた。当時、ザカリアは、トランプへの期待と評価を示すと同時に、トランプの思考と政策の一貫性のなさから、国際協調的姿勢がすぐに変更される可能性も警告していた。果たして、ザカリアの懸念の通り、トランプは結局米国第一主義を何ら変えていない。中国、米国に立て続けに幻滅させられた結果、今年のダボス会議は、世界の現状を映し出すものに落ち着いたと言えるかもしれない。
トランプに国際社会の指導者としての役割を期待することはできない。現在の欧州の主要国にもグローバル化を牽引する余力は残っていない。既存の国際秩序を維持する強い推進力は見当たらないと言える。その中では、ザカリアは上記コラムで日本について言及していないが、日本はルールに基づく国際秩序の維持に奔走していると評価されるべきであろう。今年のダボス会議には、安倍総理と河野外相が出席した。安倍総理は「『希望が生み出す経済』の新しい時代に向かって」と題する演説を行い、日本が、自由で開かれた、ルールに基づく国際秩序の維持・強化に取り組む決意を改めて表明したほか、世界の主要なメディア関係者、ビジネス関係者たちと精力的に意見交換を行った。なお、世界経済フォーラムのシュワブ会長は、日本を国際社会におけるパートナーとして重視しており、同フォーラムの東京事務所は、日本企業の参加促進に努めている由である。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15400
太永浩「トランプ大統領が金正恩の落とし穴にはまる」
2019/02/25
朴承a (在韓ジャーナリスト)
「金正恩時代に、日本との国交正常化の代価は100億ドル以上になるだろう」。ベトナムのハノイでの米朝首脳会談を1週間後に控えた最近、会談展望についての様々な予測が出ている。国際社会の視線がハノイに集中している微妙な時期に、2016年、韓国に亡命した北朝鮮の太永浩・元駐英公使の記者会見が19日、ソウル外信記者クラブで開かれた。
太永浩氏(AP/AFLO)
太元公使は、北朝鮮の亡命外交官としては一番地位が高い。亡命前に北朝鮮の駐英国大使館ではナンバーツーだった。昨年、北朝鮮の金正恩政権の内部実相を暴露した『 太永浩証言―3階書記室の暗号』という著書が発刊された。
北朝鮮の核保有戦略について、自分が北朝鮮の外交官だった時、「金正恩が望んだのは、(国際社会に)"戦争危機論"を訴えて核保有国に行く」という戦略だったと述べた。これを通じて「金正恩は米国と北朝鮮の間で核戦争が起きかねないという懸念を全世界に拡散させるのに成功した」と解釈した。
こうした北朝鮮の戦略に「17年11月、トランプ米大統領が落とし穴にはまった」とし、トランプ大統領が国連総会で「北朝鮮を完全に破壊できる」と演説したのは、米国としては非常に大きな戦略的失敗だったと、分析した。
当時国際社会は、「金正恩という核列車と、トランプという核列車、あたかも両核の列車が向かい合って駆けつけるという国際的錯視現象が起きた」とし、北朝鮮と米国の間に戦争の危機はまったく存在しなかったと述べた。
ところが、米国が金正恩のレトリックによる戦争の可能性に浸り、北朝鮮と米国の間で核戦争が起こる恐れもあるという憂慮を抱かせた」と、これが金正恩が望んだ戦略だったと述べた。
太氏は、米国はベトナムでの2回目の米朝首脳会談を前に、「非核化交渉にするか、それとも核軍縮交渉にするか」というジレンマに陥っている、との見方を示した。また、北朝鮮は自分たちが持っている核について誰にも放棄するという約束も宣言していないとし、「いまだに米国がベトナム第2回目の首脳会談(実務会談)で、北朝鮮にIAEAとNPTに復帰するように要求しないことが最も憂慮される事案」と、トランプ大統領の対北交渉の姿勢に不満を示した。
また、「もし今回の会談で北朝鮮の寧辺核施設+aに対する相応措置として、米国が何かを与えてディールをするなら、それは非核化会談ではなく、核軍縮会談に突入することを意味する」とし、結局それは、"トランプ・ドクトリン"に向かっている証拠だと述べた。トランプ・ドクトリンとは、「北朝鮮の米国に対する核脅威は米国がなくしてしまう。ところが、韓国に対する北朝鮮の核の脅威は、韓国と北朝鮮が自ら解決するというのがトランプ・ドクトリンの中核だ」と定義した。
トランプ大統領に対する"適合型(テーラーメード)外交政策"
「(北朝鮮は)トランプ任期内には寧辺核施設を検証し、廃棄できないことは承知している」と述べた。また、北朝鮮はすでに核兵器を製造できる核物質を十分に生産していたため、過去の核である寧辺の核施設を廃棄するという話は、すでに廃棄された自動車をペンキ塗りして、米国に売り飛ばすものと相違ない。いま、北朝鮮の外交は、トランプ大統領に照準を合わせ、トランプ大統領に対する"適合型(テーラーメード)外交政策"に進んでいる、と説明した。
北朝鮮が果たして核を放棄するかどうかについて「北朝鮮にとって核兵器は北朝鮮が持っているすべてのものの集約体だと言える。核兵器は、体制を結束させる求心の役割、韓国との体制対決で、北朝鮮が劣勢に置かれている状況を正当化できる説得力のある論拠になるだろう」と、述べた。また「北朝鮮は数兆ドルを与えられても、金正恩体制が存在する限り核兵器を絶対にあきらめない」と見通した。
さらに、金正恩がハノイで実際に狙うのは、中国からの制裁解除だ。金正恩は、開城工業団地と金鋼山観光再開を突破口として、数十億ドルの中国との貿易関係を正常化させようとしている。(国連など国際社会が)石炭のような主要輸出物資を塞いでいるため、北朝鮮の基幹企業と軍隊、大きな企業が危機状況に追い込まれている。制裁が続けば北朝鮮の基幹企業(公企業)は死んでいき、逆に個人が運営する私企業と資本主義的な要素はさらに活性化する現象が生じるだろう、とし、北朝鮮に対する経済制裁は続けるべき必要性を強調した。
太氏は、米国が北朝鮮の完全な非核化よりは、米国まで飛ばされる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を廃棄するのにとどまるのではないかという懸念を意識したのか、「米国は北朝鮮がICBMをどれだけ持っているのか正確な情報がない。北朝鮮はICBMの一部を廃棄する振りを見せるだろう。北朝鮮はICBMをすべて廃棄し、米国に対する北朝鮮の危険がなくなるというショーをしようというロードマップを用意した」とし、ICBMの廃棄についても懐疑的に展望した。
金正恩委員長が、今回のベトナム米朝首脳会談で、望むことが得られなかった時、その次の手は何か、という問いに太氏は、「それは核の伝播」(核技術の移転だ)と断言した。「核技術を買うという購入者がいるのに、この道に進むしかないと米国に脅迫するだろう」と言った。北朝鮮はすでにこのような脅迫を数十回も使った。以前、自分がスウェーデンでの会談に参加した際、イスラエルが北朝鮮に10億ドルを与えなければ、北朝鮮の核技術を中東国家に輸出できると米国に脅迫した事実があると証言した。
北朝鮮の内部情勢について「2月8日、北朝鮮では空軍節(記念日)の行事があったが、北朝鮮軍3人の首長、総政治局長と人民武力部長、総参謀長がいずれも新しい人に変わった」。1年間に北朝鮮軍の中枢の首長がすべて変わったといい、金正恩が、「周囲でかなり不安を感じていることを意味する」と解釈した。
拉致問題の解決には、経済的な補償がないと乗り出さない
太氏は、日本人拉致被害者問題に対する質問に、「拉致問題の解決において、北朝鮮は現金のような経済的な補償がなくては、拉致問題の解決に積極的に乗り出さないだろう。以前は、国交正常化の代価(賠償)として100億ドル程度を考えたが、金正恩時代には100億ドル以上の経済援助を受けてこそ、国交正常化まで進むと思う」と、見通した。
文在寅大統領の「トランプ大統領は十分にノーベル平和賞を受賞する資格がある」ということについて、太氏は、「 ノーベル平和賞についての話は北朝鮮の核の脅威が完全に消えた時、論議されなければならないと思う。核がある状態でノーベル平和賞の受賞は、ノーベル賞の真の平和の原則に合わないと思う」と否定的な考えを示した。
北朝鮮の駐イタリアチョ・ソンギル元大使代理の亡命の件について、太氏は、チョ大使代理が脱北の過程で娘を連れて脱出できず、北朝鮮はその子どもを直ちに北朝鮮に(強制)送還した。平壌にいる友人から、チョ・ソンギルの娘が北朝鮮に送還され、現在、北朝鮮当局が管理しているという事実を確認した。このような状況の中、チョ・ソンギルは娘の身辺安全のため、自分の居所を公開したり、公開的な活動ができない状況に置かれている、同じ大学出身で、外務省の同僚だったチョ大使代理の消息を伝えた。
このような状況を知る前は、チョ・ソンギルに「韓国入りしろ」と要請し続けたが。いまは、そのような要請はできない。なぜなら、脱北した外交官が韓国に亡命するのと、米国や欧州に亡命するのとは、北朝鮮に残っている子どもやその家族に対する処罰のレベルが全く異なるためだと、いままでと違った、静かなトーンで語った。チョ大使代理の娘は17歳の高校生で障害者と知られ、大使館員が脱出を防いだという。
最後に金正恩は、開城工業団地と金剛山観光が再開されれば、板門店宣言(南北会談)1周年になる4月27日を期して、韓国を訪問する可能性が高いと見通した。太氏は記者会見中、終始一貫して北朝鮮の故・金日成主席や金正日総書記、金正恩委員長に対する呼称はすべて呼び捨てにした。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/15438
「ブレグジット」で失われる60万もの雇用
2019/02/24
中西 享 (経済ジャーナリスト)
(Tanaonte/gettyimages)
英国が欧州連合(EU)からの離脱を通知してから2年経つ交渉期限が3月29日に迫る中、ジェトロはこの問題の最新情勢についてロンドンとブラッセルからの現地報告に基づくセミナーを22日に開催した。
井上博雄ブラッセル事務所長は「英国とEUの交渉は相互不信に陥り、危機的状況にある。期限までに合意できる可能性は小さく、現地の日系企業は『合意なき離脱』により生ずるリスクに備えるべきだ」との見方を明らかにした。
また中原廣道ロンドン産業調査員は「英国とEUの交渉は北アイルランドの国境管理問題(バックストップ)で対立し、先行きの不透明感が強まっている。英国は『合意な離脱』になった場合に備えるガイダンスも公表、物流、通関、金融分野などへの影響が心配されている。英国側だけでなくドイツやフランスなどEU側も雇用面の影響を警戒、ドイツのハレ経済研究所は『合意なき離脱』が起きると、ドイツで約10万3000人、フランスで約5万人を含む世界全体で約60万人が失職する恐れがあると公表している」と指摘した。
多い不確定要因
ブレグジットをめぐっては、1月15日に英国下院がメイ首相の提案した離脱協定案を大差で否決した。29日には下院が協定案についての新方針を採決した。しかし、メイ首相が率いる保守党や最大野党の労働党の双方から離反者が出て中道グループを結成するなど、首相を取り巻く政治情勢は厳しさを増している。
「合意ある離脱」にするためには、離脱協定案を欧州議会で審議し同意の手続きが必要なほか、EU27カ国審議、EU理事会での承認手続きが必要で、これらの合意を取り付けるのは簡単ではないとみられている。もともと、EU側は英国が勝手に離脱を選択したのだから、交渉を自国に有利に運ぼうとしても無理があるとの見方が強く、最終的に「合意ある離脱」に到達できるかどうか、多くの不確定要因がある。
「合意ある離脱」で交渉がまとまれば、移行期間などが設けられるため、英国に進出している企業も準備期間ができるため、ある程度は余裕を持った対応が可能だが、「合意なき離脱」になると、いきなり関税が掛けられたりして輸出する上で不利益を被ることになる。
ホンダ撤退の衝撃
英国に進出した企業の中で大きな影響を受けると見られていた自動車業界の中で、ホンダが20日に英国からの生産を2021年中に終了すると発表して衝撃が走った。ホンダは生産の撤退は英国の離脱問題とは関係なく、生産能力の縮小と世界にある工場の稼働率の向上のためだとしているが、自動車メーカーが英国からの生産終了を決めたのは初めてで、主要工場の撤退は失業につながるため、動揺が広がっている。
自動車業界では、「合意なき離脱」になると、英国からEUに自動車を輸出すると10%の関税がかけられることになり、コストが上昇して競争力を大幅に落としてしまう。こうした事態を先読みして、ドイツBMWが小型車「ミニ」を生産する英国のオックスフォード工場からオランダに一部移管するほか、日産は英国の工場で予定にしていたスポーツ多目的車(SUV)の生産を撤回すると発表するなど、自動車メーカーでは「合意なき離脱」の備えての対応が表面化している。
仮に英国とEUとの交渉がまとまらず、「合意なき離脱」が現実になると、企業の「英国離れ」は一気に加速するものとみられ、企業のグローバル戦略にも大きな影響を与えることは必至とみられる。
在庫の積み増し
英国では17年には198万台の自動車を生産、輸出比率は79%もあり、EUへの輸出が53.9%(同年)を占めている。このほか、米国、中国オーストラリアなど約160カ国に輸出している。産業従事者は85万6000人いる主要産業だけに、EUへ輸出する自動車に関税が掛けられるとその影響は大きい。同年の生産台数上位のモデルは、1位が日産の「キャッシュカイ」が34万6000台、2位がBMWに「ミニ」が21万8000台、3位がホンダ「シビック」が12万2000台、4位がトヨタ「オーリス」が10万4000台の順だ。
井上所長は企業が取るべき対策として「『合意なき離脱』に備えて緊急プランを早急に作成すべきだ。具体的には在庫の積み増し、さらには倉庫を借りて在庫を積み増す企業も出ている。長期的な視点としては、サプライチェーン(部品調達網)の組み替えや生産拠点の移転などが考えられるが、どこまでやるか経営判断としては悩ましい」と指摘した。英国には17年10月現在、日系企業が986社進出、自動車など製造業がEUへのゲートウエイという位置づけで拠点を設けている。
3〜4カ月期限延長も
日本政府は「合意なき離脱」は避けたいため、安倍首相が1月10日にメイ首相と会談した際には、「合意なき離脱」による混乱を回避し、日系企業などへの打撃を最小限にとどめるよう対策を取るよう要請した。
井上所長は個人的な見解として「交渉期限の3月29日が3〜4カ月延期される可能性はあるのではないか。5月末には欧州議会の選挙があるので、選挙後の最初に審議日程(7月)までは延長できるかもしれない。しかし、その合意を得るためには延長して得るものがないと前に進まない」と述べた。ここにきて、EU内部からも「合意なき離脱」が現実になると、大きな混乱がEU側にも起きることを警戒しており、超党派で交渉期限の延長を容認する声も出てきている。
ブレグジットが英国経済に与える影響について、英国政府は「合意なき離脱」になった場合は、GDP(国内総生産)が最大9.3%落ち込むと予測、今の政府案が承認された場合は3.9%の落ち込みになるとはじいている。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/15456
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