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信じがたい欧州の衰退
https://diamond.jp/articles/-/193912
2019.2.14 The Wall Street Journal ダイヤモンド・オンライン
Photo:iStock/gettyimages
――筆者のウォルター・ラッセル・ミードは「グローバルビュー」欄担当コラムニスト
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過去100年間に起きた最も重大な歴史的変化、つまり世界を動かす一勢力としての欧州の衰退を示す新たな証拠が先週示された。ドイツ銀行がドイツの景気後退(リセッション)を警告する中で、欧州委員会は2019年のユーロ圏の成長見通しを、もともと芳しいとは言えなかった1.9%から、1.3%へと下方修正したのである。2017年のユーロ圏の域内総生産は、2009年の水準を下回った。世界銀行によれば、同じ期間に他地域の国々の国内総生産(GDP)は、中国が139%、インドが96%、米国が34%増加した。
欧州の経済が後れを取るのと同時に、欧州の政治的分断も進んだ。英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)をめぐる交渉は、英仏海峡の両岸で怒りを誘発した。ハンガリー、ポーランドなどの中欧諸国は西欧諸国から疎外されている。大半の南欧諸国は、ユーロ危機の後遺症に悩まされ続けている。そして、EU全域で、反EUの政策を掲げる政党が勢力を拡大している。シンクタンクの欧州外交評議会(ECFR)の最近の報告によれば、右派から左派まで合わせた反EUの政党は、次期欧州議会でEUの行動を阻害し、EUの力をさらに弱めるのに十分な議席を確保できる段階へと向かっている。こうした事態は、想定されていなかった。EUは欧州の衰退を食い止めるために創設されたものであり、衰退を反映するためのものではなかった。
欧州の基盤を築いた人々が気付いていたように、20世紀の欧大陸の地政学的衰退をもたらした要因は二つあった。一つめは避けがたいものだった。産業の中心地で生まれた技術は、アジアや米州へと拡散し、欧州と他国との富の格差は必然的に縮小した。医療面の革新的技術も、欧州で生み出されたものが多かったが、その拡散は、欧州以外の世界各地で人口の爆発的増加を引き起こした。その一方で、最初に工業化を成し遂げた大陸である欧州は、都市化と豊かさの副産物である出生率の低下を最初に経験した大陸でもあった。
欧州衰退の二つめの要因は、内部分裂とナショナリスト的な憎悪だった。これはEUの創設者たちが解決しようとしていた問題だった。二度の世界大戦により、欧州の大半は不毛の廃虚となった。欧大陸がひとまとまりの価値観や政治機関の下で結束できれば、将来の戦争は回避できるだろうと考えた。統合のプロセスは第二次大戦後のフランスとドイツの和解から始まった。冷戦が終結し、東西ドイツが再統合されるなか、欧州の指導者たちは国を超えた協力を拡大および深化させる野心的なプログラムに着手した。
その連合は東に拡大し、ワルシャワ条約機構の元加盟国に民主主義をもたらした。経済協力は単一市場の構築、共通通貨の創設と共通の経済政策の採用によって深まった。外交面では、欧州が域外と接する上で統一行動を取ることを目指した。冷戦後の世界で米中と同等の条件で競争できる新しい欧州を築き上げることは、欧州にとって何よりも重要な目標だ。
この壮大なプロジェクトが失敗しつつあることは一段と鮮明になっている。不均衡で恐らく野心的すぎたその拡大は、EUを強化せず、弱体化させた。ユーロは経済的にも政治的にも失敗だったほか、外交的な結束は遠い夢のままとなっている。
ロシア、トルコ、イスラエルやアラブ諸国といった近隣の国々は、意のままにEUの要望に逆らっている。ワシントンにおける欧州の影響力は、オバマ政権時代に既に弱まっていたが、ドナルド・トランプ政権下で最低水準に落ち込んでいる。ロシアも米国も、欧州でのミサイル配備を制限する中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄する際、欧州の利害にあまり注意を払わなかった。中国は欧州より日本やインドを重要視しており、米国も中国も、世界の貿易システムを再定義するかもしれない二国間貿易協定の交渉の際、欧州がどう考えるかを特に気にしていない。
欧州による構想で一つだけうまくいったものがある。欧州単一市場である。欧州は消費圏として引き続き素晴らしい存在であり、米グーグルやロシア石油大手のガスプロムなど外国企業が豊かな欧州市場内で活動する際の条件を設定できる能力は欧州が保有する最も重要なカードである。
フランス、ドイツの指導者は引き続き欧州圏構想に強くコミットしているが、英国はEU離脱の崖っぷちにある。また、イタリア、ポーランドは反抗的、ハンガリーは挑戦的で、欧州の先行きは暗さを増している。もしフランスとドイツが欧州の成長を再び加速させ、国境線の治安を確保し、現在欧州を混乱させているナショナリスト的な人々の気持ちを納得させるような計画を策定することができれば、欧州は現在の落ち込みに歯止めをかけることができるかもしれない。少なくともこれまでのところ、こうした結果はありそうにない。
米国内の右寄りのナショナリストの一部は欧州の落ち込みを歓迎している。これは間違いだ。米国にとっては、たとえ付き合うのが難しく、不愉快であったとしても、隣接する諸国との国境上の治安を確保できず、世界の安定にも寄与できない弱い欧州よりも強い欧州の方が望ましい。ただし、米国は現在の欧州に対応しなければならない。そしてその欧州はうまくいっていないのである。
(The Wall Street Journal/Walter Russell Mead)
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— ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 (@WSJJapan) 2019年2月12日
メモ:欧州経済衰退は1技術力低下2ナショナリズムで政治意思決定の遅延を背景とした記事。EUで今後起こることはアジアの未来を考えるうえでも重要そう / 信じがたい欧州の衰退 #NewsPicks https://t.co/VwKP9EPg9Z
— 崔 真淑/Masumi Sai (@masumasu033) 2019年2月12日
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