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「親中派」のメルケルが中国を捨て日本に鞍替えした本当の理由
国際 2019.02.08 by 北野幸伯『ロシア政治経済ジャーナル』
2月4日に行われた日独首相会談の席上、親中派の姿勢を変化させたメルケル首相が「中国の海洋進出や5Gの覇権掌握などの阻止」に向け、日本にも対中戦略で協力体制を求め、両国で大筋合意に到ったとの報道がなされました。これを受け無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、日独の友好関係強化が「我が国の50年先を見据えた大戦略構築への好機になる」として、その理由を詳しく解説しています。
なぜドイツとの関係改善は、超重要なのか?
安倍総理は4日、ドイツのメルケル首相と会談しました。
日独首脳会談 “親中”メルケル氏が中国を牽制
産経新聞 2/4(月)22:20配信
安倍晋三首相は4日、ドイツのメルケル首相と官邸で会談し、安全保障分野での協力推進のため、両国の機密情報の交換を可能とする「情報保護協定」を締結することで大筋合意した。米中貿易摩擦や保護主義の台頭を念頭に自由貿易の重要性を確認したほか、6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)を見据えた協力強化でも一致した。
メルケルさんは、「親中派」で知られています。しかし、今回の訪日でわかったのは、「メルケルさんの対中姿勢が変わってきている」ということ。たとえば、中国の南シナ海での動きをけん制した。
両首脳は中国の海洋進出を念頭に「力による一方的な現状変更の試み」に反対し、法の支配に基づく国際秩序維持のため連携することでも一致した。安倍首相は共同記者会見で「日独がルールに基づく国際秩序維持のために果たすべき責任はますます大きくなっている。自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力で一致したことは意義深い」と述べた。メルケル氏は「インド太平洋地域の平和と安定へのコミットを支援する。これは中国の領土的野心とも関係している。中国とは緊密に協力しなければならないが、簡単にことを進めてもらっては困る」と述べ、中国を牽制(けんせい)した。
(同上)
そして、5Gから中国を排除する方向に理解を示しました。
「5G」中国覇権に懸念=メルケル独首相
時事 2/4(月)21:27配信
安倍晋三首相は4日夜、ドイツのメルケル首相とともに日独両国の経済人の表敬を首相官邸で受けた。この中でメルケル氏は、次世代通信規格「5G」をめぐり中国が覇権を握ることに懸念を示した。メルケル氏は「中国が(5Gを通じて)最終的にデータを獲得することにならないように、どうすればいいのか」と問題提起。「公正なアクセス方法が必要だ」と強調した。
どうして、メルケルさんは中国への態度を変えたのでしょうか?
そもそもドイツが中国にすり寄っていたのは、「金」が唯一の原因でした。(日本企業が中国にすり寄っていたのも、「金」が唯一の理由なので、別に「ドイツが特別」というわけでもないでしょう)。ところが、アメリカに叩かれて中国経済がやばくなってきた。それで、日本の方にやってきたのでしょう。
ドイツは、大事な国
実をいうと、ドイツは、非常に重要な国です。この国のGDPは、アメリカ、中国、日本に次いで世界4位。そして、ドイツは、「EUでもっともパワーのある国」なのです。
アメリカのGDPは、世界GDPの約24%を占める。EUは、世界GDPで約22%を占めている。そのEUは、「実質ドイツに支配されている」と、しばしば指摘されています。それで、たとえばフランス人「人口学者」のエマニュエル・ドットさん(あまりに予測があたるので、「予言者」と呼ばれる)などは、「EU=ドイツ帝国だ!」と嘆いている。
そう、日本がドイツを味方につければ、EU全体が味方になる可能性が高い。そして、それは、「世界GDPの22%を味方につけること」なのです。
もう一つ重要なこと。
ドイツ、EUは、「世界的にもっとも人道的な国、地域」という評判を確立しています。それで、欧州の意見が、世界の「人権スタンダード」になることが多い。しかし、実をいうと、欧州のスタンダードも結構いいかげんなのです。
たとえば、EUは、「プーチンは同性愛反対主義者」といって批判します。その一方で、ほとんどすべてのイスラム教国が「同性愛反対」であることには触れません。欧州にはイスラム教徒が多いので、恐れているのでしょうか?いずれにしても、欧州の「人権」も結構怪しい。
「怪しい」といえば、ドイツはこれまで、中国の人権問題をほとんどスルーしていました。しかし、「金の切れ目が縁の切れ目」でこれからは変わってくるかもしれません。
もし、ドイツとEUが、「中国はウイグル人100万人拉致をやめろ!」と騒ぎ出せば、中国「悪魔化」は確実になります。そう、ドイツとの友好は、「情報戦」の観点からも非常に重要なのです。
日本の大戦略
日本には中国の「反日統一共同戦線戦略」に対抗する戦略が必要です。それは、日米、日ロ、日韓関係を良好に保つことである。しかし、50年先を見据えた大戦略も必要。
まず、現在の同盟国であるアメリカとの関係をますます強固にすること。しかし、アメリカは、長期的に没落する方向。それで、近い将来、アメリカ、中国に並ぶ大国になるインドとの関係を強化していく。このこと、私は2014年発売の『クレムリン・メソッド』以降、一貫して主張しています。
予想通り、インド経済は、ここ5年間順調に成長しつづけてきた。後5年もすると、インドのGDPは日本を追い越し、世界3位に浮上することでしょう。米印との関係を強固に保つこと。これが大戦略の最重要ポイントです。
次に大事なのが、EU、ロシアとの関係を良好に保つことです。3番目に大事なのが、台湾、東南アジア諸国、オーストラリアなどとの連携を強化すること。この3つを10年〜20年、一貫してつづけていけば、中国は自滅するでしょう。
簡単に感じますが、中国は、「日米、日印、日欧、日ロ関係分断」に全力を尽くすでしょうから、容易ではありません。中国が望めば、韓国を使い、一瞬で日本国民全体の「冷静さ」を失わせることすらできる。これ「実証済み」です。
image by: 首相官邸
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