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図星だったのか? ロシア政府を怒らせた私の論考 カギは北方領土の軍事的価値、ロシアが過敏に反応した理由とは  
http://www.asyura2.com/19/kokusai25/msg/467.html
投稿者 うまき 日時 2019 年 2 月 19 日 18:01:34: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

図星だったのか? ロシア政府を怒らせた私の論考
カギは北方領土の軍事的価値、ロシアが過敏に反応した理由とは
2019.2.19(火) 数多 久遠
北方領土返還に反対、モスクワで数百人が抗議
ロシアの首都モスクワで、日本への北方領土返還に関する協議の中止を求め抗議デモを行う人々(2019年1月20日撮影、資料写真)。(c)Alexander NEMENOV / AFP〔AFPBB News〕

(数多 久遠:小説家、軍事評論家)

 2019年1月23日にJBpressに掲載された拙論「誰も指摘しない北方領土の軍事的価値」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55232)に、意外なところから反応がありました。ロシアのメディア、「スプートニク」や「タス通信」などです。

 まず、スプートニクは2月5日に以下の記事を掲載しました。

・「南クリル(筆者注:北方領土のロシア語表記)への米ミサイル配備に関する日本のマスコミの記事は不適切であり、露日交渉の助けにはならない=駐日ロシア大使」
https://jp.sputniknews.com/russia/201902055888509/

 スプートニクは、ロシアの政府系メディアで、ソ連時代にラジオを使って行っていた対外宣伝の流れを汲んでいます。当然、そこで報道される内容は、ロシア政府の意向に沿ったものだと言えます。しかも、この記事は、ガルージン駐日ロシア大使のコメントを報じたものであり、明確にロシア政府の意思と言えるでしょう。

 タス通信(正式名称は「イタルタス通信」)は、ソ連時代からあるロシアの100%国営通信社で、こちらは歴史が長いため知っている方も多いでしょう。タス通信は、拙論を受けて2月5日に以下のように報じました(こちらはロシア語です)。

・「専門家は、南クリルにアメリカのミサイル防衛を展開する必要はないと述べる」
https://tass.ru/mezhdunarodnaya-panorama/6080172

 筆者は 北方領土交渉が4島一括返還には遠く及ばない条件で妥結する可能性が高いことを踏まえ、ロシアが軍事的価値を強く認めているため「2島+アルファ」となることも致し方ないかもしれないことを日本の読者に説明する意図で、「誰も指摘しない北方領土の軍事的価値」を書きました。そのため、ロシアにとっては喜ばしい記事だろうと考えていました。

 しかし、意外なことにロシアは、この記事に反発してきました。この記事に書かれた内容は、ロシアにとって触れてほしくなかった情報だということになります。

 では、この記事の一体何がロシアにとって不都合だったのか、考えてみたいと思います。上記2つの報道以外にも、ロシア語による報道があるようですが、以下では、主要メディアと言えるこの2つの記事を取り上げて考察します。

北方領土へのロシア主権「認めよ」 外相会談後にラブロフ氏
ロシア、モスクワで会談したロシアのセルゲイ・ラブロフ(右)、日本の河野太郎(左)両外相(2019年1月14日撮影)。(c)Kirill KUDRYAVTSEV / AFP〔AFPBB News〕

ロシアが反応した理由は? 考えられる2つの理由
 ロシアが拙論に反応した理由としては、大きく2つの可能性が考えられます。

(1)これまでの主張の正当性を維持するため

 1つには、ロシアは、返還を拒む理由が、軍事的価値にあるのだと思われたくないと考えている可能性です。

 筆者は「誰も指摘しない北方領土の軍事的価値」で、ロシアにとっての軍事的価値を以下の3つに整理しました。

@ オホーツク海を戦略原潜の聖域とするロシアの核抑止戦略への影響

A 太平洋への出口を求めるロシア太平洋艦隊への影響

B 北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃するため、北方領土に米軍がイージス・アショアを設置する可能性

 ロシアは、クリミアを占領するなど、現代でも侵略行為を継続していますが、同様の侵略行為を行っている中国よりも、その建前(あるいは“錦の御旗”)を気にしています。

 北方領土に関しても、第2次世界大戦の結果、完全に「合法的」にソ連に引き渡されたと主張しています。

 多くの日本人は、ソ連の対日参戦が、日ソ中立条約違反(条約期限後に延長をしない旨の通告はされていたが、まだ有効期限内)であったことを知っています。しかし、ロシア国内では、その事実は知らされていません。ロシアの世論では、返還に反対する意見が多い理由の1つに、ロシア人がこの違反の事実を知らないことなどがあります。

 北方領土問題に関するウィキペディアを見ても、日本語版ページには、このロシアの参戦が日ソ中立条約の有効期限内であったことが書かれていますが、ロシア語版ページでは、破棄通告(ロシア語情報では、その時点で効力を失うようなニュアンスとなる破棄と書かれています)後に侵攻したと書かれており(2019.2.17現在)、国際法違反を犯していないと読めるように書かれています。

 これは、1つのエピソードに過ぎません。日ソ中立条約だけでなく、関連する関東軍特種演習やヤルタ会談などに関しても、ロシア語での情報は、ロシアの主張に沿った不都合な情報が隠された表記になっています。筆者の知人の日本在住ウクライナ人も、そうした情報をロシア語で入手していたため、北方領土の返還要求は理不尽なものだと考えていたくらいです。

 今回の拙論に対して、ロシアがロシア語の情報を出して否定していることを考えると、主としてロシア国内に対して「ロシア政府が返還を拒むのは軍事的利益が理由ではなく、あくまで政治的な正当性に基づくものである」と主張したがっている可能性は考えられます。

 中国と異なり、ロシアは、国外の不都合な情報をシャットアウトすることまではしていません。そのため、拙論がネットなどを通じて国内に広まることを避けたかったのかもしれません。

(2)北方領土へのイージス・アショア配備を警戒するため

 もう1つ考えられるのは、「米軍が北方領土にイージス・アショアを設置する」という推論が、ロシアにとって都合が悪いものだったという可能性です。

 読んでいただければ分かりますが、上記のスプートニクも、タス通信の報道も、他の軍事的要素には触れず、この北方領土への米軍によるイージス・アショア設置可能性だけにしか言及していません。

 現在も行われている返還交渉の中で、ロシアは北方領土に米軍を展開させない保障を求めているとも伝えられています。

 その流れの中で、この反論を行ってきた可能性も考えられますが、拙論「誰も指摘しない北方領土の軍事的価値」では、北方領土にイージス・アショアが配備されても、オホーツク海のロシアの弾道ミサイル搭載潜水艦から発射されるSLBMの迎撃は困難なため、ロシアに対しては直接にそれほどの悪影響は与えないと書きました。

 択捉島に設置されたイージス・アショアが、私が分析する以上にロシアのSLBMに影響することが警戒されている可能性はあるかもしれません。しかし、もしそうであるならば、反論するとしても、このような反論ではなく、ヨーロッパに配備されているイージス・アショア(EPAA)に対して、ロシアによる核抑止が低下するとしている論法を、同じように使って反論すれば良いはずです。

 それにもかかわらず、ロシア語を含む複数のメディアを使い、駐日大使までもが反論することを考えれば、この情報がロシアにとって相当に不都合だった可能性があります。

『北方領土秘録』の内容が正鵠を射ていた?
 ロシアが、核抑止力の低下を懸念している可能性はありるかもしれません。ただし、ガルージン駐日大使が「外国軍の仮説的な配備でさえも、これに関するあらゆる話が不適切であり、根拠がない」と述べていることを鑑みると、どうも、それだけではないように思えます。

『北方領土秘録 外交という名の戦場』(数多久遠著、祥伝社)
 特に気になるのは、「仮説的な配備」「これに関するあらゆる話」などという表現を見ると、大使の発言は、JBpressに掲載された拙論だけでなく拙著『北方領土秘録 外交という名の戦場』(祥伝社)も踏まえた言葉である可能性があることです(ちなみに「誰も指摘しない北方領土の軍事的価値」には、『北方領土秘録』の中から引用した図を掲載しています)。

『北方領土秘録』は、北方領土への米軍イージス・アショア配備の可能性に触れた1つの仮説を小説形式にしたものです。手前味噌になりますが、この仮説がいくばくかの正鵠を射ていた可能性があります。

 仮説の詳しい中身は拙著をお読みいただきたいのですが、概要としては、2016年に行われていた返還交渉と並行して、ロシアが、北方領土への米軍イージス・アショア配備に関連する謀略を仕掛けていた、というものになります。

 いずれにせよ、これらはあくまでも可能性であり、確実に言えることではありません。ただ、一介の評論家、作家に過ぎない私の論に対してこのような反応があったことは、現在も進められている返還交渉で新たなニュースが出てきた際に、大いになんらかの参考になるはずです。

 なお、タス通信の記事は、やはりJBpressの寄稿者であるロシア問題の専門家、小泉悠氏のコメントを使って構成されていますが、内容を見ると特に筆者の記事を踏まえたもの、というわけではなさそうです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55526  

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